だけど、それ以上を考え出せない……辛い。
タグに、『作者、魔法理論に敗北』
とでも付け加えましょうか。
九校戦六日目、新人戦三日目。
今日は『バトル・ボード』の男女準決勝から決勝、『アイス・ピラーズ・ブレイク』男女予選から決勝リーグまでが行われる。
朝早くから行われた『ピラーズ・ブレイク』予選三回戦は、出場選手六人に対して一高の選手が三人、どの試合にも一高の選手が出るという事態になり、決勝リーグを一高で独占することも現実味を帯びている状態にあった。
さらに、先日の深雪の『インフェルノ』のおかげで、観客席は大学の関係者や企業関係の人で埋め尽くされていた。
そのため、渚たちは座る席を見つけることができず、仕方なく『バトル・ボード』の競技場へと向かった。
『バトル・ボード』の競技場では、女子準決勝の第1レースにほのかが出場することとなっており、既にスタートの位置についている。
『ピラーズ・ブレイク』に客を取られているおかげ(?)なのか、席は若干空席が目立ち、渚たちも難なく座ることができた。
座ってスタート位置にいる選手を見たとき、渚たちは全員一致で苦笑していた。
「まさかとは思っていたけど……」
「さすがにこれはないわなぁ」
「あはは……見事に術中にハマっちゃってる感じかな……」
「もうちょっと何かあると思うんだけど……」
「俺でもこれが罠ってぐらいわかるぜ……」
「さすがに安直すぎるな」
「勝負はもうついたね」
中村、前原、茅野、渚、岡島、磯貝、業とその光景について感想を漏らしていく。
スタート位置についている選手は、一様に色の濃い遮光性のあるゴーグルを着用していた。
間違いなく、達也の術中にハマっている。
第1レースがスタートした。
今回はスタート直後の閃光はない。
「あれ、出遅れたのかな」
「たぶん、ついて行っているんだと思うよ、茅野ちゃん」
茅野がほのかの順位関して疑問を溢したが、業の答えに納得する。
ほのかはスタンド前の緩い蛇行を過ぎて、二番手で最初の鋭角コーナーへ侵入した。
だが、ここで先頭の選手が妙なコース取りをする。
「……なるほど、そういうことね」
先頭の選手は、大きく減速しながら、コースの中央をターンしたのだ。
ほのかは同じように減速はしてコースの内側ギリギリをすり抜けてトップに立った。
普通なら、減速をして内側ギリギリを回るか、減速を抑えて外側ギリギリを回るかなのだが、今のように減速して中央を回るのは中途半端でしかない。
「ん?どういうことだ、業」
「カーブ曲がるときを見てれば分かるよ、前原」
今度は緩く大きなカーブに差し掛かった。
その時、コースに影が落ちる。
「あ、そういうことね」
ほのかは、緩やかなカーブのため先程よりは減速を抑えて内側ギリギリを回っているが、ほのかに抜かれた選手は再び大きく減速し、中央を回ってカーブを抜けた。
それにより、ほのかとの差が更に開く。
「遮光性のあるゴーグルをつけさせて、暗いところを見えにくくさせ、コースの影を魔法で落とすことによって、感覚ではもっと広いとわかっていても視覚の情報で影の外側を回らなくならないといけないということか。CADの技術力もすごいけど、頭もかなりキレるね」
『女子バトル・ボード』の準決勝は一周目が終わった時点で、ほのかと二位との間には決定的な差が開いていた。
◆◆◆
午前の競技が終了後、『ピラーズ・ブレイク』の結果を見た渚たちは、見た瞬間に驚きを通り越して呆れていた。
「決勝リーグに一高の選手三人ねぇ……私もそれなりにすごい人たちは見てきたけど、司波くんもその人たちに見劣りしないくらいやらかしてくれるわね」
「でも、結構楽しみだな。どんな試合展開になるのか」
「昼飯は午後の『ピラーズ・ブレイク』見てから食べるとして、早く席取りに行こうぜ」
「それが得策だね」
そんな会話があり、渚たちは一足先に『ピラーズ・ブレイク』の競技場へ向かい、午前から待機している人もかなりいたがやはり昼食とかで席を空けた人も多く、なんとか人数を分けて座ることができた。
磯貝、前原、岡島ペアと、渚、茅野ペア、中村と業は一人である。
磯貝たちは観客席中央前列、渚と茅野は観客席後方前列、業は中央後列、中村は後方中列だ。
茅野は渚に意識がずっと向いているため気がついていなかったが、前方と後方から業と中村が凄い勢いで写真を撮っているのを渚は気づいていた。
――この二人。写真を撮るだけために一人で……
そんな考えが渚の頭に過ったが、もしそうだとしたら最早清々しいほどだ。
