地球防衛軍~怪獣王の系譜~(リメイク)   作:東部雲

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 流石に時間が掛かりすぎましたね(^_^;)

 皆様に重要なお知らせがあります。詳しくは後書きを御覧ください。では、どうぞ。


外伝 新たな脅威~中編~

 プシュゥッ!

 横にスライドしたドアから排気音が漏れ、そこから黒いツナギのパイロットスーツを来た功二と部下二人が入っていく。

 

 そこは光源が無いため薄暗いが、正面と左右に大型ディスプレイと座席で構成されたコンソールが設置されていた。

 部下二人が左右のコンソールで配置につき、功二が正面の座席に腰を下ろす。

 

 

「出撃準備!」

 

 戦闘司令室で富樫が号令を発した。

 

 

『starting position』

 

 管制官の指示が続いてメインドックで横たわっていた銀色の装甲を持つ巨体、メカゴジラMk-Ⅱが脚部に固定した運搬用リフトで起き上がる。

 

 冷却液が注入されて機体をリフトアップする段階は次に進む。

 

 

「ヘッドアーム解放」

 

 既に戦闘司令室入りした黒木特佐による次の指示で機体頭部を囲っていたアームが展開する。

 更に設計に携わったアメリカ人技術主任の指示で胴体を囲うアームも展開した。

 

 

『lift up Meka Godzilla Mk-Ⅱ!』

 

 管制官が指示して機体が地上を目指し持ち上げられる。

 

 

「拘束アーム解放」

 

 地上に出たメカゴジラの全身を拘束するアームが解放され機体の後方へ動いていく。

 

 開け放たれた大型ハッチから姿を現した機体は初代メカゴジラに酷似しているが、各所で異なる部分があった。

 

 全体的に丸みを帯びた装甲は大きく変わってはいないが、関節部分を保護する為の装甲が加えられており、肘部分にはスラスターが追加されていた。

 背部には胴体と一体化したエンジンを装備しており、見た目ではランドセルを背負うようにも見える。

 

 

「エンジン始動。離陸用意よし」

 

 機関士を勤める部下の一人がコンソールを操作し、初代メカゴジラと同じレーザー核融合炉を動力とするエンジンが稼働状態に移行する。

 胴体からは機関で発生する熱が胴体の排気口から熱を排出し、背部と脚部のスラスターが唸りを上げる。戦地に向かうための準備が整った。

 

 

「メカゴジラMk-Ⅱ、発進(take off)!」

 

 それまで唸りを上げていたスラスターが、排気熱を推進力に、大気を震わせながら機体が上空に持ち上がっていく。

 

 

『メインドック管制よりメカゴジラCP』

 

「こちらCP、感度良好」

 

 ヘルメットに内蔵されたスピーカーが管制オペレーターの声を電子音で発した。メカゴジラチームのリーダーを務める功二はオペレーターが呼んだようにCPで登録されている。

 

 

『現場空域までの進路はクリア。今のところ進路上を通過する航空機はありません、ご武運を』

 

了解(ラジャー)、現場に急行する」

 

 短く返答して通信を終える。

 

 このメカゴジラは最新鋭の戦闘マシンだ。

 初代メカゴジラから始まりMOGERAで得られた教訓、旧特生自衛隊の三式機龍の技術も注ぎ込まれた現代と未来技術の結晶とも言うべき切り札。

 

 初陣はゴジラが相手ではない。だが強大な怪獣であることに変わりはない。やるべきことはただひとつ。

 

 

(味方を援護するためにも、あの未確認個体は食い止めるッ!)

 

 未だ彼方にいる敵を睨むように、ディスプレイに映るマップを見つめる。

 

 機体は上昇を止め、水平に姿勢を固定すると各部のスラスターの推力で直進していった。

 

 

 

          ◇◇◇

 

 メカゴジラMk-Ⅱが出撃した同時刻、現場空域では熾烈な空戦が展開していた。

 

 

『sword3、後ろに付かれてるぞ! ブレイク!』

 

『こいつら旋回がエグい、誰か援護を!』

 

『何なんだこのギャオスは!? まるで鏃だ!』

 

 現場空域で飛翔する機体は人類側だとE D AF(地球防衛空軍)のDF-116A ドッグファイター二個小隊6機。

 

 航空自衛隊千歳基地のF-15J イーグル同じく6機。

 

 三沢飛行場の米空軍機F-16C ファイティングファルコンが9機で、そこに空自の早期警戒機を入れて計22機が現時点での展開する戦力だ。

 

 対して彼らが交戦するのはこれまでに確認されていない、異形とも言える新種のギャオス達だった。

 

