この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
傷ついたアシマリをモンスターボールに戻してもらってポケモンセンターの機能で回復させる。そのままじゃアシマリがかわいそうだからね。ちなみにどんな感じだったかというと、
スマホでポケットモンスターからポケモンセンター起動
↓
モンスターボールを翳すと、スマホに吸い込まれる
↓
ティンティンティリリーン
↓
スマホからモンスターボールが吐き出される
とまあこんな感じだった。
しかし、1匹ずつしか回復出来ないのはやや面倒な気もする。アップデートで改善、あるいはポケストップでの回復は上位互換なのか、気になるところだ。あとで試してみたい。
あ、それと、アシマリのトレーナーである当の神定さんはというと。
「……失態よ……あんなの撮られるとか本当に失態よ……黒歴史よ……」
陰ながらの護衛?だったらしい公安の武藤さんたちに先程の様子の動画を撮られていたらしく、しかもそれを資料映像ということで政府に提出されるらしく、しかもそれが何やらあの痴態?も含めて永遠に失敗例として残りそうなので落ち込んでいる。
「まあ元気出して。ね?」
武藤さんも指示した手前、申し訳なさそうにしている。尤も、撮った動画は絶対に消させようとはしていないが。
「一応、我々も以後ご一緒させていただきます」
久内さん曰く、あの技が万が一僕に当たっていれば無事では済まないので、近くに付いていた方がいいと判断したらしい。
「とりあえずさ、神定さん。今の反省をしよう? しないとまた同じ轍を踏んじゃうかもしれないよ?」
「……ふぁい……」
と、そこで少し驚いたことがある。
「え?」
「「「!?」」」
なんと1匹のポケモンが神定さんの肩に現れたのだ。それは僕にもよく馴染みのあるポケモン。いや、この世界で一番始めに出会ったポケモンだったのだ。
「……うんうん。……ありがと」
そのポケモンはそこから短い腕を伸ばして神定さんの頭を撫でる。まるで大人が子供に「よしよし」と撫でさするかのごとくだ。
僕たち4人はその光景をしばらく眺めることになった。
「ラル」
「カゲ」
「モグ」
「ギャウ」
そしてそんな声が聞こえて見てみれば、僕の手持ちの4匹が腰に手を当てて「エッヘン」といった感じに胸を反らしていた。
「というわけでね。神定さんが拙かったのはタイプ相性がすっぽりと抜け落ちてたことなんですよ」
やや回復した様子を見せているが、それでも気落ちした様子を見せている彼女に説明している御子神さんの話を我々も傍らで聞く。
我々にも初耳な話も多く、その点について聞いてみたら分かりやすく説明してくれた。ポケモン関連はどんな些細なことでも報告するようにとのお達しが出ているので、この内容についても公安ひいては政府にもいくことになるだろう。特に、タイプについては既に周知されているが、タイプ相性などはほぼ初耳に等しい。
「武藤課長」
「わかっている。しかし、現状はシロだ。今のところはという枕がつくが」
久内の言いたいこともわかる。
なぜ彼がこれほどまでの知識を有しているかだ。
彼の経歴を洗ってはいるが、現状でわかっていることでは『一部を除いて極めて普通である』ということだ。彼が出た大学は理系だが生物学系とは無縁の学科だったし、生物実験等も含めてそういったところとの関係は親族一切がなかった。
一部としたのは中学生のときに精神科に掛かっていたことがあるというところがあったためだ。彼の主治医だったという新出史宏に部下が聞き込みに行ったところ、守秘義務ということですげなく追い返されたらしい。中学生のときに精神科に掛かり、そしてほぼ同時期にポケモンの絵を描き始めた。これはどう見ても偶然ではない。此方もただでは引き下がれないので食い下がったところ、
「本来我々は患者とプライベートの付き合いをするということはない。家族ぐるみなど尚更だ。しかし、そんな私が彼とはそういった関係を築けている。これが彼を認める理由でもあるし、彼が不逞な輩ではないと信用しているし、信頼もしている。彼がそういう道に入り込みそうになったら、殴ってでも止めるさ。それが親友だし、あるいは親でもあるし兄でもある」
そうした返答をされてきたらしい。
