超速い慇懃無礼な従者   作:技巧ナイフ。

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どうもこんにちは。ちょくちょく失踪する作者のクズです。

すみませんでした!


第43話 蠢く中毒者たち

 翌日。

 システィーナが正式にレオスの求婚を受け入れたことが発表され、学院中を震撼させた。

 さらに、結婚式は3日後に行うとも。あまりにも急なスケジュールである。

 どこか演劇的とすら思えるほどの展開。そんな中、学院中が注目しているのは最後の一勝負。グレンとレオスの決闘であった。

 

 しかし……

 

(どうして来ないんですか…グレン先生……ッ)

 

 場所は学院の中庭。その周囲には、彼らの決闘を一目見ようと多くの生徒達が集まっている。

 中庭の中心にはレオス。魔導兵団戦後のようなヒステリックさは鳴りを潜め、いつも通りの紳士然とした余裕のある表情を浮かべてグレンを待っている。

 

「グレン…来ない」

 

「先生……」

 

「…………」

 

 リィエルとルミアの沈んだ声音に、システィーナは俯いたまま応じない。いつもならば率先して元気づけようとする彼女なのだが、今はその気がないようだ。

 ……否。信一には、まるでその余裕が無いかのように見える。

 

 無為な時間は流れ、周囲の生徒らの心には1つの憶測が芽を出していた。すなわち『グレンは逃げた』と。

 その憶測は時間経過と共に推測へ。確信へ。坂を転がり落ちるかのように形を変えていく。

 そして約束の時間を大幅に過ぎた頃。中庭の中心に立つレオスが優雅にため息を一つ溢し、システィーナへと歩み寄りながら周囲へと語るように声を上げる。

 

「どうやらグレン先生は逃げてしまったようですね。これで分かったでしょう? 彼は貴女の夫となる器じゃない。少なくとも私なら、たとえ力では敵わないと分かっていても、システィーナの為ならばどんな強敵にも立ち向かうというのに」

 

 そのような口上に、周囲にいた女生徒達は黄色い悲鳴を上げていた。

 そんな悲鳴を一身に浴びながら、システィーナの目の前まで来たレオスは彼女へ手を差し伸べる。

 

「さぁシスティーナ。結婚式の打ち合わせをしましょう。あ、もちろん信一くんも一緒に。君には不在のレナード殿に代わって、彼女とバージンロードを歩いてもらいたいですから」

 

 いつも通り気安く、レオスは信一にも手を差し伸べてくる。昔から何度拒否しても優しくこちらへ向けられる手のひら。

 しかし今その手が、どうしようも無く汚らわしく見えてしまう。

 

「…………」

 

 もはや、やる事は決まっていた。

 

「レオス様」

 

「はい、なんでしょう?」

 

 信一は懐から出した手袋を、向けられたレオスの手のひらに投げつける。

 

「「「 ッ⁉︎ 」」」

 

 周囲の生徒らから上がるどよめき。

 信一が行ったのは、もはやこの騒動で見慣れてしまったもの————魔術決闘の儀礼。

 

「これは……なんの冗談ですか?」

 

「冗談などではありません」

 

「少しやんちゃが過ぎるでは無いですか? あまり君に上下関係を明言するような事は言いたくありませんが———これは従者としての仕事から逸脱しているでは?」

 

「そうかもしれませんね……」

 

 フィーベル家の従者ならば、信一はシスティーナの門出を喜ぶべきなのだろう。

 貴族の娘が嫁ぐともなれば政略結婚が常だ。しかし今回に限って言えば、以前から親交もある旧知の仲。お互い憎からず思っていない上に、嫁ぎ先は有力貴族。

 これほど良心的な条件は、貴族社会ならば異例中の異例だ。

 

 ただそれでも———

 

「俺が願うのは、お嬢様の幸福です」

 

 この婚姻が、本当にシスティーナの幸せに繋がるのか。信一にとって重要なのはそれだけだ。

 貴族社会やら、政略結婚やらはどうでもいい。そこに幸せがあるならば笑って送り出すが、それを彼女は望んでいない。

 

 いくら取り繕おうと、そんなものは見抜けてしまう。

 5年前のあの日から、信一はいついかなる時もシスティーナを見ていたのだから。

 

「……ふむ。まぁ、これも一興か」

 

