最低でもこれくらいのモチベでいたい。
IDカードが配付されクラスがE組だとわかった渚が思い出に浸っているなか、エリカがホームルームにいってみるか、と提案するも、達也が妹と待ち合わせているという理由でそれを断り、美月が新入生総代、司波 深雪と達也のオーラが似ているという理由で兄妹なのか聞いたところ、二人がそうであることが発覚した。
「確かにオーラが似てるね。だから達也一人だけが司波さんに見惚れずにジッと見ていたんだね。会場でただ一人、達也だけ感情の揺れがなかったから」
それに復活した渚も、入学式のときの達也の感情の揺れがなかった理由に納得すると、達也の目が見開いて動きが止まった。
それからすぐに、達也から渚にたいしての視線が強くなる。
「感情の揺れって、よくわかったね。美月と同じで良い目をしてる」
「え?美月メガネ掛けてるよ?」
「そういう意味じゃないよ。それに、柴田さんのメガネには度が入っていないだろ?」
そして、今度は美月が目を見開いて、固まった。
「まぁ、いろいろあってね……」
渚も渚で、あはは……と頭を掻きながら苦笑して答える。
その時、渚達の背後から声がかかった。
「お兄様、お待たせ致しました」
「早かった……ね?」
お兄様と言うからには兄妹がいる達也宛でしかなく、また、お兄様と言う相手がいるのも達也しかいないため、また声でも判別出来る達也が「早かったね」と答えたつもりなのだが、イントネーションが疑問系となってしまっていた。
それは、ある同行者がいたからだ。
「こんにちは、司波君、潮田君。またお会いしましたね」
人懐っこい笑顔と言葉遣いで『また会った』という人は渚も達也も一人しか認識していない。
いきなりということもあり、達也は無言で、渚もどうもと小声でいって頭を下げるという愛想に乏しい応対をしてしまったが、それでも笑顔を崩さない生徒会長、七草 真由美のそれはポーカーフェイスなのか、それとも真由美の地なのか、会ったばかりの二人には判断がつかなかった。
だが、達也の妹、深雪は真由美に対する兄の反応よりも、兄の傍らに親しげに寄り添う少女達の方が気になったようだ。
「お兄様、その方達は……?」
「ああ。こちらが柴田美月さん、そしてこちらが千葉エリカさん、そしてこちらが潮田渚。同じクラスなんだ」
「そうですか……早速、クラスメイトとデートですか?」
深雪は可愛らしく小首を傾げ、含むところは何もありませんよ、という表情で深雪が問いを重ねるも、その目は笑っていない。
だが、渚は何か違和感があった。
現在、四人の位置的に渚からは深雪の顔しか見えていないのだが、「クラスメイトとデートですか?」と聞いたとき、明らかに渚を
そして、目が合った。
感情を読める渚は深雪の感情に嫉妬が混ざっているのも分かってしまった。
真由美が潮田君と言っていたのも、その感情のせいで、聞こえていなかったのだろうかとも思うが、つまりは、そういうことなのだろう。
「あの……司波さん?勘違いしていなければ……いや、僕の勘違いであってほしいんだけど……僕、男だよ?」
「……え?」
渚は自分の勘違いであってほしいと願いつつ、全身が、つまり
「……あ」
「………」
その場が静寂に包まれた。
渚が深雪の顔を見ようとしても、申し訳なさそうに顔を逸らして目を合わせようとしない。
どうやら、渚の勘違いではなかったようだ。
「深雪、お前を待っている間、話をしていただけだって。そういう言い方は
結果、達也が何もなかったことにした。
◆◆◆
次の日、日が昇る少し前に起床した渚は、家事の手伝いをするためにキッチンへと向かった。
これは、渚が高校へ行くために自分で取り付けた条件の一つで、欠かしたことは今のところ一度もない。
「おはよう、母さん」
「おはよう、渚。さっそくだけど洗濯物お願いしてもいいかしら」
「うん!」
数か月前までは疎遠だった家族も、今では同じ家で仲良く、幸せに暮らしている。
それも、殺せんせーのおかげだ。
朝食を済ませ、前日の反省を生かして学校に余裕で間に合い、また早すぎない時間になってから両親に元気よく挨拶して登校する渚。
キャビネットと呼ばれる中央管制された二人、または四人乗りのリニア式小型車両に乗り込み、一高の最寄り駅まで乗って行く。
キャビネットは四人乗りを二人以下で乗ると追加料金が出てしまうため、一人の人は二人乗りに乗ることになる。
また、乗車中は席を立つことは出来ず、また監視カメラやマイクの類はないなど、プライバシーが優先となっているのが現在の電車であるキャビネットだ。
最寄り駅から歩いて一年E組についた渚は、自分の席を探してそこについた。
渚の席は廊下側で、二つ左隣には美月が座っており、エリカと既に談笑していた。
「あ、渚君おはよー」
「おはようございます」
「うん!柴田さんも千葉さんもおはよう!」
二人とも渚に気づいて笑顔で挨拶してきたため、渚も笑顔でそれに答えて、端末にIDカードをセットしてインフォメーションのチェックをする。
