※2017年7月10日17時40分頃に加筆修正しました。
入ってきた茜さん───ここでは家城教官か。が入ってきたのを見て俺達は席を立ち姿勢を正すが、家城教官は右手でそれを制し、
「座ったままでいいわよ、楽にして」
そう言われ一先ず座り直した。
俺達が再び席についたのを家城教官が確認すると、反対側の席に座って話し始める。
「まず始めに───初日から騒ぎを起こすなんてね、正直驚いたわ。公衆の場でいちゃつくのはあまり感心しないわね」
家城教官は俺とアヤを見据え呆れたと言わんばかりの表情と口調で告げる。
「お騒がせして申し訳ありません、家城教官! 懲罰は、覚悟して受けます!」
俺は席に座ったまま頭を下げて謝罪し、それに続いてアヤと淳也も口を開いた。
「すみませんでした、家城教官!」
「俺も騒ぎを起こす発端を起こしました! 誠にすみませんでした!」
二人がそれぞれ謝罪をして頭を下げていくが、一方で家城教官は小さく溜め息をついて、
「取り敢えず頭を上げなさい。───今回は初日ということだし、各大隊向けの集会もある。寮での交友会もあるから今回はそう長い説教はしないけど、その分反省文は10枚は書いてもらうわよ?」
俺達は顔を上げて返事をした。
「「「ありがとうございます、家城教官!!」」」
「よろしい。後、ここでは上官や教官に対しては返事は『Sir Yes Sir』。私のように女性が上官の場合は、『Yes Ma'am』と答えるように。今度からそうしなさい。」
家城教官のアドバイスを聞いて俺達は顔を見合わせ、そして頷くとまたも声を揃えて返事をした。
「「「Yes Ma'am!!」」」
タイミングの噛み合った、淳也とは我ながら今日初めて会ったとは思えない程に息の合った俺達の返事に満足したのか、家城教官は表情を緩めて薄く微笑み、立ち上がった。
「なら、そろそろ行くわよ? 大隊の他の同期生が今頃待っているから。着いてきなさい。」
家城教官はそう言ってドアに向かい、俺達も部屋に置いた荷物を手に取り後に続いた。
この時俺は少し幸先の悪い展開ではあったが、これから始まるEDFの、アカデミーでの生活が、不謹慎かもしれないが、今後楽しみに感じていた。
俺達は部屋を出た後今いる棟───第2教育大隊教育棟の広い館内を通路をしばらく歩いた。
その後見えてきたのは部屋を類別する文字の入った白い札───第2ミーティングルームと書かれた物が貼り付けられた金属製のドア。俺達の先頭を歩く家城教官はそれに取り付けられたレバーを掴んでドアを開け室内に入り、俺達もそれに続く。
室内はざわめいていた。まだ年若い男女の候補生が隣り合わせの同期と話し込み、中には読書する人もいるようだ。
───なんか、ひょっとして俺達待たせてるのか?
そこは、半すり鉢状に一列目から順に座席が高くなる講堂で、既に各兵科に分かれて同期の連中がおよそ200名以上が既に席についており、各兵科を担当すると思われる教官が10人以上が待機していた。
俺達より先に室内に入った家城教官は講堂の中央に位置する壇上に立ち、俺とアヤは機龍科のスペースに、淳也は歩兵科のスペースに分かれて席につく。
「はいはい、みんな注目!」
壇上に立った家城教官のその一言で、それまで各々が好きに暇を潰していた連中が会話を止め注目する。室内のほぼ全員の注目を浴びるなか、家城教官は話し始める。
「小一時間も待ち儲け食らわせて悪いわね、入学式直前に騒ぎを起こした3人だけど、軽く説教した上反省文を10枚は書いて提出して貰うから、今回はそれでおしまい。いいわね?」
家城教官の言葉に室内の同期から何かしら反対する意見もなく、沈黙が広がる。
その様子を見て異論がないと認識したのか、家城教官は再び話した。
「では、自己紹介をさせてもらうわね。私は家城茜。EDF日本支部所属新品川EDF国際総合士官学校の機龍科を担当する教官で階級は少佐。あなた達第2教育大隊の主任教官でもあるわ。
これから二年間、あなた達は私達教官の指導の元訓練と知識習得の日々を送ることになるけど、不安に思うことはないわ。ここでは半分学生だしね?」
簡単な自己紹介と俺達候補生のこれからを軽く語った後に冗談めかした台詞を聞いて、室内からいくつも笑い声が漏れ聞こえてきた。
「さて私から自己紹介は終わったので、次の教官にも自己紹介してもらうわね」
それから室内に待機していた10名以上の教官が一人ずつ挨拶していく。
教官は世界各地に存在する支部からアカデミーに転属したと思われる様々な国籍に別れており、日本人はその中でも割合が多かった。
教官達の自己紹介が一通り終わった直後、家城教官がパンパン、と手を鳴らした。
「以上でここでの教程は終了よ、次はあなた達の生活する寮へ移動するわ。
……現在は
家城教官の凛とした声の号令と直後に、同期生達が一斉に部屋の出入口に向かい始める。
