これは不味いなと思い、執筆途中の話を分割して投稿します。
三ヶ月もお待たせして申し訳ありません、本格的に特災史を出すのは次回になります。
一周年目を迎える前には投稿するつもりでいるのでGWのあいだには書き終わりたいですね。
ではどうぞ!
勝一達第6期生機龍科にとって初の操縦訓練を午前、午後に分けて実施した後、家城茜の号令を合図に解散した。
その後茜は報告書を纏めようと自分の執務室に戻ろうとしていた。
だが唐突に職員が第2教育大隊教育棟の三階にある──アカデミーの最高責任者である学長の待つ──学長執務室に呼び出された。
「今回はどのようなご用件ですか。一柳学長」
呼び出された茜は最初に敬礼をして話を切り出すが、内心は何故呼び出されたかで困惑していた。
先程錬成が進んだ第6期生の機龍科候補生達に実施した午前、午後の訓練を終えたばかりだ。
その後直ぐに呼び出された事は今までで言えば1度もなく、今回に限っては余程の事に思えた。
「急に呼び立ててすまない。実はある重大な案件が浮上してな」
「重大な案件?」
「…………これを見てくれ」
一柳は茜に執務机の引き出しから出した何枚かの纏まった書類を見せる。
「……『天皇・皇后両陛下のアカデミー訪問に際した対応に関連する情報緒元』?
……学長。これはいったいどう言うことですか?」
「どうもこうも、書類に書かれた以上の事は総司令部から通達がない」
溜め息を吐いた一柳から書類に視線を落としよく見てみると、
天皇・皇后両陛下の訪問に対応する政府の動向や、各国の反応について記されていた。
「記載された内容は予想外すぎる記述ばかりに思えますが」
内容は以下の通りだった。
まず内容の主旨である天皇・皇后両陛下のアカデミー訪問における目的は、
超能力者に分類される少年少女を視察することで、政府経由で総司令部に打診があった。
更に情報を掴んだ国連主要加盟国のうち3か国──アメリカ、イギリス、ロシア──は、
これを機に視察団を派遣する事を検討中であるという記述もあり、
加えて他の加盟国でもメディアが記者団を送ろうと同様の動きがあるらしい。
「それは私も同じ意見だ。だが、総司令部は件の事は前向きに検討している。
従って、アカデミーは正式に決定が下されたなら、それに対応しなければならん。そこで、だ」
「私に、天皇・皇后両陛下の訪問に加え、各国から集まってくる賓客や取材陣への対外アピールの監督をしろ、と?」
言葉を引き継いだ茜に向けて頷いた。
「既に総司令部は一ヶ月後にスケジュールを組んだ。今から準備をしてほしい。
季節外れの
そこで話を区切るとキィ、と椅子から軋ませて立ち上がり執務室の窓に歩み寄る。
「天皇・皇后両陛下の訪問に便乗した各国の報道機関によって世界がアカデミーに、
ここで生活する超能力者達に注目するだろう。
この機に全世界に発信できれば、彼らのイメージアップに繋がる。またとない好機だ」
窓の向こう、その眼下の二つの教育棟の内側にある中庭に視線を落とす。
そこには、まだ年端もいかない少年少女達が隊列を組んで駆け足をしており、
その様は訓練された統率のとれたものであることが見てとれた。
「彼らは超能力者である以前にまだ子供だ。
だが今の世論を考えれば戦うことでしか自分達の居場所を勝ち取れない。
そんな彼らを思うなら、せめてその世論を増しな状態にしたいと思うのだ。
だからこそ、その準備は君に一任したい。無論、方法は任せる。やってくれるな?」
一柳の想いを聴いた茜は表情を引き締めて敬礼すると答えた。
「了解しました。必ず成功してご覧にいれます、元帥。
私は報告書を纏めるのでこれで、失礼します」
言い残して彼女が退室してから一柳は椅子に再び腰掛ける。
「頼んだぞ、家城少佐……」
◇◇◇
(なんて引き受けてみたけど、どうしようかしらね)
学長執務室を退室した茜は廊下を歩きながら真剣に悩んでいた。
各国の賓客や報道陣の対応、その規模は現時点ではわからず今後の動き次第だが、
数ヵ国から受け入れるだけでかなりの人数をアカデミーに入れる必要が出てくる。
天皇・皇后両陛下を含む視察団だけでも警護する人員も含めれば百単位に及ぶと思われるし、
各国の報道陣ともなればどれだけ入ってくるか、それだけを考慮しても警備員が何人必要になるのかわからない。
場合によっては総司令部に増員を要請しなければならないだろう。
(それに対外アピールと言っても、何をしようかしら?)
それも重要な課題だった。今回は天皇・皇后両陛下の訪問に便乗した視察団、報道陣向けに企画する必要があるのだが、
一般幹部候補生コースで志願する以前は孤独に過ごしていた茜にとって何をするべきか実に悩ましいところだった。
(こう言うのはむしろ若い世代に手伝ってもらった方がいいわね)
敷地内の警備はともかく対外アピールに関しては候補生に協力を取り付けることにして、
一ヶ月後を予定した行事に向けて準備を始めるべく執務室へと急いだ。
◇◇◇
緊張を伴った初めての操縦訓練が終了して、パイロットスーツをツナギに着替えてから
寮に戻った頃には
「よっ、お二人さん。待ちに待った初めての操縦はどうだったよ?」
気安い口調で淳也が声をかけてきた。
他に彼の座るテーブルには隣にクレア、向かいにデイヴィッドとマックスが座っていた。
「まず言えるのは、『上には上がいる』って言うところだな」
「ほんとにね。あの年齢であんな操縦出来るなんてすごいよ」
「……ひょっとすると、マリのことかな?」
俺とアヤの会話からマックスは正確に本人を当ててきた。
今まで一週間過ごしてわかったが、やはり洞察力があるな。
「で? 勝一はどうなんだよ、訓練の進捗は良いのか?」
「陸上を走るくらいなら出来るみたいだ。でも、今よりもっと上手くなりたい」
「そういう勝くんは早い段階で跳躍できたじゃない。
私なんか、午前と午後は跳躍できるまでだったんだよ?」
「ほう? もしかすると、その差には何か要因があるのかな?」
興味を示した表情でこちらにマックスが訊いてきた。
「そうだな。九式は、従来の航空機とちがってイメージが重要なんだ。
明確な強いイメージが機体の追従性を高めるようになってる」
俺は九式の操縦について、特にMCLは分かりやすいよう簡単に説明した。
「イメージとは、実際に存在するものを頭に思い浮かべるだけでも良いのか」
「ああ。例えば俺は、跳躍する時にオーストラリアのカンガルーを想像した。
それによる電気信号はMCLが読み取るから、明確な強いイメージに従って機体は跳躍できたんだ」
「そっかぁ。だからあんなに早く上手くなったんだね。よし、私もやってみる!」
アヤが意気込んだ様子を見せた頃には6時を過ぎ、俺達は食券の自動販売機に向かった。
国際社会の動きを伺わせた話も終わり、次回はようやく特災史の話に移ります。
可能な限り急いで投稿しますのでお待ちください。