地球防衛軍~怪獣王の系譜~(リメイク)   作:東部雲

21 / 29
 ようやく、投稿できました。今まで遅れてしまい、重ね重ね申し訳ありませんでした。
 今回の内容はロシア領空に派遣された連合空軍部隊を率いて作戦を終了して、
 総司令部に帰還した黒木特佐の後日譚となっています。
 お読みになる際注意事項があります。話の中盤辺りかオリキャラ、または政治的要素
 が含まれますがこの小説は実在する団体、人物とは関係はありません。ご注意下さい。

 では、どうぞ。


外伝 勝つか、負けるか

「───以上がハバロフスク郊外での『特災』における被害の報告です」

 

「………そうか」

 

 ファイルを持つ黒い制服に赤い眼鏡をかけた、

 淡々とした口調で話す若い女性にそう古くない、

 新品同然に綺麗な事務机に肘をついて両手を組ながら年期の入った黒い生地に特徴的な

 マークを描いた刺繍の入った革ジャンを着た男性──黒木翔特務少佐が短く答えた。

 

 黒木は5時間前まで在日米軍、

 日本航空自衛隊、

 EDFによる共同作戦に三軍を纏める現場指揮官として、スーパーX3Rに乗り込んで

 出撃したハバロフスク郊外でのギャオス討伐任務を完了して帰還したばかりで、

 今は各方面の状況を任官したばかりの副官から報告を受けているところだった。

 

 ハバロフスク郊外周辺の被害は相当なものだ。

 

 ギャオスの群れの接近を察知して迎撃したロシア極東軍管区は即応した国産メーサー戦車部隊、

 携帯型対空ミサイルを装備した歩兵部隊に合わせて死者200名、負傷者100名以上。

 EDFロシア支部については戦闘ヘリを主力に強襲戦闘部隊が交戦したが、

 ギャオスに超音波メスで強襲ヘリ、戦闘ヘリに3割以上の損害が出ていた。

 

 民間人の被害はそれを上回っていた。

 ハバロフスク郊外の市街地はギャオスが襲撃する前に市民の大部分が地下に逃れたが、

 逃げ遅れた市民は捕食されるか倒壊した建物に巻き込まれて死亡者は500人以上、負傷者300人以上に上る。

 

 その直後に到着した黒木を含むEDF、

 在日米軍、

 日本航空自衛隊の連合部隊が交戦する最中乱入したガメラの戦闘で

 出た被害は火球で全焼した建物が多数だが、その時点で付近の住民は避難を

 終えていたため、後は街周辺の森林が大規模な火災に遭ったことくらいだ。

 

 更に副官はファイルから違う書類を抜き出すと机に差し出した。

 

 

「また、ロシア政府は今回発生した事態を鑑み、

日本を含む近隣諸国と首脳会談をするため各国に打診しているようです。

既に日本は要求に応じて動きがあります」

 

 黒木は書類を一瞥して内容を確認すると、視線を副官に移して真剣な表情を浮かべた。

 

 

「その辺りは富樫司令が対応してくれるだろう。

………それで、現在開発中の“アレ”の進捗は?」

 

「約一週間前に製作を開始してからベースはほぼ完成、武装や動力、装甲材については時間がかかります。

こちらはその予定される完成時の緒元になります」

 

 続いて差し出した書類に目を通すと、そこには予てより計画されていた新兵器の情報が書かれていた。

 

 

 『EDF総司令部特殊戦略作戦室所属

 次世代兵器開発計画』

 

 形式番号DAM-MB-SX4

 

 近年増加する飛行型怪獣ギャオスの脅威に対抗するため計画されていたスーパーX3R(リファイン)の後継機。

 

 元となったスーパーX3は一撃離脱戦法を主眼に置いて装甲を強化した設計であるのに対し、本機は一対多を主眼に置いて機体を大型化。

 

 胴体は先代のそれをベースにしているが、

 両翼に近年米軍が配備を開始したV-22オスプレイのティルトローターを参考に

 設計された偏向制御ジェットエンジンを両翼に一基ずつ装備しており、

 更に機体下部に九式機龍二型を4機まで搭載可能な格納コンテナを設けている。

 

