魔法科高校の暗殺者   作:型破 優位

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お気に入り五千件ありがとうございます!
気がついたら累計に載りそうな勢い……私自身ビックリです!

というわけで、私からの感謝の時間でした。


感謝の時間

 九高との試合は、『渓谷ステージ』で行われた。

 このステージの形状は『く』の字形に湾曲した人工の谷間で、水が流れていると上流・下流で有利・不利が生じてしまうため、実態は渓谷というより崖に囲まれた細長い『く』の字形の湖だ。

 

 この試合は、幹比古の独壇場(どくだんじょう)だった。

 

 左右が塞がった細い道が、白い霧によって覆われた。

 しかも、その霧は一高に薄く、九高に濃く纏わりついている。

 

 九高の選手は霧に邪魔されて、一高モノリスへ近づくことができない。

 何度も霧を消し飛ばそうと試みてはいるのだが、その努力を嘲笑うかのようにすぐに視界を奪うのだ。

 

 気流を起こしても、その流れてくる空気が白い霧なため全く効果がなく、気温を上げても湖が蒸発してさらに不快感を増す。

 

 だが、そんな広範囲に魔法を展開することは、二科生では無理だ。

 渚は隣で幹比古の護衛をしながら、彼の魔法を見る。

 

 渚が幹比古に出会った当初の第一印象は、何かに焦っている、だった。

 それが魔法なのか、勉学なのか、または別のことなのかはわからない。

 だが、『力』を欲していることはわかった。

 

 そして、その日から一緒に過ごしていくうちに、幹比古は自分が何故二科生なのかを話してくれた。

 

 ――1年前の事故で、僕は力を失ってしまった。

 

 渚にとって、過去を打ち明けてくれる仲になったことは喜ばしいことだったのだが、そんな話を聞いては喜ぶこともできない。

 それから渚と幹比古は、一緒に授業を受けるようになった。

 渚は今まで通りアドバイスブックで手に入れた知識を実際に試行錯誤し、自分にあったやり方で吸収していくスタイル。

 幹比古はとにかく渚のスタイルを真似しながら、心を落ち着かせていくスタイル。

 

 それによって、幹比古にだけわかる変化が訪れた。

 

 焦る気持ちが無くなったからなのだろうか、視野が広くなったように感じたのだ。

 それは、効率的に技術を吸収する力や緊急時に冷静に対応できる力などに直接関係していくものだ。

 

 そして、達也。

 九校戦が始まる前、実は幹比古と達也は工作員らしき人物と交戦していた。

 その時、達也に言われたのが、『無駄が多い』だった。

 古式魔法は、その家が長い年月を掛け、古式魔法の伝統に現代魔法の成果も積極的に取り入れて、改良に改良を重ねたものだ。

 それを、達也は容赦無しに切り捨てたのだ。

 

 その時は、幹比古も憤った。

 だが、それと同時に、再び古式魔法と向き合えた気がした。

 

 そして、達也はこの九校戦の中で、その改善案を実物として、CADとして提示してきた。

 現在使っている魔法も、そのCADによって発動しているものだ。

 

 魔法を発動しながらも、幹比古は感謝の言葉を心のなかで述べた。

 

(ありがとう、達也、渚。君たちのおかげでなんとか将来に光が見えてきたよ。だから、僕はその二人に答えるためにも、成長を見せるためにも、この『モノリス・コード』で二人を全力でサポートする!!)

 

 さらに濃くなる九高の霧。

 達也は霧の中でも『エレメンタル・サイト』によって問題なくモノリスに近づくことができる。

 九高との試合は、一度も戦闘を交えることなく一高の勝利で幕を閉じた。

 

◆◆◆

 

 決勝戦は、三位決定戦の後に行われる。

 試合の時間はどんなに長くても三十分以上は掛かることはないが、決勝開始は余裕を持って今から二時間後の午後三時半と決定された。

 

 幹比古はホテルの最上階で富士山を見てくる、と言って出ていったが、渚と達也は現在、達也の部屋にいた。

 

「それで、本当にやるんだな?」

 

 二人とも、表情はかなり真剣だ。

 

「うん。僕では一条 将輝は倒せないけど、吉祥寺 真紅郎には幹比古と二人でなら倒せると思っているんだ。それを可能にするためには、これが必要なんだ」

 

 渚の言葉は、全て本気だ。

 だが、それでも達也は簡単に頷くことができない。

 

「正直言って、俺はその魔法をこんなに観客がいるなかでは使わない方がいいと思っている」

 

「知ってるよ。でも、これがあれば確実に吉祥寺 真紅郎には勝てるんだ」

 

「……それなら、一つだけ条件がある。大丈夫、条件とは言っても戦闘中は有利に働くものだから」

 

