魔法科高校の暗殺者   作:型破 優位

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魔法の説明は出来るだけわかりやすい例えができるように心がけています。


アドバイスブックの時間

 達也は、体育館で起きた一連の騒動を報告するために真由美、摩利、克人の『三巨頭』のいる本部へと向かい、渚とエリカは校門で達也を待とうとそこへ向かう。

 

 しかし、昇降口の外側で見知った顔を見つけたため、急遽進路を変更してそちらへと向かった。

 

「レオ!美月!」

 

「こんにちは、渚くん、エリカちゃん」

 

「やほ、美月」

 

「よぉ、渚。達也はまだこないのか?」

 

 レオと美月だった。

 どうやら達也を含めた自分達を待っていたらしい。

 

「今本部に報告に行ってるところだよ」

 

「……何かあったのか?」

 

 報告、ということは、報告しなければいけないことがあるということ。

 確かに、達也は攻撃対象になりやすい立ち位置にいる。

 まさか、攻撃されたのか、とレオと美月の表情が若干険しくなるも、エリカが楽しそうに達也の武勇伝を話すと、レオも美月もホッと一息ついて、賞賛の声を上げた。

 

「へぇ、上級生達を一網打尽にしたわけか。さすが達也だ」

 

「そうですね。でも、怪我がなくてよかったです」

 

 それから、レオは山岳部、美月は美術部に入部することを教えてくれ、渚もマーシャル・マジック・アーツ部に興味があることを伝えた。

 

 すると、全員が意外そうな顔をする。

 

「マジック・アーツか……なぁ、渚って小柄な体型してるけど、見た目に似合わずって感じのことばかりするよな。あ、決して悪い意味じゃないぜ?」

 

「そこには同意ね。意外性でいったら達也くんよりも上かも」

 

「何の話をしているのかしら?」

 

 話題が渚へと移っていくなか、昇降口から聞こえた澄んだ声の持ち主に全員がそちらを振り向いた。

 

「あ、深雪。生徒会はもう終わったの?」

 

「ええ。お兄様は?」

 

「達也ならもうすぐ来ると思うぜ。俺らも今待っているところだ」

 

「そうでしたか……」

 

 そして、会話の輪に加わりエリカや美月と話始める深雪。

 渚はチラッと時間を見る。

 もう日没直前だった。

 渚はレオたちに断りを入れて、会話の邪魔にならないように少し距離を取ってから携帯を取りだし、電話をかける。

 

『はい、潮田です』

 

 数回コールした後に出た相手は、昨日とは別の人だった。

 

「あ、お父さん?もう帰ってたんだ」

 

『ついさっきね。それで、どうしたんだ?』

 

「お父さんが帰っているなら丁度いいや。僕、帰りがだいぶ遅くなるからたまには二人で何処かご飯にでも行っておいでよ!」

 

 夕食を作って貰って、さらに待ってもらうのは申し訳ないし、かといって自分に合わせて作っていたらかなり遅くなる。

 

 なので、先に食べておいてと言おうとした渚だったが、両親が揃っているならたまにな二人きりでの食事もいいだろう、と思ってのことだ。

 

『ふむ……そうだな。丁度いい機会だし行ってくるよ。渚はどうするんだ?』

 

「僕は帰り道に寄って食べていくよ」

 

『そうか。あまり遅くなるなよ?』

 

「お父さんはゆっくり楽しんできてね?」

 

 そこで、通話は切れた。

 前までは疎遠だった家族も、今では普通の家庭に、いや、疎遠だった分、前よりも仲良くなっており、ヒステリックだった母も今では優しいお母さんだ。

 

 昔に芽生えた母に対する恐怖心も、完全にとは言えないが、少しずつ、だが確実に収まってきている。

 レオたちの元へ戻ろうと振り返ってみると、その一団の中に達也がいた。

 

「達也、来ていたんだね」

 

「ああ。待たせてしまってすまない」

 

「ううん。僕たちが待ちたくて待ったんだから、達也が謝る必要はないよ」

 

 その時、誰かが吹き出した。

 

「ハハハッ、そういうことだ達也。気にすることはないぜ」

 

 どうやら、ここにいる全員が同じような回答をしたらしいのだ。

 全員が笑顔で達也を出迎えた。

 

「こんな時間だし、何処かで軽く食べていかないか?一人千円までは奢るぞ」

 

 これは、それ以上の謝罪を飲み込んだ達也の、代わりの誘い。

 それが分からぬ者も、余計な遠慮をする者もここにはおらず、ご飯に誘おうと思っていた渚にとっては願ってもない誘いだった。

 

◆◆◆

 

 昨日とは別のカフェで、六人は今日起きた出来事についての体験談に花を咲かせたが、やはり、最も関心を引いたのは達也の体育館での武勇伝だった。

 

「その桐原って二年生、殺傷性ランクBの魔法を使ってたんだろ?よく怪我しなかったよなぁ」

 

「致死性がある、と言っても、高周波ブレードは有効範囲の狭い魔法だからな。刀に触れられない、という点を除けば、良く切れる刀と変わらない。それほど対処が難しい魔法じゃないさ」

 

「達也、それって真剣の対処が簡単って言ってるようなものなんだけど……」

 

「お兄様なら大丈夫よ、渚くん」

 

 さっきから手放しで感心しているレオに、達也は若干困り顔で応じて、その応えを聞いた渚が苦笑しながら突っ込むも、深雪が心配要らないと一蹴した。

 