 また、

 武装はスーパーX3を改修したリファインの運用データを参考に上部メーサーバルカン砲2門、

 機首に先代と同様小型プラズマメーサーキャノンを1門、

 機体側面に収納式の対獣貫徹誘導(フルメタルミサイル)ランチャーを搭載する予定。

 

 更に2013年に就役する見通しの戦艦空母タケミカヅチ

と同じ高周波力場発振装置を搭載する予定で、防御性能の向上を図っている。

 

 全長51.2m  全幅43.7m  全高24.5m

 

 重量460㌧  最高速度マッハ0.8

 

 動力レーザー核融合炉

 

 材質超耐熱合金NT-1S

 

 装甲人工ダイヤモンドミラーコーティング

 

 

 

「完成は3年後、2016年を予定しており、

開発には“シールカンパニー”が製造ラインを提供するようです」

 

「イギリスの大手企業グループだったな。

イギリスの本社に加え日本に支部を置いた、今ではEDFの有力なスポンサーで聞くが。

その理由が愛娘がEDFに志願したからで、今年にアカデミーへ入学した第6期生だったか」

 

「ええ。

そのため図らずも得られた協力者との関係維持に、富樫司令も苦労しているようです」

 

 その愚痴を報告の際に聞かされているんです、と嘆息しながら漏らした副官に黒木は話した。

 

 

「そういえば貴官もアカデミーの出身だったな。

最近そこに教官として所属している家城少佐から聞いたんだが、今年の新入生のなかに将来有望な候補生が何人かいるらしいな。

後輩に負けてられないぞ?」

 

「了解。アカデミーの第4期生、その首席卒業者として。

特殊戦略作戦室の村山茅子(むらやまかやこ)少尉として全力を尽くします」

 

 そうした二人のやり取りの直後、黒木達のいる執務室のドアがノックされた。

 ノックする音に反応して村山がドアの前で問いかけると慌ててドアを開けた。

 

 室内に入ってきたのは4、50代の男性。グレーを基調とした丈の長い外套に似た士官服に

 身を包んだ男性で、中年にしては若く見える風貌で数枚の書類を挟んだバインダーを持っていた。

 

 

「いきなり訪ねてきたのは急を要する案件なのかな? 

此方はロシア領空の共同作戦から帰還したばかりで掴んでいない情報もあるかもしれないがね、新城(・・)少佐?」

 

 名前を呼ばれた男性──新城 功二(しんじょう こうじ)少佐は敬礼で応え、持っていたバインダーから一枚の書類を外して机に差し出した。

 

 

「お察しの通り、特佐がロシアに派遣されている間にこちらで動きがありました。

その書類にはその案件が書かれています」

 

 新城が差し出した書類を手に取り、目を通した黒木は訝しげに目を細めた。

 

 

「日本の天皇皇后両陛下がアカデミーを訪問?

それに目的が超能力を持った少年少女を視察されるとあるが」

 

「その通りです。ただ、それに伴って新たな動きがありました。

続いてこちらをご覧ください」

 

 更に机に差し出した書類を見ると、

『天皇皇后両陛下のアカデミー訪問に伴う国際社会の動向等の報告書』

というタイトルで、内容は黒木をして意外と思わせるものだった。

 

 

「…………国際連盟主要国のうち3か国、アメリカ・イギリス・ロシアがEDF総司令部に打診してきたと?」

 

「は。天皇皇后両陛下はアカデミー訪問を1か月後に予定されているらしく、日本政府経由でそれを伝えてきました。

その上で、お願いがあります」

 

 急に改まったEDF高官の言葉にぴく、と少し眉を上げた。

 

 

「なんだ?」

 

 取り敢えず訊いてみるものの、新城が改まった上での

『お願い』

の内容は彼自身の性格から既に予想していた。

 

 

「自分を、天皇皇后両陛下の視察される当日に警護することを許可していただきたいのです」

 

 真剣な表情をした上で黒木にそう言うが、眼は何かを期待するようにキラキラさせていた。

 

 黒木はそんな彼の様子を見てから少し間をおいてから口を開いた。

 

 

「駄目だ」

 

「ありがとうございます特佐。

では早速打ち合わせを、え?ダメと言いましたか」

 

 黒木がきっぱりと断ると許可されると思っていたのか一度早とちりしかけるが、

次いで素っ頓狂な声を上げる。

 

 