新出史宏自体、元々は大病院の精神科に勤めていたが、独立して開業医をしている。繁盛しているようで、金銭に困っている様子もなく、大学病院での同僚や周囲の関係者からは『あらゆることを他人の数倍の努力をもって身につけて、さらにそれまでに得た経験を生かして次の新しいことに挑む』というある種の超人みたいな人間だが、『周囲への気配りや根回しを絶やさずに好かれていた』ともいう。
まだ調べは尽くしてはいないが、新出史宏は過激思想は持たずにシロ。そしてその彼が全幅の信頼を置いているのが、
と、ここで何やら奇妙な音が鳴り響いた。
「SLの汽笛、ですかね?」
そういや久内は鉄オタ系だったな。
「あ、僕のスマホの着信です」
なるほど。これは彼の着信音か。
ひとまず彼は話を中断して電話に出た。
「おはようございます、新出先生!」
おおう。噂をすれば影がさすとやらか。彼の声も幾分弾んで聞こえるな。
「ええ。はい。あ、今ですか? 今は平田川坂峰公園です。そこの第一調節池のところです。ええ。あーはい。あ、ちょっと待ってもらえます?」
そして通話口を押さえて今の話を伝えてくる。
なんでも、これから家族連れて御一緒したいがよろしいかということらしい。
正直我々としては護衛対象の幅が増えてしまうので遠慮願いたいところだが、
「ぐるルル」
あの赤いギャラドスが周囲に目を見張っているようなので、まあありとしよう。
ということでOKは出した。あとは彼がどうするかだが、答えはもう決まっているだろう。
「皆さん、途中参加してすみませんな」
「おはようございます、新出先生! 皆さん!」
待つこと、30分弱。新出先生とその家族の合流である。
「彰くん、昨日はありがとうね」
「彰にーちゃんありがとう」
出会って第一声が美波さん(奥さん)はいいとしても、汐莉ちゃんのお礼とか先生の家ってしっかりしてるなぁ。汐莉ちゃんまだ小学校あがる前なのに。
「いえいえ。汐莉ちゃんの一大事でしたから、こちらも必死になりますよ。お気になさらず。汐莉ちゃんも元気になって良かったねー」
「うん!」
とりあえず、そんな感じで軽く流してあとはお互いの紹介を済ます。
さて、新出先生たちが合流したのは新出先生と朱莉ちゃんの2匹目のポケモンをゲットしようとしてのことだったんだけども――
「え? 私2匹目ゲットしたよー」
「「「はい?」」」
ちょっと待った聞いてた話と違うんですけど。
「どういうことです?」
「いや、私も訳がわからんのだが」
「昨日今日、文字通りずっと一緒にいたけど、そんな様子は見掛けなかったわよ。ていうかあの子がどんなポケモンをゲットしたのか気になって仕方ないんだけど」
美波さんの言う通り、人がどんなポケモンを持っているかって確かに気になるものだよね。まあ美波さんの心配はもっと違ったところにありそうだけど……。
とりま小声で話し合っていても仕方がないので、
「朱莉、パパたちにそのポケモン見せてもらえるかな?」
新出先生の一言で先を促す。「うん、いいよー」と、取り出したモンスターボールからポワンと出てきたポケモン。
「ヨマー、ワール」
「ほうほう」
「ふーむ」
「んげ」
美波さんは若干お気に召さなかったみたいだが、ローブをまとった骸骨のような姿をしていて、そこそこかわいい系な気もしなくもないんだけど。
「あのポケモンは……?」
「初めて見るタイプの……あれもポケモンなのか?」
神定さんも武藤さんたちも朱莉ちゃんの出したポケモンの関心があるようで、手元のスマホやカメラで映像を撮っている。
「朱莉ちゃん、このポケモンの名前、知ってる?」
「ううん、知らないよ。彰にーさんは知ってるの?」
「うん、そうだよ。じゃあ今知っちゃおう、この子の名前はね、ヨマワル、って言うんだよ」
「へえ、ヨワマルっていうの?」
「ううん。
「ヨマワル?」
「そうそうそう。大切にしてあげてね」
「うん!」
なんてことを朱莉ちゃんと話してたら周囲はスマホで一生懸命調べていた。
「『ヨマワル、ゴーストタイプ。分厚い壁を通り抜ける能力を持っている。ごくたまに子供の泣き声を聞くために子供を驚かせ、泣かせることがある。一つ目に睨まれると大人でもすくんで動けなくなる』」
淡々と読み上げる神定さん。
「『一度でも狙われると朝日が昇るまで追いかけまわされることになる』?」
剣呑な雰囲気になり始める新出先生。
「『言いつけを守らない悪い子供は、ヨマワルに連れさらわれるという言い伝えがある』……ああ、私が付いていながらなんたることッ」
