地球防衛軍~怪獣王の系譜~(リメイク)   作:東部雲

22 / 29
 前回の外伝を投稿してから年内になんとか間に合いました。
 今回はいよいよあの鋼鉄の竜兵を主人公が動かします。
 ただ長いので、午前の部と午後の部に分けることにしました。
 では、どうぞ!


第13話 操縦訓練・午前の部

 

 

 俺達は見るものによっては戦慄する内容の、当時の記録映像を観ながら家城教官からの講義───第1回特災史を受講した。

 

 講義が終了した直後に初日から騒ぎを起こした罰として反省文10枚と、ついでに

 レポート用紙を渡された俺たち三人は訪れた資料館でレポートを書いていたのだが。

 

 

「うー、どう書いていけばいいか分からないよ~」

 

「奇遇だなアヤちゃん、俺もだ」

 

「あたしはこういうの苦手だな~」

 

「……はあ」

 

 今俺はアカデミーの広い敷地内にある大きな資料館の一階に設けられた読書スペース、

 その一角に設置されているテーブルの右端に座って疲れたように溜め息を吐いた。

 

 俺の隣に当たり前のように座っているアヤとその正面に淳也、その左隣に座る桐子は一様に

 頭上に『?』でも浮かべてそうな表情を浮かべながら目の前のレポート用紙を睨んでいる。

 

 

「三人はいつも明るいですが、意外に論文を苦手とするんですのね」

 

「ゆっくり時間をかけてる余裕はないと思うぞ。速くしないと夕飯に間に合わん。

デイヴィッドなど見てみろ。熱心にレポートを書き込んでるぞ」

 

 ある程度想定していたのか、苦笑するクレアと若干焦った様子のマックスは

 読書眼鏡をかけながら話した。まあ確かに、マックスの言う通りゆっくりはできない。

 

 アヤが文法を苦手としてるのは幼なじみである俺がよく知ってるんだが、

 そこに加えて淳也と桐子もこの有り様だ。

 

 ただ、俺にとって意外だったのは寧ろデイヴィッドだと思う。デイヴィッドも

 あれで明るい性格だが、集中した様子で館内の本棚から取った資料を読んでは

 レポート用紙に書き込んでいく作業を繰り返している。

 

 ここアカデミーでは、海外出身者に比べると日本人の教官は多いのだが、来日候補生は

 母国語で記入していいと事前に連絡があったらしく、デイヴィッドを含めて

 それぞれの国の言葉をレポート用紙に記入していた。

 

 

「取り敢えず俺が三人の面倒を見るから、二人は気にせず続けてくれ」

 

 二人にそう言ってから、俺はレポートの作成に行き詰まった三人に指導を始めた。

 

 

 

          ◇◇◇

 

 

「ふぅ~」

 

 デスクに座っている俺は全身の力を抜くように息をつく。それと同時に緊張した体を解すように肩を揉んだ。

 

 手首の時計を見ると今は20:14(フタマルヒトヨン)。つい先程講義の後に家城教官から

 レポート用紙と一緒に渡された反省文10枚を寮の部屋で書き終わり、

 今こうして一息吐いたところで後は明日中にレポートと、

 同時にデスクに置いてある記入済みの反省文10枚を提出するだけだ。

 

 

「──くうぅう~、お疲れさま勝くん。反省文も書き終わったし、そろそろ寝よ?」

 

 どうやらアヤも書き終わったようで大きく伸びをしながら労ってきた。

 

 

「あぁ、そうだな」

 

 それから俺達はそれぞれのベッドに横になると途端に襲いかかる睡魔に意識を手放した。

 

 

 

          ◇◇◇

 

 

「ここは?」

 

 どこだろう。俺は確か明日に備えて寝たはずだが気付いたら何故か、

 周りには鬱蒼と生い茂る椰子が密集する熱帯雨林だった。

 

 いや、椰子だけじゃない。何処からか連続する破裂するような音、銃声が響いてくる。同時に、幾つもの叫び声が耳に届く。

 

 それに、今の俺は高いところから地面を見下ろすような視界を知覚している。

 まるで空中に浮いているみたいで、しかも視界は移動し続けていた。

 

