魔法科高校の暗殺者   作:型破 優位

48 / 60
再び体調を崩した作者です。
ただ、モチベの維持はしっかりしてるので、まだなんとかなってます。

前話と今話はかなり無難な進行となってます。
ですが、次話は暗殺教室寄りとなります。


夏休みの時間 二時間目

 ここで起きた水の掛け合いは、渚が今まで体験してきたものとは全くの別物だった。

 今までと言えば、本当に手で水をかける程度のものだったのだが、この場所で行われていたのは、水の掛け合いではなく撃ち合いである。

 

 男子対女子で行われた、魔法を使用して行う水の撃ち合いは、ジェット水流のようなスピードで放たれ、身の危険を感じた渚は撤退。

 結果、達也が五人から的にされることとなった。

 

 的に徹したことによりさすがの達也も疲れたのか、今は沖に近いところで波に流されながら漂っている。

 レオと幹比古は未だに泳ぎ続けており、さすがに砂浜近くに居た渚が追い付くのは体力的にも精神的にも厳しく、かと言って疲れている達也の近くにいくのも気が引ける。

 達也がそうなっている理由は渚にもあるのだから。

 

 ボートで遊んでいる女性陣――美月はパラソルの下で一休み中――に参加するのはもっての他だ。

 何をしようか、と悩む渚だが、その視界に一人の人影を捉える。

 

 その人影は、どうやら砂浜から離れた浅瀬に向かっているようだった。

 

「黒沢さん、何処に行くんですか?」

 

「渚様。夕食のバーベキューの食材調達を、と思いまして」

 

 その人影は、この島まで船を運転してくれた操舵手であり、別荘で渚たちの身の回りの世話をしてくれてマルチハウスキーパー、黒沢女史だった。

 船上では制服を着ていたが、現在は薄手のワンピースに、それよりも大きい白いエプロンという格好だ。

 

「あ、それなら僕も一緒にいいですか?」

 

「勿論です」

 

 そして、現在やることを探していた渚にとって、とても好都合なことだった。

 黒沢についていき、浅瀬で貝やカニなどを取っていく。

 

「渚様、足元に気を付けてくださいね」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 一定の間隔で気遣う言葉を掛けてくる黒沢。

 これだけでも彼女の優秀さが出ている。

 

 貝やカニ、ナマコなど採集をするとき、何故か時間を忘れて夢中になってしまうことが多い。

 渚も例外ではなく、気がついたら端末が三時を示していた。

 

「これだけ取れれば十分ですね。手伝ってくださり、ありがとうございます」

 

「こちらこそ、つい時間を忘れて夢中になってしまいました」

 

「それでは、戻りましょうか」

 

「はい!」

 

◆◆◆

 

 シャリシャリシャリシャリ……

 

 深雪がかなりの良い笑顔でキウイをシャーベットにしていく。

 真夏だというのに、バルコニーエアコンがいらないほど涼しい。

 

 浅瀬から二人が戻ったとき、遊び終わったのか深雪、エリカ、雫が砂浜のパラソルの下で一休みしており、黒沢を見かけるや否や、深雪が「果物はありませんか?」と冷気を放ちながら言い、黒沢が素早く大量の果物を用意、場所をバルコニーへと移しティータイムをしようということになり、現在の状況に至る。

 

 エリカによると、ボートで遊んでいたら荒波に襲われてボートが転覆したらしく、それを感知した達也が魔法でそこまで走って――泳いだのではない――泳ぎが苦手だというほのかを救助したのだが、ほのかの水着は元々ファッション性重視で泳ぐことを考慮していないデザインだったらしく、その荒波でトップが捲れ上がってしまい、達也に胸部を見られてしまったのだという。

 

 そして、『今日一日、私の言うことを聞いてください』というのを条件として、それを許されることになったらしく、達也とほのかは現在沖に向かって二人きりでボートに乗っており、今の深雪になっているのだという。

 

「潮田くん、お一つどうぞ」

 

 そこで、愛想良く話しかけられた渚。

 その笑顔は逆に恐怖を覚えるもので、冷や汗を流しながらその冷えすぎたキウイを受け取った。

 計ったタイミングで、黒沢がシャーベット用のスプーンが差し出される。

 

「達也と……光井はどうした?」

 

 そこで、本当に長い競泳からレオが帰ってきた。

 

「向こうで、ボートに、乗ってるよ」

 

 答えは、背後から帰ってきた。

 全身から疲労を滲ませながら海水を滴らせた幹比古が、息も切れ切れに答えて指差した先では、ボートに乗ってる達也とほのかの姿。

 

「……どうなってんだ、ありゃ?」

 

「色々あったのよ、イロイロ」

 

 レオの問い掛けに、エリカがそっぽを向きながら答える。

 その表情は素っ気ないというより、半分拗ねているような顔で、レオや幹比古、渚はその珍しさに興味を示した。

 

 そして、何故か三人揃ってボートへと視線を向ける。

 

「……結構良い雰囲気じゃない?」

 

「こっ、コラッ、」

 

 バカ、というセリフは言えなかった。

 焦りまくったエリカのセリフは、例のごとく伝わってくるヒンヤリとした空気によってぶった斬られた。

 再び、シャリシャリシャリシャリ……と音が鳴り始める。

 

「吉田くん、良く冷えたオレンジは如何かしら?」

 

 再び恐怖を感じる愛想の良い笑顔で話しかける深雪に、幹比古はカクカクと頷きながら深雪から冷えすぎたオレンジを、再び計ったかのように黒沢からシャーベット用のスプーンを受け取った。

 

 そして、深雪は新たなフルーツを手にする。

 三度、シャリシャリシャリシャリ……という音が聞こえ、あっという間にマンゴーの生シャーベットができ上がった。

 