 信一の返答に、レオスは一瞬俯いて誰にも聞こえない声量で呟いた。

 だがすぐに顔を上げ、幾度となく見た穏やかな微笑みで告げる。

 

「やはり君も男の子だったというわけですね。自分より弱い相手にシスティーナは任せられないと。ならばこの決闘、受けなければなりませんね」

 

 なにやら勝手に勘違いしてくれたようだが、それも好都合だ。決闘を受けてくれるならば、文句は無い。

 

「えぇ。ルールはどうしましょう?」

 

「グレン先生と行う予定だったものを流用してしまいましょう。致死性の魔術は禁止。あとはなんでもアリという野蛮なものになってしまいましたが、構いませんか?」

 

「はい」

 

 ちょうど良い。致死性の()()は無し。しかし体術による事故ならば、ある程度は許容されるだろう。

 なにより、クライトス家は魔術の名門。決闘による事故を挙げて非難すれば、逆にクライトス家の名に傷がつく。

 睾丸を潰してクライトス家の後継者候補から引きずり落としてしまえば、システィーナとの婚約話も自然と破棄されるだろう。

 

「信一…本気なの?」

 

「もちろんです。刀を預かっていてもらえますか?」

 

「う、うん……」

 

 システィーナを安心させる為に笑顔で答えて、刀の入った布袋を渡す。

 そして多くの生徒が見守る中、中庭の中心で信一とレオスは対峙する。

 

 信一の見立てでは、【迅雷】さえ使えば問題無くレオスを圧倒できるだろうと考えている。彼は魔術理論や戦術こそ脅威的だが、実戦ともなるとからっきし。それは先日の魔導兵団戦で露呈している。

 さらに、貴族というのならばレオス個人の実力も自衛ができる程度。少なくとも、今まで信一が戦ったレイクやゼーロス、リィエルと比べるまでも無い。なにより貴族は本来戦う存在では無く、守られる存在だ。実戦経験は信一が優っていると考えて良い。

 

(開始と同時に【迅雷】を起動。一気呵成に畳み掛ける…!)

 

「それではシスティーナ。開始の合図をお願いできますか?」

 

「わ、わかったわ。それじゃあ———始め!」

 

 システィーナの美声を合図に、信一は即呪文を唱える。

 

「《疾くあれ》」

 

 バチィ! 脳内に【ショック・ボルト】を放ち、人間の潜在能力を20%———常人の10倍まで開放。その踏み込みは地を抉り、観客の動体視力を置き去りにする。

 

「やっ!」

 

 レオスが呪文を唱えるより早く彼の目の前まで到達した信一は、すぐさま貫手を放った。狙いは喉。まずは魔術起動の要となる詠唱そのものを潰す。

 

「先手必勝というわけですか。なるほど」

 

「———っ⁉︎」

 

 しかし、想定外にもレオスは躱して見せた。魔術を使った様子は無い。完全な体捌きのみでの回避だ。

 しかし、所詮は最初の一撃。常人の10倍の膂力ゆえ、当たれば悶絶は免れないが牽制でしかない。

 すかさず信一は、手刀、掌底、拳、肘などを駆使した連撃でレオスを追い込んでいく。

 

(クソ……思ったよりできるな)

 

 拳闘術は貴族の嗜み。当然レオスもそれに沿っていると考えていたが、予想以上の練度だ。

 さらに、受ければタダでは済まないことも理解しているらしい。全て避けるか捌くかで対応されている。

 

「ハッ!」

 

 確実に入るであろうタイミングで鳩尾へ突き刺す前蹴りを放つが、それもまるで読んでいたかのように避けられる。

 そして、それを皮切りにレオスの反撃が始まった。

 貴族の拳闘術らしく、拳のみによる連打。さほど脅威的な威力があるわけでは無いが、その1つ1つが的確に信一を不利な態勢へと追い込んでいく。まるで詰めチェスのようだ。

 

「くっ……」

 

 堪らず距離を取る。【迅雷】を使っているにも関わらず、押されるとは思わなかった。

 

「それは悪手ですよ、信一くん」

 

 直後、レオスの左手から放たれる雷閃。予唱呪文(ストック・スペル)による【ショック・ボルト】が信一の頬を掠めた。

 

「その程度ですか? 君のシスティーナに対する()()は」

 

