超速い慇懃無礼な従者   作:技巧ナイフ。

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いやぁ〜アニメもリィエルちゃんが出てきましたね。素晴らしく可愛いです!!

今回もただダラダラと会話をしてるだけです。仕方ないんです!自分もシスティちゃんやルミアちゃんと話したいという妄想が止まらないんです!!


第2話 ロクでなしの到来

「……遅い!」

 

「そうですね〜」

 

「信一は自習しなさい」

 

「あ、ちょっ……せめて栞を…!」

 

 学院の授業時間も半分が過ぎたが、未だに今日から新しく来る非常勤講師は現れないでいる。

 

 基本的にこのアルザーノ帝国魔術学院は講師、生徒問わず皆、この学院の在籍者であることに誇りを持っている。なので、この学院の講師が遅刻するという事態は極めて稀である。しかも五分程度の遅刻ならいざしらず、授業時間の半分を過ぎた遅刻などこの学院始まって以来前代未聞なのではないかと考えてしまう。

 

 だが、そんな中信一は授業が始まらないのなら気になっていた本の続きを読もうとし……そして苛立つシスティーナに八つ当たり気味に奪い取られていた。

 

「むぅ……きっと先生のほうでも何か事情があるのでしょう。なにせアルフォネア教授が優秀と言ったくらいなのですから」

 

「シンくんの言う通りだよ、システィ。遅刻しようと思って遅刻する人なんていないんだし……」

 

「甘いわよ、2人とも。いい?どんな理由があったって、遅刻をするのは本人の意識が低い証拠よ。本当に優秀な人なら遅刻なんて絶対にありえないんだから」

 

 奪い取られた本を取り返そうとしながら信一はルミアと共に非常勤講師を弁護するが、システィーナは本を右へ左へと動かしながら2人の言葉をバッサリ斬り捨てる。

 

「現に信一が私達の朝食を作り始めてから寝坊したことは一度もないわ。それがなによりの証明じゃない?」

 

「うえっ!?」

 

 頑張って本を取り返そうとする信一が今のシスティーナの言葉で動きを止める。

 

 遠回しに自分は優秀だと、しかも敬愛する主に言われてしまうといつもの微笑みが消え、照れたように赤くなってしまうのは仕方のないことかもしれない。

 

 そんな信一の様子を可愛いなぁと思いながらも、ルミアはシスティーナの言に一理あると顎に手を当てる。

 

「まったく、この学院の講師として就任初日からこんな大遅刻だなんて……生徒の代表として一言言ってあげないといけないわね」

 

「ほどほどにしてくださいね、お嬢様」

 

「相手の態度に寄るわ」

 

 さきほどの照れた様子がシスティーナの心を打ったのか、本を返してやりながら鼻息荒く教室の前扉を睨んでいた。

 その時、

 

「あー……悪ぃ悪ぃ、遅れたわー」

 

 やる気を一切合切持たない、どこまでも生き生きとしていない男の声と共にその扉が開く。

 

「ん?」

 

「お?」

 

 本から目線を外し、そちらを見た信一と新しい非常勤講師の目が合う。

 

「…………………」

 

「…………………」

 

 お互いがお互いを見つめ合い、たっぷり10秒が経過。

 

 信一は本に目線を戻し、非常勤講師は無言で扉から出て行こうとする。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

 

 しかし、男の撤退とも退却ともサボりとも取れる行動をシスティーナが制した。男はこの世の終わりのような表情を浮かべながらこちらに振り向く。

 

「違います人違いですお願いします人違いということにしてくださいマジで!」

 

「人違いなわけないでしょ!?」

 

「そうですよ、貴方は間違いなくさきほど会った男性です」

 

「はいそうです!グレン=レーダスと申します!!」

 

 男———グレン=レーダスは直立した状態から信一に向かって腰を179°の角度まで曲げる。というか折る。

 

 信一は何故このグレンという非常勤講師がこれほどまでに自分———さきほどの会話から察するに、正確には自分の父親———に怯えているのかと考えてみると、いくつか可能性が生まれた。

 

「よろしくお願いします、グレン先生」

 

「いえ、こちらこそ!誠心誠意勤めさせていただきます!」

 

 だが1つ、このグレン=レーダスは間違いなく自分達に危害を加える人間ではない。これだけは確かだ。

 そして、信一にとってグレンは間接的にではあるが恩人でもある。ここに来る前の態度は見習いたくない類のものだったが、システィーナとルミアに手を出すようなことがなければある程度は好意的に接することができる人物だ。

 

「……挨拶はいいから、早く授業始めてからくれませんか?」

 

