ソードアート・オンライン/Hero for one person 作:メカ好き
ソードアート・オンラインのデスゲームが開始されてから約1ヶ月が経った。
死者は二千人に及び、未だに第1層はクリアされていない。
2022年12月2日 第1層『トールバーナ』
この日、一組の男女がこの町に訪れていた。
一人は長髪を後ろで纏めた耽美な容姿とキレのある目付きが印象的な少年。
腰には刃渡り1メートルほどの野太刀を鞘に納めた状態で差されていた。
もう一人はボブカットに幼さを感じさせるも整った顔立ちのボーイッシュな少女。
此方は無難に細剣を腰に差している。
「シンくん、会議までまだ時間はあるよね?」
「まだ1時間半位はあるな」
「じゃあさ、ちょっとこの町を回ってみようよ。アヤ達まだこの町はさほど知らないし」
「確かに気分転換にはなるか」
この後男女、シンとアヤは町をぐるりと回り目的地に向かった。
既に多くのプレイヤーが集まっており、二人も手頃な場所に腰を下ろした。
数分後青い髪の青年が会場の舞台に立った。
「今日は、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!俺はディアベル、職業は気持ち的にナイトやってます!」
ディアベルの言葉に会場が沸く。
「今日、俺達のパーティーが第1層のボスの部屋を発見した」
参加者の目が真剣な物へと変わる。
「ここまで一か月もかかったけど…、このデスゲームもいつかきっとクリアできるんだってことを、はじまりの街に籠ってしまったみんなに伝える、それが今この場所にいる俺達の義務だ!そうだろ!?」
再び会場は沸き、それに答えるディアベル。
「それじゃあ、みんなパーティーを組んでくれ」
ディアベルの指示に従いパーティーを組み始める参加者たち。
そんな中、アヤは孤立する二人のプレイヤーを見つけた。
「ねえシンくん、あの人達もアヤ達のパーティーに誘おうよ」
「確かに二人だけじゃ心許ないからな。俺は良いぞ」
「ありがとう、シンくん。ねえ、そこのお二人さん!」
突然声をかけられた為か、ビクリと肩を震わせる二人。
一人は女顔な少年、もう一人はフード付きのローブを着ている為顔は分からない。
「よかったらアヤ達のパーティーに入ってくれない?二人だけだからボス戦となると不安なんだ」
「あ、えと良いですよ」
「…私も構わない」
(こいつ、女か。だからこんな格好を)
シンは声からローブのプレイヤーの性別を看破する。
アヤも顔立ちが整っており、色々と苦労したのだ。
シンがいたので大事はなかったが、一人であるこの女性は苦労していそうだとシンは同情してしまう。
(プレイヤーネームはキリトとアスナか)
「はい、みんなパーティーを組んだみたいなので次に行きます」
「ちょっと待たんかい!」
ディアベルが話しを進めようとした時、一人の男が飛び出してきた。
「ワイはキバオウっちゅうもんや」
キバオウはそう言うと会議参加者たちを指差す。
「こん中に死んでった二千人に詫び入れなあかん奴らがおるはずや!」
「キバオウさん、それは元βテスターの事かい?」
「せや!元βテスター等は良い狩場やクエストを独占した。ここで土下座して有り金とアイテム全て吐き出してもらわな、背中預かれへん!」
(なんて言い草だ。しかもここでボス戦メンバー内に亀裂を作ってどうする)
「ちょっといいか?」
シンがキバオウの物言いに嫌気がさしてきた時、褐色肌の大男が冊子のような物を取り出しながら立ち上がった。
「俺の名はエギル。キバオウさん、このガイドブックは見たか?」
「見たで。無料配布されとったけえな。それがどしたんや?」
「これは元βテスターが作った物だ」
「なっ!?」
「情報は元βテスターのお陰で誰でも手に入れられた。それでもあんたは彼等を責めるのか?」
「くっ!?」
「俺もいいか?」
立ったのはシンだった。
キリトとアスナは驚いたようにシンを見た。
「俺はシン、ニュービーだ。キバオウ、あんたは自分の死に責任を持っているのか?」
「なっなんやて!」
「責任が持ててないから、さっきみたいに元βテスターを吊るし上げる様なことを言うんだ。二千人の死は元βテスターのせいだってな。だが違うだろ。戦場に出てMobに殺されて死んだなら、それはそいつの責任だ。自分の死に責任が持てないなら町にこもってろ、足手纏いだし目障りだ」
シンの言葉に静まり返る会場。
そんな中ディアベルが口を開く。
「でも、それだけじゃ足りないな」
「何だと?」
「生きて帰る覚悟も必要だろう?」
そう笑いかけるディアベル。
シンもつられて頬を緩めた。
「あ、あのさ」
「ん?」
会議が終わりそれぞれが帰路につこうという時、キリトはシンに声をかけた。
「どうした?」
「いや、ありがとな。元βテスターを庇ってくれて」
「別に俺は庇ったわけじゃない。自分の死に責任が持てない奴は抜けろと言っただけだ」
「何ていうか、シンさんって武人の様な雰囲気がありますよね」
「武術を少し齧ってるからな。それとアスナ、敬称も敬語も不要だ」
「そうだよアスちゃん。私たちはパーティーであり仲間なんだからね!」
「あ、アスちゃん……」
アヤの付けた渾名に苦笑するアスナ。
それを見て自然と笑顔を浮かべた。