今回はかなり原作遵守です。さすがにオリジナル要素を入れる部分が見当たらなかった……。
翌日、ついに遠征学修のメインである研究所見学の日がやってきた。
二組の見学先である白金魔導研究所はサイネリア島の中心部にあり、道中は手付かずの樹海。未だ生態系も完全には掴めていない未知の領域で、調査が入るたびに新種の生物や植物が見つかるほどだ。
白金魔導研究所へ向かう道は唯一石畳で舗装された一本道。ただし左右には等しく樹海が広がっている。
「ご、ごめんね信一……大丈夫…?」
「まぁ、なんとか」
そんな場所を信一は右肩に担いだ
どういう理屈なのか、襟に引っかかって首吊り状態のはずであるリンは全然苦しそうじゃない。
「あなた……ぜぇ…はぁ……なんでそんなに……はぁ……余裕なのよ……?」
「……俺の住んでた港町って海と山に挟まれてましてね。いじめっ子から逃げる為に走り回ってましたから」
「あ……その…ごめん」
システィーナの質問に遠い目で答える信一へ、周囲からは多大な憐憫が向けられる。
信一は魔術以外はなんでもこなせるが、そのこなせるようになった経緯に残念なものが多い。
奇しくも信一の地雷を踏み抜いたシスティーナは気まずさのあまり目を逸らし、その先のルミアに視線を移す。彼女も体力に自信があるほうではなく、端正な顔に疲労の色が濃く見て取れる。
「……大丈夫?ルミア」
「あんまり……大丈夫じゃ……ないかも」
「キツいようでしたら担ぎましょうか?荷物を背負えば左側が空きますけど」
「う〜ん……もうちょっと頑張って……みるよ……」
迷惑を掛けたくないという思いから気丈に振る舞う健気なルミアの姿に涙腺が緩む信一であった。
「最悪リィエルに背負ってもらうのもアリか……」
ひとりごちつつ、自分たちより少し後ろを歩くリィエルへと目を向ける。
さすがは現役の宮廷魔導士というべきか。息一つ乱さず、汗一つかいていない。いつも通りの眠たげな無表情で平地のようにスイスイ歩いている。
———その時だ。
一つだけポコッと飛び出していた石畳に足を取られ、リィエルの体がぐらつく。さすがに転倒まではしなかったが、彼女も疲れているのだろうか。
「リィエル、大丈夫?足場が悪いみたいだから気をつけて」
ルミアが心配そうに片膝をついて手を差し伸べ……パチン。その手をリィエルは煩わしそうにはたいた。
「……触らないで」
実は今日初めて聞く彼女の言葉。それは昨日までの無表情ながらも素直な態度が嘘のようにとても冷たく攻撃的なものだ。
信じられないといった様子ではたかれた自分の手を見るルミアには目もくれず、リィエルはスタスタと先へ行ってしまう。
「……ちょっと待って、リィエル。今のはさすがに酷いんじゃない?ルミアは貴女のことを心配して……」
「……うるさい」
さすがに今のは見過ごせず、システィーナはリィエルの腕を掴んで一言。だがそれに対するリィエルの言葉は拒絶であった。
「うるさいうるさいうるさい!」
「え?」
「関わらないで!いらいらするから関わらないで!」
「ちょ……リィエル?」
「わたしは———あなた達なんか、大嫌い!」
システィーナの腕を振りほどきながらそれだけ叫び、今度こそ彼女は先へ行ってしまう。
「うん……?」
信一は今の様子を見て首を傾げていた。少なくとも昨日までシスティーナ、ルミア、リィエルの仲は良好だったはず。護衛などの事情とは関係無く、友人として過ごしていた。それが一変してあの態度。
原因はすぐに思い至る。
「お嬢様、何したんですか? 怒らないから正直に話してください」
「なんで決めつけるのよ!」
「違うんですか?」
「ち・が・う!!」
てっきり昨夜自分と別れて以降にシスティーナが何か鬱陶しいことでも言ったのではないかと考えていた信一は意外そうに目を見開く。一応本人が自分の非を認めたくないだけという可能性もあるのでルミアに目配せすると、首を横に振った。どうやら本当に違うらしい。
「すまん」
何か他に原因でもあるのかと黙考していると、突如後ろからグレンが謝罪を口にした。
「俺が昨日あいつを怒らせちまってな……。今ちょっと不安定なんだよ」
珍しく本当に申し訳なさそうにするグレンに、3人は何も言えない。いつもの彼ならここから自分の名誉だけでも守ろうとするが、叱られた子どものような表情を浮かべてるだけで黙っている。
「……あいつはさ、子どもなんだよ」
「俺たちも子どもですよ」