 信一がグレン=レーダスという人間の大まかな評価を下したところで、システィーナの冷ややかな声音が浴びせらた。

 

 対してグレンは、頭を上げてかったるそうに頭を掻く。

 信一に向けての取り繕った口調は消え、たちまち素の態度が現れる。

 

「あーまぁ、そうだな。本当ならめちゃくちゃ帰りたいところだが、そんな本音は口に出さずに頑張らないとな……仕事だし……」

 

 既に本音がダダ漏れだがシスティーナはここに突っ込むと肝心の授業が始まらないことをさとり、スルーする。

 ルミアも苦笑いを浮かべているが、特に物申すようなことはしない。というより、彼女はそういうことをする性格ではない。

 

 グレンはチョークを拾い、スタイリッシュにかっこよくコントンコンっ!と、黒板に文字を書き記した。

 

 “自習”と。そうして教壇に突っ伏して睡眠の体勢に移行する。

 

「「「 ……………………………………… 」」」

 

 クラス全員が我が目を疑い、こすったり瞬きをして眼球の機能を戻す努力をするが……どうにも黒板の文字は変わらない。

 

 信一は白昼夢でも見てるのかと思い、自分の頰を引っ張る———と痛いのでシスティーナの頰を痛くならない程度に引っ張る。

 

「お嬢様……俺にはあれが“自習”という文字に読めるのですが……」

 

ひょうにぇ(そうね)わひゃひにもひょうみえりゅわ(わたしにもそう見えるわ)

 

「あはは……」

 

 どうやら白昼夢ではないようだ。ではなんだろうか?集団白昼夢だろうか?

 

 どこまでも白昼夢の可能性を疑う信一だが、システィーナの頰が思いの外よく伸びて面白いので、それで遊び始める。

 だが、太腿をつねられてすぐにやめた。腿はつねられると地味な痛みが残るのだ。

 

「本日の授業は自習にしまーす……眠いから」

 

「「「 マジか…… 」」」

 

 クラスメイト全員の誰に向けたでもない呟きが奇跡的にシンクロした。

 

 そんなプチ奇跡に感嘆しながらも、この事態はさすがに看過できない。特に成績が結構ヤバめな信一は……

 

「先生、納得いきません!」

 

 バンッ!と机を叩き、いの一番に声を上げた。それを見て、普段は成績の悪い信一がこの事態に立ち上がったことにクラスメイトから驚愕の視線が集まる。

 

「ここで自習にされたら……単位はどうなるんですか!!」

 

「「「 ん? 」」」

 

 若干信一の言に首を傾げるが、広義的な意味では授業をしてほしいということになるのでとりあえずスルーする。

 

 信一の発言に顔を上げるグレン。ひじょうにダルそうである。

 

「んあ?」

 

「俺は自慢じゃありませんが、単位1つ1つが進級に関わってくるほど成績がヤバいんです!…エグ……この授業が自習になった場合……ヒグ…単位はどうなるんですか!!」

 

「シンくん……涙拭こう?」

 

 自分の発言で自分を傷付け涙目になり始めた信一に、心優しいルミアはそっとハンカチを渡す。その優しさが逆に辛い。

 

「えっと……お前、成績まずいのか?」

 

「進級がかかるレベルで……ヒック……」

 

 あまりにも憐れな従者の姿に、システィーナも優しく背中をポンポンしてあげる。やはり、その優しさが辛い。

 

 その様子を見たグレンは、う〜んと考えるような仕草をする。

 

「だ・か・ら!単位はどうなるんですか!」

 

「出席さえしてれば単位くらいやるぞ。……追試験とか作るのメンドイし」

 

「あ、ならいいや」

 

 グレンの答えが意外にも信一的にかなり嬉しいものだったので、すぐに着席する。

 そして、嬉しそうに手元の本を開いて物語の世界に旅立つ。

 

 その様子を見て、グレンも満足そうに教壇へ突っ伏した。

 

「「「 マジか…… 」」」

 

 再びクラス全員の呟きがシンクロを果たす。

 もはやロクでなしとしか言いようのない非常勤講師の言い分と、それに納得してしまった頭の可哀想なクラスメイトに向けて。

 

 そんな2人の様子にシスティーナはプルプルと震え……

 

「ちょっと待てえぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

 大声を上げながら2人の頭頂部に教科書の角をお見舞いしたのであった。

 

 

 

 

 

「いたたた……」

 

「シンくん、大丈夫?」

 

「いや、ダメみたいです。本の続きが気になって仕方ありません」

 

「それっていつものことだよね?」

 

 信一の頭にできた特大のたんこぶをルミアが優しく撫でる。

 