「《疾くあれ》」

 

 レオスの言葉には耳を貸さず、さらに【迅雷】によるパーセンテージを上げる。10倍では足りないのなら20倍———40%。

 6歩分の距離を1歩で詰め、二段蹴りでレオスの胴体と顎を同時に狙う。

 ———バスン! バスンッ! という砲弾のような2連撃は、しかしレオスには届かない。彼は必要最低限下がるだけで回避。蹴りの風圧が美しい金髪を揺らすだけに終わった。

 

「《光あれ》!」

 

 そんな彼の涼しい顔に向けて、信一は一節詠唱で黒魔【フラッシュ・ライト】を放つ。強烈な閃光を至近距離で目に叩きつけてやるが、レオスは片手を翳して遮った。

 しかし信一の狙い通り。この一瞬のみ、レオスは自身の手によって視界を塞がれている。その隙を逃すほど、【迅雷】の演算能力は甘くない。

 

 下段回し蹴り、中段後ろ回し蹴り、上段回し蹴り。時計回りに回転しながら、骨を砕く勢いの3連回し蹴り。

 

「へぇ。これはなかなか……っ!」

 

「ガッ……」

 

 ———まるで歯車が噛み合うかのように。レオスは信一の連続蹴りの合間を縫って下段後ろ回し蹴り、中段回し蹴り、上段後ろ回し蹴り。

 見事なカウンターが決まる。

 

 最初の下段蹴りで足払いを食らった信一は、そのまま中段回し蹴りをモロに貰ってしまった。最後の上段蹴りはなんとか外したが。

 素の身体能力で【迅雷】に対抗するなど、ゼーロスやリィエルのような並外れた剣士でなければ不可能なはず。優秀とはいえ、真っ当な魔術師のレオスがそれを可能にするなどあり得ない。

 なにより驚くべきは、

 

()()()使()()()……?)

 

 貴族の拳闘術は、優雅であることを求められる。そのため、実用性よりもステータスであるという点から意地汚さを連想させる足技は忌避されている。

 しかし、今のレオスの蹴り……速さも重さも明らかに訓練されたそれだ。

 

「くっ……はぁ…はぁ……」

 

「終わりにしますか? 恐らく肋骨にヒビくらいは入っていると思いますが」

 

 この程度の怪我、ここ最近の修羅場で慣れている。それよりも考えるべきは、レオスを打倒する方法だ。何故自分は手玉に取られるている……? 

 

「流石に拳闘術で君に対抗するのは難しいようなので、少し本気を出してしまいましたが」

 

 そう言うレオスの構えは、先ほどまでの貴族が嗜む拳闘術では無く、何度もグレンが振るうものを見た———

 

「———帝国式軍隊格闘術……」

 

 ここに来ての隠し玉。まさか彼がそんなものを修めていたとは。

 

 しかし、だ。それでも【フィジカル・ブースト】すら使わず【迅雷】を圧倒することなど出来るのだろうか。

 それこそ、数多の外道魔術師を帝国式軍隊格闘術で下してきたグレンでさえ出来ない。

 

(何か別の魔術を使ってる……?)

 

 何も魔術は、見てわかるモノだけでは無い。精神に作用するものもあれば、時間に関係するものもある。

 だが、現時点でその正体は分からない。こういう時、信一はもっと真面目に勉強をしておけばと顔を顰める。

 

 そんな信一へ、レオスは周囲の観客には聞こえない独り言程度の声量でそっと言葉を発する。

 

「存外期待外れですね。君の()()はその程度ですか?」

 

「———っ⁉︎」

 

 何故、レオスが自分の狂気を知っているのか。確かに彼の前でもシスティーナにべったりだったが、それは常識の範囲内だったはず。レオスが知るはずは無い。

 

「彼の息子なのだからと少し遊んでみたが……未熟も甚だしい」

 

「何の話しをしているのですか?」

 

「まぁ、そもそも君の狂気は他者に依存したモノだ。所詮自分だけでは自立すらできない稚拙な精神性。少々色眼鏡で見過ぎたかな?」

 

「……?」

 

「いや失礼。()()()()事情だ。———もう終わりにしましょう」

 

 今のレオスの独り言。人格が入れ替わったとさえ思えるほどに辛辣な物言い。なにより呟いていた時の目。

 網膜では確かに自分を映しているが、まるで別の何かを見ているかのような虚さであった。

 

 信一の脳裏に疑問が浮かぶ。レオスはあのような目をできる者だっただろうか? 

