魔法科高校の暗殺者   作:型破 優位

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熱下がりました。
今回ので九校戦の前置き的なところを全て終わらせます。

お待たせしてすみません。


ターゲットの時間

 九校戦の観戦が決まってから二日後の日曜日。

 渚は一高近くのカフェで人を待っていた。

 

「いきなりどうしたんだろう、先生。大事な話って」

 

 昨日、魔法を教えてくれた先生から一通のメッセージが届いた。

 内容は単純明快。

『明日一高前のカフェに十二時に来てほしい。大事な話がある』

というもの。

 

 現時刻は十一時五十五分

 時間までは後五分なので、入店してくる人を眺めて時間がくるのを待った。

 その時、見知ったなつかしい顔の男性が入店する。

 その男性は渚を見つけると、堂々とした姿勢で、ただ、若干の笑みを見せながら近寄ってきた。

 

「烏間先せ……烏間さん!」

 

「久し振りだな、渚くん」

 

 三年E組の表向きの担任にして、防衛省勤務。

 階級は『大佐』だ。

 

 今は先生ではないため『さん』付けで呼んでいる。

 

「どうして烏間さんが?」

 

「そうだな。まずは注文してからにしよう。ここの代金は俺が持つから好きなものを頼むといい」

 

「ありがとうございます」

 

 一礼しながら感謝の意を述べる渚。

 しかし、渚は体型から分かる通り、超小食だ。

 その度合いといえば、毎日持っていっている弁当の大きさが女子よりも小さい、といえば分かるだろう。

 

 注文を取りに来た店員に渚は少なめのナポリタン、烏間はコーヒーだけを注文し、烏間は店員がいなくなったのを見計らって、本題を切り出した。

 

「渚くんは今年、九校戦は?」

 

「出ませんが、観に行きますよ。元E組のメンバーで」

 

「やはり渚くんもか……九校戦会場近くのホテルの予約リストに赤羽の名前があったのを見かけたからもしやとは思っていたが……ここに来る前に赤羽には連絡しておいたが、こちらの勝手でホテルの場所を変えさせてもらった。そのホテルは軍のホテルで、一高の宿泊施設でもあるから、防犯面においては他のホテルよりもだいぶマシになるだろう」

 

「えーっと……何かあったのですか?」

 

 暗殺教室、三年E組を卒業して以降、いや、暗殺教室卒業以前と比べても、烏間がここまでプライベートに干渉したことはない。

 軍の上官が、元生徒とはいえ一般市民に直接干渉すること事態、異例なのだから。

 つまり、渚は状況が全く掴めていなかった。

 

「単刀直入に言おう。君たち三年E組は現在、香港系国際犯罪シンジケートである『無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)』という組織に命を狙われている」

 

「な……ッ!どういうことで――」

 

 そこで、渚はハッとする。

 あまりにも唐突で突飛な現実に思わず机をバンッ!と叩いて大声で叫んでしまったために、店内の全視線が集まってしまったのだ。

 渚はその場で申し訳なさそうに一礼、烏間にも謝罪の言葉を述べて、本題の続きへと戻る。

 

「渚くんは、柳沢を覚えているか?」

 

「……勿論です」

 

 忘れるわけもなかった。

 自分の友達を、先生を、関係の無い人まで傷つけた張本人なのだから。

 

「彼は、『無頭竜』のスパイにして、幹部だった。今彼らが日本に干渉した理由は、九校戦での一高優勝阻止と、元E組の身柄だ。現在、君たちは一番危険な立ち位置にいるため、今回我々が動いているというわけだ」

 

 スパイ、幹部、E組。

 九校戦とどう繋がるかは皆目検討もつかないが、この三つからどういう状況にあるのか、渚ではなくても容易に想像出来ることだろう。

 

 それは、まるで小学生のような理由なのだから。

 

「目的は報復ということですか?」

 

「そう見て、間違いない」

 

 やられたらやり返す。

 これはある意味では自然の流れなのかもしれない。

 しかし、今回のこれとは似て非なるものだ。

 

 最初に仕掛けてきたのは、向こう(柳沢)

 それを返り討ちにしたのが、こっち(E組)

 

 これを繰り返した結果、最終的に柳沢を倒したのであって、こちらは完全な正当防衛。

 つまりは、向こうから仕掛け、やられたからやり返す、というなんともくだらない理由で自分達の命を狙っているというわけだ。

 

「こちらとしても、君たちに危険が及ぶようなことは避けなければならない。既に君たちの近辺には魔法師が護衛に入っている」

 

 烏間が指差した先には、こちらに敬礼をしている私服姿の男性が一人向かい側の路地にいた。

 話によると、家を出たときから常に陰で護衛しているとのこと。

 

「九校戦の妨害については、何やら賭け事が行われているらしい。何を賭けているかはまだ掴めていないが、場合によっては九校戦そのものを潰しにくる可能性も考えられる。特に、君たちは狙われている身でもある。先程も言ったように、ホテルを移動させて貰ったのはこれが理由だ。代金は政府が持つから安心してくれていい。だが……」

 

 今回の件を要約して確認するように再度説明していた烏間が、突然黙り混んで渚を真剣な眼差しで見ている。

 

「もしものときは、絶対に無理をするな。俺からは以上だ。何か質問は?」

 

「いえ、特には」

 

「そうか。それでは俺はこれでいくから、ゆっくりと食べていきなさい。代金は払っておく。時間を取らせたな」

 

「こちらこそ、いろいろとありがとうございます」

 

 渚の感謝の意を受け止め、領収書を持って席を立ち、店を出ようとするが、足を数歩進めただけで烏間は立ち止まり、顔だけを渚に向けた。

 

「そういえば、司波 達也のことだが……いや、なんでもない。気にしないでくれ」

 

