魔法科高校の暗殺者   作:型破 優位

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私も我慢しています。
皆さんもその時がくるまで後少しですので、どうか我慢してください。




新人戦の時間

 ランプが点るのとともに、クレーが空中に飛び出す。

 得点有効エリアに飛び込んだ瞬間、それらは粉々に粉砕された。

 

 雫の視線にブレはなく、ジッと真っ直ぐを見ている。

 ただ、それは本当に文字通り、標的など視界に入ってないかのように真っ直ぐ見ているように見えたのだ。

 

 そんな友人の順調な滑り出しに、前列にいた深雪たちは安堵の息を吐く。

 

「……もしかして、有効エリア全域を魔法の作用領域に設定しているんですか?」

 

 雫の魔法を見て気づいたのか、自信なさげに深雪とほのかに訪ねた。

 

「そうですよ。雫は領域内に存在する固形物に振動波を与える魔法で標的を砕いているんです。内部に疎密波を発生させることで、固形物は部分的な膨張と収縮を繰り返して風化します。急加熱と急冷却を繰り返すと硬い岩でも脆くなって崩れてしまうのと同じ理屈ですね」

 

「より正確には、得点有効エリア内にいくつか震源を設定して、固形物に振動波を与える仮想的な波動を発生させているのよ。魔法で直接に標的そのものを振動させるのではなく、標的に振動波を与える事象改変魔法の領域を作り出しているの。震源から球体に広がった波動に標的が触れると、仮想的な振動波が標的内部で現実の振動波になって標的を崩壊させるという仕組みよ」

 

 ほのかと深雪が目をシューティングレンジに固定したまま、二人掛かりで行った丁寧な説明に、美月はしきりと頷くばかりだった。

 

「―――ごめん、私ギブ。渚、解説お願い!」

 

 だが、その説明はどうやら魔法師だから通った説明らしい。

 実際に、ほぼ全員がかなり渋い顔をしているのだから。

 

「うーん。北山さんの魔法は、簡単に言うと『罠』だよ」

 

「罠?罠って、そのまま罠だよね?」

 

「そうだよ茅野。罠は設置しただけでは発動しない。その罠に引っ掛かる獲物がないとね。今回は北山さんの魔法が罠で、クレーがその獲物。仕掛けた『(魔法)』に『クレー(獲物)』が引っ掛かったって考えるといいよ」

 

「なるほどね……教え方上手くなったね、渚」

 

「え、そうかな?」

 

「うん!今のもわかりやすかったもん!教え方とか殺せんせーぽかったし!」

 

「あー、確かに。あのタコも物事に例えて教えることが多かったね」

 

 渚の説明でやっとどういう魔法なのか理解に至った元E組メンバー。

 渚も上手く説明ができたか不安ではあったが、殺せんせーみたいと言われて嬉しそうに、よかった、と呟いた。

 

「それにしても、北山さんすごいね。まだ一個も外してない」

 

 もう試合も終盤だが、雫は未だにパーフェクトだ。

 渚がそれについて感嘆の声を上げると、前から食い付くように深雪が自慢げに魔法について説明した。

 

「当然よ潮田くん。お兄様がこの競技に勝つために作ったオリジナル魔法なんだから」

 

「へぇー、これって司波くんのオリジナル魔法なんだ」

 

 業の言葉と共に、最後のクレーが破壊された。

 試合終了。

 結果はパーフェクト。

 

 雫の準々決勝進出は確定となった。

 

◆◆◆

 

『女子スピード・シューティング』は出場した一高の選手は三人全員が予選を突破した。

 渚たちはせっかく席がこんなに取れているんだから、とその競技場から離れずに試合が終わったら人問わず談笑タイムとなっていた。

 

「――もうすぐ準々決勝も始まるころだし、トイレに行ってくるぜ」

 

 ふと、長丁場を予想してなのか、レオがトイレに行くとで立ち上がった。

 

「確かにもう試合が始まってしまいますね……私たちも行っておきませんか?」

 

 レオや美月が言うように、もうそろそろ準々決勝が始まる時間になってしまう。

 せっかく試合を楽しんでいたのに、どうしても行きたい、となってしまっては台無しだ。

 