 少々ナルシストなところはあったが、彼は清廉潔白を絵に描いたような人物であったはずだ。権謀術数が渦巻く貴族社会にあっても、ついぞその輝きを曇らせることは無かったはず。

 なにより信一の知るレオス=クライトスは、相手を見ないで会話をするという不誠実な行為をできる人物では無い。

 

「《疾くあれ》》」

 

 ———バチバチバチィィ! 一気に80%———40倍まで開放。その身体能力に任せて瞬時にレオスの後方へ回り込んで脳天目掛けて踵落とし。当たれば頭蓋骨陥没で即死する威力だが、当たり前のように対応される。

 どうやら今のレオスにとって、視覚による情報はさほど重要では無いようだ。なんとなく感じていたが、未来予知に近い何かを行なっている。

 

 こちらの顔面目掛けて飛んできた振り返り様の裏拳……ブラフ。続くワンツーが本命。

 信一はそれを()()()()()()ながらも根性でレオスの懐へと潜り込む。

 

 そして、確信。

 

 

 

「———誰だアンタ」

 

 

 

 このレオスは、()()()じゃ()()()

 殴られたので分かりにくいが、それでも40倍の嗅覚で理解する。服や上品な香水はレオスのものだが、体臭がまったくの別人だ。

 

 思考とは別に、体は正確無比の動きで投げ技へ移行。レオスではない彼の片腕を抱え、重心を腰へと乗せてクルッと180°体を回す。

 グレン直伝、一本背負い。

 

 相手の体重、重力、【迅雷】の膂力。それらを組み合わせた最高の完成度を誇る一本背負いが彼の体を浮かせた瞬間———

 

「———()()()()()()

 

 取り繕うことすら無くなった口調で一言。そのまま……タン。

 なんと彼は、信一が掴んでいる腕の肩関節を外して静かに足で着地した。

 そして軟体動物かのようなしなやかさで信一から腕を引き抜き、パチン。指を鳴らす。

 

「左手……?」

 

 突如レオスと信一の間に現れたものは、そう表現するしかない。

 お互いを隔てるように、そこには“黄金の剣を握る左手”があった。

 

「ふん。避けてみせろよ?」

 

 つまらなそうに一言。彼の言葉が吐き捨てられると同時に、“左手”は信一の首を刈り取る軌道で振われる。

 

「ぐっ…《疾くあれ》」

 

 慌てて【迅雷】を使うが、

 

(……は?)

 

 起動しない。

 

 信一の胸元からは魔力の波動が揺らめいている。そこには呪文の起動を封じる【スペル・シール】がかけられていた。

 彼が信一の胸元に触れたのは一本背負いの時。あの刹那とも言える隙に付呪(エンチャント)されていた。

 

(まずい…斬られる……殺される……⁉︎)

 

 “起動しない魔術を起動しようとする”。その隙が、致命的であった。刃が首に迫る。迫る。迫る。

 ついに死を覚悟し、スローモーションになる視界の中———ゴッ! 

 硬い音が、自身の首から発せられた。

 

「カハ…ァァ……」

 

「一応、致死性の魔術は禁止というルールだったからね」

 

 “左手”の持つ剣は、刃を潰されたものだったらしい。それでも【迅雷】を使っていない“普通の人間”である信一にとっては、意識を刈り取られるのに十分な威力だ。

 

 バタン、と。力無く地面に倒れ伏す。

 

「———私の勝ちです。信一くん」

 

 遠のいていく意識の中、レオスの口調による勝利宣言が信一の鼓膜に残響した。

 

 

 

 

 

 フェジテ東地区市壁外、郊外。

 

 雑木林の中にひっそりと放置された豪奢な馬車の前で、4人の魔導士が顔を見合わせていた。

 

「———通信結晶で報告した通り、どうやらフェジテで『天使の塵(エンジェル・ダスト)』が流通しているらしい」

 

「まさかとは思ったが、これを見せられちまったら信じるしかないのう」

 

「噂には聞いていましたが、こんなにも酷くなるものとは……」

 

「そう言えば、クリストフ。お前はこの『天使の塵(エンジェル・ダスト)』絡みの案件に関わるのは初めてだったな」

 

