九校戦が今回を含めて三、四話。
夏休み編三、四話ほど。
過去編三、四話ほど。
横浜騒乱編が二十五話ほどでエピローグが一話なので、多くても四十話は既に切った状態でしょうか。
それまで皆さんが楽しめるような作品を書いていきますので、皆さんも完結までお付き合いくださいな。
『モノリス・コード』優勝を飾ったその日の夜、渚たちE組メンバーは、渚と業の部屋で磯貝主催の祝賀会を行っていた。
「よし、皆ジュースは持ったな。では、一高の『モノリス・コード』優勝を祝して、乾杯!!」
「カンパーイ!!」
磯貝に合わせて、その他全員もグラスを掲げて続いた。
「いやー、本当に優勝してくるとは思わなかったよ。さすがは渚といった感じかな?」
「僕だけじゃなくて、達也や幹比古がいたおかげだよ」
「でも、三人それぞれの力も高くないと『クリムゾン・プリンス』と呼ばれる一条家の御曹司、『カーディナル・ジョージ』と呼ばれる吉祥寺 真紅郎の組み合わせを倒すなんてほぼ不可能なんだから、渚も誇っていいと思うぞ」
「おい、見ろ渚!グループに皆からもメッセージが届いているぞ!」
中村や磯貝から祝福を受ける渚に、前原に端末を目の前に差し出される。
『さすがは渚だな!『モノリス・コード』優勝おめでとう!』
『うちのクラスの首席は一高でも高いレベルにいるようで何よりだな』
『というか、暗殺教室のときよりも暗殺者だった』
九校戦は、各高校の優秀な魔法師の卵が全力を持って競い合うため、有線放送がされている。
それを見ていた元クラスメイト、正確には、この場にいるE組メンバー以外の全員から、書き方や伝え方はどうであれ、優勝の祝福メッセージが届いていたのだ。
それを見て目に熱いものが込み上げてくる渚。
なんとか堪えながら返信をする。
『皆、ありがとう!本当に嬉しいよ!』
『隣で泣きそうになってるからねー』
渚の顔が少しずつ赤くなっていく。
こういうことを書くのは、間違いなく業しかいない。
「業!なんでそれ言っちゃうの!?」
「だって、皆のメッセージに対しての渚の詳しい情報を伝えないといけないじゃん?」
「せめて隠してよ!!」
渚と業の相変わらずのやり取りに、それを見ていた全員が笑っている。
皆に笑われていることに気がついた渚が周りを見渡すと、さっきまで言い合っていた業すらも笑っているため、なんだか可笑しくなって渚も一緒に笑ってしまった。
祝賀会は、その夜遅くまで続いた。
◆◆◆
『モノリス・コード』を見事優勝に飾った代理チームを祝福しようという動きがあったが、達也は病院で治療、渚はあれから一回も姿を表しておらず、渚も幹比古も疲れているだろうということで――渚が一足先に祝福を受けていたのは本人以外誰も知らない――、新人戦優勝パーティーは総合優勝パーティーまでお預け――決まったわけではないが――となった。
まず、その総合優勝をするために勝つ必要がある、明日から再開される本戦『ミラージ・バット』の関係により、それどころではない。
九校戦九日目の競技は、深雪が出場する『ミラージ・バット』女子予選から決勝、『モノリス・コード』男子予選リーグが行われる。
現在、二位の三高との差は百四十ポイント開いており、明日の『ミラージ・バット』の配点は一位が五十ポイント、二位が三十ポイント、三位が二十ポイント、四位が十ポイント。
対して、明日予選、最終日の『モノリス・コード』の配点は、一位チームに百ポイント、二位チームに六十ポイント、三位チームに四十ポイント。
つまり、明日の『ミラージ・バット』の成績次第では、最終日を待たずして一高の総合優勝が決まる。
一高は、明日にでも優勝を決めようと、手の空いたメンバーも総出で選手とエンジニアのサポートに夜遅くまで回っている。
そして、とある場所では、別の意味で夜遅くまで起きている者たち、正確には、一睡もできないほど追い詰められている者たちがいた。
「第一高校の優勝は最早確定的だ……」
「馬鹿な!諦めると言うのか?それは座して死を待つということだぞ!」
「このまま一高が優勝した場合、我々の負け分は一億ドルを超える。ステイツドルで、だ」
「これだけの損失、楽には死ねんぞ?ただでさえ今回のプランは負けた場合の金額が大きすぎて本部が渋っていたのを、我々が無理に通したものだからな。良くて生殺しの『ジェネレーター』、適性がなければ『ブースター』として死んだ後まで組織に搾り取られることになる」
テーブルを囲んだ男たちは、おぞましい者を見る目で、部屋の四隅にボンヤリと立ち尽くす四人の男を順番に窺い見た。
「このプランがなければ今期のノルマを達成できなかったとはいえ……少し強引すぎたか」
「そんなことを言っている場合ではなかろう!……こうなっては最早、手段を選んでいる場合ではない」
