魔法科高校の暗殺者   作:型破 優位

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題名ですが、前のだと少しおかしくなるため、こちらを使うことになりました。

張り切りすぎて増量。
しかし……はい。


説得の時間

 夕食をとっていた渚たちに、それは突然きた。

 

「渚。会長さんから呼び出しだ。『モノリス・コード』について話があるようだけど……何かするのか?」

 

 業の端末が震え、それで携帯を取り出しメールの内容を確認すると、『楽しんでいるところ申し訳ないけど、渚くんに今すぐミーティング・ルームに来るように伝えてください。『モノリス・コード』について話があります』という文が届いていた。

 

 業が『どうかしたのか』とは聞かずに、『何かするか』と聞いたのは、何があったのかは既に理解しているからだ。

 

「うん、わかった。何やるかは戻ってきたら教えるよ」

 

 友人たちと手を振りながら別れた渚は、そのままミーティング・ルームへと向かった。

 ミーティング・ルームには既に上級生たちが集まっていた。

 

 真由美、摩利、克人、鈴音、服部、あずさの一高首脳陣や、桐原、五十里などの上級生たち、さらに達也も既にいた。

 

「ごめんね、渚くん。せっかくの友達との時間を取っちゃって」

 

「気にしないでください。それで、用件はなんでしょうか?」

 

 軽く頭を下げて謝罪する真由美に、若干表情を固くしながらも社交辞令的な返しをして用件を問いかけた。

 さすがの渚も、これだけの上級生に囲まれれば表情も固くなってしまうのだ。

 

「では、渚くんも来たので本題に入らさせていただきます」

 

 そこから、格式張ったように真由美が切り出した。

 

「渚くんも知ってると思いますが、現在、新人戦だけで見たとき、一高は二位の三高と五十点差で一位となっています。このまま『モノリス・コード』を棄権しても準優勝は確保できるのだけれど……できれば、新人戦も優勝を目指したいと思うの」

 

 だんだんと口調がいつものように戻っていく真由美。

 他の人の表情を見るに、これは自分のための説明なのだと渚は理解した。

 

「ここからは達也くんも一緒にきいてほしいんだけど、三高の『モノリス・コード』に一条 将輝(まさき)くんと吉祥寺(きちじょうじ) 真紅郎(しんくろう)くんが出ているのは知ってる?」

 

「はい」

 

「あまり詳しくは……」

 

 一条 将輝はその名前の通り、十師族『一条家』の御曹司で、三年前の新ソ連の佐渡侵攻作戦に対し、弱冠十三歳で義勇兵として防衛線に加わり、一条家の二つ名にもされている『爆裂』を持って多くの敵兵を葬った実戦経験済みの魔法師。

 

 この実績により、敵と味方の血に塗られて戦い抜いた、という敬意の現れから、『一条のクリムゾン・プリンス』と称えられるようになった。

 

 そして、その参謀として隣にいるのが、当時弱冠十三歳にして仮説上の存在であった『基本コード』という、作用を直接定義することが出来る魔法式を発見した天才魔法師、吉祥寺 真紅郎。

 

 本名の吉祥寺と彼が発見した『基本(カーディナル)コード』からつけられた、『カーディナル・ジョージ』の異称は、魔法式の原理理論方面の研究者なら知らぬ者はいないと言われるほど注目されている。

 

 渚もアドバイスブックで彼らの存在を知っているのだが、魔法についてはマナー違反だからという注釈があり知ることは出来なかったのだ。

 

「あの二人がチームを組んで、トーナメントを取りこぼす可能性は低いわ。『モノリス・コード』をこのまま棄権すると、新人戦の優勝は、ほぼ不可能です」

 

 そこで、達也は何かを悟ったかのように表情が少し引き締まったのを渚は見逃さなかった。

 

「だから、達也くんに渚くん……森崎くんたちの代わりに、『モノリス・コード』に出て貰えませんか」

 

 今度は達也は渚を見た。

 自分の答えによって達也は答えを変えるのだろう、と達也の表情を、波の少ない達也の感情を読んだ渚には分かった。

 

 だからといって、渚に答えを変える選択肢はない。

 

「僕は勿論、はが……十三束のためにも、出せる限りの力で、受けさせていただきます」

 

 その答えに、真由美はニコッと微笑みながら目礼をする。

 そして、今回一高が優勝するためには、達也の参加が絶対条件といってもいい。

 

 しかし、達也は明らかに『拒絶』の意志を見せている。

 鋼の想いを託された渚はそれをどうにかするために、今回だけ、最初で最後であろう、達也をターゲット(・・・・・)にすることにした。

 

 まずは、逃げ道を無くす。

 

「そして、僕も達也が一緒に出てくれると嬉しいな。達也は作戦を立てるのも上手いし、戦闘技術もあるからね」

 

 その狙いに気がついたのかどうか定かではないが、何か不味い気配を感じ取ったのだろうか。

 すぐさま切り返してきた。

 

「自分や渚は選手ではありません。まだ一競技にしか出場していない選手が何人も残っているはずですが。一科生のプライドはこの際、考慮に入れないとしても、代わりの『選手』がいるのに、『スタッフ』、ましてや『応援しにきた生徒』を代役に選ぶのは、後々精神的なしこりを残すのではないかと思われますが」

 

 達也の言い分は、真由美たちが最も悩んであろう、『来年以降の九校戦』に関わる部分。

 達也一人を否定するのは不可能でも、達也と渚の二人を否定することは可能なのだ。

 

 だが、それぐらいで負ける渚ではない。

 

「達也。これは九校戦の一高リーダーが決めたことだよ。僕たちが例え二科生……補欠(ウィード)だとしても、今この場では関係がない」

 

