サクサク進んでいるのは(私が思っているだけかも)、六千文字分ので進めた内容を余分な部分だけ省いているからだと思います。
手を抜いているつもりはありませんからご安心を。
九校三日目。
本日行われるのは、前半のヤマと言われている『男女ピラーズ・ブレイク』と『男女バトル・ボード』の各決勝戦。
第一高校の勝ち残り状況は、『男子ピラーズ・ブレイク』と『男女バトル・ボード』が各二人、『女子ピラーズ・ブレイク』が一人だ。
組み合わせ表からして『女子ピラーズ・ブレイク』と『男子バトル・ボード』を同時に観るのは不可能と言っても良いため、次の『女子ピラーズ・ブレイク』を見よう、という結論に至った渚たちは元E組メンバーは、昨日に引き続き『ピラーズ・ブレイク』の競技場へと来ていた。
昨日はスケジュールの関係上、『ピラーズ・ブレイク』は予選二回戦までしか行われていないが、今日で一気に決勝戦まで終わらせる。
インターバルの間隔が短いため、どれほど魔法力を抑えて、どれほど最短で決着をつけるかが鍵となる。
その点でいえば、花音の戦法はかなり『ピラーズ・ブレイク』向けと言えよう。
それを裏付けるかの如く、花音は予選三回戦、予選ブロック決勝を最短決着で決め、三つ巴の決勝進出を決めた。
そして、花音は家柄が『数字付き』ということもあり、魔法力はかなり高い水準にある。
『ピラーズ・ブレイク』に有利な最短決着、そして圧倒的なまでの魔法力、魔法の破壊力。
これ以上は見る必要も無い、ということと共に、ちょうど『女子バトル・ボード』準決勝のレース時間も良い感じに近づいてきたため、元E組メンバーは『ピラーズ・ブレイク』の競技場を後にし、『バトル・ボード』の競技場へと向かった。
◆◆◆
「やぁ、達也。おはよう」
「おはよう、渚。今から渡辺先輩の試合を観に行くのか?」
「うん、そうだよ」
渚たちは道中、たまたま達也と出会った。
「やぁ、司波くん。おはよう」
「おはよう、赤羽」
そして、同じように挨拶をした業に、達也は何もなかったかのように挨拶を返した。
達也と業の雰囲気自体に変化はなかったが、若干場の空気に変な冷たさが出てきたのを渚は感じた。
達也は先程まで真由美に捕まっていたらしく、今さっき解放されたところで渚たちに会ったのだという。
競技場へ着くと、かなり席が埋まっていた。
すると、渚たちの姿を見つけた一人の少女がこちらに駆け寄ってきた。
「お兄様、もうすぐスタートですよ!」
凄まじいスピードで近づいてきた深雪に達也を含めて全員が苦笑、深雪がいた席にはエリカたちも座っていて、エリカはこちらに手を振るのとともに、顔の前に手を合わせていた。
恐らく、『ごめん』と言っているのだろう。
「あの……申し訳ないのですが、席を一つしか確保することができず……」
そのエリカの仕草を代弁するかのように、深雪からも謝罪の言葉が出る。
だが、今回の準決勝は、去年の決勝カードでもある、『海の七高』と摩利が出る試合だ。
ただでさえ人気の摩利の試合なのだから、当然席の確保は難しくなる。
それが七人分ともなればそれこそ至難の業だ。
「いやいや、司波さんたちが気にすることじゃないよ。幸い後ろの方ならなんとかなりそうだしね」
「……潮田くんありがとうございます」
「すまない渚。また後でな」
実際、渚たちも席が確保してあるとは思っていない。
だからこそ、深雪たちの謝罪には戸惑うところがあった。
そんな元E組メンバーの気持ちを代弁した渚に、謝罪よりも、ということで深雪が感謝を述べ、達也も断りを入れて深雪とともに確保してある席へと向かった。
そこで、業が茅野に悪戯な笑みを浮かべて囁いた。
「ほんと、司波くんと妹ちゃんは仲がいいねぇ。茅野ちゃんも見習ったら?」
「え!?な、なんでそこで私が出てくるの!?」
その囁きの意味を一瞬で理解した茅野は、顔を真っ赤にして意味が分からないように見えるよう叫ぶも、追撃は別の場所から容赦無くきた。
