それが感想欄で、ということもあり、タグを増やすことでその方に対して敬意を表したいと思います。
他にもこれもいい!というのがいくつかありました!
皆様、是非『深雪の時間』にて、『インフェルノ』の解説を再確認ください!
「いったいどうなってるんだ!あれから一切の連絡もないではないか!」
横浜の中華街。
高校生の食卓より遥かに高価な食材が並ぶ中華料理フルコースのテーブルを、陰鬱で苛立たしげな表情が取り囲んでおり、一人の男が怒りを
「まさか、魔法師でもない高校生に負けたとでも言うんではないだろうな!」
「……彼らも特殊な訓練を受けていたのだ」
「そこについてはまだ良い!新人戦は第三高校が有利ではなかったのか!?」
彼らの会話は、英語だ。
「せっかく渡辺選手を棄権へ追い込んだのに、このままでは結局、第一高校が優勝してしまうではないか!」
だが、人種的には明らかな東ユーラシア人混血種の特徴を備えていた。
「確かに、このまま本命が勝利したのでは、我々胴元が一人負けだぞ」
「今回のカジノは特に大口の客を集めたからな。そうなれば……」
「……ここにいる全員が、本部の粛清対象となる。損失額によっては、ボスが直々に手を下すこともあり得るぞ」
男の一人が、空中でうねり渦を巻く竜の胴体が金糸で刺繍された掛け軸を見上げて、声をひそめ呟く。
その場の男たちの表情は恐怖に染まっていた。
◆◆◆
結果として、達也が担当した競技である、『ピラーズ・ブレイク』、『スピード・シューティング』は一位から三位まで独占という快挙を達成、『ミラージ・バット』にも期待が高まっている。
さらに、『バトル・ボード』もほのかが見事に優勝、男子の不振をなんとか女子の成績でカバーしている状態であり、新人戦で最もポイントが高い競技である『モノリス・コード』に男子一年生選手の面子が託された。
九校戦七日目、新人戦四日目。
今日は九校戦の華の一対である『ミラージ・バット』の予選から決勝、九校戦のもう一対の華である『モノリス・コード』の予選が行われる。
両方とも始まるのは午前も二桁が回ったところのため、それなりに遅くホテルを出ても問題はないが、いい席を取るのだとしたらそんなことも言っていられない。
そのため、渚たちは二手に別れることとなった。
片方は、茅野、中村、岡島、前原の『ミラージ・バット』を観戦しにいく組。
もう片方は、渚、業、磯貝の『モノリス・コード』を観戦しにいく組。
茅野と中村はほのかが出るからという理由で、岡島と前原は良からぬ目的で『ミラージ・バット』へ。
渚は十三束 鋼が出るためで、業は渚が行くならという理由で、磯貝も直で観てみたいということで『モノリス・コード』へ。
だが、今回は達也が『ミラージ・バット』のエンジニアをやっているから皆そちらに行くという業の考えで渚たちは『ミラージ・バット』組よりかなり遅くホテルを出た。
競技場についたときには他校の一回戦の終盤になっており、スクリーンには『渓谷ステージ』で選手が魔法を撃ちあっており、既に各校一人ずつ倒されていた。
一高は二試合目に出るのだが、業の読み通り所々空席が見られ、珍しく空いていた中列前方の席へと座って一回戦二試合目を待つ。
現在は六高と八高が試合を行っており、魔法が放たれる度に歓声が上がるも、やはり高校生の試合だからなのか、それとも自分の周りがすごいのか、そこまでパッとしない印象を受ける。
だが、業や磯貝が時々感嘆の声を上げているのを見ると、どうやら後者のようだ。
そこで、試合が終了、八高が勝利した。
競技場が違えば、試合の開始も早い。
今試合が終わったばかりだが、スクリーンは既に一高対七高の試合が行われる『岩場ステージ』を映し出していた。
『モノリス・コード』は、通称『モノリス』と呼ばれている男子のみの競技で、『ステージ』と呼ばれる試合会場で敵味方各々三名の選手によって『モノリス』を巡り魔法で争う競技となっている。
相手チームを戦闘続行不能にするか、敵陣にあるモノリスを二つに割り隠されたコードを送信することで勝敗が決まる。
相手チームへは、魔法攻撃以外の直接戦闘行為は禁止されている。
モノリスを割りコードを読み取るためには、無系統の専用魔法式をモノリスに撃ち込まなければいけない。
その種目内容から、本来は九校戦でもっとも人気があり、白熱する試合である。
そして、一高と七高の試合が始まった。
