ダンジョンに手柄を求めるのは間違っていないはず   作:nasigorenn

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最近某SSの影響でガンプラにはまり込んでしまい書くことが遅くなってしまったことについて謝罪しかないです。それもこれも全部あのSSが面白いのが悪いんだ(笑)
 本当に済みませんでした。これからも時々更新するので許して下さい。


第46話 ベルは彼等を誘う

 18階層にいた者達がそれに気付いたのは産まれ落ちた時に挙げた産声であった。

 通常生命の産声というのは己がこの世に産まれ落ちたという証明に他ならない。産声を上げるのは呼吸をすることとほぼ同意義だからであり、上げなければ呼吸できずに死ぬだけなのだから。故に産声とは祝福するべきものなのだ。

 だがこの産声はそのようなものではない。この産声は己の証明ではあったが、それは同時にこの世全てを憎み破壊する悪意に満ちた咆吼であった。だからこそこの階層にいた者達は嫌でも気付かされたのだ。あぁ、これは駄目だ。これは自分達に明らかな殺意を向けていると。

 だからこそ彼等はその元凶を叩くべく咆吼の元へと向かっていく。見ればそれは直ぐにわかった。この階層の一つ前の階層にいる階層主。本来ならばこの階層には来れないはずのその存在がそこにいるのだから。

 それだけでも彼等は混乱したが、それ以上の情報が混乱を加速させていく。

18階層にいる彼等だ。その前にいる階層主のことなどそれこそ地上の事よりもよく知っている。だからこそ彼等は一目でその異常に気付く。

本来のサイズよりも二周りも大きく、幽鬼のような白い肌が漆黒のように真っ黒に染まっている。その身から発せられる気配は17階層の階層主『ゴライアス』とはもはや別物であり、咆吼をあげて暴れる姿はまさに破壊の化身である。

 それだけでも絶望するには十分なものなのにそれ以上にあの化け物は絶望を叩き付けてきた。

 それはまるで雪崩のようだとしか言い様がなかった。その波は今までの恨みを晴らする悪鬼の如く殺意をむき出しにして此方を攻め滅ぼさんとするモンスター達の群。彼等はこの階層に産まれ落ちた破壊の化身の咆吼を受けてそれに呼応するかのように現れた。その雪崩に飲み込まれたらどうなるかなど冒険者でなくても想像出来る。

 だからこそ、彼等はこの状況に抗うために戦った。街の前で防衛線をはり、補給のために補給線を作る。レベルが低い冒険者には防衛に専念させ、互いにカバーするように配置し食い止め倒せる時に倒す。魔石の回収は後回しにし今は少しでも多くのモンスターを倒し生き残ることに専念する。レベルの高い者………今この場に於いて高レベル冒険者と呼ばれるのはロキ・ファミリアとごく一部のものだけであり、彼等は事態を鑑みて原因である『漆黒のゴライアス』を討伐すべく動いた。

 方やオラリオでも最強角の一角であるロキ・ファミリアが動いたのだ。事態は直ぐに終わると誰もが思ったし願った。だが現実はそんな甘くはない。

 漆黒のゴライアスはゴライアスよりも更に凶悪であり、その巨躯から繰り出される攻撃は桁違いの破壊力を見せつける。そして巨躯になったが故に攻撃が届きづらくなり此方は攻めあぐねる。それにいくらロキ・ファミリアとはいえ彼等は遠征を終えた後であり詰まるところ疲労困憊状態。万全ではない故に彼等の力も弱まっていた。

 それ故にゴライアスは暴威を振るい彼等を追い詰めていき、その咆吼に魔法でも含まれているのか攻め入るモンスター達は取り憑かれたかのように凶暴性を上げて襲いかかってきた。その脅威に街を防衛する冒険者達は押されていき突き破られる。その度に悲鳴が上がり血が流れていく。

 正直悲惨の一言に尽きるであろう惨状。ロキ・ファミリア達は漆黒のゴライアスに掛かりきりで手一杯。此方の救助をする余裕はない。自分達ではいずれもしないウチにモンスター達に鏖殺されるのは目に見えてしまっている。

 まさに絶望。モンスター達の殺意は増すばかりであり、逆に此方の士気は駄々下がり。逃亡しようと考えるもそもそもここはダンジョン内。逃げ場など何処にもなく、出入り口は既にモンスター達に塞がれている。

 

「もう駄目だぁ~~~~~~~!」

「嫌だ嫌だ嫌だ、俺は死にたくねぇぇえええええええええええええ!」

「まだやりたいことだって一杯あるってのによぉ!」

 