席が離れているため何か言うこともできず、茅野と会話しているためそれを中断してまで行くこともない。
何より、久しぶりに茅野と二人きりで喋れる機会ができたのだから、それに時間を使う必要もない、というのが渚の考えだった。
それか数十分後に、場内放送により、今回試合に出るのは決勝リーグに進出する三人のうち、深雪と雫だけだという放送が流れた。
残りの一人の選手は三回戦の試合でかなり消耗したため、棄権とのことだ。
それからさらにお昼を回り、小一時間たった頃、コールと共に二人の選手がステージに上がった。
それに伴って、観客席は水を打ったように静まり返る。
フィールドを挟んで対峙する二人の少女。
片や、白の単衣に緋の袴、巫女姿の深雪。
片や、水色の振り袖姿の雫。
二人から放たれる締め付けるような静けさが、逆に二人の闘志の強さを表しているようにも見える。
始まりのライトが点った。
瞬間、同時に魔法が撃ち出される。
熱波が雫の陣地を襲うが、雫の氷柱は持ちこたえていた。
エリア全域を加熱する『インフェルノ』の熱波を、氷柱の温度改変を阻止する『情報強化』で退けているのだ。
今度は深雪の陣地を地鳴りが襲う。
雫の母が得意とする魔法、『共振破壊』をさらに応用した魔法で深雪の氷柱を倒そうとするも、深雪の自陣にできている冷気は、元々振動エネルギーを減少させたことによってできているため、共振を呼ぶ前に鎮圧された。
二人はお互いに魔法をブロックし、お互いの氷柱に魔法をかけあっている。
傍らから見れば互角の攻防に見えるのだろうが、しっかりと状況判断ができる人が見れば優劣は明らかだった。
雫の魔法は完全に深雪によってブロックされている。
対して、深雪の魔法は雫によってブロックされてはいるのだが、それは氷柱自体の加熱を防いでいるのであり、加熱された空気からの熱は防げていない。
よって、少しずつではあるが氷柱が溶け始めているのだ。
そこで、雫は状況打破のためにCADをはめた左腕を右の袖口に突っ込んだ。
引き抜いた手に握られていたのは、拳銃型の特化型CAD。
その拳銃型のCADを深雪の氷柱に向けて、引き金を引いた。
つまり、二つのCADの同時操作だ。
これは、サイオンの完全な制御を前提として使えるもので、それだけでも雫の魔法師としてのレベルの高さが見てとれる。
雫の特化型CADは、サイオンの信号波の混信を起こすことなく起動処理を完了させた。
深雪はこの雫の二つのCAD同時操作という技術に動揺したのを表すように魔法を一瞬止め、それにより魔法の継続処理が中断。
そこへ雫の新たな魔法が襲い掛かった。
今までの三試合、相手選手に触れさせもしなかった深雪の最前列の氷柱が、初めてまともに攻撃を受けて白い蒸気を上げている。
振動系魔法、『フォノンメーザー』
超音波の振動数を上げ、量子化して熱線とする高等魔法。
だが、それでも深雪には届かなかった。
動揺は一瞬。
雫の魔法に合わせて、深雪も魔法を切り替えた。
深雪の魔法により、氷柱から上がっていた蒸気が止まる。
『フォノンメーザー』の加熱を上回る冷却が作用したのだ。
深雪の陣地を白い霧が多い、それはゆっくりと雫の陣地へと押し寄せていく。
「あれは……まさか『ニブルヘイム』?」
「渚あの魔法知ってるの?」
その魔法に、凄まじい攻防で見入っていた渚がポツリと溢した。
「うん。昨日の『インフェルノ』を見た次のページに書いてあったんだ。広域冷却魔法、『ニブルヘイム』。本来は領域内の物質を比熱とか関係なしに冷却する魔法らしいんだ。霧状ってことは、液体窒素なんだと思う」
渚の言うとおり、霧は液体窒素だ。
その液体窒素の霧が雫の陣地を過ぎ、フィールドの端で消えた。
雫の氷柱には、深雪側の面に液体窒素の雫をびっしりと付着させ、根本には『水溜まり』ができていた。
そして、深雪は『ニブルヘイム』を解除し、再び『インフェルノ』を発動。
雫の『情報強化』は、元々そこにあった氷柱に作用しており、新たな付着物には作用していない。
気化熱による冷却効果を上回る加熱によって、液体窒素は一気に気化した。
その膨張率は七百倍。
そのまま雫の氷柱は轟音を立てて一斉に倒れ、深雪の優勝で『女子ピラーズ・ブレイク』は幕を閉じた。
友人に言われて気がついたのですが、とうとうグーグルのキーワードにこの小説が出てくるようになりました!
これも、皆様のおかげです!
……この小説でエイミィを出すことが出来ませんでした。
ファンの皆様、申し訳ありません。
そして、定型な感じで『ピラーズ・ブレイク』を終わらせました。
重ねて申し訳ありません。