「もう一度言うが、駄目だ。

貴官もEDFの高官で、ここ総司令部の守備軍指揮官だろう。

総司令部が侵攻を受けることがないから訓練と演習の日々が続いているのは知っているが、

それだけ大した事件が起きていないということであり、ギャオスが大人しいということだ。

それを差し引いても、護衛という名目で総司令部の守備軍を抜けることは許可できない」

 

 言い逃れできないよう、正論を並べ立てておく。

 こうでもしないとこの男は何かにつけて前線に出ようとするからだ。

 

 黒木は陸上自衛隊に所属した頃から新城の事は知っており、

 当時のGフォースに転属となった経緯も把握していた。

 

 この男は昔から上からの指示に従うのが苦手で上司とトラブルが絶えず、

 下級幹部自衛官として任官されてから間もなくしてGフォースに転属した。

 だがその後も上官とのトラブルも絶えず辺境の島に左遷されたこともあったが、

 スペースゴジラとの戦いで挙げた実績が評価されてからはGフォースがEDFに

 組織を再編した後少佐に昇進していた。

 

 また元超能力者でサイキックセンター主任の旧姓三枝 未稀(さえぐさ みき)と籍を入れ、子宝を

 授かってからはそれもかなり改善されたと言える。だがこうして書類で説明しては前線に

 向かう許可を求めるようになったため、じっとしてられない性格は直っていないようだ。

 

 

「し、しかしそれでも自分は「こんなとこでなにやってんのよぉ!」ブゴォ!?」

 

 食い下がろうとした新城の次の言葉が発せられることはなかった。なぜなら、

 10代半ばの少女に反応しがたい速度で蹴り飛ばされて執務室の壁に激突したからだ。

 

 

「し、新城少佐!?」

 

 慌てて村山が駆け寄ろうとするがそれを黒木が制止する。

 

 

「あの男なら問題ない。見てみろ」

 

 黒木がそう言うと何事もなかったように起き上がり、直後に叫んだ。

 

 

「いきなり何をするんだ彩花(さやか)っ? お父さん怒るぞ!」

 

 新城は目の前の少女、自分の愛娘である新城彩花の名前を呼ぶと彼女も言い返した。

 

 

「怒りたければ怒れば!? て言うか、今朝私に

『今度から注意するときは蹴飛ばしても構わないぞ?』

とか言ったからその通りにしたけど、また暇だからって工藤さんの実験に付き合ってんの!?」

 

「よくわかったな。これを見てくれ」

 

 何故か誇らしげに言いながら外套の前を開くと、出てきたのは軟質なゴムで作られた防具だった。

 

 

「このゴムはかなり強い衝撃も吸収するか反らす程の強度が確保できる様に設計した

 らしくてな、将来的に歩兵用の防具として配備する為にテストとして着ているんだ」

 

「話の途中で悪いが、新城准尉(・・)

貴官がここに来たのは実の父親を蹴り飛ばすだけでは、もちろんないのだろう?」

 

 親子の会話を中断した黒木の問いかけに彩花は一歩前に出て敬礼すると、

 功二が持ってきたのとは違う書類を取り出して読み始めた。

 

 

「はい。司令からの連絡を預かっています、こちらの書類を読みます」

 

「天皇皇后両陛下の視察に司令が同行する方針でスケジュールが組まれました。

その間の総司令部での指揮権は一時的に黒木特佐に譲渡されます」

 

 自分の愛娘が告げた内容に功二は絶望した表情を目の前で浮かべるが、無視してそれに頷いた。

 

 

「なるほど。思った以上に状況は大きく動いたようだな」

 

「報告を続けます。

北海道に不自然な震源が確認されたと国連特災センターの長峰博士が報告、調査チームの派遣を要請してきています」

 

「不自然な震源が?」

 

「はい。富良野盆地周辺で観測されていて、更に近辺では失踪事件が多発しています」

 

 そう言って件の地域周辺の地図が載ったプリントを出すと、

 付近の集落と思われる地点に×印が集中していた。

 

 

「北部方面隊に調査隊を編成させて向かわせる。

それと万が一に備えて、空軍に救助ヘリと戦闘機をいつでも離陸できるように待機させよう。」

 

 そこで黒木の判断に村山が疑問の声を上げる。

 

 

