魔法科高校の暗殺者   作:型破 優位

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なんとか復活です。
たくさんの応援コメントありがとうございます。

今更ですが、達也たちの『たち』を漢字にしないのは読みにくいからです。
それに統一して『たち』は平仮名になっています。


魔法の時間

 懇親会の真由美を見ていた渚にとって、真由美の実力は予想を遥かに上回るものだった。

 真由美が使っていたのは、『ダブル・バウンド』という運動ベクトルを倍にして反転させるというもののみ。

 

『クラウド・ボール』はテニスコートを薄い箱で覆ったコートで行われるため、壁や天井を使っても反則にはならない。

 だが、真由美の魔法では、低反発性のボールを使っているために、床や壁で運動エネルギーが失われるリスクが出る。

 

 しかし、真由美は本当にその魔法だけで、全試合無失点、ストレート勝ちで優勝をしてしまった。

 つまり、それは相手との次元が違うということになり、真由美が十師族の一員だと再認識させられた時間だった。

 

◆◆◆

 

『クラウド・ボール』は男子の試合も行われており、そこには剣道部二年の桐原が出場する。

 その観客席には、ブランシュによって洗脳され、一時期入院しており、毎日お見舞いに行っていた桐原の恋人関係となった壬生と、その一件と剣道繋がりということで仲良くなったエリカ、エリカに引き摺られて美月、美月に誘われて幹比古、幹比古が声をかけてレオがその場に残った。

 

 E組メンバーは競技場を後にして、二年生女子の『アイス・ピラーズ・ブレイク』――略して『ピラーズ・ブレイク』、氷柱倒しとも言う――の選手、千代田(ちよだ) 花音(かのん)の試合が行われるということで『ピラーズ・ブレイク』の競技場へと向かった。

 

『ピラーズ・ブレイク』は、縦十二メートル、横二十四メートルの屋外フィールドで行われる。

 フィールドを半分に区切り、それぞれの面に縦横一メートル、高さ二メートルの氷の柱を十二個配置。

 相手陣内の氷柱を先に全て倒した方が勝者となる。

 

 その性質上、『ピラーズ・ブレイク』は極めて大掛かりな舞台装置を必要とする。

 

 さらに、巨大な氷の柱をこの真夏に何百という数を製氷しなければいけないため、男女に二面ずつの四面展開、一回戦十二試合と二回戦六試合の合計十八試合が一日のスケジュールとしては限界だった。

 

 体力をもっとも消費する競技が『バトル・ボード』なら、『ピラーズ・ブレイク』は魔法力をもっとも消費する競技だ。

 

 さらに、二日目の決勝リーグは試合と試合の間隔が短いということもあり、『最後は気力勝負』とすら言われているほど過酷なものだ。

 

 一高のいつものメンバーは『クラウド・ボール』の競技場にいるのだが、達也が、試合に出る二人は間近で見た方がいい、ということで、深雪と雫は達也と共にスタッフ席にいる。

 

 渚たちはいつも通り、観客席の中列後方に席を取って観戦していた。

 

 席順は左から、岡島、前原、磯貝、中村、茅野、渚、業となっている。

 

 観客席では、ちらほらと先程の花音の試合についての情報が飛んでおり、それによれば、一回戦目は最短決着だったのだという。

 

 試合開始のランプが点った。

 それと同時に、地鳴りが生じる。

 

 千代田家の二つ名でもある、魔法名『地雷源(じらいげん)

 

 速さと多能性が現代魔法のセールスポイントだが、やはり人である以上は得意、不得意がある。

 魔法の才能が遺伝するものである以上、血縁者の間で得意、不得意が共通することが多いのも、また当然の傾向と言える。

 

 例えば、十文字家なら『鉄壁』、一条家なら『爆裂』、七草家は不得意な魔法がないことから『万能』と呼ばれている。

 

 千代田家の『地雷源』は、振動系統・遠隔固体振動魔法という部類の中でも、地面を振動させる魔法に長けている。

 

 土、岩、砂、コンクリートなど材質は問わず、とにかく『地面』という概念を有する固体に強い振動を与える。

 それが千代田家の得意とする魔法『地雷()』であり、『地雷を作り出す者』から『地雷()』が千代田家の二つ名の由来となっている。

 

 直下型地震に似た上下方向の爆発的振動を与えられ、相手陣内の氷柱が一度に二本、轟音を立てて倒壊する。

 相手選手は移動速度をゼロにする移動系魔法『強制静止』で防御を図るが、標的を変えて次々と炸裂する『地雷原』に防御対象の切り替えが追い付いていない。

 

 そのまま五本の氷柱が倒れたところで、相手選手も防御優先から攻撃優先、捨て身の攻撃に出た。

 

 それだけの攻撃力、さぞ防御力もあるだろう。

 渚たちはそう思っていた。

 