「まぁ、そうなんだけどさ。なんというか……心がな、まだ小さい子どもなんだ。そうならざるを得なかった特殊な生い立ちで……」
「「「 ……………… 」」」
「そういうわけでさ。だからその……これで愛想を尽かさないでやってくれ。難しいかもしれんが……」
苦笑いで頼み込むように手を合わせるグレン。そんな彼へと真っ先に頷いたのはルミアだった。
「大丈夫ですよ。こんなことでリィエルを嫌いになったりはしません」
それに続いてシスティーナも腰に手を当てて呆れたように言う。
「私達は大丈夫です。それよりも先生、リィエルと早く仲直りしてくださいよ?」
さらに信一も、いつもの優しげな微笑みで諭すように。
「今夜旅籠の裏に来てください。理由はどうあれ、ルミアさんに悲しい顔をさせた原因が先生なら是非も無くシバきます」
「お前ブレないな!?」
顔と言動の差が著しく大きい信一に鋭くツッコミを入れれば、ルミアとシスティーナはなんとか笑ってくれた。
編入してからそれなりに時間が経ったといっても、やはりリィエルと過ごした時間が1番長いのはグレンだ。とりあえずグレンには仲直りしてもらい、それに便乗する形で自分たちは彼女を許す空気を作っておけばいいだろう。
それから2時間。二組一行はやっとの思いで白金魔導研究所にたどり着いた。
「おぉ!凄いですよ、2人とも!滝つぼに虹ができてます!」
「ご……ごめんね…シンくん……」
「ちょっと……そんな余裕ないわ……」
いじめっ子から逃げ回っていた体力は伊達じゃない信一。白金魔導研究所のすぐ近くにある滝を見てはしゃぐが、ルミアとシスティーナは疲れ果てて背中合わせで座り込んでしまっている。
周りを見れば、ほとんどのクラスメイト達も彼女らと同じような状態になっていた。余裕がある者はグレンとリィエル、あとはずっと担がれていたリンくらいだ。
「ようこそ、アルザーノ帝国魔術学院の皆さん。遠路はるばるご苦労様です」
2人に水筒を渡していると、クラス全体に初老の男性が声を掛けてきた。
「私はバークス=ブラウモン。この白金魔導研究所の所長を務めさせていただいている者です」
禿げ上がった頭や白の混ざった髭は年齢を感じさせるが、柔和な表情で笑いかけてくる姿は好々爺然としてとても親しみやすそうだ。
(なんとなく雰囲気が大旦那様に似てるかも……)
初めてフィーベル家に来た時、今は亡きシスティーナの祖父であるレドルフはちょうどバークスのように優しく笑顔で迎えてくれた。
あの時の自分はまだ母親を殺した自責の念で素直に喜べなかったが、今思えば彼は初めから自分を受け入れていたのだろう。でなければ初対面の小僧にあのような聖人じみた笑みを向けることなどできない。
「信一!早くしないと置いてくわよ!」
「うわっ、ちょっと……」
少し思い出に浸っていると、いつの間にか復活したシスティーナに突然腕を引かれる。
どうやら所長であるバークス直々に研究所の案内をしてくれるらしい。彼の権限なら本来は見学できないところも立ち入ることができ、正真正銘の白金術の最先端を見れるとあってシスティーナは興奮を隠せない様子だ。
そんな魔術大好きな彼女の様子に頰を緩ませながら、ふとルミアの方を見ると、何故か不安そうな表情を浮かべていた。
「ルミアさん?どうかしましたか?」
「……え?ううん、なんでもないよ」
「……?」
まるで誤魔化すように首を振るルミアを怪訝に思いながらも、本人がそう言うのならと信一は頷いてシスティーナに引かれてる腕とは逆の手で彼女の手を取る。
「さぁ、行きましょう。なんかお嬢様のスイッチが入ってしまったみたいなので」
「あぁ……シンくん、頑張って!」
「もちろんルミアさんも道連れです」
興奮したシスティーナが最先端の研究を見て私見を語らないはずがない。それを1人で聞くのはさすがに荷が重いのでルミアと半分こという魂胆だ。
せっかくの遠征学修。理由はわからないがルミアに何か不安があるのなら取り除きたい、そうでなくともせめて今この時は忘れさせたいと思うのは家族として当然のこと。
そんな信一の気遣いを悟ったルミアは静かに手を握り返した。
「白金術。それは皆様もご存知の通り白魔術と錬金術の複合術であり、この分野が扱うのは生命そのもの」
バークスの解説を聞きながら研究所内を歩く二組一行。
研究所内には様々な研究室があり、その1つ1つがフェジテでは見ることの叶わない目新しいものばかりだ。
中でも特に目を引いたのは複数の動植物を掛け合わせて作られた
