正しくは、『クラウド・ボール』と『ピラーズ・ブレイク』です。
そしてもう一つ。
照準補助システムの有無の描写をすっかりと忘れていました。
ここでも説明しますと、趣味レベルで作ったため照準補助システムはついておりません。
両方とも訂正はしました。
申し訳ありません。
渚が『ピラーズ・ブレイク』の競技場へ着いたときには、既に予選一回戦が全て終了しており、二回戦も最終といったところだったが、その場の雰囲気は興奮冷めやらぬと言った感じだった。
業と連絡を取り合い、なんとか見つけて席に座る。
「遅くなってごめんね。すごい盛り上がってたようだけど、何かあったの?」
「いや、さっき司波くんの妹ちゃんが一回戦最後の試合に出たんだけど、なんか魔法師ライセンスA級レベルの魔法……周りから確か、『
「それに、巫女さんの服もとても似合ってた!」
業と茅野から説明を受けた渚だったが、業も興奮を隠しきれないところを見ると、そこまですごい魔法を使ったのだろう。
少し気になったため、アドバイスブックを取り出して『インフェルノ』について調べてみる。
「渚……リュックの中ずっと気になってたけど、あんたまさかずっとそれを持ち歩いてるの?」
「すごいね渚……私まだ半分も読めてないよ」
アドバイスブックを開いている渚を見て、実際にそれを貰っている中村と茅野が呆れと称賛、別々の意味で呟いた。
『A級魔法師ライセンスの試験の中でも、『インフェルノ』の難易度は頭一つ抜けています。振動系魔法が得意な渚くんにとってももしかしたら参考になるものがあるかもしれませんので、今回取り上げてみました』
「あった」
「え、何が?」
「『インフェルノ』についての説明。ほら、ここ」
業の言った通り、魔法師ライセンスA級の試験に出される魔法と書かれている。
つまり、今の時点で深雪は魔法師ライセンスのA級を軽々と取れるほどのレベルにまであるということだ。
渚と共にアドバイスブックを覗く両脇の二人。
『まず、『インフェルノ』の構造から説明していきましょう。『インフェルノ』は、中規模エリア用振動系魔法と呼ばれ、対象とするエリアを二分割して、一方の空間内にある全ての物質の振動エネルギーや運動エネルギーを減速、その余剰エネルギーをもう一方のエリアに逃がして加熱することでエネルギーの辻褄を合わせるものです。大本の原理は理科の授業でもやった『状態変化』を使ったものなのですが、今回はエアコンを使って説明していきましょう』
チラッと二人を見ていると、若干呆れてるような顔をしていた。
恐らく、何処までも先生な殺せんせーに呆れているのだろう。
だが、断じて馬鹿にしているわけではなく、良い意味で呆れているのだ。
『まずは、エアコンを使うに当たって、屋内と屋外にエリアを二分割しましょう。エアコンで冷房をつけて、屋内を冷やします。ですが、屋外へは屋内を暖めるために使った二酸化炭素などの温室効果ガスが出されていくため、事実上屋外は暖められていきます。
「とてもわかりやすかった……でも、殺せんせーは渚が魔法科高校に入ることが分かっていたんだね」
「全く。あの先生には敵う気がしないね」
「本当に、その時はビックリしたよ」
本当に、渚自身もまさか殺せんせーが魔法科高校に入ることを分かっていたとは思っていなかったのだ。
「あ、渚!次は司波さんの試合だよ!」
いつの間にか、二回戦最終試合となっていた。
段々と上がっていく競技場のボルテージ。
そして、姿を表した深雪に、渚は一瞬目を奪われた。
確かに、茅野の言うとおり、とてもよく似合っている。
これなら競技場のボルテージが上がるのも納得だ。
相手の選手も完全に萎縮している。
友人たちを見てみると、業は今まで通りの視線で深雪を見ていたのだが、茅野は目を輝かせながら、中村と磯貝は頬を緩ませながら深雪を見ていた。
前原に関しては「深雪ちゃんさいこーー!」と叫んでおり、岡島にいたっては鼻血を出しながら連写していた。
その光景に思わず苦笑するも、ライトの光が黄色、つまり『用意』の意味を表すものに変わったため、フィールドへと視線を向けた。
