こんな投稿がマイペースな小説をいつも読んでくださり有り難うございます。
今回は以前にも登場したオリキャラが九式を操縦したりします。では、どうぞ。
入学から約一週間過ぎた頃に始まった機龍科の操縦訓練。
一日かけて行う行程の半分、午前の訓練を終えた俺達は昼食を摂り休憩していた。
「なんか、思ったより普通のキャンプみたいだね」
何気なく呟いたアヤの右手にはステンレス製のカップが握られており、
それからは白い湯気がたっている。
「そうだな」
アヤの呟きに俺も何気なく答えて乾パンをかじる。サクッとした食感で意外と旨い。
今俺たちが食べているのは午前の訓練が終了したあとに教官達の指導で
(主に不要な可燃ごみの)燃料を使い、焚き火で加熱したスープやコーヒー、携帯食料だ。
今回の訓練では俺達第6期生の錬成を急ぐ目的からか、
遭難時を想定した実習も一度に行うことになったらしい。
だが、変わったことは他にもあった。
「………………」
今俺とアヤの目の前にある焚き火の向こうでは、
小柄な体格に合わせた特注のパイロットスーツに身を包んだ一人の少女が、
黙々と俺達と同じ食事を摂っていた。
目の前にいる少女、川浪麻里は俺達が午前の訓練を終えた頃に合流した。
午後は自分も参加するからとそのまま共に昼食を用意して食事していた。
「こうして見ると、食べてるとこなんか可愛いね」
確かに、それには俺も同感だ。
麻里は普段無表情なため感情は読み取りにくいが食事の場合は別で、
若干緩んだ表情で乾パンをかじる様子はハムスターやリス等の小動物を思わせる可愛らしさがある。
「…………勝一。貴方の気持ちは……嬉しいけど、逆に恥ずかしいかも」
すると心を読んだのだろう頬を少し紅く染め俯きながら麻里が訴えるが、
その仕草は
「……解った。取り敢えずそれで、観念する……でも。頼みたいことがあるんだけど……いいかな?」
むぅ、と頬を膨らませてから俺に訊いてきた。
「ん。なんだ?」
唐突な頼み事の内容が気になったので取り敢えず促すと、
麻里はすーはーすーはーと深呼吸して意を決した表情で続けた。
「…………勝一は多分察しは付いてるかもしれないけど……私は、家族とは疎遠になってる。
今私にとって家族と言えるのは静利達。でも、勝一達が差別することなく接してくれて嬉しかった。
……だから勝一、我が儘だけど……お兄ちゃんって呼ばせて!」
「解った。よろしくな?」
麻里の頼みを聞いて俺は即答する。
「……良いの?」
「あぁ。俺にしても、断る理由ないしな」
少なくともこれが俺の本心だ。
そして俺の思考を読み取ろうと少女がこちらを見つめる間に、
ステンレス製のカップから湯気を立てるコーヒーを啜る。
「麻里ちゃん。勝くんは、貴女を拒絶しようと思ってないよ。
勝くんとは長い付き合いだから解るんだけど、今すごく真剣な表情だから、嘘は言ってない筈だよ」
そう言うアヤも真剣な表情を浮かべていた。
多分、安心させようと何気に必死になってるのかな。そういうところはアヤらしいけど。
「分かった。なら……もう遠慮せずに呼ばせてもらうね、よろしく……『お兄ちゃん』」
そう言って彼女が俺に向けてきた笑顔は普段無表情とは思えないほど明るく、
平原に咲いた向日葵のように眩しく輝いているように感じられた。
「こちらこそ、よろしくな?」
「勝くんがお兄ちゃんなら私は『お姉ちゃん』でいいよ! これぐらいの妹なら私も欲しかったし」
「……お姉ちゃん」
麻里がアヤに向けて呟くと、言われた本人はたまらないと言った表情で
「あぁ、可愛いな~」と何やら自分の世界に入ってるようだ。
「お兄ちゃんのお陰で、やる気出た。訓練では役目を、しっかり果たす」
そんな俺達を兄や姉と慕う少女は意気軒昂な様子で気になる言葉を口にした。
◇◇◇
「現在、
アヤと途中から参加した麻里を加えた昼食を終えた俺達は、再び第2格納庫前に集合していた。
「ここでひとつだけ、皆に連絡事項があるわ。川浪候補生、こちらへ」
「……はい」
家城教官に呼ばれた麻里は短く返事すると、俺達の前に進み出た。
「午後の訓練は午前中に良い結果を出した候補生にその続きを、そうでない者は繰り返し同じ内容に取り組んでもらうわ。
その一環として、彼女にはあなた達に手本を見せて貰うことになるわ」