「グロいけど、なんだか幻想的ですね」
「う、うん……そうね」
本好きな信一からするとそれなりに楽しめるが、システィーナにとっては思わず目を背けたくなるようなものらしい。
「でも……なんだか気が引けちゃうな」
「ルミア?」
「やっぱり、人がこんな風に命を好き勝手に弄くって本当にいいのかな……」
「それが白金術なのだから仕方ないのでは?」
「まぁそうなんだけどさ……」
確かにルミアの言いたいことは分かる。生命は尊いものであり、それを操作するというのはどこか神を冒涜するような傲慢な行為に思えてならない。ルミアが気が引けるというのも無理のない話だ。
だが、尊いからこそ手中に収めたい。生命の神秘を解き明かしたいと思うのもまた人の性だろう。特に知的好奇心旺盛な魔術師にとって白金術はまさに禁断の果実———深みにハマれば戻れない道と言える。
「人間である以上、知を求めるのは仕方ないと思う。でも、やりすぎないようにしなきゃね」
「……うん。呑まれないように気をつけないと」
「お嬢様、珍しく良いこと言いましたね」
———ゲシッ
しんみりとしながらも絶対に水を差してはならないところで差しにいった信一の脛をシスティーナがトーキック。結構痛い。
「でも……流石に『あの研究』はここでもやってなさそうね。まぁ、当然といえば当然だけど」
「あの研究って何?システィ」
涙目で脛を抑えて蹲る信一の頭をナデナデしてあげながらルミアは首を傾げる。それにシスティーナも答えようとするが、どうにも重要なところが思い出せないらしく考えるような仕草をしていた。
「えっとね、死者の蘇生・復活に関する研究。かつて帝国が大々的に立ち上げたプロジェクトで、その名前が……」
「……『Project : Revive Life』」
突然、背後から3人のものではない声が割って入った。
振り向くと、そこには相変わらず好々爺然ときた顔のバークスが立っていた。
「まさか学生さんの口からそこ言葉を聞けるとは……よく勉強していらっしゃる。あなたのような優秀な若者がいれば帝国の未来は明るいですな」
「いえ、そんな……」
そんな慌てて恐縮するシスティーナを尻目に、信一は脛の痛みも忘れてバークスへ詰め寄る。
「あの!死者の蘇生・復活というのは本当ですか!?」
「お、おや?興味がおありで?」
「はい!」
バークスからすれば、突然足元から生えてきたようにすら思える信一の挙動。それに若干引きながらも柔和な笑顔を崩さず丁寧な口調で説明を始めてくれる。
「生物の構成要素は肉体たる『マテリアル体』、精神たる『アストラル体』、霊魂たる『エーテル体』の三要素なのですが……死を迎えた生物はその三要素が分離し、それぞれがそれぞれの円環に還ります。すなわち『マテリアル体』は自然の円環へ、『アストラル体』は集合無意識の第八世界……意識の海へ、『エーテル体』は輪廻転生の円環、摂理の輪へと回帰します。ゆえに生物の死後、『アストラル体』が意識の海に溶け消え、『エーテル体』が次の命へと転生する以上、死者の蘇生は不可能———これを死の絶対不可逆性と言います」
「………………………………」
何言ってんの、このお爺ちゃん。それが信一の率直な感想だった。バークスを見る目は、耄碌した老人に向けるものとなっている。
理解できた部分と言えば、肉体たる『マテリアル体』は死んだら土に還るというわりと誰でも知ってるところくらいだ。
ちなみに今バークスが話した内容は学院の授業でも取り上げたことがあるものなので、システィーナとルミアは問題なく理解できている。
「今のところ、この死の絶対不可逆性を覆す魔術はございません。それゆえに、この死者蘇生計画たる『Project : Revive Life』……通称『
「『Project : Revive Life』ってのはな、要するに今バークスさんが言ってた生物の三要素を別のもので置き換えて、死者を復活させようという試みなんだよ」
突然、グレンがバークスの言葉尻を奪うように口を挟んできた。
「復活させたい人間の遺伝情報から採取した『ジーン・コード』を基に、代替肉体を錬金術的に錬成し、他者の霊魂に初期化処理を施した『アルター・エーテル』を代替とし、復活させたい人間の精神情報を『アストラル・コード』に変換して代替精神とする。そして、最終的にこの代替肉体、代替霊魂、代替精神の三要素を一つに合成し、本人を復活させる……そんな術式だ。わかったか、信一?」