 あえて、差別的な用語を使った渚。

 これには達也を含めて驚きの表情をしている。

 

 ――後は、先輩たちの誰かが僕を支持してくれれば、押し切れる。

 

 話術を駆使して行う暗殺もあるのだ。

 それを、渚はあの教室で学んだ。

 

 だが、渚の予想は良い意味で裏切られた。

 

「潮田の言うとおりだ司波」

 

 渚の意見に賛同したのは、克人だったのだ。

 渚の考えでは、逃げ道をなくした後に、摩利や真由美あたりが賛同し、そのまま全員で押すという考えだった。

 

「お前は既に、代表チームの一員だ」

 

 しかし、それも良い意味で外れたのだ。

 

「選手であるとかスタッフであるとかに関わりなく、お前は一年生二百人から選ばれた二十二人の内の一人」

 

 この場で一番達也を抑えることができるであろう、克人が出てきたのだから。

 

「そして、今回の非常事態に際し、チームリーダーである七草は、お前を代役として選んだ。チームの一員である以上、その務めを受諾した以上、メンバーとしての義務を果たせ」

 

「しかし……」

 

 それでも達也は、まだ何かを言おうとしている。

 

「メンバーである以上、リーダーの決断に逆らうことは許されない。その決断に問題があると判断したなら、リーダーを補佐する立場である我々が止める。我々以外のメンバーに、異議を唱えることは許されない。そう……本人であろうと、当事者であろうと、誰であろうと、だ」

 

 達也は、言いかけたセリフを中断した。

 克人が言っている意味を、理解したのだ。

 

 克人は、誰が納得しなかったとしても、どのような結果になったとしても、その責任は全て責任者である自分たちが負うと、そう言っているのことに。

 

「逃げるな、司波。例え補欠であろうとも、選ばれた以上、その務めを果たせ」

 

 そして、渚もそれに気がついていた。

 そもそも、九校戦に補欠などないのだから。

 

 ここまで言われては、達也も逃げるつもりはない。

 

「分かりました。義務を果たします」

 

 真由美と摩利の顔が安堵の表情になる。

 克人はしっかりと頷いた。

 

「渚、すまなかった」

 

「いいよ、達也。僕の方こそごめんね」

 

 そして、そのことを自分に説いてくれた渚に、感謝を込めて謝罪をし、渚もいくら勝つためとはいえ、あまりにも踏み込んだ言動をしたことに謝罪した。

 

「それで、あと一人のメンバーは誰なんでしょうか」

 

「お前たちで決めろ」

 

「はっ……?」

 

「残りの一名の人選は、お前に任せる」

 

「僕も達也に任せるよ。僕は一先ず中学の友達にこの件を伝えてくるから、決まったら連絡してね」

 

 作戦は達也が決めた方がいいと言った以上、それに関係する人選びも達也に任せた方が安心できる。

 そのため、渚はその後のことが円滑に進むよう先にこの場から退出し、ホテルに戻った。

 

◆◆◆

 

「渚……それマジ?」

 

「うん。本当だよ」

 

「へぇー、それは楽しみだねぇ」

 

「でも、ユニフォームとかは大丈夫なの?」

 

「出るからには、貸してくれると思うよ」

 

 自室に戻ってから、元クラスメイト全員を自室に集めて何があったのかを話した渚。

 友人たちの反応は、心配や期待と様々だ。

 

「でも、大丈夫なの?渚、魔法は苦手なんでしょ?」

 

「そうだけど……そこはなんとか上手くやるよ」

 

 さっきからずっと心配しているのは、茅野。

 それに苦笑しながら渚が答えるものだから、余計と茅野は心配になっていく。

 

「まぁ、後一人は誰か知らないけど、司波くんが出るのならまず大丈夫でしょ。司波くん殺せんせーみたいなところあるし」

 

「あ、それわかるー。司波くんちょっと殺せんせーに近いよね。ドジ踏まないけど」

 

 そこには渚も同意だった。

 魔法は苦手らしいが、それを補う戦闘能力、他を凌駕する技術力、知能、高校生離れした冷静さ。

 あのなんでもこなす殺せんせーと重なるのも仕方ないだろう。

 

 ただ、殺せんせーは弱点だらけだったが。

 

 そこで、渚の端末が震える。

 達也からだ。

 

『後一人が決まった。CADの調整と作戦の確認をしたいから俺の部屋にきてくれ。』

 

「どうやら、お呼び出しのようだね」

 

「うん。もう一回行ってくるね」

 

 メールに書いてある達也の部屋へ向かうと、そこには達也の他に、レオ、幹比古、美月、エリカがいた。

 そこで達也にもう一人の選手は幹比古であることとともに、作戦の内容、ポジション、CADの調整を行い、翌日の『モノリス・コード』を迎えるのだった。

 

◆◆◆

 

 九校戦八日目、新人戦五日目。

 この日、全体に向けて一高の『モノリス・コード』は代理チームによって出場することが告げられた。

 

 現在の勝ち数は、三高が四勝、八高が三勝、一高、二高、九高が二勝で並んでいるが、一高は四高の失格による勝利があるため、二勝ではトーナメントに進めない。

 

 この特別処置には強い不満の声があったが、これを上手く治めるには二つとも負けるか、二つとも勝つしかない。

 

 そして、代理出場の渚たちに、負けるつもりもない。

 その強い意志を持って、彼らはフィールドへと立った。




この作品でこの文字数は案外初めてではないでしょうか。

今回はあえてここで止めます。
変に進んで止めるのも中途半端ですからね。

楽しみは明日に取っておきましょう!
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