危なかったです。
題名が一緒のような気がした人たち、それは気のせいです。
こっちの方がしっくりくるからとかそんな考えは微塵もありませんでしたよ。
代理チームの初戦は八高、『森林ステージ』で行われている。
達也は二丁拳銃に右腕にブレスレットという三つのCADを操るスタイルで、幹比古は達也に調整してもらったCADを、渚は例のナイフ型と拳銃型のCADを持っており、まだ始まって数秒も経っていない。
「八高相手に森林ステージか……」
「不利よね……普通なら」
モニター画面へ目を向けたまま呟いた摩利に、同じくモニターを見ながら真由美が応えた。
『モノリス・コード』で使用されるステージは、森林、岩場、平原、渓谷、市街地の五種類。
今回の相手である八高は、もっとも野外実習に力を入れている学校であり、森林ステージは彼らのホームグラウンドのようなものだ。
モニターでは、達也と幹比古、渚が自陣のモノリスから散ったところが映し出されている。
相手のモノリスと自陣のモノリスは、直線距離にして八百メートル。
プロテクション・スーツを着け、ヘルメットを被り、CADを携えた状態で樹々の間を縫いながらこの距離を走破するには、最低五分はかかる。
まして、敵を警戒しながらなら、途中戦闘がなくしてもその倍の時間は掛かるだろう。
だが、開始五分も経たない内に、八高モノリス近くで戦闘が始まった。
◆◆◆
選手の姿はルール違反監視用のカメラが追いかけており、その映像は客席前の大型ディスプレイに映し出されている。
特に、森林や渓谷といったステージでは、この映像が観客の頼りとなる。
一高モノリス付近には、一つの人影があった。
それは、一高モノリスを狙っている八高の選手。
八高は、ディフェンス一人にオフェンス二人のスタイルで、オフェンスの一人が偶然一高のモノリスを発見したのだ。
だが、その八高の選手は、いきなり倒れこむ。
その
◆◆◆
一高はオフェンスの達也、遊撃の幹比古、ディフェンスの渚という布陣で今回のモノリスを闘うことは予め聞いていたが、一つ不可解な点があることに真由美は気がついた。
「ねぇ、摩利……渚くんって、拳銃型のCADなんて持ってた?」
「……そういえば、持っていた記憶がないな」
八高選手が倒れる前、サイオンの可視化処理が施された大型ディスプレイには振動系統魔法のサイオンの塊が、八高の選手の頭をピンポイントに当たったところが映し出されていた。
つまり、遠距離から狙い打たれたのだ。
「見たところあの緑のナイフみたいなCADと同じ魔法……というか、ただのサイオンなのか?」
「……見ただけではわからないわ。ただ、ブランシュの時みたいに頭を狙っているところを見ると、頭に作用する魔法みたいね……て、ここで考えててもわからないのだから試合に集中しないと」
「それもそうだな」
渚についての議論が起きるが、今はそんな事している場合じゃないという二人一致の意見でディスプレイを見る。
試合展開は既に終盤、既にオフェンスの一人は渚によって戦闘不能にさせられ、もう一人のオフェンスは幹比古に錯乱されているため一向に一高モノリスに辿り着くことができず、ディフェンスの選手も達也によってやられたらしく、モノリスにコードを打ち込む達也を見ながら座り込んでいた。
「……勝ったな」
「……勝ったわね」
これで、決勝トーナメント進出が決まったが、何かいろいろと置いてかれた二人は、諸手に喜ぶことが出来なかった。
◆◆◆
代理チームの初陣は完全勝利で飾り、一高の応援団は、主に女子生徒によって、もう勝ったかのように大騒ぎとなっている中、別の場所でその試合を観察していた二人の男子生徒がいた。
「……厄介だな」
「厄介だね、司波達也」
一条 将輝の呟きに反応したのは、参謀の吉祥寺 真紅郎。
「そっちもなんだが、青髪の方だ」
「……彼がどうかしたの?」
だが、知っている者と知らない者では、認識の差が違った。
将輝は珍しく冷や汗を流している。
「話には聞いていたが、まさか彼が出てくるとは思ってもみなかった……」
「将輝がそんなに気にかけるなんて、彼は一体何者なんだ?」
将輝の今まで見たことのない反応に、ジョージもディスプレイに映っている渚を見つめる。
「……ごめん、いくらジョージでも彼の詳しいことは言えない。彼の情報は、