「なんとなく……ふわふわと……シルエットくらいは掴めました!」
信一流にざっくりとまとめてしまえば、同じ考え方と同じ記憶を同じ形にした肉体へ叩き込んでしまおうというものだ。
「でも……それって復活って言えるんでしょうか?」
グレンの説明をしっかりと理解したルミアは、この術式の問題点をバークスへと問いかける。3つのコピーが合わせたことを復活と呼べるのか。当然の疑問だ。
「確かにこの方法で復活させた人間は厳密な意味では本人ではありません。けれど周囲にとっては失ってしまったはずの人間が寸分変わらない姿形と人格記憶を持って戻ってくる。そういう意味での有用性が唱えられたのです」
バークスの答えは思わずルミアとシスティーナの背筋を凍らせた。
自分じゃない自分を周囲が自分として扱う光景を想像してしまったのかもしれない。その光景は言い知れないおぞましさを感じさせる。
彼女達の顔色から悟ったらしいバークスは安心させるように笑いかけながら言葉を続けていく。
「ですがご安心を。結論と致しましては、このプロジェクトは失敗に終わりました」
「そういえば、どうして失敗したんですか?これだけ理論が成立しているのなら……」
ここまで話を聞く限り、失敗する要素は見当たらない。優秀なシスティーナにとっては不思議であった。
「様々な問題があったからですよ。魔術言語『ルーン』の機能限界であったり……あとは倫理的な、ね」
「倫理的……?」
システィーナは不思議そうに問い返す。すると、それにグレンが応じる。
「復活に必要な三要素の一つ……霊魂体の代替品であふ『アルター・エーテル』だが、これを作成するには何の関係もない複数の他人から霊魂を抽出して加工、精錬するしか手段がなかったんだ」
「え!?それって……まさか……」
「そうだ。一人復活させようとすれば、別の誰かが何人か確実に死ぬ。こんなこと許されるはずがねぇ」
グレンが吐き捨てるようにして『Project : Revive Life』の概要を締めくくった。
なんとも言えない沈黙が流れるが、そこで信一は口を開く。
「参考までに聞きますけど、具体的に何人の命が必要とかわかりますか?」
「ふむ……どうでしょう。元々頓挫したプロジェクトですからねぇ……。少なくとも1人復活させるのに二桁は必要でしょう。三桁まではいかないかと」
「二桁ですか。意外と少ないですね」
淡々と、まるで命をただの数字であるかのように語る信一の質問にシスティーナ達は顔を顰めている。実際信一にとって家族以外の命は数字程度の価値しか見出していないし、それを彼女達も認めているが、だからと言って気持ちの良い話ではない。
だが、珍しいことに信一はルミアとシスティーナの反応には目もくれず話を進めていく。この話は理解出来ないなりにも詳しく聞いておきたいのだ。
「死者の蘇生・復活というからにはもう少し焚べると思いました」
「コーヒーと同じです。注いだお湯は挽いた豆に少し吸われてしまいますが、ほとんどお湯と変わらない量が抽出できるでしょう?そう考えれば、むしろ二桁だって十分多いほうです。それに———」
バークスは信一の目をまっすぐ見て続ける。
「命の取捨選択は許される行為じゃありません。全ての命は尊く、それを理解せずに弄るというのは快楽殺人と変わらない」
「そう……ですね。不躾な質問でした」
「いえいえ。内容はどうあれ、未来ある若者が白金術に興味を持ってくれるのは私としても嬉しいものですよ」
そして次から次へと目の前を流れる神秘の数々、尽きぬ驚愕の連続。この白金魔導研究所の見学は魔術を学ぶ者として(学べてない者もいるが)時間を忘れてしまうほど有意義なものになったのは言うまでもない。
それも終わり、白金術を主軸に魔術談義しながら帰れば、宿舎に着く頃にはすっかり日が落ちていた。
これからは自由時間だ。元気のある者は町へ食事に行ったり、露店を冷やかしたり、疲れた者は部屋で休憩したりと生徒達は幾つかのグループに別れていく。
その中をリィエルだけは誰と一緒にいるわけでもなく、1人ぽつんと立ち尽くしていた。
「ねぇ、リィエル。私達、これから町に食事に行こうと思うんだけど、よかったら一緒に……」
「……やだ」
見かねたルミアが優しく声をかけるが、リィエルはこの調子だった。にべもない露骨な拒絶にルミアの表情が悲しそうに沈む。