 普段は信一、システィーナ、ルミアの順番で席に着いているのだが、さきほどから頑なに本を開こうとするアホな従者に見かねたシスティーナが信一と席替えをしたのだ。

 

 学院でも有名で人気の高い美少女2人に挟まれる形になった信一を、クラスの男子生徒は羨望一割、嫉妬一割、殺意八割の割合で睨みつけている。たぶん今日俺は死ぬんだろうなぁ〜と他人事のように考えながら信一はルミアのナデナデを堪能していた。

 

「お嬢様も一応は貴族なんですから、もう少し優しさと落ち着きを持って対応していただきたいです。特に俺には」

 

「何言ってんのよ。授業中に本を読んじゃダメなんて常識でしょ?」

 

「これを授業と呼ぶのは……いかがなものですかね?」

 

「まぁ……ね」

 

 3人の視線の先には、信一と同じ大きさのたんこぶを頭に作ったグレンが授業をしている。だが、背中はやる気なく丸まり、目はやる気なく半開き、書かれる文字はやる気なくグニャグニャしていて判読不可能である。

 

 一応解説はしているが……

 

「え〜と、たぶんこれがあんな感じに変わって〜こういう風に〜……ん?こうか〜?」

 

 まったくもって要領を得ない。

 

「こんなのが授業だなんて……時間の無駄使いかもね。信一もあんな説明じゃ理解できないでしょ?やっぱりヒューイ先生のほうがよかった?」

 

「いえ、俺にとってはヒューイ先生の授業もグレン先生の授業を等しく理解出来ないので問題ありません」

 

「それはそれで問題よ……バカ」

 

 システィーナの問いかけに陽だまりように暖かく安心させてくれる笑顔でまったく安心できない言葉を返す信一。

 その姿にシスティーナはがっくりと肩を落とす。

 

 どうしてこいつはこんなに危機感がないのか……。

 

 信一は自他共に認める落ちこぼれだ。

 本の世界の主人公のように座学はできないが実技が桁外れとか、実技はからっきしだが座学では全科目満点を取る化け物……ではない。

 

 座学は何を言われているのか理解できないし、実技では音響魔術や閃光魔術、そして初歩の初歩である【ショック・ボルト】ならある程度はできるという、学院に類を見ないポンコツである。

 極め付けに、それを努力で埋めようという気概が欠片もない。

 

 これで性格も悪ければ誰も手を差し伸べないのだが、どうにも魔術関連以外なら大抵のことはやってのけるという微妙な万能ぶりを見せている。それに加え、頼まれれば基本的に頷くのでこの二年次二組では出来は悪いが可愛い弟といったポジションに落ち着いていた。

 

「はぁあ〜……ヒューイ先生が良かったなぁ」

 

「どうにもならないことを嘆いてもどうにもなりません。大切なのは現状で自分が何を学び取ることができるか見極めることですよ」

 

「良いこと言ってるんだけどあなたに言われるのはとっても悔しいわね……。ちなみに信一は現状で何か学び取れることを見極められた?」

 

「とりあえず話が理解できないので、この時間は読書の時間にあてるのがいいということを見極めました」

 

「だから本を読むなって言ってるでしょ!」

 

 どうもこのアホはとびきり根性のあるサボり癖がついているようであった。もはや不治の病レベルである。

 

「こ〜ら、シンくん。あんまりシスティを困らせちゃダメだよ」

 

「そうですね、ルミアさん。今は授業の時間。その時間に本を開くなんて言語道断です」

 

「だからなんでルミアの言うことにはそんなに素直なのよ!」

 

「ルミアさんは優しい。お嬢様は厳しい。だから俺、ルミアさん大好き」

 

「ふふ、ありがとう。私もシンくんのこと大好きだよ」

 

 ニコニコと笑い合う2人を見て、なんとなく疎外感を感じたシスティーナはつまらなそうにそっぽを向いてしまった。

 

 その様子に、信一とルミアは困ったように頰を掻く。

 

「申し訳ございません、お嬢様。少しからかい過ぎましたね」

 

「えへへ、ごめんね。拗ねちゃうシスティが可愛くて……つい」

 

 この2人、隙あらばシスティーナをからかう。これは別に意地悪をしていふわけではなく、ルミアが今口に出したように、拗ねたりムキになるシスティーナが可愛くて仕方ないのだ。

 

「いいわよ……。どうせ私は優しくないもの」

 

「でも、そんなお嬢様のことも俺はルミアさんと同じくらい大好きですよ」

 

「私もシスティが大好きなんだけど……言うまでもないかな」

 

「…………ッ———!?」

 

