魔法科高校の暗殺者   作:型破 優位

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さて、夏休み編です。
というか、実は渚くん昨日が誕生日……昨日のやつさりげなく編集しておきましょう、そうしましょう。

今回はかなり原作に近い感じ。


夏休み編
夏休みの時間 一時間目


 九校戦が終わって約一週間が過ぎた夏休みも折り返そうとしている頃、達也から一通の連絡がきた。

 

『雫が来週の金曜日から日曜日の二泊三日で海に行かないかって言ってるのだが、来るか?』

 

 内容は、旅行のお誘いだった。

 

◆◆◆

 

「綺麗だねー」

 

「ああ、そうだな」

 

 雫は有名な企業家の娘だったらしく、旅行先である小笠原の別荘へは北山家のクルーザーに乗って向かい、雫の父親である北山 (うしお)の手厚い歓迎とともに海の旅を満喫、今二人はパーカーを着てパラソルの下で五人の少女たちが遊ぶ姿を眺めていた。

 

 人数構成は男子四人、女子五人。

 男子は渚、達也、レオ、幹比古。

 女子は深雪、雫、ほのか、エリカ、美月だ。

 

「二人ともー、泳がないのー?」

 

「お兄様ー、潮田くーん、冷たくて気持ちいいですよー」

 

 白い砂浜、眩しい太陽、さらに眩しいビーチ。

 エリカが、深雪が、波打ち際から呼び掛ける声に、達也は砂に刺したパラソルの日陰から曖昧な笑顔で手を振った。

 

 渚はそれに答えるように立ち上がり、ストレッチを始めた。

 

 それにしても、ビーチが眩しい。

 

 まず目を惹くのが、派手な原色のワンピースを着たエリカ。

 余計な飾りが無いシンプルなデザインは、彼女のスレンダーなプロポーションを更に引き立てている。

 

 その隣で手を振る深雪は、大きな花のデザインがプリントされたワンピース。

 そのプロポーションと相まって、生々しさの希薄な、妖精的な魅力を強調している。

 

 そして美月。

 細かな水玉模様のセパレートでビキニというほど露出は無いが、胸元の深いカットに豊かな胸が強調され、いつもの大人しいイメージからは想像できない艶かしさを出していた。

 ただ、肩幅と腰幅が狭いせいか、ウエストの曲線が足りないのはご愛嬌と言うべきだろう。

 

 同じくセパレートながら、ワンショルダーにパレオを巻いたアシンメトリーなスタイルで大人っぽく決めているのがほのか。

 単なる大きさではなく、凹凸でいうならこの中で一番プロポーションが良いかもしれない。

 

 雫は逆に、フリルを多用した少女らしいワンピースだ。

 こんな時でも表情に乏しい大人びた顔立ちの雫が着ると、そのギャップによるものか、妖しい魅力があった。

 

 そこから沖へと視線を移すと、レオと幹比古が競泳を行っており、派手な水飛沫(みずしぶき)があがっている。

 

「――よしっ」

 

 一通りストレッチを終えて達也を見てみると、達也は遠くの方を見て珍しくボーッとしていた。

 そこに少女たちが近づいていき、腰を(かが)めて達也の顔を覗き込む体勢になっていた。

 

「達也さん、考え事?」

 

 達也の前から、雫が。

 

「お兄様、せっかく海に来たのですから、泳ぎませんか?」

 

 左から、深雪が。

 

「そうですよ。パラソルの下にいるだけじゃ、もったいないです」

 

 右から、ほのかが。

 三方向からのお誘いに、その後ろでエリカの人の悪い微笑をしているのを見た達也は、何かされる前に立ち上がった。

 

「そうだな、泳ぐか」

 

 そのまま、ヨットパーカーを脱ぐ。

 パーカーが砂の上に落ちる音と共に、空気が変わった。

 

「達也くん、それって……」

 

 エリカの声には隠しきれない緊張が滲んでいた。

 それ、の意味は渚にもすぐに解った。

 

 というより、過去に一度、写真ではあるが見たことがある。

 パーカーの下には、鍛え上げられた鋼の肉体とともに、無数の傷跡が刻まれていた。

 