 レオが言った殺傷性ランクとは、警察省が定めている魔法の危険度分類で、

 

 殺傷性ランクA

 一度に多人数を殺害し得る魔法

 

 殺傷性ランクB

 致死性のある魔法

 

 殺傷性ランクC

 傷害性はあるが致死性は無い、または小さい魔法

 

と、いった感じで別れている。

 

「……達也さんの技量を疑うわけじゃないんだけど、高周波ブレードは単なる刀剣と違って、超音波を放っているんでしょう?」

 

「そういや、俺も聞いたことがあるな。超音波酔いを防止するために耳栓を使う術者もいるそうじゃねぇか。まっ、そういうのは最初から計算ずくなんだろうけど」

 

「そうじゃないのよ。お兄様はただ体術が優れているだけじゃないの」

 

 美月とレオの懸念に応える深雪の表情は、失笑を堪えているようだった。

 

「魔法式の無効化は、お兄様の十八番なの」

 

 深雪の言葉にエリカがすかさず食いついた。

 

「魔法式の無効化?情報強化でも領域干渉でもなくて?」

 

「ええ」

 

 得意気に頷く深雪と「仕方ないなぁ」という顔で笑っている達也。

 そこで、渚が自分の中で考えうる一つの答えを達也に言った。

 

「それって、キャストジャミングを擬似的に使ったってこと?」

 

「良くわかったな、渚。その通りだ」

 

 達也は渚に素直に感心する。

 あの場にいたとはいえ、擬似的に(・・・・)、使ったと言うことは、その知識があるということなのだから。

 

「ちなみにだが、渚はどうやったのかわかるか?」

 

「本で読んだ記憶があるのが、二つのCADを使うやつかな」

 

「……本?」

 

 そして、達也は今度は頭を捻る。

 自分が知りうる限りでは、本の記述にそういった類の物はなく、またこれが見つけられているとも思っていないからだ。

 

「あ、本っていうか、アドバイスブックなんだけど」

 

 そこでリュックから取り出すのは、アドバイスブック。

 

「……毎回思うんだけど、この本は一体なんなの?」

 

 渚が取り出した本を見て呆れ声で言うエリカ。

 達也は本の中身がどうなっているのか興味があるようだが、渚が調べていてくれているため、後でじっくり見せてもらおうと決めて渚を見る。

 

「んーと、あ、ここ」

 

「プッ!何この黄色のタコ!」

 

 渚が開いたページには、黄色のタコ、つまり、殺せんせーの絵が書いてあった。

 一見ふざけたように見えるが、そこにはこう書いてあった。

 

『世の中にはアンティナイトという鉱石を使って魔法を無効化することが出来る、キャストジャミングというものがあります。しかし、その鉱石は軍事物質なので一般民間人が手に入れることは出来ません。そこで、渚くんに先生から窮地に陥ったときのとっておきを教えることとしましょう。まず、十四ページ前にあるように、CADを二つ同時に使おうとすると、サイオン波が干渉してほとんどの場合魔法が発動できません。信号機のある交差点を思い出してください。片方が赤でもう片方が青なら、青の方は安全に車を走らせることができます。これがCADを一つ使って魔法を発動した状態です』

 

 なるほど、とレオとエリカから声が漏れる。

 二人とも完全に先生の授業にのめりこんでいる。

 

『しかし、これが両方赤、両方青だったらどうでしょうか。両方赤でも車は動けませんし、両方青でも車は動けませんね。つまり、両方青と赤で揃えても(CADを二つ同時に使っても)車は通れない(魔法は発動しない)というわけです』

 

 おお、とレオとエリカから声が漏れる。

 絵付きで説明されるそれは、本当にどの教材よりもわかりやすい。

 

『そこで、先生見つけました。片方のCADで妨害する魔法の起動式を、もう片方でそれとは逆方向の起動式を展開して、起動式のまま複写増幅し、無系統魔法として放てば、本来構築すべき二種類の魔法と同種類の魔法式による魔法発動を、妨害できるのではないかと。この理論は歯車で説明しましょう。歯車を二つ重ねるとき、交互に重なるようにしますね。これが凸と凸、凹と凹のところで接してしまっているのが、二つの魔法式が同じときです。ならば、一つを逆転させればいいのです。そうすれば、凸と凹、凹と凸と上手くハマります。これが魔法式を一つ逆にしたときです。この方法でこの魔法が使えるのなら良いのですが、この魔法には一つ弱点があります。大丈夫、渚くんなら克服出来ます。この魔法は、相手の起動式を読み取ることと、干渉波を投射する必要があります。干渉波を飛ばすことは出来るかもしれませんが、問題は起動式を読み取ることですね。これは至難の技といってもいいでしょう。なので、相手の情報を知り尽くした上で、決めにくる魔法がわかっている状態でのみ使うことをオススメします』

 

 そこで、キャストジャミングについての記述は終わっていた。

 沈黙が訪れる。

 

「……俺、今の理論を理解出来たかもしれない」

 

「……私もよ」

 

「すごく分かりやすいですね」

 

 口から出るのは、驚愕。

 

「……なるほど。やり方は勿論、その魔法の弱点を教えつつ、その対処法も載せているのか」

 

 達也は、さらにこの本に興味を持った。

 もしかしたら、自分にはまだ知らない何かがあるかもしれないと。

 

「渚、その本、俺に少し貸してくれないか?」




自分の魔法の解釈のしかた、一回思考を変えて考えてみると理解しやすいかもしれませんね。
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