勝手に二日間追加で待たせてしまい、申し訳ありません。
皆さんの魔法理論、しっかりと読まさせていただきました。
魔法理論を考えることは、物事を論理的に考える力に直結することだと思うので、他の皆様も是非考えてみてください。
飛行魔法の時間
全国魔法科高校親善魔法競技大会
魔法師育成のため、魔法科高校九校を学校単位で競争させ、生徒の向上心を煽る舞台の一つ。
通称、九校戦。
スポーツ系魔法競技の中でも、魔法力の比重が高い種目で競われる。
ただし、剣術やマーシャル・マジック・アーツのような格闘技系競技、軽身体操やハイポスト・バスケットのような球技は別途大会が開催される。
八十五年度に、現在の形式で夏の定例行事となった。九十四年度までの優勝校は、一高が五回、三高が二回、二高が一回、九高が一回となっている。
九十四年度までは、モノリス・コードとミラージ・バット以外の四種目の新人戦では男女一緒に試合が行われていたが、九十五年度から新人戦も男女別々になった。
採用競技は、大会一ヶ月前までに各校に通知する決まりとなっており、ここ十年間競技の変更はない。
一高では部活連ではなく生徒会が主体となって行っている。
そして、この九校戦に選ばれるためには、中間テストで優秀な成績を納める必要がある。
テスト。
これは渚にとって、かけがえのない大切なものだ。
時に範囲を変えられ、時に賭け事をして、時にテスト勉強をさせてもらえずに受けて、時にE組全員五十位以内に入って、テストを個人戦ではなく団体戦なんだと認識し、E組の絆を表す大切な行事の一つ。
そんな思い出の深いテストもあっという間に終わり、順位発表が先程行われた。
理論・実技を合算した総合点による上位者は、順当な結果となった。
一位 司波 深雪
二位 光井 ほのか
三位 北山 雫
ここまでA組の名前が続き、四位に十三束の名前が出てくる。
実技も総合順位に似たような結果となった。
だが、これが理論のみとなると、大番狂わせの結果になっている。
一位 司波 達也
二位 司波 深雪
三位 潮田 渚
そこから四位に幹比古、五位にほのか、十位に雫と上位陣に見慣れた名前がずらっと並ぶ。
問題は、実技ができなければ理論も理解出来ないはずなのに、実技ができない二科生が上位陣に複数人いることで、さらに達也は二位の深雪と
ちなみに渚は、理論は幹比古よりギリギリ点数が上だったが、実技は下も良いところだった。
その渚が今いるのが、生徒会室。
目の前にいるのは、摩利と真由美。
周りでは、生徒会メンバーが忙しそうにキーボードを打っている。
「それで……僕に何の用でしょうか?」
昼休み終了間際に生徒会室から戻ってきた達也に「放課後生徒会室に来い」とだけ言われた渚は、何が何だか分からないまま生徒会室へと来たのだ。
達也は教師に呼び出しを喰らっているために、ここにはいない。
「単刀直入に言おう。潮田 渚くん。君に風紀委員に入ってほしい」
「だから、ダメって言ってるでしょ、摩利!」
「なんでだ?彼ほどの実力なら十分風紀委員の仕事は勤まるし、達也くんと同じく校内の雰囲気を変える足掛かりにもなる。それは真由美も望むところだろ?」
「そうだけど、潮田くんにも事情というものがあるのだし、風紀委員の枠は一杯じゃない!」
そして、何故か泥沼の展開となっている。
「あの……何故いきなり?」
「いや、この前のブランシュの件で、潮田くんの活躍を真由美から聞いていたんだよ。校門前のテロリストをほぼ一人で全滅させるほどの腕前の持ち主を、風紀委員長としてもほっては……みんなどうしたんだ?」
ブランシュの件での渚の活躍を語った瞬間に、いきなり生徒会室から音が消えたため、摩利は何が起こったのかわからない、とでも言うように呟いた。
全員が自分のやっている仕事を放棄して、渚の方へと顔を向けていたのだ。
「……渡辺先輩。今なんと?」
信じられない、という表情で摩利に問う副会長の服部。
真由美は困惑顔で、他の生徒会メンバーは服部と同じような顔をしている。
「いや、だから、校門前の敵をほぼ一人で全滅させたんだよ、彼」
「……本当ですか、会長?」
「……はぁ。ええ、本当よ」
真由美の肯定により、渚に視線が集まったまま、その場が静寂に支配される。
――すごく気まずい。
静かなのに、視線だけが集まっているという地獄を絶賛体験中の渚。
しかも、この場にいる渚を除いた六人のうち、初対面なのが三人、面と向かって話したことがあるのは二人しかいないのだ。
「あの!部活があるので僕はこれで失礼します!」
「お、おう。そうか」
とうとう我慢できなくなった渚は勢いよく立ち上がり、できるだけ早く、しかし、相手に不快な思いをさせない程度の早さで出口へと向かう。
渚がいきなり立ち上がったことにより、先程までデスクワークをしていた渚よりもさらに小柄な少女――上級生なのだが――がビクッと肩を震わせたが、後は若干驚いたような様子を見せたぐらいだった。