 椰子の生い茂る森を掻き分け、次に俺の視界に飛び込んできた光景は驚くべきものだった。

 

 眼下の木々の間で動く幾つもの人影、それらは見下ろす状態なため分かりにくいが

 シャツのような薄い長袖を着て小銃や個人用火砲を持っており、怯んだように後ろに下がっていた。

 

 

「オォオオーーン!!」

 

 更に耳に届いた雄叫び、それが森のなかに響く間にも視界は動いて、眼下の人影は

 手に持った小銃や個人用火砲でこちらに向けて撃ってきた。

 

 俺は咄嗟に身構えたが間に合わず、だけど痛みはなく銃弾が何か硬質な物に弾かれる

 ような音が聞こえて、周りの木々を昔の凸凹した薄い黒色の肌と鋭い爪を持つ腕が視界に

 入るとバキバキと音をたてて木々を押し倒し、眼下の人影は悲鳴を上げて下敷きにされていった。

 

 目の前で起こる状況をそこまで見てから俺は気付いた。

 

 俺は今、人間とは、全く異なる生物の視点で眺めていることに。

 

 

 胴体の胸から下半身にかけて横に皺が入った白い腹部、

 

 重量感を漂わせる両足が地響きをたて森を掻き分け目の前で走る人影の集団を

 それは追い立てるように進んで、やがて森の景色は途絶えて海岸に辿り着く。

 

 

「あれは!」

 

 驚くべき光景が俺の視線の先、海岸から離れた沖合いに多数の軍艦がいて、

 生物のいる陸地──この島を包囲していた。

 

 

 ドォ、ドォン!!

 

 

 島を包囲する軍艦は突如として砲撃して、次の瞬間周りで爆発が生じて生物の胴体を穿ち、その体から赤い血液を流した。

 

 

 

 

          ◇◇◇

 

 

「………くん! 勝くん!」

 

「はっ!?」

 

 俺を呼ぶアヤの叫びに目を開ける。眠りから覚めたばかりの視界はぼやけるが次第にはっきりして、

 ベッドに横になっている俺の顔を幼馴染みが不安げな表情を浮かべて覗きこんでいた。

 

 心配する彼女を安心させるため俺は上体を起こすと「大丈夫だ」と言ってみせる。

 

 

「本当に大丈夫?寝ているとき、すごく………うなされてたよ」

 

 それでも不安が拭えないようで、目が覚めるまでの様子を躊躇うように話した。

 

 よく見れば俺の体はまだ4月初頭のはずなのに嫌な汗でぐっしょりだった。

 

 

「本当だって。それより、汗がすごいしシャワー浴びてくるよ」

 

 

 

 あれからシャワーを浴びた後俺は

「気になることがあるから少し調べ物してから寝るよ。」

とアヤに告げてから部屋に備え付けてあるパソコンでさっき夢に出てきた

 軍艦がどうしても気になり調べていた。

 

 

「………これは?」

 

 調べて出てきた情報は驚くべきものだった。

 

 ネバダ級戦艦。

 ソロモン諸島の日本軍守備隊を攻略する海兵隊の上陸を支援し、戦後標的艦として撃沈されている。

 俺は出てきた情報の要点を纏めている間にさっきみた夢の内容について思い返していた。

 

 俺が、人ではない巨大な生物の視点で地面を見下ろし、椰子の間を逃げる人影の群れ

 から銃撃を浴びながらそれを物ともせず木々を押し倒して下敷きにしながら、そのまま

 追いたてるように海岸線まで辿り着いた。その沖合いに多数の軍艦が見えた直後に

 砲撃を受けて体から血を流した、俺が見た夢はそこで終わっている。

 

 だがそれ以上に、気になることもある。

 

 俺は、この夢の内容について知っている(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 何故かは分からないが、懐かしいような、奇妙な感覚だった。

 

 

 

          ◇◇◇

 

 

 俺達がアカデミーに入学してから一週間が経った。

 