いくらなんでも、これはひどい。友人としての仲違いならば仕方がないと割り切ることもできるが、リィエルはルミアの護衛という任務がある。こんな状態では肩を並べて彼女を守るどころか、足を引っ張られる可能性も生まれてくる。場合によっては信一自身が隙を見て殺すことも考えなければならない。
信一にとってルミアは何を差し置いても守るべき存在の1人。その障害となるのなら喜んで排除できる。
もちろん、極力それはしたくない。なので一言言ってやろうとリィエルに向かって進もうとした、その時だ。肩に手を置かれ、その置いた本人が自分を追い越していく。
「いい加減にしろよ、リィエル」
グレンだった。彼は苛立ちを言葉に乗せてリィエルの背中へと浴びせ掛ける。
「いつまで一人で拗ねて……」
「うるさい!」
しかし、当のリィエルは一言それだけ叫んで走り去ってしまう。
その背中をルミアは誰よりも悲痛な面持ちで見送っていた。だがそれも一瞬。決意をするように頷いた後グレンに声をかける。
「追いかけてあげてください、先生。私達は大丈夫ですから。それよりも今はリィエルです」
「いいのか……?」
「たぶん、私達が行っても逆効果でしょうから。今は先生がリィエルのそばにいてあげてください」
「……わかった」
そう言い残し、グレンはリィエルを追って駆け出した。
3人はどうにもこれから食事という気分にならなくなってしまい、とりあえず部屋へ戻ることにした。その道中システィーナが頑張ってルミアを励ますが彼女の顔が晴れることは無く、信一もこの事態をどう解決するかと頭を悩ませるが名案が浮かばない。
(さて、どうしたものか……)
「なぁ、アル」
「なんだ?」
「お前って今日誕生日だったりする?」
「いや」
薄霧漂う夜の森。その暗闇の中で男と青年が軽口を叩き合っていた。しかし2人に楽しそうな雰囲気は一片も無く、ただ一点———正面にそびえる大木の太い枝に乗る影を険しい目で見つめている。
二対の視線の先には妖艶な笑みを浮かべた女が1人。
「屈強な男性が一夜にして2人も……私、壊れてしまいそうですわ」
男———零は腰の刀に手を乗せ、微かに左足を引く。
青年———アルベルトは左人差し指を立てる。
「誰だ? こんな時にあんなアバズレを呼んだおバカさんは。まだ俺達公務員は就業時間というのも忘れたのか、失業者」
「ふふっ……そのような冷たいことは言わないでください。今夜はお仕事も忘れたくなるほどの熱い夜をお届けいたします。……私の身体を使って」
「貴様が出てくるとはな。天の智慧研究会、
エレノアはアルベルトの言葉に恍惚とした表情を浮かべ、自身の体をかき抱く。その態勢のままボソリと。
「《———————っ!?」
———呟くことができずに後ろへ飛ぶ。
自分の意思ではない。生物の本能が体にそう命じ、それに従ったのだ。否、従わなければならなかった。
「チッ、惜しい」
一瞬前まで自分がいた場所には黄金の刀身が通過していた。その数は知覚できただけで十七。恐らくもっと多い。
それを本来なら一度しか振るえない間に行った。
(これが本家本元の【迅雷】ですか……)
重力に従って地面へと落ちるエレノアの上方、今まで立っていた場所には刀を振り抜いた態勢の零が自分を見下ろしていた。
先の魔術競技祭で彼の息子が披露したものとは一線を画す、まさに極められた【迅雷】の使い手。そんな彼を見つめるエレノアは———体の芯に熱が集まるのを感じる。
「……っ! 《霧散せよ》!」
未だ空中にいる身を無理矢理翻し、【トライ・バニッシュ】を起動。自分の体に大穴を開ける寸前の【ライトニング・ピアス】をギリギリのところで打ち消すことができた。
(なるほど……零様の近接攻撃とアルベルト様の魔術狙撃による隙の無い波状攻撃、まさに業火の如く。そんなに激しくされてしまったら……私………)
着地したエレノアは再度自身の内から生まれる快楽に耐えるよう己が身をかき抱き、恍惚とした表情をさらに高めていく。
「《壊れてしまいますわあぁぁぁぁ》!」
そして叫ぶと、地上にいるアルベルト周辺の土を何者かが這い破ってきた。それはかつて女
はい、いかがでしたか?エレノアさんってこんな感じでいいのかな?
昨日からモンハンワールドのベータ版が配信され、かなりテンションMAXです。使ってる武器はもちろん双剣。
剣は一本より二本の方がかっこいいから!!
次回は戦闘シーンがたくさん。最後の方に少し書きましたが、やっぱり戦闘シーンは楽しいですね!