「……?」

 

 渚が達也に直談判(?)している中、三位決定戦が終わり、大会から届いた決戦の場に三高歓喜していた。

 

 場所は、『草原ステージ』。

 そこは、遮蔽物が何もない、本当に正面からの戦いを要求されるステージ。

 つまり、三高にとっては最高の、一高にとっては最悪のステージなのだ。

 

「後はヤツが誘いに乗ってくるかどうかだな、ジョージ」

 

「彼らは必ず乗ってくるよ。遮蔽物がない『草原ステージ』では、正面からの一対一の撃ち合いに応じる以外、向こうにも勝機が無いからね」

 

「後は、お前が後衛と遊撃を倒すだけだが……大丈夫か?」

 

 だが、『草原ステージ』でも、彼らには不安要素が一つあった。

 

「『吉田家』の古式魔法は現代魔法とのスピード差でいけるけど、潮田 渚だけは僕もわからない」

 

「そうか……」

 

 それは、渚の存在。

 結局、この『モノリス・コード』では合計四回しか魔法を使用しておらず、どんなバリエーションがあるのかが全くの未知数。

 本気で『モノリス・コード』のスペシャリストを送り込んできたんじゃないかと思っているほどだ。

 

「じゃあ、倒すのが無理だったら持ちこたえてくれ。俺が司波 達也を倒して二人でなら確実にいける。勿論、行けそうだったら頼んだ」

 

「わかった。新人戦の優勝は残念だったけど、せめて『モノリス・コード』の優勝は勝ち取らないとね」

 

「ああ、やってやるさ」

 

 真紅郎の言葉に、将輝は強く頷いた。

 

◆◆◆

 

 新人戦、『モノリス・コード』決勝戦。

 選手の登場に、客席は大きく沸いた……とはいかず、戸惑いにざわめいていた。

 

 達也は普通のプロテクターを装備しているのだが、渚と幹比古は、ローブを着ていたのだ。

 これが、達也が渚に出した条件だった。

 

 幹比古にとって、仮装みたいで恥ずかしい装備ではあるのだが、渚にとっては女装より断然マシなためなんとも思わない。

 

 そして、観客も嘲笑や冷笑の類いは無く、その『ローブ』に対する好奇心の方が強かった。

 だが、三高にとっては好奇心では済まされない。

 

「ただのハッタリじゃないのか?」

 

 チームメイトの推測に、将輝と真紅郎は揃って首を横に振った。

 

「ヤツはジョージの事を知っていた……あれは『不可視の弾丸(インビジブル・ブリット)』対策か?」

 

「確かに僕のあの魔法は貫通力が無いけど……布一枚で防がれるようなものじゃないし、彼がそんな甘い考えで対策を立ててくるとは思わない」

 

「そういう風に思わせる作戦かもしれないぜ?」

 

「その可能性も無いわけじゃない、が……」

 

「……分からないな。まさかこの期に及んで隠し玉を用意していたなんて……」

 

 歯切れの悪い将輝のセリフに、唇を噛み締める真紅郎。

 

「全く無警戒というわけには行かないが、わからないことをあれこれ考えても意味はない。力押しに多少のリスクは付き物だ」

 

 真紅郎の迷いを断ち切る為か、将輝は少し強い語調で言い切った。

 だからといって、将輝自身に戸惑いが無いというわけではない。

 

 一般の人から見た好奇心の対象は、敵対している者にとっては警戒すべきものになるのだ。

 

◆◆◆

 

 普段は大会本部のVIPルームでモニター観戦しているはずのある人物が、今回来賓席に姿を見せた。

 

「九島先生!このようなところへ如何なされました!?」

 

「たまにはこちらで見せて貰おうと思ってな」

 

 直立不動で迎え入れた大会委員は急ぎで革張りの椅子を用意し、九島 烈はその椅子に腰を下ろした。

 

「それは勿論、我々にとって光栄なことと存じますが……」

 

「なに、二人、面白そうな若者を見つけたのでな」

 

 烈は年に似合わない無邪気な笑顔を見せながら、大会委員に一言だけそういった。

 

(さて、殺せんせーの元を離れた、君の成長ぶりを見せて貰おうかね)

 

 不敵に笑うその姿は、大会委員の緊張をさらに高めるだけだった。




どうも、焦らしまくる作者です。
ごめんなさい。

この部分はどうしても必要な描写なのです。
ここなしでそのまま行くと、恐らく内容薄いまま『モノリス・コード』の勝敗が決するところまで行っちゃいますからね。

しかし、ここまで来たら明日の内容は……おわかりですね?

いろんな要素を含めて、楽しみは明日です。
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