キーボードで受講登録をしていると、二つ左隣から再び挨拶が聞こえ、挨拶を返した声の主を見るために振り返ってみると、案の定、達也が登校してきていた。
「おはよう達也!」
「おはよう渚。柴田さんも渚も、また隣だけどよろしくな」
「うん、よろしくー」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
達也の言葉に美月と渚が笑顔で返すと、エリカからは不満の声が漏れた。
「何だか仲間外れ?」
「千葉さんを仲間外れにするのはとても難しそうだ」
エリカのその声色は明らかにからかっているものだったが、それくらいで動揺しない達也はあっさりとした口調で淡々と答えた。
「……どういう意味かな?」
「社交性に富んでるって意味だよ」
今度は演技なしにジトッとした視線を達也に向けるエリカだが、達也のすました顔は崩れず、エリカが口惜しそうな表情を浮かべていた。
「……司波くんって、実は性格悪いでしょ」
堪えきれずに美月と渚が笑いを溢すのを横目に達也が端末にIDカードをセットしたところで、そういえばと渚の横に立つ。
「……?達也どうしたの?」
「昨日は深雪がすまなかった」
それは、昨日起きた件についての謝罪だった。
「別に気にしなくても良いよ。あそこまで申し訳なさそうにされると、こっちも申し訳なくなっちゃうしね。司波さんにもそう言っといてよ」
あの後、達也と深雪の用事を優先してくれた真由美だが、そのおかげで達也には上級生と深雪の追っかけ、つまり、A組の一科生から目をつけられるも、渚はその件があってか、哀れみの目は向けられど敵対心を向けられることはなかった。
その後の帰り、達也、深雪、美月、エリカはケーキ屋にいったのだが、渚は家事の手伝いで断ったのだ。
そこでも、深雪がさっきの件で嫌われたと勘違いしてとても申し訳なさそうに謝ってきて、逆に渚が申し訳なく思うほどだった。
「わかった。ありがとう」
達也は渚にたいして感謝の言葉を述べ、自分の席へと戻ってキーボードで素早く受講登録を済ませる。
そのキーボードの打ち込む早さに、渚と達也の前の席の男子生徒が目を丸くして覗き込んだ。
「すっげ……」
「ん?」
「ああ、すまん。珍しいもんで、つい見入っちまった」
「珍しいか?」
「珍しいと思うぜ?今時キーボードオンリーで入力するヤツなんて……隣に一人いたなそういえば」
達也とその男子生徒が会話していると、ふと男子生徒が考え込むしぐさをして渚の方を一瞥する。
「うん、見てたんだね」
「さっきも言ったように、珍しいからな。おっと、自己紹介がまだだったな。西城レオンハルトだ。親父がハーフ、お袋がクォーターな所為で、外見は純日本風だが名前は洋風、得意な術式は収束系の硬化魔法だ。志望コースは身体を動かす系、警察の機動隊とか山岳警備隊とかだな。レオで良いぜ」
「司波達也だ。俺のことも達也でいい」
「僕は潮田渚!渚でいいよ。よろしくね、レオ!」
「よろしくな、達也に渚。それで、二人とも得意魔法何よ?」
「僕、魔法は苦手なんだよね……強いていうなら振動系統かな?」
「なるほどな。達也は?」
「俺も実技は苦手でな。魔工技師を目指してる」
「なーる……頭良さそうだもんな、お前」
「え、なになに?司波くんは魔工師志望なの?」
「達也、コイツ、誰?」
まるでスクープを耳にしたようなハイテンションで首を突っ込んできたエリカを、やや引き気味に指差して訪ねるレオ。
「うわ、いきなりコイツ呼ばわり?しかも指差し?失礼なヤツ!モテない男はこれだから」
「な?失礼なのはテメーだろうがよ!少しツラが良いからって調子こいて……」
それから行われたレオとエリカの言い合いを笑いながら見ていた渚は、内心ホッとしていた。
中学で見知った顔が誰一人としていない一高で友達が出来るのか不安だったのだ。
――殺せんせー、一生大切にするべき友達がまた出来そうです。
未だに言い合ってる二人を見ながら、渚は楽しそうに笑うのだった。
少しでも面白いと感じていただけるよう、ひたすら努力します。
座席のことですが、小説では達也の左にいるはずの美月がアニメでは右にいるため、左から横に五十音順と捉えて、また、小説のイラストにて達也から見て左後ろにいるはずの幹比古がイラストでは女子になっており、また彼がいないことにより、イラストでは書けなかったもう一列があると思われます。
イラストには四列、イラストの外側で一列の合計五列。
一列五人なら二十五人になるため、小説基準での席順とし、かなり不思議だとは思いますが下記のように並べました。
もし、規則性があれば感想にて教えてください。
(本当はレオと達也の間に渚が入るのかと思ってました)
番号順に並べるとこんな感じになります。
モブ→モブ→モブ→レオ→モブ|廊下側
↓
モブ←モブ←美月←達也←渚 |廊下側
ご理解のほどをよろしくお願いします