 だが、結果は違った。

 

 相手の魔法が花音の氷柱を襲い、あっけなく音を立てて倒壊したのだ。

 

「わぁお、すごい強引ね」

 

「あはは……かなり大雑把らしいから……」

 

「でも、使用魔法を考慮すると、戦法としては間違ってないよ、中村」

 

「それは私にもわかるよ」

 

 相手が攻勢に転じたということは、相手の防御はさらに下がる。

 自陣残り六本となったところで、花音は敵陣の氷柱を全て倒し終えた。

 

◆◆◆

 

 風呂。

 本来、一糸も纏わない姿で湯に浸かり、日頃の疲れを癒すものなのだが、このホテルにある地下大浴場は元々、演習による筋肉痛、関節痛の治療目的に、ホテルの地下を流れるアルカリ性泉質の冷泉水を沸かして作った一種の療養施設で、主な利用者は中年以降の将校である。

 

 観光客の利用を想定しておらず、医者が指定した時間、お湯に浸かることだけを目的としているため、身体を洗うのは手前のシャワーブース、中は水着または湯着着用という仕組みになっている。

 

 九校戦中、渚たちはこの浴場の使用を許可されている。

 本来のホテルと同じように使えるように、という烏間の配慮によるものだ。

 

 外では、一応軍人が待機していてくれている。

 

 男性陣は水着を各自で持参しており、そこ以外は修学旅行みたいな雰囲気で入浴している。

 

「そういえば、渚ってどんな魔法使ってるんだ?」

 

「あ、そういえば気になるな。魔法まで暗殺向けとか?」

 

 全員が身体を洗い終え、浴槽で湯に使っている。

『ピラーズ・ブレイク』という魔法の目立つ競技を見たからなのか、元クラスメイトたちは渚の魔法に興味津々といった様子だった。

 

「僕の得意魔法は一応振動系だよ。部類としては千代田先輩と同じかな」

 

「じゃあ、あんな大地震とか起こせるのか?」

 

「それは無理だよ岡島くん。あんな魔法力僕にはないから」

 

 渚は岡島の比較対象に苦笑しながら、自分の魔法について大まかな内容を説明した。

 

「僕は今いったように魔法が得意ではないから、特殊なCADを使って脳波を振動させるんだ」

 

「脳波?」

 

「僕はそっちの分野において唯一魔法適正があったから、特別に専用のCADを作って貰ったんだ」

 

 渚は、中学からサイオンは知覚できていた。

 育った環境により、相手の表情、感情に敏感になっていたためか、暗殺教室に入る以前まででも感じることができていたのだ。

 

 そして、暗殺教室に入って、非魔法師でありながらサイオンを知覚することが出来るようになった。

 

「僕のCADで使える魔法は一つだけ。軍の人がくれた護身用なんだ」

 

「なるほど。だけど、脳波を振動させるって具体的にどういうことなんだ?説明をお願いしてもいいか?」

 

 魔法についての詮索はマナー違反。

 だが、これは魔法師同士に限ってなのだろう。

 磯貝の言葉に皆が渚に期待の眼差しを送る。

 

「脳波は、常に脳が微量に発している電波みたいなものだけど、特殊なCADに僕のサイオンを流し込んで対象に近づけると、相手の脳から出ている電波をかき乱して脳を撹乱、激しい船酔いのような効果とともに意識を飛ばすことができるって感じかな」

 

「つまり、渚の奥義を直接脳内に叩き込むようなものか?」

 

「それが一番わかりやすいかな」

 

 業の要約に、なるほどと納得する一同。

 だが、その要約をした業は何処か呆れ顔だ。

 

「全く……渚は何処までいっても暗殺者なんだな」

 

「え?どうして?」

 

「相手の意識を飛ばすってことは、不意打ちなら一撃必殺だ。脳に直接干渉なんてされたら防ぎようがない」

 

「確かに、さすが暗殺教室の首席だな!」

 

「ここまで来ると清々しいよな」

 

「全くだ」

 

 浴室に、笑い声が響く。

 暗殺教室の首席は、やはり何処までも暗殺者だった。




渚くんの魔法の理論はこんな感じですが、脳波については後程。
脳波の定義については私もしっかりと理解しておりますので、ご安心を。

気分を変えるために、ゲームをしながらオリジナル小説を書いてみました。
それを、とある小説家になりたい系サイトでオリジナル小説を投稿したいと思います。
時期は魔法科高校の暗殺者が完結してからですね。

その時になったら再び告知しますが、一気に数話、最初はハイペースで投稿しますので、是非一読してください。
リハビリとはいえ、設定はかなり凝ってますが、読みやすいように自分で出来る限りの工夫はしています。

もちろん、ハーメルンの既存作品も投稿しますよ。
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