 当初派遣された特殊部隊と学者数名を含む調査チームを襲ったのは陸戦型と推測された。

 刃物のように鋭利な形態をとるこの生物は、付近の集落が全滅したことと関係があるとされており、それについては増援の地上部隊が向かっている。

 

 航空部隊が交戦しているのは陸戦型と似ており、従来のギャオスを鋭利な刃物にしたような形態をとっている。

 翼は従来のギャオスとは違い硬質な甲殻で出来ており、不思議なことにそれでもかなりの速度が出ている。

 かつてないほどの異形は鋼のような翼で大気を切り裂き、驚異的な旋回能力を見せてEDAFの最新鋭機を追い回していた。

 

 

『駄目だ、敵のFox4を振り切れない!』

 

 メーデーと信号を無線で伝えるうちにアメリカ空軍機のうち1機が、追いすがる新種のギャオスから文字通り体当たりを食らって機体が粉砕。部品をばら撒いて地上に墜落していく。

 

 

『sword3が殺られた! ヤツらカミカゼかよ!』

 

 粉砕された機体は言葉通り体当たりによる特攻による撃墜だった。太平洋戦争末期における旧日本軍の最終手段を思わせる行動は、アメリカ空軍にとっても畏怖の対象である。

 (タチ)の悪いことに体当たりでヤツらが死ぬわけでもなく、次の目標に向けて猛追していく光景は恐怖そのものだった。

 

 

『エアマスターより各機へ。対空装備の九式機龍が二個小隊で現空域に向かっている。現状を維持せよ』

 

了解(ラジャー)! fork1より各機へ、機龍隊が援軍に来る!』

 

 その知らせは現場の兵士達にとって差し込んだ希望の光と言えた。こういった敵の相手こそ運動性、追従性に優れた九式機龍の得意とするところだからだ。

 

 だがその直後、士気の高まった彼らに更なる凶報が警戒機よりもたらされる。

 

 

『レーダーに反応、巨大ギャオスの周囲に飛翔体の反応が現出。警戒せよ』

 

 作戦空域に展開する戦闘機のパイロット達が、ディスプレイに映し出される戦術データリンクを確認する。

 周辺の地図に浮かび上がる巨大な赤い反応、その周りに小さな反応が複数存在している。それらは現在交戦する人類側の航空部隊に向けて転進しつつあった。

 

 

『fork1より各機へ、攻撃より回避を優先する。機龍隊到着まで時間を稼げ』

 

 

 

          ◇◇◇

 

 

「富田、何人いる」

 

「途中で拾った民間人入れて12人です。後は、全員死にました」

 

 上空で熾烈な制空戦闘が繰り広げられるなか、宮川大尉率いるM Gと科学者を含んだ調査チームは新種のギャオス──科学者の一人は暫定で“ソルジャー”と呼ぶことにしたらしいヤツらの追撃をかわし、丘陵地帯に位置する林に逃げ込んでいた。

 

 撤退行動中に救助を求める集落の生存者が見付かったので彼らも保護した。と言っても夫婦と子供一人程度で、他は違う場所で隠れているらしい。それについては無線で現地入りした陸自部隊に連絡したので一先ず問題ない。

 

 

「次の着陸地点はそう遠くはないな?」

 

「はい、徒歩でいってもあと二キロ圏内。ただそれでも問題はあります」

 

「俺達が逃げてきたルートの北側だな?」

 

「ええ。ヤツらの徘徊する範囲を考えると、向かう途中で接敵する可能性が高いですね」

 

 それが直面する最大の問題だった。本来危険をいち早く察知できると言うことで参加した超能力者は期待通りの活躍ができず、犠牲となった隊員も少なくない。加えて集落の生存者を抱えた以上纏まった行動は取りづらい。

 

 

「辻森、彼女の様子は?」

 

「何とか落ち着いてます。ですが」

 

「……」

 

 同行する唯一の超能力者である彩夏は膝を抱え込んだまま、顔を俯かせている。遠目から見てその表情は窺えないが、どのような心境なのかは想像に難くなかった。

 

 

「……わかった。辻森。奥村以下負傷した隊員1名と調査チーム2名、新城准尉と民間人の家族を連れて着陸地点に向かえ」

 

「! し、しかし隊長っ。それでは隊長と残った二人はどうするんですか!」

 

「ここからは二手に別れる。辻森は非戦闘員を連れて一刻も早くここを脱出しろ。我々3名は敵の勢力圏に先行して突入、敵の注意を引き付けそちらを援護する」

 