「国家機密!?」
そして、将輝から出た答えは、せいぜい何かの大会の入賞者レベル、と思っていた真紅郎の予想よりも遥かに上回るものだった。
「次からの試合は、司波 達也同様、彼の
「ああ、分かった」
そして、十分後に昨日事故があったばかりの『市街地ステージ』で行われる試合を見るために、再びディスプレイへと目を向けた。
◆◆◆
八高との試合から小一時間もせずに始まった二高との第二試合。
『市街地ステージ』ということもあり、視界は悪く、奇襲をかけられやすいし、かけやすい。
だから、短期決着の作戦を取り、達也と幹比古がオフェンス、渚がディフェンスという布陣をとった。
つまり、ディフェンスにかなりの負担がかかる作戦となっており、現在進行形で渚もかなりの苦戦を強いられていた。
一高モノリスが置かれている五階建ビルの三階に設置されているのだが、ビルということもあり各部屋が繋がっている。
開幕の二人同時の奇襲をなんとか交わしきった渚は、それぞれ隠れながら魔法を撃ってくる相手の位置を確認する。
――これは、短期決戦であると同時に持久戦だ。
今、この状況で拳銃型のCADで魔法を撃ったところで相手の頭をピンポイントで当てて倒すことは不可能。
脳から送られる電波を揺らす魔法のため、頭以外に当たっても、その部分の行動を一時的に止めることができるだけで、連射することもできないため、やはり頭の、それも中心部分を直接狙って一撃で仕留める方が効率的になってしまうのだ。
ただ、持久戦といっても、それも不可能に近かった。
渚は『暗殺者』として優秀であれど、『魔法師』としてはまだまだ半人前。
魔法力も全くと言っていいほど無いのだ。
初戦は一発で仕留めることができたからいいものの、今力を使いきってしまっては、例え耐えきれたとしても今後に関わるため、それもできない。
――仕方ない。
渚は昨日見つけた
二高のオフェンス二人が攻撃してくる位置はだいたい予測できる。
片方を囮にして、もう片方で背後からついてくる作戦だ。
つまり、囮が出てさえすれば、もう一人の居場所がわかるのだ。
だから、そのタイミングを待つ。
渚は感覚を限界まで研ぎ澄まし、気配を探る。
直後、背後から魔法が飛んできた。
(背後からきた……ということは正面の扉に一人いる!)
渚は魔法を柱で避けながら腰からナイフ型CADを取りだして左手で持ち、右手に拳銃型のCADを構えて正面に向かって走った。
背後からきている二高の選手の直線上に入らないように柱を使いながら近づく。
彼らは、音で連携している。
だから、魔法が柱に当たればもう一人が出てくる。
そして、予想通り、渚と扉の影から姿を現した二高の選手は鉢合わせとなる。
「なっ!?」
目の前に渚がいることにより、二高の選手は怯んだ。
その隙を見逃さず、二高の選手の顔の横にナイフの平らな面が、二高の選手の耳と平行になるように突き刺して、その横から拳銃型のCADで魔法を撃った。
二高の選手は反射的に体で顔を守るように動いたが、当然それは渚の予想通り。
その拳銃型から放たれた魔法は、ナイフの側面に当たり、
それを確認した渚はすぐさまバックステップでその場から離れるも、二人から挟まれる形となった。
「おい!ここで仕留めるぞ!」
一番最初に陽動を仕掛けた二高の選手が、渚の正面の選手に向かって話しかける。
だが、反応がない。
「おい!どうしたんだ!」
もう一度呼び掛けるも、反応はない。
声をかけられている選手は、目の焦点が合わないかのように変なところをあちこち見ており、足元をフラフラとさせている。
「残念だけど、彼には聞こえないよ」
「――!?」
刹那、彼は、目の前の青い髪の少年が悪魔になったのではないかと錯覚する。
いや、実際にそう思った。
今まで感じたことがない殺気が、その二高の選手を包む。
「彼はもう、立つことすらできない」
とても暖かい笑顔で歩いてくるその少年に、二高の選手は足も動かない。
足が言うことを聞かないのだ。
「つまり、これで終わり」
そのまま距離を詰められて、頭に銃口を頭に突き付けられる。
その言葉は、最早死の宣告。
引き金が引かれると同時に、彼の意識は暗転した。
どんどん行きましょう!
最後のは……次話ですね!