次は、寮への移動だ。
俺達は教育棟から出た後、舗装された道路に沿って歩調を速くして移動する。
途中、訓練中なのか遠くから爆発音と轟音が聞こえてくる。それを聴いていると緊張からか、掌が汗ばんできた。それは戦闘に近い緊張感からなのか、それに対する恐怖からなのかは分からなかったが、あまりそれは表に出さないようにする。すぐ近くをアヤが歩いてるうえに、ちょっと俺に何かあるだけでそれを心配するだろうからこれぐらいは我慢だ。
そうして移動し続けると、目的の建物が見えてきた。
その建物は緩やかな斜面に沿って舗装された道路の横に位置しており、ここから眺めるとかなり大きく建設されて数年しか経っていないからか遠目からも綺麗なままだ。
「……! 勝くん、あれ!」
「おう」
返事と共に頷く。俺達の視線の先には、これから二年間生活する『EDFアカデミー学生寮』が在った。見た目は殺風景な鉄筋コンクリートの外観をしているが、周囲に控えめな規模のランニングコースが儲けられている。
また建物の敷地の一角にベンチや自動販売機が設置されており、恐らく寮での憩いの場の一つになるのだろう。
寮に入った後すぐ視界に飛び込んできたのは、意外と広い空間のロビーだった。
天井は最近世間で普及したLEDライトで昼と勘違いしそうなほど明るく、設置された液晶テレビが生活感を醸し出していた。
俺はロビーの一角に荷物を降ろし右手に着けたデジタル時計を確認した。
今は
と、不意にロビーの玄関口が騒がしくなった。
そちらを見るとどうやらそれぞれの兵科を担当する教官達が鍵を他の生徒に渡しているようだ。その中の家城教官が俺を見つけて声をかけてくる。
「はい、これがあなたの部屋の鍵よ。二人部屋だから後でルームメイトを確認しておいて」
渡された鍵の名札には『No.2214』と書かれていた。
俺達は第6期生で人数は200人を超えるぐらいなので、数字からして隅の方かもしれないな。
「了解しました。ありがとうございます!」
返事を大きくしっかりした声で返し礼を述べると同時に敬礼する。これに関しては他の生徒達も教官達に同じように返しており、これがここでの日常の光景となるだろう。
そして同じように敬礼で返した家城教官と別れ、アヤと部屋割りの確認をするために探してロビーの階段の前で俺に背を向けているところを見つけた。
「おーい、アヤ」
俺はアヤに声をかけた。すると背を向けた状態で振り向き、艶のある長いポニーテールを揺らしながら髪の毛と同じ色の瞳でこちらを見た。
「どうしたの、勝くん?」
「お互いの部屋の番号確認しよう。俺は2214号室だけどそっちは?」
「え………?」
俺が部屋の番号を教えた直後固まり、何故か顔を赤くし始めた。
「どうしたんだ、そんなに顔赤くして?」
「う、うん。実は……」
俺が聞くと理由を口を開いて躊躇うようにまた閉じ、もう一度口を開いた。
「私も、2214号室なんだ……」
「…………え?」
思わず思考がフリーズした。それからたっぷり5秒は静止した後、弾かれるようにロビーを見渡した。すると、他の教官と話している家城教官が目に入った。
俺は家城教官に駆け寄り声をかけた。
「失礼します、家城教官。お訊きしたいことがあります!」
すると話しの途中で家城教官が他の教官達と顔を見合わせて「また後で。」と一言言って教官達は別れた。俺に向き直った家城教官は俺が聞きたいことが既に分かっているかのように溜め息をひとつして、俺を見据えた。
「質問の内容は分かっているわ。取り敢えず教えるわね」
「……ありがとうございます」
正直家城教官がここまで分かっているような対応を取ったことに困惑するが、それでも疑問は拭えなかった。
「まず、小林候補生と相部屋になった理由だけど、簡単に言えば数が合わないのよ。
今年入った第6期生は200人以上、その内機龍科の生徒は男子が3名で女子が5名。同性同士で相部屋にしたいのは山々だけど、数が合わない以上は相性で決めるしかない。
貴方と彼女は丁度小中高で学校が同じで仲が良いのは貴方が卒業した高校から受けた説明からも、私個人からしても疑うまでもないわ」
家城教官が俺とアヤが相部屋になった理由を並べて直後にまた溜め息をつく。確かに言われてみればその通りではあったが、個人の教官の意見を添えるのはどうかと思うが。
「………空いてる部屋を使うのは」
「残念ながら、ね」
一縷の望みにかけて聞いてみたが、家城教官は首を横に振りながらそれは無理だと否定した。
最初騒ぎを起こしたのもそうだが、部屋割りも大変そうだった。
第2話でした。後、お気に入り登録者数が10人を超えました!まだ物語も本格的に動かない内から期待をかけてくださる読者がこれだけいることに感謝するばかりです。これを励みに、某アプリの戦艦じゃないけど今後も気合い、入れて、書きます!では、また。