 2人の言葉にシスティーナはまたもやそっぽを向いてしまう。しかし、その顔が照れて赤くなっていることは2人に丸分かりだ。

 白い耳まで真っ赤になっているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 次の授業は錬金術ということで、信一は素早く着替えて女子更衣室の前に待機している。もちろん手元には二振りの刀が入った布袋。

 

 錬金術の授業は主に実験で、生徒の手自ら講師の指示の下魔法素材や試薬などを使って行われる。

 その実験の中には衣服が汚れたり落ちない臭いが着いたりするので着替えを行うわけだ。

 

「だとしても面倒なんだけどね……」

 

 それでも制服が汚れるよりは何倍もマシだ。

 多少の汚れなら持ち前の洗濯スキルで綺麗に洗い落とす自信があるが、臭いとなるとそうはいかない。

 アルザーノ帝国魔術学院の制服は高いので買い直すのも気が引ける。

 

 ちなみに信一は案外錬金術の授業が好きだったりする。

 座学であーだこーだ言われてもよくわからないが、実験で試薬を混ぜて色が変わったり石が別の物に変わるのは見ているだけでも単純に面白いからだ。

 

「あー面倒臭ぇ!別に着替える必要なんかねーだろうに……」

 

 今日はどんな実験をするのか少しワクワクしながらシスティーナとルミアを待っていると、廊下から本日何度目になるかわからないかったるそうな声が響いてくる。

 

「あ、グレン先生。まだ着替えてなかったんですか?」

 

「あぁ。お前は着替えるの早いな」

 

「実験好きなんですよ。見てて楽しいですし」

 

「ふぅん」

 

 グレンはそんな信一の言葉に心底興味なさそうな体で相槌を返す。

 

「さっさと実験室いけよ。ついでに俺の代わりに実験の用意しといてくれ」

 

「はは、イヤですよ。ていうか何するかわからないのに用意なんてできませんし」

 

「チッ……それもそう…か!」

 

「ちょっ!先生!?」

 

 面倒くさそうに舌打ちをしながらグレンは信一のすぐ横にある扉をなんの躊躇いもなく蹴り開けた。それに信一は驚きの声を上げる。

 扉を蹴り開けたことに、ではない。信一は自分や主達の持ち物以外を乱暴に扱われたとしても大して気にしない。

 

 信一が驚いたのは、今現在花も恥じらう乙女達が絶賛使用中の女子更衣室の扉を躊躇なく蹴り開けたことにだ。

 

 扉が開かれた瞬間、なにやら砂糖菓子よりも甘く、花よりもいい香りが鼻腔をくすぐった。

 

「……………………………」

 

「……………………………」

 

 耳に痛い沈黙がグレンと女子更衣室の間に広がっている。

 

「あー……昔と違って、男子更衣室と女子更衣室の場所が入れ替わってたんだな……まったく余計なコトしやがる」

 

 なにやら女子更衣室からいい香りと一緒に殺気が漏れ出ているように感じるのは信一の気のせいではないだろう。

 グレン先生とは短い付き合いだったなあ〜と、心の中で合掌する。

 

 そして、未だ頑張って辞世の句を紡ぐグレンの後ろに回り……

 

「———だから俺はこの光景を目に焼きつけ……うぉっ!?」

 

 思い切り背中に蹴りを入れて女子更衣室に蹴りをいれた。すかさず内開きの扉を女子更衣室の中を見ないようにして素早く閉め、この後中から響くであろう断末魔が止むまで絶対に開けまいと心に決める。

 

「待って!ごめん!ごめんって!いやすみませ…ごふぁ……ぐふっ……痛い!お願い開けて!ここ開けてー…ぐふぇっ!?」

 

「信一〜、絶対に開けちゃダメよ?開けたら………わかるわよね?」

 

イエス(もちろんです)マイロード(お嬢様)

 

 予想通り、この女子更衣室の中では目を覆いたくなるような凄惨な光景が広がっているだろう。

 

 グレン=レーダスというあと数十秒で故人になる予定の非常勤講師が上げる悲鳴をBGMに、信一はチラッと見えてしまった下着姿のシスティーナとルミアの姿を思い出す。

 なぜかシスティーナがルミアの胸を揉みしだいていた。

 

 もしやあの2人は……まぁ、その…そういう関係なのかもしれない。

 

 もしそうだとしたら、自分はこれから普段通り2人に接することができるだろうか?

 

「きっとできるよね……」

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ———ッ!?」

 

 自分の予想が合っていたら、絶対に祝福をしよう。心にそう誓い、信一はグレンの断末魔を聞き届けた。




はい、どうでしたか?

あと2、3話くらいで戦闘に入れると……たぶん思います。
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