魔法科高校の暗殺者   作:型破 優位

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始めはふと思い付いたストーリーだったのですが、まさかここまで高い評価を貰えるとは……
この小説はまだまだこれからですので、今は我慢してください。



接触の時間

 悲鳴が上がっている競技場の外で、柱に持たれながら一人の男が誰かと連絡を取り合っていた。

 

「――はい、魔法は正常に発動、一高渡辺選手の棄権は確定でしょう。それと、サブターゲットの方も確認しました。明日、決行に移します」

 

 そこで通信を切り、競技場から離れていく男。

 男の右手には、渚や業、磯貝といった現在九校戦を見に来ている元E組の写真が握られており、一ヶ所だけ大きく赤い丸がつけられていた。

 茅野を囲むように。

 

◆◆◆

 

 摩利が全治一週間の怪我で競技に出られなくなったことは一高に限らず知るところとなった。

 七高の選手は摩利が庇ったおかげで軽傷で済んだが、危険走行のため失格。

 一高の三日目の成績は、『男女ピラーズ・ブレイク』で優勝、『男子バトルボード』二位、『女子バトルボード』三位だ。

 

 総合二位の三高が『男女ピラーズ・ブレイク』で二位、『男女バトル・ボード』で優勝という好成績を収めたため、両校のポイント差は前日よりも縮まっていた。

 

 さらに、本戦の『ミラージ・バット』に出場予定だった摩利は怪我のため出場を辞退、代役として新人戦『ミラージ・バット』に出場予定だった深雪が本戦に出場することとなった。

 

 そして迎えた九校戦四日目。

 本戦は一旦休みとなり、今日から五日間、一年生のみで勝敗を争う新人戦が行われる。

 新人戦のポイントは本戦の二分の一ではあるが、新人戦優勝は出場する一年生の栄誉となるため、気合いの入り方は本戦にも劣らない。

 

 競技順は本戦と変わらず、初日は『スピード・シューティング』の予選と決勝、『バトル・ボード』の予選が行われる。

 

 だが、開会式があって午前中に余裕がなかった本戦とは違い、新人戦は午前中を女子、午後を男子と分けて一気に決勝まで行う形式をとっている。

 

『スピード・シューティング』に限らず、試合中にCADを調整することはできないが、選手の希望を聞いて試合の合間に細かな調整を行うのは、エンジニアの重要な仕事だ。

 

 よって、この期間中は達也は選手に付き添わなければいけないため、一緒に観戦することができない。

 

 達也が担当する競技は『女子ピラーズ・ブレイク』、『女子スピード・シューティング』、『女子ミラージ・バット』だ。

 

 何故女子ばかりなのかといえば、男子からの反発が強かったこと、そして、何より深雪の担当エンジニアに達也を外せないからである。

 

 そして、渚たちは今回、久しぶりにエリカたちと席を前後させて座った。

 

「そんなに日が経ってないのに、かなり久しぶりに感じるよ」

 

「確かに、いつもエリカとレオのいがみ合いを聞いていたけど、ここ最近聞いた気がしないね」

 

「ははは……間違いないや」

 

 渚の思い出したように呟かれた言葉に、幹比古は苦笑する。

 現在の席順は、渚たちの列は左から業、渚、茅野、中村、磯貝、岡島、前原となっており、一段下の列は、幹比古、美月、ほのか、深雪、エリカ、レオとなっていた。

 

 業の一段下に幹比古がいて、岡島の一段下にレオがいる状態だ。

 

 レオは前原、岡島と、エリカは給仕係繋がりで磯貝と、深雪、ほのか、美月、中村、茅野の五人でガールズトーク、渚と業、幹比古で近況のことや、魔法についてそれぞれ話していた。

 

 ふと、渚はなんとなく周囲を見渡す。

 別に何か理由があるわけではなく、なんとなく、だ。

 

 そこで、顔を見知った三人の上級生を見つける。

 

「あ、会長と……渡辺先輩だ」

 

「……何?」

 

「本当だ。渡辺先輩怪我はもういいのかな」

 

 そこにいたのは、真由美と摩利、鈴音だった。

 幹比古は摩利の怪我の心配をしていたが、業は別の人物、会長という名を聞いてその方角を向いた。

 

「渚。会長ってどんな人?」

 

「うーん。学校では小悪魔的な立ち振舞いをしてるよ。後、若干人を弄ることが……」

 

 そこで、メイドを思い出したのだろう。

 はぁ、とため息をつく渚。

 

「……なるほどね」

 

 業はその情報を聞いた途端、口をニヤッと歪ませて席を立ち、真由美たちのいる方へ向かった。

 

「あ、ちょっと。どうしたの、業?」

 

「いや、ちょっと挨拶にでも」

 