悲壮感を漂わせる美波さん。元の図鑑説明を繋ぎ合わせながらもほぼそのまま載せたとはいえ、追いかけまわされるとかとか連れさらわれるとか心配させるようなことを書いてごめんなさい。たぶんそういう記述は一種のなまはげ的な感じだから大丈夫です(進化形? ナンノハナシデショ)。
「しかし、これまで見てきたのはだいたいが自然の生き物とかがモチーフなのが多かったのに今回は違うのだな」
「ああ、それはですね、武藤さん。あのポケモンは一種の幽霊がモチーフですからね」
「幽霊?」
「はい。まあタイプがゴーストタイプなのでそういう系もポケモンにはいるんですよ」
ちなみにヨマワルは夜に出現する可能性が高いポケモンだ。いつ出会ったのか聞いてみれば、
「うんとね、寝てるときのお部屋! なんか壁からスーって来てワッてなって面白かったから仲良くなったの」
とのこと。
あー、たぶん、子供の泣き声を聞くために子供を驚かせるつもりで侵入したところで驚くんじゃなくて仲良くなってゲットに至ったと。
前から思ってたけど、朱莉ちゃんて神経図太いよね。普通幽霊っぽいものが暗い部屋に侵入してきたら怖くて泣き出してお父さんお母さんに引っ付きそうなものなのに(自分だったら絶対それやってる自信があるわ)。
まあ、美波さんにはご愁傷様って感じだけど、本人らが納得してるなら周りがどうこう言ってもしょうがないからね。
ということで、2匹目ゲットしなければならないのは新出先生のみとなった模様なので、新出先生2匹目ゲットに向けて移動しようと思う。
ちなみに本来ここに来た目的である神定さんについてはバトル&ゲットではなく、友情ゲット的な感じで既に仲間になっている。先程から彼女の左肩に乗っているラルトスだ。なんでも、僕のポケモンたちと遊んでいたところ仲良くなったようで、付いてくるためとゲット失敗した彼女がかわいそうになったので、彼女の手持ちに加わったらしい。
「ラールちゃん?」
「ルラ?」
「んふふ」
ちなみにオスらしい。本人はすごいキャッキャウフフしているので、暫くは放っておいても問題はなさそう。
ということで、汐莉の手を引く先生に聞いてみる。
「どういった系が目当てなんですか」
「そうだな」
どうでもいいけど顎に手をやって渋い声を上げてるだけなのに超ダンディです。
「お父さんカワイイ系がいいよ」
「ん? うーむそうだなぁ」
どうやらまだイメージが付いていないらしい。
とりあえず、ブラブラしながらそれっぽいのを探していくか。
と、思っていたところで、僕たちは足を止めざるを得なかった。
というのも寸胴なヤシの木に足を生やして実に顔が付いたような外観のポケモンと、さらに首がものすんんんごく長いポケモンが行く手を塞いでいるからだ。
「なんだ、あれは?」
武藤さんら3人の公安の人の雰囲気ががらりと変わり、新出先生や神定さんもそれまでの雰囲気を排してマジな感じを醸し出していて、2人の娘は美波さんに抱き着いていた。
「……うっわ、なんかガチでやる気出しちゃってない、あの主ポケモン
そう。
目の前にはオレンジのオーラを纏った主ポケモンが
僕のポケモンたちも彼らに威嚇し返していて、特にギャラドスとかは結構マジな感じでメンチを切っている(気がする)。
「皆さん、どうやら彼らは自分たちとバトルしろと言いたいらしいので、僕が戦います」
そう言って僕は一先ず、モグリュー、それからギャラドスをボールに戻した。
「しかしだね、御子神くん」
「武藤さん、ポケモンに対抗するにはポケモンです。そしてあの2匹に対抗するためには少なくともタイプ相性的には僕のヒトカゲの炎タイプ、それからラルトスのフェアリータイプが良い。たぶんレベルも今ここにいる面子の中では高い部類でしょう。ならば僕が行くべきです」
ついでにバトルからは逃がしてくれなさそうな雰囲気がプンプンしている。
「ナッシーたち、僕が君たちに主バトルを挑む。それでいいかい?」
「「ナッシ~~」」
高低のビブラートが微妙にかかった声で応答してくる2匹。
「それじゃあ、ヒトカゲ、ラルトス、キミたちに決めた!」
「カゲ!」
「ラル!」
ということで、昨日に引き続き、しかも両方が主ポケというわけわからん仕様で、僕の主バトル2戦目が始まった。
ちなみに裏設定として、元主ポケのギャラドスがいたので
「お、なんだなんだ」
的な感じで主ナッシーたちに興味を持たれた模様。
しかもギャラドスがガンつけたことで、ナッシーたちもケンカを売られたと感じ、バトルに発展。
なので、ギャラドス出していなければこのイベントはスルーされていました。