 毎朝基礎体力を鍛えるためのトレーニング、正午まで各兵科コースに合わせた知識習得のための座学。

 第一回特災学を受講した翌日には支給品の入った雑嚢を身につけ、リュックを背負って自動小銃を携行しながら走り、用意された的に向けて射撃する

 訓練が行われ、どうやら訓練のスケジュールを繰り上げたことによるらしい。

 そこではロシア出身のクララは経験があるのか、高い精度で命中させていた。

 

 そして今日は、待ちに待ったアカデミーに配備されている戦闘ロボット、九式機龍二型に搭乗して初めての操縦訓練がある日だ。

 

 

「集まったわね」

 

 この場に集まった俺達を見渡しながら家城教官が呟く。

 

 今居るのは入学初日に整備科と顔合わせのため訪れた第2格納庫、その入口に俺達は集まっていた。

 

 俺達の右側では膝を折った状態で駐機姿勢をとった巨大なグレーのロボット、

 九式機龍二型がこちらを見下ろすように鎮座しており、恐らく教官達で移動させたのだろう。

 

 着ている服装も今まで使用した緑色のツナギとは違っていた。

 今までの座学で得た知識によると一応パイロットスーツだが、上半身の黒い耐Gベストに

 白い耐Gスーツを組み合わせた仕様だ。これは、特生自衛隊第1機龍隊の戦闘服を意識したものらしい。

 

 

「では現時刻10:05(ヒトマルマルゴー)より、貴方達第6期生にとって初の九式機龍操縦訓練を開始する。

今回は動かせるようになれば充分だけど、可能なら離陸までやってもらうわ。

では、別れなさい!」

 

 家城教官の号令を合図に駆け足で俺の乗機、アカデミー17号機に向かう。

 アカデミーに配備されている九式機龍二型は二個教育大隊に8機、予備機体が

 4機ずつで、俺が乗るのは第2機龍小隊の17号機ということになる。

 機体の足元に設置してある金属製の梯子を昇り、既に開いているコクピットハッチに

 足から飛び込むようにして入ると、操縦席から右側にある操作盤の電源ボタンを押した。

 

 直後にコクピットのあらゆる計器が光を発して狭い内部を照らす。

 同時にハッチが閉じてコクピットは計器と正面の大型ディスプレイが放つ光で満たされ、俺は備えたヘルメットを着用してバイザーを下ろした。。

 

 

「17号機、エンジン始動。M C L(マシン コントロール リンク)システムによるパイロットの脳波、受信開始。H M D(ヘッド マウント ディスプレイ)投影開始。

九式機龍二型、起動!」

 

 操作盤を操作しながら確認するように呟き、エンジンの駆動音が響く中で左右の操縦桿を握って力強く叫んだ。

 

 機体が動く。膝を折った状態から立ち上がっているようで、大型ディスプレイに

 映し出されたメインカメラの映像が動いて地面を見下ろす視点が更に上がる。

 

 座学の段階で得た知識の中には感覚的なものも存在した。元々MCLシステムは

 かつて国連が研究した脳波を増幅、端末を介して送信した対象となる生物を

 コントロールする装置をベースに改良した最新の操縦システム。それはヘルメットで

 受信したパイロットの脳波を、機体の駆動系統に送信して動かす。

 簡単に言えばパイロットの思考を読み取り機体を動かしている。

 

 知識として得たのはそれだけではなかった。これはイメージが強ければ強い程駆動系統に

 送信する情報量は多くなり、機体の追従性が増すと言う、戦闘機とは全く違う常識を覆すものだ。

 

 そこでバイザーに表示が浮かび上がった。バイザー正面は俺の乗機を指した

 『MBS-9-17』、更に左右で『→』『←』の下に似た表示が写っている。

 

 

『全機、起動を確認。まずは、始めに前進からよ』

 

 ヘルメットに内蔵された無線から指示が届いて足元のペダルを踏むと、

 機体が動きだし一歩踏み出した。そこからはゆっくりと歩を進めていく。

 

 

『神山候補生、ルミナス候補生も上出来よ。そのまま向こうの白線まで進んで』

 

 家城教官の言葉を訊いてバイザーの表示を注視すると『MBS-9-18』

 の表示が乗機左側で肩を揃えるように歩行しており、どうやら同じタイミングで動いたようだ。

 