「失礼します!」
しっかりと挨拶とともに一礼し、生徒会室から出る。
「また来いよ」
その言葉に対して、少なくとも近いうちにここにくることはありません、と渚は言いかけたが、それは心の中だけで、一礼だけして扉を閉め、ため息をつきながらマジック・アーツ部へと足を運んだ。
◆◆◆
「お兄様、少しよろしいでしょうか」
「どうした、深雪?」
「その……潮田くんのことについてです」
「……何かあったのか?」
その日の夜。
夕食を食べ終え、ソファーでコーヒーを飲みながら一息ついている達也に、深雪がその隣へと座って今日生徒会室であった一件を話した。
まず、渚が風紀委員に指名されたこと。
その理由は、校庭に援軍にいった渚がテロリストをほぼ一人で全滅させたこと。
そして、真由美は渚の風紀委員入りに反対していること。
「なるほど……つまり、会長も渚の中学の事情は知っているということか……ならば、会頭もそのことについて知っていそうだな。だけど、委員長が知らないということは、本当に十師族内での秘密ということになる」
「そうですね。ですが、何故会長は潮田くんの風紀委員入りを反対しているのでしょうか」
「恐らくだが、テロリストを一掃させたのは渚の暗殺技術と何か関係があるのだろうな。暗殺技術を治安維持のためとはいえ、生徒に向けるのは危ない。そして何より、渚によって『死』の恐怖を一瞬でも感じてしまい、そこから魔法が使えなくなるってことだってないとは言い切れないからな」
恐怖によって魔法が使えなくなるというのは、魔法師の卵にも起きる可能性は十分にある。
それがあるからこその、一科生と二科生なのだから。
「しかし、テロリストを一人でほぼ全滅。しかも自らの身体能力と本当に最低限の振動魔法だけか……対面通しならともかく、不意打ちを喰らったら俺でも勝てないかもしれないな」
「先生の気配に気づくほどなのですし、お兄様には『眼』があるのですから、まず不意を突かれること自体が無いと思いますよ」
「それもそうかもな……さて、先生のところへ行こうか」
「はい、お兄様。準備をして参りますね」
ある程度話が終わったところで、このあと八雲に用がある――今回用があるのは深雪だが――ため、深雪に準備をさせて達也はコーヒーを一気に飲み干した。
◆◆◆
時を同じくして、渚は自分の部屋で例のあの本を読んでいた。
これはもう既に日課であるのだが、それでも未だに読み終わる気配がない。
テストに出たところの復習を兼ねつつ、ページを捲っていく渚の目に、一つの単語が入ってきた。
「……加重系魔法の技術的三大難問」
加重系魔法の技術的三大難問とは、重力制御型熱核融合炉の実現、汎用的飛行魔法の実現、慣性無限大化による疑似永久機関の実現のことであり、つまりはクーロン力、飛行、ブラックホールのことである。
未だに解決されていない難問なのだが、どうしても気になる一言がその下に書いてあった。
『暇だったのでやってみたら、なんか出来ちゃいました』
「軽いノリでやることじゃないよ!!」
おもいっきし突っ込んでしまった渚。
だが、さっきの文に殺せんせーのテヘペロとでも言いたげな絵を見てしまった渚に、それを止める術はなかった。
せめて学校では気を付けよう、と心に誓って、本の続きを読み始めると、そこに書いてあったのは、『飛行魔法』について。
『まず、飛行魔法からいきましょう。飛行するためには、加速したり減速したり、昇ったり降りたりとその都度魔法を発動しなければいけない、というのが従来の飛行魔法の考え方です。しかし、これだと魔法式を上書きする干渉力に限界がきて飛行を満足にすることができません。火を灯したアルコールランプにガラスのケースが被さってる状態を思い浮かべてください。しばらくは火は燃え続けますが、密閉状態のために次第に酸素がなくなっていきますね。これが、従来の飛行魔法です。アルコールランプを術者、アルコールをサイオン、火を魔法、ガラスのケースをCAD、二酸化炭素を効力のない魔法式、酸素をその魔法式を上書きする干渉力としましょう。
唖然とするしかない。
これを暇だから解いたという殺せんせーは、やはり何処までも殺せんせーだった。
ふと時計を見てみると、読みふけってしまったためにかなり遅くなっていた。
もう寝ようか、と本を閉じようと
『この三大難問のうち、一つだけここには記載していません。これは渚くんが自分で見つけてみてください。そして、可能ならばこれを人に教えるつもりで、とてもわかりやすく説明できるように頑張ってみてください。それができれば、あなたは立派な教師に近づくことができますよ』
それは、殺せんせーからの最後の宿題だったのだ。
今日からまた、一日一話投稿していきます。
魔法、理解できたでしょうか。
これからもよろしくお願いします。