教官がそう言うと麻里は無言でぺこりと頭を下げるが、先程までの俺達とのやり取りで
印象付けた小動物的なイメージは彼女のその仕草が無愛想さより可愛らしさを感じさせる。
一方で俺とアヤ以外の同期達はにわかに動揺した様子でどよめきが広がった。
「少々誤解してるようだけど、彼女は九式に乗ったばかりのあなた達と違って操縦経験も豊富で、実戦もこなしてる。
現時点でのあなた達よりもパイロットとしては先輩なのよ」
そんな同期達の反応はある程度予想できていたのか、淡々と事情を説明していく。
「ですが教官」
それでも異を唱えたのは陽光を反射する銀髪をショートカットにした男性、
ルミナスは憤った様子で前に踏み出した。
「彼女はこちらで把握したプロフィールでも今年で13歳になるばかりの子供です。どう見たって適性を疑われる年齢ではないですか」
「そうね。確かに、彼女は見た目通りの少女で本来なら戦場に出るような年齢ではないわ」
家城教官が一度肯定するとルミナスは更に言い募ろうとしたが、
「でもね」と遮るような言葉の後続けた。
「彼女はそれでも戦ってる、自分が生きるために」
普段より真剣な表情で一歩を踏み出し、強い口調で訴えかけるように話す。
その様子を見たルミナスは気圧されたように後退りした。
おそらくそれは、無理もないことだろう。今の家城教官からは研ぎ澄ました、
鋭利なナイフのような気配が発せられたからだ。
殺気。
それは、命のやり取りをした軍人特有と言える、戦場で戦う敵に向けるもの。
本来厳密なら軍隊ではない日本の自衛隊出身である彼女がこれだけの気配を纏えるのは、
それまで積み重ねてきた戦績に由来しているからだろう。
かつて家城教官は日本国旧特生自衛隊の精鋭、第1機龍隊で三式機龍の正オペレーターを。
2006年には吸収された特自ごとEDFに移籍して3年後に大量発生したギャオスから
東京を防衛すべく稼動試験中だった九式機龍試作1号機で出撃して多数を撃破するなど大戦果を上げた。
それだけの経歴を誇る教官にならあれぐらいの殺気は放ててもおかしくはなかった。
同時に、ルミナスの発言にそれだけ憤りを覚えたとも言えるかもしれない。
「彼女がこうしてEDFに所属してるのも親に捨てられ帰る場所を失い、国連に保護された後に超能力者の戦力化を推進する計画で訓練を施された。
それでも紆余曲折あって彼女は機龍科にいるけど、充分立派なパイロットよ」
「それは彼女のように幼い子供を少年兵として徴用した事に他なりません、それでは国際法違反ですよ!」
そんな教官の威圧に負けず反論してそこから更に叫びを上げようとするが、それを遮る声が上がった。
「知ったような事、言わないでッ!」
叫び声の上がった直後に俺や全員が視線を向けるとそこには、
特徴的なサイドテールにした茶髪を風に靡かせながらルミナスに対して強い非難の視線を向けていた。
「私は、私達超能力者は! 皆望んでEDFで戦ってるの! じゃなきゃ、私達に居場所は国連だけだったから……」
「彼女の言う通りよ。超能力者は幼い頃に能力に目覚め、親に捨てられ社会的に孤立した少年少女の集まり。
そんな彼らに対する風評被害は途絶えることはなく、最初に存在が確認されてから6年が経過した現在も、風当たりは強いままとされている」
「じ、自分は……」
糾弾するはずが麻里に反発され、教官からも正論を言われたルミナスは明らかに動揺している。
「ラスヴェート候補生。貴方が正義感の強い人間であることは、プロフィールからも把握しているわ。だけどね。
貴方のその正義は、時には他人に押し付けるだけのものになることもあるわ。
次からはそれを肝に命じなさい」
「さて、はじめる前から時間をとったけど予定通り訓練に移るわ。川浪候補生、用意して」
「
私とこの子……
いつもと違い憮然とした表情で仰ぎ見る麻里の視線の先には一機の、
イエローカラーに塗装された九式が駐機姿勢をとった状態で待機していた。
◇◇◇
「高機動バックパック『エリアル』の小型原子炉を稼動開始。
MCLとパイロットの脳波、リンク開始。バックパックと本体との同期を確認。
九式機龍二型天、起動します」
狭いコクピット内が機体の主電源をオンにすることで明るくなると、
機体の全システムを起動させながら確認するように呟く。