一高で出場しているのは、森崎、鋼とA組の男子生徒である。
森崎が岩場を上手く経由しながら相手のモノリスへと近づいていく。
どうやら、森崎はオフェンスのようだ。
A組の男子生徒は森崎とモノリスとの距離を上手く保ちながら立ち回っているため、遊撃手だと予測できる。
そして鋼はモノリスの前に陣取っている。
つまり、ディフェンスだ。
七高の選手はディフェンス一人にオフェンス二人の攻撃型陣形を取っている。
一高はディフェンス一人、遊撃手一人、オフェンス一人のバランス型で、現在七高のオフェンス二人と森崎が数メートルの距離で岩を挟んで対峙している。
少しの睨みあいが続くも、それは長くは続かなかった。
遊撃手であるA組の男子生徒が遠方から魔法を撃ったのを境に、森崎が一気に突撃する。
その時のCAD捌きは見事としか言い様がないものであり、相手のオフェンスよりも早く魔法を発動、当たりはしないものの流れは一高にきている。
そこから遊撃手の援護射撃と家柄がボディーガードをしているため、実戦経験のある森崎が見事な連携で少しずつオフェンスを倒さないにしても、押していく。
「すごい戦いだ」
「ああ、だけど、一高のあの二人、いい動きしてる。特に真っ先に突っ込んでいったあいつ。あれは実戦を経験してる」
「まぁ、家柄がボディーガードだからね……あ、相手のディフェンスが動いた!」
磯貝がポツリと漏らした言葉に業と渚が反応する。
それと同時に、七高ディフェンスが動きを見せた。
一高のオフェンスを突破するのは難しいと踏んだのか、オフェンスの二人をディフェンス二人に切り替えてディフェンスを一気に一高『モノリス』まで突っ込んだ。
岩場を上手く経由して、七高の現ディフェンス二人が上手くサポートしたため、現七高オフェンスとディフェンスである鋼が対峙することとなった。
それを固唾を呑んで見守る渚。
鋼は一科生ではあるが、遠距離は苦手だ。
勿論、それでも二科生よりは上なのだが、彼に与えられている二つ名、『レンジ・ゼロ』は遠距離が近接距離よりも圧倒的に苦手なためについてしまったのだ。
だが、その評価も致し方ないところがある。
つまり、ゼロ距離では最強ということなのだから。
ゼロ距離に近ければ近いほど、鋼は本領を発揮する。
そのため、ディフェンスである鋼だが、自己加速術式で『モノリス』から少し離れ一気に相手のオフェンスとの距離を詰める。
相手のオフェンスも魔法で対抗するも、それを難なくと避けてCADを向け、ほぼゼロ距離からオフェンスに魔法を撃ち込んだ。
それにより、七高のオフェンスは吹き飛ばされて意識を失い、そのまま七高のディフェンス二人を倒してまずは一勝を勝ち取った。
◆◆◆
「――他に方法はあるか?」
『モノリス・コード』が始まる前の横浜・中華街、某ホテルの最上階。
円卓を五人の男が囲んでおり、そこではもう何かが話終わったところだった。
「『モノリス・コード』は最もポイントが高い競技だ。新人戦は本戦のポイントの二分の一とはいえ、影響は小さくない。それでいこう」
男たちは頷きあい、通信機を取り出した。
「一高を棄権させろ」
◆◆◆
時刻はお昼。
観客席の空席がだんだんと少なくなっていき、それにともなって賑やかになっていく。
次の一高対四高の試合は『市街地ステージ』で行われることとが少し前に知らされており、もう既に選手は準備をしている。
今は森崎たちは屋内にある自陣の『モノリス』で作戦会議を行っているようだった。
「さて、次はどんな戦い方にしてくるのか楽しみだ」
「走ってたら相手とばったりーなんてこと考えられるし、その時の状況判断力が試されるステージだね」
磯貝と業は先程の試合から、この『市街地』という場所を使ってどんな戦略が組めるかを議論し始めていた。
「あ、始まるよ」
渚によって、磯貝と業は議論をやめてスクリーンを見る。
選手はそれぞれの『モノリス』でスタートの合図を待っている。
そして、スタートの合図のブザーが鳴る。
「――なっ!?」
そこで、渚は立ち上がった。
開始と同時に一高選手のいる天井に魔法式が展開されたのだ。
そして、そのまま魔法が発動。
そのまま天井が崩れ落ち、森崎たちは下敷きになった。
競技が中断され、大会役員が焦ったように急いでかけより、救助作業が始まる。
「鋼ッッ!!」
渚はそのまま一高の天幕へ全力で走って向かった。
後二話……と、言ったところでしょうか。
レンジ・ゼロについては次話で詳しく。