男は手紙を破り捨てた。そして怒りと酒の勢いに任せて筆を執る。
【この作品について】
こういうことって時々ありますよね。
よろしければ縦書きにてお読み下さい。
男は手紙を破り捨てた。何が「貴下の作品は物語として認められません」だ、芸術を解せぬ者共が!
男は歌を大層愛している。普通の物語よりも歌の方が好きである。物語も作るがより甚だしく歌を作る。
そうであるから男は現今の文壇を
静的な表現法が幅を
男は真面目であった。誠実であった。男は男なりに、今の風潮が我が国の文芸にとって果たして良きことかと問うた。今や浅からぬ歴史と実績とを持つ我が国の文芸が、このまま詰まらぬ表現形式の足枷によって沈んでいくのか。
男は創作意欲に溢れていた。また同時に文壇の現状に不満も抱いていた。男は筆を執る。より良い文芸の為に筆を執るのである。
自身もどっぷり今の文壇に浸かったこの男が、沈滞した空気を吹き飛ばす為に何か出来ることはあるのか。ある。男には武器がある。歌である。
三日三晩かかって書き上がった男の作品は幾十という歌のみによって構成されていた。それは恋の物語である。恋い焦がれ身を燃やす男女の炎が巧みなる歌によって表されていた。こんな楽しく切ない調子は歌でなくては出せない。男は
文壇の反応は冷ややかであった。人々は口々に言った。これは歌であって物語でない。物語とは
そうして、文壇の有力者が連名して男に書簡を送ってきたのであった。その中には普段、男が尊敬している者の名も、また出来ればお近づきになりたい者の名もあった。文面を一読して男は自分が文壇中の
手紙を破り捨てた時、男の中で何かがぷつりと切れた。男はまた筆を執った。その頭には全身の血が昇っていた。
良かろう、
男は下男に
あんたらは歌のみより成る私の物語を物語に非ずと言った。ならばあんたらの作品こそ物語に相応しいのか。ほう、それ程までにあんたらの物語が素晴らしいのであれば、これに我が歌を加えればそれは最高の作品となろう!おうどうだ、私の歌が嫌いとて物語の一部とあれば拒絶は出来まい、うへへ、我が歌を
こうして完成したのが