魔法科高校の暗殺者   作:型破 優位

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旅(行)に出(かけてい)ます(ネタの反復使用)

楽しいです(小並感)

それはさておき、タイトルの通り、本格的にこの方が登場します。


烏間の時間

 立ち上がった男の表情は、まさに無表情。

 それは、無表情というよりも表情が欠落していると表した方がいいのではないのか、と思ってしまうほどだ。

 

 不意に、男の身体がびくっと震えた。

 一瞬で発動された自己加速魔法。

 周りにいた魔法師が魔法の気配に気づく前に、男はすれ違おうとした男を襲おうとして、次の瞬間にはスタンドの外へ飛ばされていた(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 その男、『ジェネレーター』十七号が現状を把握した時には、既に地面までの高さ三メートルを切っていた。

 殺戮の指令を受けて最初に目の前を通りすぎようとした男性に襲いかかろうとした瞬間、次に認識したのは、下に見えるスタンドだった。

 

 全く予想していなかった場所からの攻撃。

 気配は、何処にもなかったのに、だ。

 

 既に地面に叩きつけられる寸前。

 通常であれば恐怖にすくみ、あるいはパニックに陥り、為す術もなく墜落する状況だが、この男は、実戦の中で安定的に魔法を行使できるように仕上げられた生体兵器、『ジェネレーター』だった。

 

 十七号は無感情に、慣性中和の魔法を発動した。

 この時点では減速するよりも、慣性を低減させた方がダメージを和らげることができるという計算を瞬時に行った結果だった。

 

 脚のバネ、腹筋と背筋に両腕まで使って、落下速度を全て吸収する。

 

 その瞬間、スタンドから人が文字通り、速度を落とすこともなく、魔法を使うこともなく生身で(・・・・・・・・・・・・・)落ちてきた。

 両手両足を地につけたまま、顔をあげたジェネレーターは落ちてきた人影を確認する。

 

「よくあの段階から態勢を立て直したな」

 

 その生身で約二十メートルの高さから落ちてきた男は、何事もなかったかのように立ち上がって『ジェネレーター』に近づいていく。

 

 その時、再びスタンドから、今度は両手両足を使わずに男が飛び降りて着地した。

 その男の表情は、驚愕だ。

 

「烏間大佐!大佐が何故このようなところに!?」

 

 渚たちE組の表向きの担任、実際の副担任にして、陸軍大佐の烏間がいたからだ。

 

「柳か。俺の教え子が本格的に狙われたという話を聞いてな。九島閣下と面会する約束もあったからついでに寄ってみたら、この男が何やら怪しげな話をしていたからな。要は――」

 

 烏間が顔を柳に向けながら説明している途中で、十七号は隙を見つけたと自己加速魔法を発動して突進を仕掛けた。

 それに柳は気づくも、烏間にとっては完全な死角。

 

「――たまたまだッ!」

 

 だが、それを烏間は見向きもせずに右後ろ回し蹴りで十七号を吹っ飛ばした。

 自己加速魔法を発動している相手に対して、完全な生身で、である。

 

「さて、まずはこいつを片付けるとしようか」

 

 そういった烏間の笑顔に、柳は本能的な恐怖を感じた。

 烏間は、魔法師ではない(・・・・)

 

 そんな人間が、何故陸軍の大佐についているのか。

 それは、魔法を越えるほどの圧倒的な強さ、そして頭のキレの良さを持っているから。

 

 烏間は普段は、真面目、禁欲、誠実と三拍子揃った堅物だが、戦闘になれば全くの別人。

 いや、本性が現れる。

 

 暗殺者育成の教室、暗殺教室のメンバーは、達也をして『強い』と言わしめるほどの、実力者たちだ。

 だが、その生徒全員束にならなければ敵わない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)と言われる彼は、正しく怪物。

 

 それを顕著に現す、最近起きた例で言えば、アフリカゾウも一瞬で昏睡する毒ガスをまともに喰らっても、多少制限されたとはいえ、動いていたことだろう。

 

 軍きっての、戦闘狂。

 事実、軍において烏間に敵う者は、いない。

 

 蹴り飛ばされた十七号は、何事もなかったかのようにムクッと立ち上がり、自己加速魔法を発動して再び烏間に飛び掛かる。

 

 だが、自己加速魔法を上回る(・・・)ほどのスピードで、烏間は十七号の顔に肘打ちをし、十七号はその場で数回回転して再び地面に倒れた。

 完全に頭部は損傷、自己再起は不能なレベルである。

 

「まさか烏間大佐がここにおられるとは……」

 

「真田か。お前たちの作戦が無駄になってしまったようだな。悪かった」

 

