猫×女の子……これもまた良いものである。

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今回は猫の娘、通称「娘猫」のお話です。
よろしければどうぞ!


猫ダッタ同居人

 「…………」

 唐突だが俺の部屋に美少女がいる。もう一つ付け足すなら、その彼女は一緒のベットで寝ていたということ。

 「飲みすぎたかな……」

 とりあえず俺は彼女を起こさないようにゆっくりとベットから脱出する。

 「耳……だよな?」

 寝ている彼女の頭には尖がったような耳。そうだ、猫とか犬とかに生えているアレだ。

 「よく見ると尻尾まで……」

 いや、本物ではない筈だ。よく大人のコーナーにあるヤツだろう。それにしてもぴこぴこと動くとは最近の玩具はよく出来ている。

 「あ、ミイにご飯やらないと……」

 ミイとはうちに住み付いている野良猫だ。

 「ごはん……」

 俺のご飯という単語に反応したのか彼女は体を起こした。

 「お、起きたのか……」

 「ごはん、くれるの?」

 彼女はゆっくりとこちらに近づいてくる。しかも全裸で――。

 「だぁっ!? 服着て、服!」

 「服?」

 「服だ、とりあえず俺のシャツを着て!」

 「服、や!」

 全裸の彼女に服を着せようとするが、嫌がってしまう。

 「いや、着ないとダメだって!」

 「やー!」

 彼女は全裸のまま部屋中縦横無尽に駆け回る。

 「あ、こら! 逃げるなって」

 「うー!」

 「まるで猫みたいだな……」

 猫? 今、俺は猫って言ったのか?

 「ミイ……か?」

 「う?」

 その言葉は俺の口から突然発せられた。

 「その耳、尻尾と目つき……」

 人、人だけど猫の名前で呼んでしまう。

 ミイの名前を呼んだとき俺は静かに確信した。彼女はあの野良猫、ミイだと。

 「お前、なんでそんな姿に……?」

 「ん……わかんない。でもご主人と一緒になりたいって思ったらこうなった!」

 返ってきた台詞は奇想天外。恩を売った動物が人になるなんてまるで鶴の恩返しじゃないか。

 「あー、ミイ?」

 「ん、なに?」

 再確認、やはりミイだ。

 「あのな、ミイ。人の姿になったらな服を着ないとならないんだ……わかるな?」

 「なんで?」

 「あんなぁ……怖いおっさんにいろんなことされんのよ」

 俺はミイに身振り手振りで説明する。

 「いろんなことって、どんなこと?」

 「口で言わせないでくれ……」

 男でも純粋無垢な奴には言えないようなことはある。

 「とにかく、服を着ないとご飯は食べれない。わかった?」

 「う、わかった」

 本当か? しかしあの体つきだといろいろ目立つな……。

 「とりあえず今はこれ着て」

 「う!」

 「着れるか?」

 「ん……」

 ミイはゆっくりとシャツの袖に腕を通す。

 「着た」

 「よし、ボタンといこうか」

 「ボタン……?」

 この反応はボタンを知らないようだ。

 「ここを、こうして……こうだ。わかった?」

 「う!」

 ボタンのかけ方を教えるのにも小ぶりな果実のおかげで目を逸らさないといけなくなる。

 「よし、丁度ここにロングスカートがあるから、これを着てくれ。これなら尻尾を隠せるだろう」

 おう、なんでうちにロングスカートがあるかって? 以前の合コンのビンゴで当たっただけさ。

 「ふわふわする……」

 「おう、慣れてくれ」

 普段服を着ない猫なら違和感しかないだろう。だが人間になったなら全裸というところが違和感になる、本人は思っていないだろうけど。

 「ん、おなか」

 ミイは俺の服を子供のように引っ張る。

 「お腹空いたのか?」

 「すいた」

 「そうか、何食べる?」

 「……ごちそう!」

 ご馳走とはまた難しい答えだな。

 「この場合は猫缶……じゃあ駄目だよな……」

 彼女は中は猫と同じなのか人と同じなのかわからない。

 「ご主人、これくにゅくにゅしておいしい」

 そんなことを考えているとミイの口からちょこっとだけ出ているものが目に入った。

 「お、お前それ!」

 家に帰る前に買ったイカの刺身だ。

 「食べる?」

 「食べ――いや、そうじゃねえ! ミイ。お前、イカ大丈夫なのか?」

 イカといえば猫が食べちゃいけないモノの一つに入る。

 「おいしい。こりゅこりゅしてる」

 「そうか……」

 この様子だと中は人間らしい。

 「ご主人は食べないの?」

 「ん? ああ、俺はいいや」

 朝はあんまりお腹が空かない。ましては休日なのだ、飯よりも寝たい気持ちの方が勝る。

 「だめだよご主人。食べなきゃ冷たくなっちゃうよ?」

 冷たく? ああ、死んじゃうってことか……。

 「大丈夫だよ。これくらいじゃ死なないって」

 「ううん、ごはん食べなきゃ死んじゃう。食べれるときに食べないとだめ」

 ミイはイカの刺身を手でつかみ、俺の口にぐいぐいと押し付けてくる。

 「やめてくれミイ。生臭い」

 「食べて。死んじゃうのやだ、これ以上見たくない」

 ん? どういうことだ?

 「私の仲間、みんな死んじゃった。お腹もすいて悲しかった」

 「…………」

 「そんなときご主人がごはんくれた。嬉しかった、温かかった」

 ミイの目が少し悲しげに見えた。

 「だから、冷たくならないで」

 そうか、ミイは野良猫だったもんな。沢山の命を見てきたんだよな。

 「食べるよ」

 俺はミイが押し付けてきたイカを食べる。

 「おいしい?」

 「うん、美味しいよ」

 「よかった。食べてくれて」

 ミイはにっこりと笑ってくれた。

 「ご主人! 手、くさい!」

 「うん、まず手を洗おうか」

 俺はミイに手を洗わせる。

 さて、これから奇妙な同居人(?)と生活することになってしまったが……。

 「ご主人、ふわふわして良い匂い!」

 「それはハンドソープってやつだ」

 「はんどそーぷ?」

 退屈で憂鬱な日々とはおさらば出来そうだ。




今回の作品は、猫が好きだが恋愛まではいけない……ならば人にするか? から始まった作品です。ミイは個人的に上位のオリキャラです。


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