 宮川にとってこれは最善の判断と思われた。非戦闘員である学者数名と精神的に不安定な超能力者、負傷した隊員や途中で民間人の家族を連れて行動するのには無理がある。それぞれ役割がはっきりする分、分散した方が楽で良い筈なのだ。

 

 意外なことにそれを反対する者は他にもいた。俯かせていた顔を上げて発言する。

 

 

「私は…………まだ、やれます」

 

「強がりを言うな」

 

 突き放すように言う。

 

 

「まともに戦える状態で無いのは見れば分かる。それはさっきまでの撤退行動時に、恐慌状態となったことからも明らかだ」

 

「…………」

 

 精神状態が安定してない事を指摘され、少女は悔しげに唇を噛んだ。

 

 

「既にここは、敵の支配する地域だ。テリトリーのど真ん中にいる以上、選択の余地はない」

 

「心配しなくても大丈夫だぜ、彩夏ちゃん。運が良ければ増援の地上部隊と合流できるかもしれないし、ここで死ぬ気はないよ」

 

「任務中なのにタメしてんじゃねーよ、富田」

 

「あーっ、野郎の癖に引っ付くな。暑っ苦しいわ!」

 

 隊長である宮川はあくまで厳しく徹していたが、現在進行形で敵に生存を脅かされる状況下にも関わらず緊張感もなくじゃれ合う隊員2名。

 それを見て逆に緊張が緩んだのか、周囲で休憩する兵士と研究者のうち数人が吹き出すように笑う。

 

 

「…………まあ、そう言うことだ。運が良かったらまた会える。辻森。負傷者と非戦闘員、それに准尉を頼むぞ。他は俺と先行してヤツらの注意を引き付ける、用意しろ!」

 

 厳しい状況だが生還の可能性はある。それだけは少女にも伝わっただろう。それぞれが次の行動に移るべく、動き始めたときだった。

 

 

「隊長、3時の方向!」

 

 隊員の一人が叫び言われた方角に振り返ると、信じられない光景が広がっていた。

 

 山が宙に浮いている。

 勿論そんな筈は無いが、それでも山と見紛うばかりに巨大な存在が大気を振動させ、上昇を始めていた。

 

 

「あの野郎飛べたのかよ!」

 

「最初地中から出てきやがったくせに、飛ばれたら制空権確保どころじゃないぞ!」

 

 残された生還の可能性も台無しだった。隊員達の想像通りならあれは現地で出現した巨大個体。地下から出現したため飛行能力は無いと予想していたが、あれは従来のギャオスと同様飛ぶことができたのだ。

 

 

「時間がないようだ。辻森、みんなを逃がせ! 富田とマイケルは俺と一緒に敵を陽動する、行くぞ!」

 

「「「「Sir yes sir(サーイエスサー)!!」」」」

 

 隊員達の叫びが響き渡り、部隊は二つに別れて行動を開始した。

 

 隊長である宮川と以下2名が林の陰から一斉に飛び出し、走って直ぐに見えてきたソルジャーの群れに銃弾を見舞う。

 銃撃を受けて仲間が倒れたことにより襲撃に気付くと三人は進路を変え、ソルジャーがそれに引き寄せられる間に辻森達が進出してくる。

 宮川達を追撃する隙に発砲、背後から銃撃を受けたソルジャーは倒れ退路が開く。

 

 そこからは同じことの繰り返しになった。宮川達が敵を見つけては吸引、その隙をついて辻森達が撃破する流れで少しずつ着陸地点へと近付いていく。

 

 もう少しで着陸地点だ、後はヘリが到着するのを待てば良い。撤退する部隊の何人かがそう感じ始めた瞬間。

 

 上空から激しい轟音、その直後に強い衝撃波が伝わってくる。突然の事態に誰もが頭上を仰いだ。

 

 

「…………やはり、あいつも来たのか」

 

 呻くように呟いた宮川が眼にしたのは。

 

 上空の雲を吹き飛ばし、黒煙に包まれた巨大個体の周囲を旋回、噴煙が尾を牽いて直線的な飛行機雲を描く。

 

 ギャオスの初出現と時を同じくして出現した、過去最大の怪獣の一体。一部では古代文明の遺産にして地球の守護神と呼ばれる存分、ガメラだった。




続きが気になるところですが前書きでも書いたように重要なお知らせをします。

拙作、地球防衛軍~怪獣王の系譜~リメイクは今回限りで打ちきりとし、未完にさせていただきます。

更に詳しい内容については活動報告までお越しください。

当然ながら次回予告はしません。それでは、活動報告でお待ちしています。

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