「い、いえ!烏間大佐の戦いを見れるだけでも光栄です!」

 

「大佐。そんなこと言いながら楽しんでおられたでしょう?」

 

 真田が茂みから出てきて、ビシッ!と敬礼をするなか、部隊の中で唯一の女性にして、そのハッキング能力から『電子の魔女(エレクトロン・ソーサリス)』の異名を持つ藤林が、若干呆れたような口調で烏間に言った。

 

「……まぁな。それよりも藤林、情報助かった」

 

「お役に立てて光栄です」

 

「こいつの処理はお前たちに任せる。俺は行くところがあるからな」

 

「ハッ!」

 

 背を向ける烏間に、三人で一斉に敬礼をする。

 十七号は意識はあっても、それから動くことはなかった。

 

◆◆◆

 

 そんな事件があったことも知らない渚は、『モノリス・コード』の試合が行われるということで、天幕から競技場へと移動していた。

 

「おかえり、渚。どうだった?」

 

「ただいま、業。三人とも元気だったよ」

 

「なら良かった。ほら、席に座りな」

 

「うん、ありがとう」

 

 この『モノリス・コード』には、克人と副会長である服部、さらには達也の風紀委員の先輩である、辰巳(たつみ) 鋼太郎(こうたろう)が出場する。

 十師族というブランドなのか、競技が被ってないのもあってやはり人が多い。

 

 業たちが席を取ってくれていなければ、渚も座れるか怪しかっただろう。

 

「……潮田 渚か?」

 

 ふと、後ろから声をかけられた。

 渚が、振り返った先には、昨日対戦したばかりの二人組がいた。

 

「一条くんに吉祥寺くん?」

 

『一条』という単語に、業が反応して振り向いた。

 もう一人は当然、真紅郎だ。

 

「ああ、奇遇だな」

 

「へぇ―、君が一条 将輝くん?あ、俺は赤羽 業だ」

 

「赤羽 業……何処かで聞いたことがあるな……」

 

「あ、業は僕の元クラスメイトだよ」

 

「……!成る程、聞いたことがあるわけだ」

 

 真紅郎だけがついていけないなか、話はどんどん進んでいく。

 十師族、それも同年代ともなると、暗殺教室の情報はかなり細かく教えられているのだろう。

 

「君たちには本当に――」

 

「その話はいいからさ、この試合が終わったら少し俺と二人きりで話そうよ」

 

 最早定型化しようとしている謝罪を切り捨てながら、業はまたしても動きだした。

 将輝に業の意図は分からない。

 だが、暗殺教室の生徒と話をできるというのは、かなり大きいメリットを得ることができる可能性が高いのだ。

 

「……分かった」

 

「物分かりが早くて助かるよ」

 

 それからは、真紅郎が自分を倒した技はどうやったのかと渚に聞いたり、渚が『基本コード』をどうやって見つけたのか、そのきっかけや道のりを聞いたり、一条家の日常を聞いたりと、ごく普通の日常会話をして試合開始時間を待った。

 

 数十分が過ぎた頃、だんだんと観客席が静かになっていき、試合が始まるという緊張感が支配していく。

 十師族である克人は勿論だが、その他の二人、特に服部は校内でも五本の指に入るほどの実力者だ。

 

 十三束によると、その強さは、自分たちが練習試合を行っても、全く歯が立たなかった程である。

 

 渚もその場の雰囲気によって、心臓の脈が早くなる。

 

 試合開始のブザーがなった。

 

 それと同時に、服部が跳躍の魔法を所々交えて一高陣地から飛び出し、忍者のように木々を移動していく。

 フィールドは『森林ステージ』

 相手はその思いきりの良い突進に若干戸惑うも、飛び出たオフェンスに集中砲火を浴びさせる作戦にしたらしく、三人で服部に襲いかかる。

 そこからは、服部の魅せる試合展開だった。

 

 三人に迎撃魔法を撃った後、『スピード・シューティング』で真由美が使った、収束・発散・移動系複合魔法『ドライ・ブリザード』、それによりできた霧に電気を流す『這い寄る雷蛇(スリザリン・サンダース)』、加速・収束系複合魔法『砂塵流(リニア・サンド・ストーム)』など、数えだしたらキリがないほどの豊富な魔法のバリエーション。

 

 将輝ですら認めたその技量や魔法の使い方には、渚にも学ぶところがあった。

 

 一高の『モノリス・コード』は、圧倒的な強さで決勝リーグ進出を決めた。

 




ハーメルン創設六年目突入、おめでとうございます!

というか、これあと一話で終わるのかな……
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