「救助ヘリは納得できますが戦闘機ですか?」

 

「このご時世だ、何が出てきても可笑しくはない。

それに失踪事件が多発してるというのはどうも嫌な予感がする、備えるに越したことはない」

 

「特佐、震源の調査に私も同行させてください」

 

「……なに?」

 

 突然の彩花が出した提案に思わず聞き返す。

 

 

「嫌な予感がするなら、誰よりも先に危険を察知できる超能力者が同行した方がいいと思います。

それに自分は世界でも数少ない風操能力(エアロキネシス)保持者で、少なくとも足手まといにはなりません」

 

 彼女の意見に黒木はただ唸った。

 

 新城 彩花准尉。

 元Gフォース中尉・現EDF総司令部守備軍指揮官の少佐新城 功二と、

 国連特災センター所属サイキックセンター主任新城 未稀との間に生まれた

 長女。そして、世界でも有数の実戦レベルの超能力者でもあった。

 

 だがそれでも、彼女はいまだ少女なのだ。

 

 黒木が知る限り彩花は今年で16歳になるが、本来兵役につくには若すぎるのだ。

 本当なら高校に入学している時期で、友達と授業に励み、授業後に帰宅して宿題をしたり、

 外出を楽しんでいる年頃の少女の筈だ。普通と違う部分があるとすれば、

 彼女が生まれながらにして超能力者だった事だけだ。

 

 だが時代の激流はそれを許さず、多くの少年少女に孤立するか年不相応に大人になることを強いた。

 

 そんな状況の中黒木は超能力者達の生まれながらに持つ力に着目して、

 保護された彼らを自軍の戦力に組み込む計画を発案して推進した。

 だがそれは、国際的に孤立した立場の彼らを少年兵にする事だと過ちに

 気付いたときにはそれを後悔するしかなく、自分の無力さを呪うばかりだった。

 

 

「………特佐、憂いておいでですか?」

 

 そんな黒木の心境を察した、否。読んだのか、彩花は気遣うようにして訊いてきた。

 

 

「流石に……隠し事はできないか。

そうだな。気にしてることがないと言えば、嘘になる。

俺は、まだ若い君達に大人でも辛いと感じる強いてきた。

憂いがあるとするなら、それだろうな」

 

「それは違います、特佐」

 

 黒木の言葉を否定して、更に言葉を重ねた。

 

 

「私は、私達超能力者は。人々にとって得体の知れない力のせいで親に拒絶され、最終的に身を寄せる場所は国連の特災対策センター、そして特佐が計画を推進して入隊出来るようにした、EDFだけだった。

 

ですが、それを恨んだことはありません。

 

私はお母さんと、お父さんから色々教えられて、その上で二人を守りたいと思ったんです。

私だけではないです。今はアカデミーに在籍する静利も、和希も、麻里だってそう思ってます。

 

だから」

 

 自分の想いを打ち明け、更に親しい三人の友人の名を上げてから続けた。

 

 

「特佐。貴方は、貴方にしか出来ない事で戦い続けてください。

今の私達には、導いてくれる存在が必要です。私達が世界に貢献するのに必要な指導者が。

 

………それと、偉そうに説教を垂れて申し訳ありませんでした。処分は甘んじてお受けします」

 

「………いや、構わない。寧ろ感謝したい、お陰で迷いは無くなった」

 

 そうだ、簡単なことだ。日本の防衛大学を首席で卒業して、陸上自衛隊の

 特殊戦略作戦室の指揮官として着任した頃から変わらず胸に抱いたことがあった。

 

 

「俺の仕事は、勝つか負けるかだ。

村山、確か司令お抱えの特殊部隊があったな?」

 

「宮川大尉の部隊ですか?」

 

「そうだ。准尉、特殊部隊M G(モンスターガード)の出動許可が下り次第、君に同行させる。

もしもの時はその部隊が助けとなるだろう、無事に帰ってこい」

 

 黒木のその対応に予想外だったのか彩花は驚くが、すぐに気を取り直して敬礼した。

 

 

「は! 任務を遂行し、必ずここに戻ってきます。ここは、私の帰る場所ですから」

 

 




 外伝の話でした。

 今は既に12月の下旬、年内にもう一話投稿できるように頑張りたいと思います。
 後今回は次回予告はしません。

 では、また。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。