 そのまま俺とルミナスの機体は歩を進めて、白線まで辿り着いたところで停止した。

 

 

 

『全機、所定ポイントへの到達を確認。

歩行が出来たところで、次は機体を走らせてもらうわ』

 

 次の指示を聞いてからもう一度、ペダルをさっきより深く踏み込む。

 だが、機体は先程より僅かなタイムラグを置いて脚部のスラスターを点火。同時に体をシートに

 押し付ける感覚が生じ、それを推進力に地面を蹴って短距離を一歩ずつ跳躍しながら機体が移動する。

 

 

『神山候補生、機体の反応が鈍いわよ。

マニュアル通りイメージすれば、機体はそれに応える筈だからしっかりしなさい』

 

 一度跳躍をやめて停止してから無線で注意される。

 そう言えば、これといって何も頭でイメージしてなかったな。それなら。

 

 家城教官から注意を受けた俺は、そこである(・・)生物をイメージしながら同じ操作をする。

 するとさっきのような鈍い反応は無く、タイムラグ無しの跳躍を行えた。

 

 

『良い跳びっぷりね神山候補生、その調子よ』

 

 注意を受けたさっきと違い、満足した様子が無線越しに伝わってくる。

 

 それを聞いて俺はひとつ試したいことを思い付いた。

 

 右手に握る操縦桿を手前に引いてペダルを踏む。

 それに機体は応え、左足のスラスターを点火して右にサイドステップする。

 アスファルトの地面を跳躍する機体の足がガリガリと削り、コクピットに振動が伝わってきた。

 

 

 

『機体の跳躍まで終わったわね? 今日は午前だけでなく、午後も時間を確保したから休憩とするわ。

各機、機体を駐機姿勢にしてから降りなさい』

 

 その言葉を合図に、午前の訓練は終わりを告げた。

 

 




~あとがきのコーナー~

主「年内に、なんとか、出せました」

勝一「まったくだな、なかなかこのコーナーで俺の出番が来ないから辟易したぞ」

アヤ「ほんとだよー、でも間に合ってよかったね」

主「さて取り敢えず今回の話について触れていきますが、まずは勝一さんについてですね」

勝一「俺か?」

主「ええ。その事について、彩音さんどうぞ」

アヤ「そうだね、うーん。勝くんは昔から勉強が得意だったし、今回レポートの書き方で指導を受けたみたいに教えてもらうことは多かったかも」

勝一「あのままだと時間もないし、仕方ないさ。自衛隊で言う連帯責任だよ」

主「そうですね。では、眠りについた後見た夢について、勝一さんの意見は?」

勝一「……分からない、俺にとって見たことのない内容の夢だった。ただ、何故だろう。懐かしいって思ったんだ」

アヤ「本当に、見覚えないの?」

勝一「あぁ」

主「これに関しては、物語の進行次第ですかね。では、午前の操縦訓練を終えた感想は?」

勝一「基本的な操縦手順は座学で知識を得ていたからな。マニュアル通りにやってみたが、やはりイメージ次第で機体の追従性に影響するみたいだ」

アヤ「それでも勝くんは動作が滞りなかったし、サイドステップまでこなせたからすごいよ。私はまだ少しなれないかなぁ」

主「九式機龍はDNAコンピュータと違ってパイロットのイメージに依存してますし、操縦性に癖が強い機体ではありますよね」

勝一「大体こんなところか?」

アヤ「そうだね、そろそろ締めようか」

主「いつも投稿が遅れてお待たせすることが多いですが、それでも読んでくださってありがとうございます!」

勝一「これから事態が変わっていく世界で戦い続ける俺達EDFの活躍は、ここから幅を広げていくから楽しみにしてくれ!」

アヤ「私達第6期生の日常もね!」

主「では、次回予告です!」


~次回予告~

午前の操縦訓練を終えた勝一達は昼食を済ませ、跳躍の先にある飛翔が待つ午後の操縦訓練に臨む。

第14話 操縦訓練・午後の部


主「では次回も、」

「「「また見に来て(くれ(ね)ください!」」」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。