「……?」

 

 何かを言おうとしていた烏間だったが、達也の名前を出してすぐに口を閉ざしてしまった。

 再び歩き出した烏間は、今度は立ち止まることなく会計の元へいき、済ませて店を出ていった。

 

 そこで、ナポリタンがまだ半分残っていることに気づき、少し急ぎめに食べて渚も帰路についた。

 

◆◆◆

 

 翌日のE組は、朝から落ち着かない雰囲気に包まれていた。

 

 理由は一つ。

 一年生では達也のみがエンジニア入りした、という情報が出回っているからだ。

 

 正式発表はまだされていない、ということは、まだ秘密と言うことだ。

 秘密ということは、皆が知っているということ。

 達也が教室に入った瞬間、各方向からエールが送られていた。

 

 正式発表を行う発足式は本日の五限に入っているらしい。

 

「一科の連中、か~な~り、口惜しがってるみたいよ」

 

 つい先日、定期試験でプライドを盛大に逆撫でされた一科生が、この抜擢にますます苛立ちを募らせているのはエリカに言われるまでもなく明らかだった。

 

 しかし、選手の方は全員一科生。

 つまり、苛立ちを募らせているのは、工学系志望の一科生が主体だろう。

 

「大丈夫よ。今度は石も魔法も飛んでこないから」

 

 エリカの極端すぎる気休めには、達也も苦笑するしかなかった。

 

◆◆◆

 

 発足式が始まった。

 進行役は深雪。

 式は時間通りに始まり、つつがなく進んだ。

 

 当然だが、達也が壇上に上がっても石や魔法は飛んでこなかった。

 

 真由美によって、一人一人、選手が紹介されていく。

 紹介を受けたメンバーは、競技エリアへ入場する為のIDチップを仕込んだ徽章(きしょう)をユニフォームの襟元につけてもらう。

 その役目には、舞台栄えするという理由で深雪が選ばれている。

 

 徽章は、選手四十名――深雪と真由美を除いて三十八名――につけ終わった後は、作戦スタッフ、そして、技術スタッフへとつけられていく。

 

 真由美から達也の名前がコールされる。

 今までに、選手四十名、作戦スタッフ四名、技術スタッフ八名、マイナス、プレゼンター二名、計五十名の内、四十九人まで紹介及び徽章授与が終わっている。

 

 達也に徽章がつけられた瞬間、大きな拍手が起こる。

 それは、講堂の前列のE組のものだった。

 そこから、真由美、深雪と手を叩き始める。

 

 結果、それは選ばれたメンバー全員に対する拍手にすり替わって、講堂全体に広がった。

 

◆◆◆

 

 発足式も終わり、校内は九校戦に対する熱気が日に日に強くなっていった。

 メンバーは毎日閉門ギリギリまで練習、技術スタッフも選手のCAD調整のために忙しそうにしている。

 

 そして、渚は現在、マジック・アーツの方へと来ていた。

 

 今日の練習内容は組手。

 ただし、約束が予め決められている約束組手だ。

 

 体格、同じ一年、二科生を下に見ない、唯一面識がある、など、決して少なくない理由で渚は常に十三束とペアを組んでおり、十三束もそれを快く了解している。

 

 魔法での実力は、完全に十三束が上。

 だが、実際に試合をしてみると、現時点(・・・)ですら、渚の方が一歩上。

 暗殺を得意とする渚に、未だ十三束は追い付いていないのだ。

 

 しかし、日に日に渚が攻略されていっているのは事実であり、それに渚が対処して差を埋めさせないようにしているのもまた事実。

 

 つまり、二人はいいライバルとなっていた。

 

 今回の約束は『魔法を使わないこと』

 つまり、身体能力だけで相手を倒すことになる。

 

 この約束組手で、十三束は渚に一度も勝利をしたことがない。

 体術では、どうやっても渚に軍配が上がるのだから。

 だからこそ、対策を練っている。

 

 魔法無しで体術が上の者に勝つには、技術で勝負しなければならない。

 しかし、渚はその技術も持ち合わせている。

 そして、まだ切り札を隠し持っていることも分かっている。

 

「今日こそ……必ず勝つ!」

 

「僕も、まだ体術だけで負けるつもりはないよ」

 

 開始の合図と共に、二人の技がぶつかり合った。

 

◆◆◆

 

 地面に背中を預けて息を整える。

 対して、向こうは多少息が上がっているものの、未だに余裕があるように見える。

 

 しかし、確実に自分も上達しているのがわかる。

 何より、試合中に渚はさりげなく十三束の弱点を教えてくれているのだ。

 これで上達しなければ逆におかしいだろう。

 

「お疲れ様、鋼」

 

「うん……やっぱり渚は強いよ」

 

「僕なんてまだまだだよ。魔法有りになった瞬間満身創痍だからね」

 

「それでも押し負けないだけすごいと思うよ」

 

 試合後には、いつもアドバイスをしあったり、お互いに良かったところや悪かったところを教えあったりしている。

 これも、組手においては大事なことだ。

 

「よし、僕はモノリス・コードの練習に行ってくるね」

 

「うん!頑張ってね」

 

 十三束は、新人戦モノリス・コードのメンバーだ。

 一日一回。

 これが渚と十三束で決めた試合の回数制限。

 

 一日一回だからこそ、その一回に全力を出せる。

 

「次も僕が勝つよ、鋼」

 

 そして、待ちに待った九校戦の日がやってきた。




烏間先生は地の文では烏間に統一します。
明日修正作業に入ります。

これからも重要な話の前は内容をあえて薄くしようかなと思っていますので、あれ?内容が薄いな?っておもったら十中八九重要な話が来ると思っておいてください。
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