「そうとも!最初から本命に負けてもらう予定で色々と手間を掛けたのだ。多少手荒な真似になっても今更躊躇う理由はない。客に疑いを持たれたところで、証拠を残さなければ何とでも言い訳は立つ。この際、徹底的にやるべきだ」
「協力者に使いを出そう。明日の『ミラージ・バット』では、一高選手の全員に途中で棄権してもらう。……強制的にな」
「運が良ければ死ぬことはあるまい。さもなくば、運が悪かったというだけだ」
狂気を孕んだ含み笑いが、同意の印を投げ交わされた。
◆◆◆
九校戦九日目は、前日までの好天から打って変わって、今にも雨が降り出しそうな分厚い雲に覆われていた、薄暗い曇天だ。
しかし、『ミラージ・バット』という競技の性質上、夜明けを随分と過ぎてもなお薄暗い空は滅多にない好条件であり、今回はこちらの方が『好天』と言えた。
深雪の出番は第二試合。
だが、一試合目から一高の選手が出場するため、渚たちは既に『ミラージ・バット』が行われる競技場へ着いていた。
達也と深雪は競技フィールド脇のスタッフ席で観戦しているため、エリカやレオ、美月や幹比古といったいつものメンバーとは一緒におらず、また、できるだけ近くに座っているとはいえ、毎回都合よく前後の席が連続で空いているということはないので、今回も二組の席は離れた状態になっている。
簡単な位置関係は、一ブロックの前方にエリカたち、後方に元E組メンバーといった感じだ。
『ミラージ・バット』は、『ミラージ』と略される女子のみの競技。
空中に投影されたホログラム球体目掛け、魔法を使って飛び上がり、スティックで打つ競技だ。
九校戦で一番試合数が少ないのだが、試合時間は最長である。
試合中、選手は絶え間なく空中に飛び上がり魔法を使い続けるため、その負担はフルマラソンにも匹敵すると言われている。
九校戦の『ミラージ・バット』は、凝った衣装を身に纏った女子選手が飛び回るその姿から、『フェアリー・ダンス』とも評されている。
一回戦、第一ピリオドは順位が目まぐるしく入れ替わる接戦となったが、一高の選手がわずかな差でトップに立った。
その息を忘れそうな試合展開に、ホッと一息つく一同。
だが、その中に、渚の姿はない。
渚は朝イチにホテルを出て、一人で病院へと向かっていた。
それは、一人の友人に優勝報告をするためだ。
二日前にも来た、病室の扉を開ける。
そこには、一高新人戦『モノリス・コード』のメンバーである三人がベッドに横になりながら、モニターで試合を観戦していた。
「あ、渚!優勝おめでとう!」
「ありがとう、鋼!起き上がっても大丈夫なの?」
渚を見た瞬間にすごい勢いで起き上がって祝福の言葉をかけてくれた鋼に、感謝とともに身体を心配する渚。
「まぁ、大事をとって三日は絶対安静って言われたけど、ここの病院はかなり優秀でね。もうほとんど治ったよ」
「そっか。ならよかった」
鋼は比較的軽傷な方とはいえ、無理をしないように病院側も配慮したのだろう。
他の二人も、後遺症の心配はなさそうだ。
「にしても、まさかあの『クリムゾン・プリンス』と『カーディナル・ジョージ』を倒すなんて、さすがにビックリしちゃったよ」
「いや、相手の隙を上手くつけただけだよ」
「いや、そこがすごいんだよ。まず、僕たちでは彼らに隙を作ることすらできなかっただろうね」
鋼は、何故か渚の方ではなく、森崎の方を見ながらそう言った。
「……何故俺を見る」
「そろそろ森崎も認めた方がいいよ。一科生、二科生の差は魔法力だけで、実戦では全く関係のないことだってことをさ」
「……俺だって、分かってたさ。入学式の次の日、潮田 渚に後ろから声をかけられたあの瞬間から、一科生と二科生との差に実戦的な実力の差はないんだってことぐらい。でも、認めたくはなかった。認めたら、見下していた二科生よりも下の部分があるということを認めてしまうからな」
渚は、ポカーンと口を開けていた。
あの森崎が、こんなこというとは思ってもみなかったのだ。
「だけど、『クリムゾン・プリンス』と『カーディナル・ジョージ』の二人を目の前で倒されてしまっては、認めるしかないだろう。司波 達也だけは気にくわないがな。むしろ、俺は潮田 渚には感謝している」
「まぁ、そういうわけで、改めて優勝おめでとう。そして、僕たちの分までありがとう」
「どういたしまして」
場が和む。
良い雰囲気が流れるが、その雰囲気は長く持つことはなかった。
「あっ!!」
「うわっ!?いきなりどうしたんだよ!ビックリしたじゃないか!」
いきなり、もう一人の選手が叫んだため、森崎がビクッと身体を震わせた。
彼が指をさしてしたのは、九校戦の『ミラージ・バット』が映し出されているモニター。
そこに映っていたのは、一時中断をする競技。
担架で運ばれる、一高選手の姿だった。
前書きから……
後四十話切っているということは、もう既に半分超えたことになりますね。
作品投稿から二ヶ月で半分。
完結は九月下旬あたりでしょうか。