「愛しの王子さまはいつまでたっても愛しの王子さまとは限らないんだよー?」
「中村さんまで!?」
例のごとく二人に挟まれて弄られる茅野の顔は火が出る様にさらに赤くなっていく。
「~~~~ッ!ほ、ほら!!早くしないと席が埋まっちゃうよ!!」
そして、とうとう限界に達したのか、耐えきれなくなった茅野は中村と業の背中を押して階段を上がっていく。
それに残された渚、磯貝、前原は顔を見合わせて苦笑しながら三人に続いて階段を上っていく。
ちなみに、岡島だけは相変わらず写真を取り続けていたが、気がついたら皆がいなくなっていたため磯貝が助けにいくまでずっとその場をうろうろしていた。
『バトル・ボード』の準決勝は1レース三人のニレース。
それぞれの勝者が、決勝で一対一のレースを戦うこととなる。
渚たちが席について間もなく、レディ、を意味する一回目のブザーが鳴り、観客席は静まり返る。
一拍の間が空き、二回目のブザー。
スタートが、告げられた。
先頭に躍り出たのは摩利。
だが、予選とは違い背後に二番手の七高がピッタリとついている。
少し遅れて、三番手。
「……すっげー」
前原から感嘆の言葉が漏れる。
激しく波立つ水面は、二人が魔法を撃ち合っている証だ。
普通ならば先を行く摩利の方が引き波の相乗効果で有利だが、七高の選手は巧みなボード捌きで魔法の不利を補っている。
前原の感嘆は、その場で魅せられている二人の技量についての観客の感想をそのまま表していた。
波立つ海の上でバランスを保つのは、かなり難しいことを知っている元E組メンバーにとっては、尚更だろう。
スタンド前の長い蛇行ゾーンを過ぎ、ほとんど差がつかぬまま鋭角コーナーへと差し掛かる。
ここを過ぎれば、観客はスクリーンでの観戦になる。
その瞬間、異常事態が起きた。
「あっ!?」
観客席から悲鳴が聞こえ、何人も立ち上がった。
渚たちもその例に違わず、立ち上がってしまっている。
七高選手が大きく体勢を崩していたのだ。
「オーバースピード!?」
誰かが叫んだ。
確かに、ボードは水を掴んでおらず、飛ぶように水面を滑っている。
その先は、鋭角コーナー。
つまり、フェンスだ。
――前に、誰もいなければ。
七高の選手が突っ込むその先には、減速を終えて加速を始めたばかりの摩利がいたのだ。
摩利は身体をフェンスに向けていた。
だが、背後からの異常に気がついたのか、肩越しに振り返った。
そこからの反応は、見事としかいいようがない。
前方への加速をキャンセルし、水平方向の回転加速に切り替え、水路壁から反射してくる波も利用して、魔法と体捌きの複合でボードを半転させた。
暴走している七高の選手を受け止めるために、突っ込んでくるボードを弾き飛ばす移動魔法と、相手を受け止めた衝撃で自分がフェンスへ飛ばされないようにする為の加重系・慣性中和魔法の二つの魔法のマルチキャスト。
その早さに、渚たちは大事には至らなさそうだ、と安堵した。
本来ならば、このまま事故を回避できる。
だが、不意に水面がいきなり少しだけ沈み込んだため、大きく体勢変更をしたばかりの摩利の体勢が大きく崩れた。
相手のボードを弾き飛ばすのは成功した。
だが、水面が沈んだために体勢を崩しているため、魔法の発動にズレが生じる。
魔法が発動するよりも早く、足場を失った七高の選手と摩利が衝突し、そのままもつれ合うようにフェンスへと飛ばされた。
観客席から大きな悲鳴がいくつも上がり、茅野も口を両手で覆っている。
磯貝や前原、岡島、中村も他の観客と同様に腰を浮かせて混乱していた。
渚と業もほぼ同じだ。
だが、二人は瞬間的に、後ろを振り向いた。
後ろには、怪しい人物は誰もいない。
――見られていた。
それが二人の共通認識。
明らかに明確な『悪意』を感じ取った二人は、だが相手が分からないためどうすることもできず、今はその場の雰囲気に呑まれるだけだった。
レースは、中断となった。
投稿するまでには約ニ時間、遅ければ四時間はかかってますね。