 4人のうち、初めに口を開いたのは執行官No.13《死神》の零。どこか精神的に憔悴した様子ながらも、最低限の仕事として同僚達に報告の義務を果たしている。

 

 そんな彼に相槌を返したのは執行官No.9《隠者》のバーナード。老人と言って差し支えない年齢でありながら、どこかやんちゃ坊主のような印象を持たせる。40年前の奉神戦争では、あの『双紫電』ゼーロスと共に戦場を駆け抜けた古強者だ。

 

 さらに馬車の中を見て唖然とする、この4人の中では最年少である女顔の少年。執行官No.5《法皇》のクリストフ。結界系魔術の名門出身で、年若いながらも他のメンバーに引けを取らない実力を持っている。

 

 そして、クリストフを気遣うように執行官No.17《星》のアルベルトが確認を取る。

 

「つっても……零。お前さん大丈夫か? 2日酔いの呑んだくれよりも酷い顔色じゃぞ」

 

「あぁ…すまない。交戦した『天使の塵(エンジェル・ダスト)』中毒者の中に子どももいたんでな……」

 

「前までは敵なら女子供でも平然と殺しておったじゃろ」

 

「ふざけるな。あの子達は敵じゃない」

 

 以前までの零は、妻を失った悲しみを仕事に打ち込むことで忘れようとしていた。

 しかし、先の学院で行われた魔術競技祭の一件で向き合うと決めたのだ。それ以降、どうにも子どもを殺そうとすると良心の呵責が生まれてしまう。

 もしくは、今回殺した子ども達が悪人では無いからかもしれない。魔薬(マジック・ドラッグ)による影響でやむを得ず殺さなければならないというのが、どこか息子の境遇と被ってしまう。

 

「零は少し休め。……それよりクリストフ。この馬車の家紋はどこのものか分かるか?」

 

「僕の記憶が正しければクライトス家のものですね。ほら、クライトス魔術学院の」

 

「やはりか。となるとこの中の死体は……」

 

「あのような惨状なので絶対とは言えませんが、十中八九クライトス家の者。加えて、今現在フェジテに滞在しているクライトス家に連なる方は———」

 

 

 

 ———レオス=クライトス。

 

「ハァ……ひどい話だ」

 

「あ、零さんは休んでもらっていて結構ですよ。()()は僕たちが片付けますから」

 

「30秒も休めば問題ないさ。それより、クリスは『天使の塵(エンジェル・ダスト)』中毒者の相手は初めてだろう? 万が一があっても困るから手本を見せておくよ」

 

「クリスって呼ばないでください!」

 

 自身の女顔に自覚があるクリストフが、零からの明らかな女性名の愛称に憤慨する。

 本来ならここからクリストフが色々と文句を言うところだが、現在の状況がそれを許さない。

 

「既に囲まれていたか」

 

「かぁ〜〜〜っ! 面倒くさ!」

 

 4人が背中合わせでお互いを守るように立つと同時に、周囲からゾロゾロと現れる人々。服装自体は一般人そのものだが、頬は痩せこけ、顔色は土気色、目は虚ろ……常軌を逸している。

 

「こいつら、やたらしぶといから嫌なんじゃよなぁ〜」

 

「それでも命は1つだ。死ぬまで殺せばいずれ死ぬさ」

 

「あの……前々から思ってたんですけど、その教えって明らかにどこか間違ってる気がするんですよね……」

 

「無駄口は止めろ、と言いたいところだが……クリストフ、1つ忠告しておく。諦めろ」

 

 アルベルトの苦労人ぷりがよく分かる忠告にクリストフが憐れみの目を向けたところで、周囲の中毒者達は獣じみた動きで襲い掛かってくる。

 

 俊敏さは人の領域をとうに超えたもの。しかし、()()()()()

 

 その程度の相手、どれだけの数がいようと———宮廷魔導士団特務分室の面々には関係無い。




はい、いかがでしたか?バーナードお爺ちゃんとクリストフきゅんは今回初登場です。

久々に戦闘シーン書いてて、やっぱ楽しいと思えちゃいますね。
システィーナ大好き信一が彼と戦うなら、やはりここだと考えておりました。
リィエル戦もそうでしたが、刀持ってない=負けフラグになりそう……。
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