 情けない叫び声が飛び交うが、それも仕方ないのだろう。彼等の目には既に諦めが宿り始めていた。この場でどんなに頑張っても状況は打開できない。自分達は惨めにモンスター達に食い殺されるだけなのだと。

 そういった恐怖は伝染するものであり瞬く間に全体に広がってしまう。士気が下がった者達がどうなるかなど目を見るよりも明らかだ。

 崩れ落ちればあっという間にやられてしまう。そんな状況に誰もが恐怖する。

だが…………

 

「ふふふ………あはははは………」

 

この男がそんなものとは無縁だというのは彼を知っているものならば誰もが知っている。

 

「あっははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

 

 誰もが絶望している中、突如として響くのは実に楽しそうな笑い声。まるで子供のような無邪気なそれは場違いにも程がある。まるで頭がイカレたんじゃないかと思うくらいの笑い声にその場にいた誰もが声のする方を向いた。

 そこにいたのは白だった。真っ白な髪をした少年。端から見たら華奢な身体をしていて女の子に見えなくもない男の子。それが実に楽しそうに笑顔で笑うというのは場所が場所なら賑やかになっただろう。だが此所では異常にしか見えない。当然奇異の目が集まる。だが彼は………ベル・クラネルはそんなこと気にもならない。

 

「何で皆さんそんな顔してるんですか?」

 

 この場でおかしな事を聞く彼。そんな顔というのが恐怖で歪んだ顔ということは直ぐにわかった。だからといってどうしようもない。既に絶望に覆われつつあるのだから。

 だがベルはそんなことないらしい。当たり前だ。何故なら彼は………。

 

「こんなに楽しい場面で笑わないなんて勿体ない」

 

恐怖など微塵もないのだから。その答えと共にギラギラと殺気に輝くベルの目。つり上がった口元が浮かべるのは凶相である。

 

「今にも手柄がやってくる。それだけでも愉快だというのにアレはなんだ? あんな大将首見たことない! ならアレはかなりの手柄首になるだろう。なら欲しい。僕はあの手柄が欲しい!!」

 

 狂気に染まったかのように笑うベルに周りは当然ドン引きするが、ベルは更に二カッと笑った。

 

「貴方達にあるのは二択だけだ。この場で怯えて無残に殺されるのか。それともさぱっと死ぬ覚悟を決めて手柄を取りに行くのかの二択だけ。惨めに震えて冒険者の誇りもなにも捨て去って死ぬか? もしくはやけくそでもいいから手柄を上げるのか?」

 

 そしてベルは皆を指さす。そこにあるのは薩摩兵子。即ち命よりも手柄を欲する戦馬鹿。

 

「どうせ死ぬならさぱっと死ね。黄泉路の先陣だ。それは恥じゃない、誉れだ。誉れを抱きながら死ぬか、怯えて無残に散るか……どっちだ?」

 

 ベルが告げたのは脅迫だ。このまま死ぬか、抵抗して死ぬかの二択。結果は変わらないかも知れないが本人の死に様はかわる。ベルは笑いながらこう告げるのだ。場合によっては死神にしか見えない。

 そしてベルは皆にこう言うのだ。

 

「やる気があるなら手柄取りだ。あそこにいるデカブツの首を取るのが誰かの競争だ。貴方達だって欲しいだろう、手柄が! なぁ、冒険者。冒険者なら冒険者らしくしろ。今がまさに………『冒険』の時だッ!!」

 

 この言葉と共に辺りの雰囲気が変わる。それまで絶望に囚われていた者達の目が変わったのだ。このまま退いても死ぬだけだ。なら少しでも多く相手を殺して生き抜いてやろうと。死ぬことが変わらないなら抗うまでだ。死ぬことにもう恐怖することはない。死ねば一緒だ。ならせめて満足して死んでやろう。相打ちにでもして相手にざまぁみろと中指を突き立てながら笑ってしんでやろうと。

 故に彼等の覚悟は決まった。やけっぱちかも知れない。だがそれでもいい。それに自分達の目のにいるのはその体現者だ。死ぬ気なんか微塵も感じさせない。死んだところで気にもしない。ただ手柄がほしいだけ。その為ならば恐怖など必要ないと、目の前にいる奴が教えてくれる。故に彼等はベルに向かってこう答えた。

 

『あぁ、そうだな。その通りだ。もう怖くなんてねぇ。アンタと一緒なら、きっと死ぬときも最高の誉れだろうさ。だから俺達はアンタに付いていくぜ………大将!!』

 

 これを知ったヘスティアは可哀想だと嘆くだろう。彼等は健全な冒険者だったのに……………今では瞳に殺意を燃やす薩摩兵子になってしまっていたのだから。

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