 だが、ここで皆が一斉にトイレに行ってしまうと、ひとつ問題が生じる。

 

「皆行くと席とられちゃうから、行きたい人を半分にして、残って行かない人と一緒に留守番、戻ってきたら交代ってしよう」

 

 エリカの提案により、先に一高メンバー、後が元E組メンバーと決め、さっそく一高メンバーはトイレへと向かった。

 がら空きになった前列を取られないように、元E組メンバーがそれぞれが絶妙な間隔で位置を確保する。

 

 もっとも声をかけられやすい通路側の席には業と中村を座らせて、次に声をかけられやすい左側に磯貝と前原が座り、茅野、渚、岡島で三角形を作るように座る。

 

 当然のことながら、席に座ろうとする人たち――主に生徒――がくるのだが、業と中村によって毎回退けている。

 

 磯貝と前原の方は通路側でなかったことが功を奏して、声をかけられるようなことはなかった。

 

 業と中村側も、最初はかなり突っかかってくる生徒ばかりだったが、レオと幹比古がかなり早く戻ってきてくれたおかげで、今は彼らの威圧感だけで話しかけてこなくなった。

 

 あまり混んでいなかったのか、深雪たちが戻ってきたのはそれから間も無くで、次は元E組メンバーがトイレ行く番だ。

 

「んじゃ、千葉さん頼むね」

 

「任せときなさい」

 

 この中で一番口が強そうなエリカに通路側の方を任せて、渚たちはトイレへと向かった。

 

 トイレ前は案外人がおらず、一応の集合場所は決めて男女別々のトイレへと入る。

 

 済んだものからその集合場所、トイレ前の少し開いた広場にあるベンチに座って待つ。

 

「そういえば、業はどうやって会長と連絡先の交換をしたの?」

 

「ああ、交換することが出来た理由は二つあるんだけど、まず一つ目は、俺が『暗殺教室』出身だからってこと。向こうも魔法科高校以外の一般生徒の元E組とのパイプはあった方が良いっていう判断をしたからだね。そして、二つ目が重要だ」

 

「…………」

 

 業が真剣そのものの顔で『重要』と言っているのだから、余程重要なことなのだろう、としっかりと業の言葉に耳を傾ける渚。

 

「……二つ目は、渚の弄り役代行だ」

 

「いや、何してんの!?」

 

 真面目に耳を傾けた自分が馬鹿だった、と渚は全力で突っ込みながら思った。

 

「いや、でも俺が今まで会った一高の生徒、誰も俺たちみたいに渚を弄ってくれなさそうだったから、やっと適任を見つけたって感じなんだよ」

 

「え、まさか会長は本当にそんな理由で連絡先交換してくれたの?」

 

「案外これが一番の理由だと思うよ」

 

 今度のため息は、若干頭痛を覚えたかのように頭を抱えて出された長いものだった。

 

「お待たせー……って、渚どうしたの?」

 

「うぅ……いや、なんでもないよ茅野……気にしないで」

 

「あ、う、うん……大変だね渚も」

 

 そこで中村と茅野も来たのだが、渚のどんよりとした雰囲気に茅野がいち速く気がつき、気遣う言葉を投げ掛けるも、返事をするときの渚の雰囲気でなんか察してしまっていた。

 

「全員集まったことだし、席に戻ろうか」

 

「おっけー」

 

 磯貝の一言で皆ベンチから立ち上がり、観客席の方へと戻る。

 

 そんなE組たちの姿を、ジッと見ていた一つの人影があった。

 

「――目標観客席へ戻っていきました。『スピード・シューティング』が終わり次第、ターゲットの身柄を拘束します」

 

『了解だ。失敗するなよ』

 

「勿論です」

 

 通信を切って端末をポケットにいれ、男はニヤッと口元を歪ませて彼らの尾行を再開した。




魔法の説明の腕が前より落ちてなければいいのですが。

今回は敢えてここで止めました。
この若干のオリジナルを書き終えれば、いよいよですが、なんか読みにくいような……
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