ライトが、スタートの意味を表す青へと変わる。
その瞬間、深雪の氷柱を冷気が多い、相手の氷柱を熱気が覆った。
相手が情報強化魔法を氷柱にかけるも、深雪の魔法の強さに全くの意味を成していない。
『インフェルノ』の性質上、この魔法は『ピラーズ・ブレイク』において最強の魔法ともいえるものだろう。
不意に、敵陣の気温上昇が止まった。
そして、敵陣の中央から衝撃波が広がり、十二本全ての氷柱が音を立てて崩れる。
深雪は一回戦同様、パーフェクトで三回戦に駒を進めた。
◆◆◆
渚たちの朝食や昼食、夕食は、烏間の計らいでホテルの一般人では使用できない部屋で取ることになっている。
食堂が高校で貸しきられているためなのだが、案外こちらの方が料理内容も豪華、おかわり自由なため、不満は一切ない。
個室に変わりはないため、無駄に広いということもなく、とても快適な空間だった。
「いやー、今日の司波さんの魔法はすごかったよ!」
「ああ。まさか彼女が一高のエースだなんて知らなかったよ。でも、あそこまでの実力なら納得するしかないな」
食事の時の内容は、やはり『ピラーズ・ブレイク』についてだった。
茅野はその時の興奮そのままに、磯貝も興奮を押さえきれていなかった。
「なぁ岡島。写真はどれだけ撮れたよ」
「フフフフ……軽く四桁は撮ったぜ!」
「マジか!その中の数枚だけでいいから、俺にもくれよ!」
「当たり前だろ?俺とお前の仲じゃないか」
正し、二名ほど『ピラーズ・ブレイク』の方向性が違ってはいたが。
「あはは……相変わらずだね二人とも……でも、今回は二人の気持ちも分かるなー」
「まぁ、そうだとしても二人は異常なんだけどねー」
男子二人の行動に、女子二人がそれぞれコメントを残す。
だが、この場で唯一業だけが何やら考え事をしているようだった。
「どうしたの、業」
「ん?いや、あのCADを調整したのは司波くんだと思うんだけど、さっき調べても『インフェルノ』は起動式が一切公開されていない魔法なんだよ。そんな魔法、なんで司波くんが知っているのかなーって思っただけ」
業が軽く言った言葉は五人が談笑しているために渚にしか聞こえていなかったが、確かに達也の技術力には、目を見張るものがある。
実は、渚にも少し腑に落ちないことがあった。
夏休み前、あずさの課題で飛行魔法について議論があったとき、達也はその理論を完全に理解しており、その数日後、飛行魔法は、『トーラス・シルバー』という名で出された。
あまりにも、タイミングが良すぎるのだ。
さらに、公開されていない魔法の起動式も知っている。
――達也がその『トーラス・シルバー』本人なのではないか。
そんな仮説が渚の中でできたのだった。
◆◆◆
業が考えていたのは、全く違うことだった。
まず、達也に関して。
『インフェルノ』、『アクティブ・エアー・マイン』、達也が担当する種目は今のところ全て上位独占。
これほどの技術力があるのなら、それなりに有名となっているはず。
だが、当然司波 達也の名前が有名なエンジニアの中にあるわけがない。
だからこそ、仮説を立てた。
――彼がトーラス・シルバーなのではないか、と。
この件については後々分かっていくからこそ考え込む必要もなかったのだが、問題は妹の深雪の方にあった。
魔法師ライセンスA級の高難易度魔法を意図も容易く使う少女の親が普通の家系なわけがない。
だから、考えた。
十師族で一番魔法力が強そうな家系を。
兄妹が全く違う性質でも、おかしくない家系を。
その結果、夕食を食べ終わる頃には答えは出たのだ。
――あの兄妹は、『四葉家』の人間だ、と。
久しぶりのアドバイスブックの登場。
状態変化を使っている魔法なので、この魔法のモチーフになってそうなドライアイスを例に使ってみました。
……これで分かるといいな。(正直苦し紛れです)
追記
今回は感想にて素晴らしい例えがあったため、本人了解のもと使わさせていただきました。
今回の私のやつでは説明不十分でしたからね。
次話はまたいつも通りの時間となります。
魔法の表記は初出のときは漢字とルビ振り、二回目以降はカタカナ表記にします。