 そう言って手をヒラヒラと振りながら真由美たちの元へと向かう業。

 真由美たちは業が近づくまで談笑をしていたが、業が自分たちの方へ向かってきているのに気がつき、そちらを見る。

 

「どうかされましたか?」

 

 業が真由美たちの前で立ち止まると、ニッコリとしながら真由美が業に話しかけた。

 隣の摩利はため息を付きながら頭に手を当てていることから、恐らくナンパと間違えられているのだろう。

 

 鈴音は無表情だ。

 

「一高会長、七草さんでしょうか?」

 

「ええ、そうですよ」

 

 なので、業も張り付けたような笑みで真由美と接する。

 

「俺は赤羽 業といいます。渚の元クラスメイトです。先の件についてはありがとうございます」

 

「……!潮田くんの元クラスメイトさんでしたか。とても辛い思いをさせてしまい、申し訳ありません」

 

 名前を聞いて、真由美だけが、ん?、という表情をしたが、渚の元クラスメイトと聞いた瞬間に、摩利は顔を上げて、真由美は目を見開いた。

 摩利は事情を知らないが、真由美は『暗殺教室』のことを知っている。

 

 だからこそ、真由美はその場で席を立ち、腰を曲げて謝罪をした。

 

「あ、いえ。今回ここにきたのはそういうわけじゃなくてですね……渚から聞くに、会長さんは中々にいい性格をしていらっしゃるとか」

 

「……え?」

 

 そして、腰を曲げたまま、固まる。

 

「あー、そうなんだよ。こいつ学校だと猫被っててさー」

 

「えぇ?」

 

「確かに、会長の魔顔(まがん)に抵抗できる男子生徒はほぼ居ませんからね」

 

「え、えぇ!?」

 

 全く話についていけてない真由美。

 そこに、摩利と鈴音から容赦ない追撃が加わっていく。

 鈴音に関しては、『マルチスコープ』の別名、『魔眼』にかけているという手の込みようだ。

 それを今度は本物の笑みを浮かべ、業が本題に入る。

 

「そんな会長さんに、自分から少しお話が――」

 

◆◆◆

 

「……彼は何をしにいってるんだい?」

 

「さ、さぁ……」

 

 真由美に何をしにいったのかはわからないが、業の反応を見た感じ渚にとって良いことではないのは確かだった。

 だが、見ていると真由美が業に向かって腰を曲げているのだから、それがさらに謎を呼んでいる。

 

 そしてそこからしばらくして何かを取り出して真由美たちに見せる業。

 それを見て、渚の全身から冷たい汗が流れる。

 

「……まさか業……あの写真を!?」

 

「あの写真?……メイド服とか?」

 

 渚は幹比古の言葉を首を縦に振ることにより肯定し、業たちを注視する。

 業から取り出されたのは、カメラだ。

 

 それを真由美たちに渡し、何故か握手を交わす二人。

 手遅れだった。

 

「なんというか、渚の周りって面白いというか、すごい人ばかりだよね」

 

 あそこには、摩利もいる。

 そして、写真も見ている。

 

 もしかしたら、風紀委員勧誘の脅迫材に使われるかもしれないし、間違いなく真由美から弄られる。

 

 うぅ……と涙を流す渚に、小動物的な何かを感じた幹比古はとりあえず慰める。

 

「ほら、元気出しなよ。さすがの渡辺先輩もそんな手は使わないって。会長のは……ごめん」

 

 結果、慰めきれなかった。

 そこで、業がなに食わぬ顔で戻ってくる。

 

「あれ、どうしたの、渚?」

 

「うぅ……なんであの写真見せちゃったの……」

 

「ああ、あれねー。だって、面白そうじゃん」

 

「そんだけの理由で!?」

 

 正に渚の心からの叫びだろう。

 業の態度もここまでくれば清々しいものがある。

 

「なんとか七草とのパイプは持てそうだ」

 

「……え?」

 

 急に耳元で囁かれた業の言葉に、渚は理解が追い付かない。

 チラッと見せた業の携帯端末には、なんと、『一高会長』とつけられた番号が入っていた。

 

「ごめんね、渚。今度ちゃんと埋め合わせはするよ」

 

「あ、うん。気にしないでいいよ」

 

 そして、今度は真面目な表情で謝る業。

 あまりの変化に渚はただ業のペースに呑まれるだけだった。

 

「いやいや、埋め合わせはするよ。そうだな……夏だしビキニとかどう?」

 

「その選択はおかしいよ!!」

 

「……渚と業って、とても仲が良いんだね」

 

 なんだかんだ言って、二人とも楽しそうなのだ。

 完全に置いていかれた幹比古だったが、その二人のコントみたいな会話に口元を緩ませながら聞いていた。




そして、ようやく入れた新人戦。
九校戦編はここからですよ、皆様。
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