『川浪候補生、今回は新入生に手本を見せる初めての訓練となるわ。
さっきのことで頭にきた分、技量の差を見せてあげなさい』
ヘルメットの無線を通じて家城から指示を聴くと頷き、応答した。
「了解。九式機龍二型天、行きます」
イエローカラーに塗装された機体が駐機姿勢から直立に移り、脚部の各一基ずつの
ターボファンエンジンが産み出した高熱を帯びた排気がスラスターから噴き出す。
そして機体は膝を落とし姿勢制御の体勢をとると、脚部の推力で宙に浮きはじめる。
そのまま上昇を続けて地上20㍍に到達すると更に背部に装備したバックパックの
偏向制御バーナー2基が点火して、空中に浮かぶ鋼鉄の竜兵がジェット噴射の
白い軌跡を描きながら大気を切り裂いて飛翔する。
『良いわよ。そのまま上空を旋回飛行して』
家城が指示する間に右手に握る操縦桿を外側に倒し、操作に応じてバックパックの
右偏向制御バーナーが右にスライドする。
直後、機体は左に旋回を始める。白煙が緩いカーブで尾を牽いて旋回し続ける。
『旋回飛行止め。次は急上昇、急旋回を含んだ空中機動を実施して』
「了解」
短く答えて今度は両手に握る操縦桿を手前に引いて機体を更に上に向けて上昇させた。
「────ッ!」
急角度の上昇によって生じた強烈なGに体がシートに押さえつけるようにして引かれる。
それによる負荷にヘルメットの内側で表情を歪めながら耐えると右の操縦桿を前に倒し、
左に急旋回させて機体を水平状態にすると脚部のスラスターを動かしながら制動をかける。
「凄い……!」
その様子を地上から見ていた勝一が思わず呟いたのは称賛の一言だった。
今勝一の他に上空で機動を行う天を見上げながら固唾を飲んで見守るもの、
腕を振り上げて歓声を上げるものと別れており、その中には整備科の候補生も含まれていた。
「驚くのは、まだ早い……よっ」
呟くと足元のペダルを踏み込み、機体は生物なら骨盤から伸びる長大な尻尾を空中で振り回し
バックパックのエンジンを点火、格納庫手前の滑走路に緩降下を始めた。
「えいっ」
地表すれすれで脚部のスラスターを地面に向けて、更にバックパック両側の偏向制御バーナーを
前方に向ける。直後に着地して舗装された滑走路をガリガリと削りながら停止した。
『機体の停止を確認。最後が少々荒っぽいように思えたけど、取り敢えずは上々ね。
一旦格納庫に戻してちょうだい』
一連の動作を終了した麻里に機体を収容する旨を伝え、交信を終えると候補生達に告げた。
「これで彼女の実力については把握したわね?今後は自分達より若い実力者として敬うようにしなさい。
そして次は、貴方達が続く番よ」
◇◇◇
その後俺達は俺やルミナスといった午前の訓練で基準を満たした候補生は麻里の見せた空中機動を、
アヤを含んだ基準を満たしていない候補生が続けて同じ内容を行った。
だがあれだけ高度な操縦技術は数時間でモノに出来る筈はなく俺は勿論、
恐らくルミナス含めて全員が実力の差を認識させられたことを自覚することになった。
~あとがきのコーナー~
主「読者の皆様、こちらのあとがきではお久し振りです!」
勝一「遅くなるのは、もう慣れたな」
彩音「遅くなるのは主さんにもやることあるし、納得するしかないよ」
主「何だかあきれを通り越して最早達観してますね?
まあ今回は深夜テンション(毎度のことだけど)なので予告だけして終わりにしちゃいます」
勝一「予告、と言うことは何かあるのか?」
主「ええ、実は。今回書いていくなかで以前投稿したメカの設定集とかキャラの設定集なんかは一部手直しが必要かなと思って書き直そうかと」
彩音「そう言えば以前までなかった設定が文章の中で出てきたもんね。例えば九式の装備するバックパックの小型原子炉とか」
主「本来ならメーサー兵器には必ず(例外はある)と言って良い位搭載しているのにそれを失念していたのを最近気付いたので、面目ないです」
勝一「他には何かあるのか?」
主「以前からちょくちょくEDF総司令部や国連特災対策センターの登場人物を紹介する設定集、
他には神山家と小林家の設定を紹介する話を投稿していこうと思います」
勝一「それで全部か?」
主「はい。ではここで締めましょう。次回も、
また見に来て(くれ)(ね)下さい!!!」