 一番多いのが、切り傷。

 それと同じくらいの、刺し傷。

 所々に細かな火傷の跡。

 

 骨折の後は見られないが、これは間違いなく拷問に近い、もしくは拷問そのものの鍛練を積んではじめてこういう身体になる。

 エリカはそれを理解しているからこそ、声を上げずにはいられなかったのだ。

 

「達也くん……貴方、一体……」

 

「すまない、見ていて気持ちの良いものじゃないよな」

 

 達也はエリカの質問を遮るように答えて、脱ぎ捨てたばかりのパーカーに手を伸ばした。

 だが、彼の手はパーカーを掴むことはできなかった。

 

 深雪が素早く膝まずいてパーカーを胸に抱えたのだ。

 そして、立ち上がるや否や、達也が伸ばした左手に抱きついた。

 

「わっ」

 

 あまりに大胆な行動に、美月が声を上げる。

 

「お兄様、大丈夫ですよ。私は知っています。この傷痕の一つ一つは、お兄様が誰よりと強くあろうと努力された証だということを。ですから、お兄様の身体を見苦しいだなんて、私は思いません」

 

 深雪の言葉に、達也の表情が微かに緩む。

 その直後、空いている右腕にほのかが抱きついた。

 エリカが称賛を込めて、ヒュウ、と短い口笛を吹いた。

 

「わ、私も気にしません」

 

 一度噛み、それから早口でまくし立てる。

 恋人相手ならともかく、恋人でもない異性に、水着でするには大胆な行動だ。

 左に妹、右に異性。

 これは正しく――

 

「これってまるで……恋人と妹の板挟みの図ですね」

 

「こらっ!しっ!そんなこと言っちゃダメでしょ、美月。せっかく面白くなりそうなんだからさ」

 

 美月のセリフは冷やかしでは無く素直な感想で、渚も達也には申し訳ないが全く同じことを考えていた。

 エリカの発言は若干問題なのだが、さっきとは違っていつも通りの声質になっていた。

 

 エリカは、少しバツの悪そうな笑顔を向けている。

 

「えーっと、ごめんね、達也くん。変な態度とっちゃってさ」

 

「いや、気にしてない。エリカも気にしないでくれ」

 

「気にするなって言われてもねぇ……あっ、そうだ!」

 

 良いこと考えた、と言いたげな表情で、エリカがニコッと笑った。

 

「お詫びに、あたしのも見せてあげるから」

 

 そう言いながら、エリカは右手の親指を水着の肩紐の下に差し入れ、ウインク付きで指一本分ほど持ち上げて見せた。

 

 その行動に、美月が固まる。

 

「泳ぐか」

 

 だが、達也はそれを見事にスルーして、波打ち際へと向かった。

 頬を膨らませたエリカと、困惑込みの気の抜けた笑みを浮かべた美月。

 

 二人の前を横切った達也たちを追いかける雫は、右側の少女の背中に向かって、『よくやった』と言いたげに何度も頷いていた。

 

 渚も達也たちと泳ぐべく、上に来ているパーカーを脱いで後をつける。

 

「……ねぇ、渚くん」

 

「どうしたの、エリカ?」

 

 呼び止められた渚が振り向くと、エリカが珍しく困惑したような表情でこちらを見ていた。

 

「ずっと考えていたんだけどさ……」

 

「うん」

 

 一拍の間。

 エリカがここまで溜めるということは、相当なことなのだろう。

 渚も少し気を引き締めてエリカの言葉を待った。

 

 エリカは渚の身体、主に裸の上半身を眺めて、一言。

 

「渚くん、本当に男だったんだね……」

 

「今ごろ!?」

 

 ――やはりエリカも業や真由美側なのかもしれない。

 

 ため息をつきたくなるような事実を目の前で見せられて、未だに男だと思われていなかった悲しみを背負いながら、今までよりももっと男らしく振る舞おうと心で決めて、渚は海へと向かった。




続編一話とオリジナル一話夏休み編で投稿して、過去編いきましょうか。
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