「西城くんも如何?」

 

「あ……どうも……」

 

 さすがのレオも、そう答えるのが精一杯だ。

 深雪は再度、フルーツの山に目を向けたが、八つ当たりに飽きたのか、詰まらなそうに目線を外した。

 

「雫、悪いけどわたし、少し疲れてしまったみたい。お部屋で休ませてもらえないかしら?」

 

「良いよ、気にしないで。黒沢さん?」

 

「はい。深雪お嬢様、ご案内致します」

 

 黒沢に続いて、深雪が別荘の中に姿を消した。

 今まで縮こまっていた美月がホッとした顔になり、渚も若干の疲れを感じてため息をついた。

 

◆◆◆

 

 夕食は、バーベキューだ。

 黒沢と渚が取ってきた海の幸を主に、準備してある食材を次々とコンロで焼いていく。

 深雪も一休みして落ち着きを取り戻したのか、ほのかが甲斐甲斐しく達也の世話を焼いている姿を前にしても、気にせずエリカや雫と楽しげにおしゃべりしている。

 

 美月は昼のティータイムが軽いトラウマになったのか、深雪たちと少し離れた席で幹比古と遠慮がちな会話を交わしている。

 レオは(もっぱ)ら食べる方に口を使っており、黒沢はほとんどレオ専属の給仕係と化し、渚も似たようなものだった。

 

 無論、はっきりとしたグループ分けがされているわけでもなく、時に、ほのかは深雪たちの輪へ加わり、達也はレオとフードファイトを繰り広げたりした。

 

 だが、渚は感じていた。

 いつにも比べて、空気がぎこちないことを。

 

◆◆◆

 

「少し外にでない?」

 

「……いいわよ」

 

 夕食後、レオはふらっと出ていって、女性陣はカードゲームを、達也と渚が将棋をするなか、美月の負けで決着してすぐ、雫が深雪を誘ったのだ。

 

 一瞬戸惑った深雪だが、すぐにニコッと笑って頷いた。

 

「……えっと、お散歩ですか?じゃあ、私も」

 

「美月はダメよ。罰ゲーム、あるんだから」

 

 深雪の後を追って立ち上がりかけた美月だが、そのシャツをエリカが掴んで引き止めた。

 

「えぇ!?聞いてないよー」

 

「敗者に罰ゲームはつきものなの。じゃ、そういうことで、二人とも気を付けて」

 

 エリカは、気づいていた。

 雫と深雪の間に漂う、張り詰めた空気に。

 

 それはレオも同じで、ふらっと出ていったのはこの空気の兆候を嗅ぎとったからだろう。

 

 もちろん、渚も気がついていたが、今はそれどころではない。

 達也との将棋は、かなり白熱したものとなっていた。

 

 渚は矢倉に囲ってから棒銀で達也の出方を確認、それを見た達也も、渚の実力が未知数なため、美濃囲いで対抗。

 観戦していた幹比古は、そのレベルの高さに固唾を呑んで見守っていた。

 

 手数は、あっという間に五十を越えるも、幹比古の目には互角の勝負が展開されている。

 だが、実際のところは渚がかなり追い詰められていた。

 

 確かにまだ全面的な駒とりとなってはいるのだが、渚の矢倉囲いは確実に崩されているのに対し、達也の美濃囲いはまだ原型を留めている。

 

「王手」

 

 そして八十二手目、達也が王手をかけた。

 最早、誰がみても明らかな渚の劣勢。

 このまま勝負がつくように見えたこのゲームだが、そこで急展開を迎えた。

 

 達也が角で王手したのを、桂馬を前に置くことで止めた渚。

 そして、一手達也が動かし、渚はさらに駒を置く。

 

「王手」

 

 再び、達也が王手をかける。

 だが、それは一つ前に出た歩によって防がれた。

 

 そこで、達也と幹比古が同じタイミングで気づく。

 いつのまにか、渚の陣形が新たな防御形態になっており、さらに攻めの準備もできていることに。

 

 達也と渚は完全に将棋に集中しており、幹比古も完全に見入ってしまっている。

 

 それから更に数十手、ようやくその勝負が終わりを告げた。

 

「王手。ようやく終わりだな、渚」

 

「ん~~!参りました!!」

 

 達也の勝利だ。

 あまりの白熱具合に、幹比古も含め三人はかなり清々しい様子だ。

 

「すごく楽しかったよー」

 

「ああ、今までで一番強かったな」

 

「本当?それならよかった」

 

「見てるこっちも手に汗握る良い試合だったよ」

 

「あ、あの!達也さん!」

 

 いきなり名前を呼ばれた達也を含め、若干大きめのボリュームで放たれた声に、お互いの健闘を称えあっていた彼らは視線を声のする方へと向けた。

 

「どうした、ほのか?」

 

「えっと……外に出ませんか?」

 

 チラッ、と二人を見る達也。

 それに頷き返す二人。

 

「いいよ」

 

 そのままほのかと達也は外へ出ていき、この場には渚と幹比古しかいなくなってしまった。

 

「……将棋、やろっか」

 

◆◆◆

 

 次の日、何故か朝から熱い熱い闘いが繰り広げられていた。

 

「お兄様、お背中を。日焼け止めを塗りますので」

 

「達也さん、ジュース、飲みませんか?」

 

 深雪と、ほのかだ。

 

「雫がジェットスキーを貸してくれるそうです。乗せていただけませんか?」

 

「少し沖に出るとダイビングスポットがあるそうですよ?」

 

 昨日、達也とほのかの間で何があったのか、深雪と雫の間で何があったのか渚たちにはわからないのだが、何かがあったのは間違いない。

 

 達也は深雪とほのかのリクエストを順番に、時にため息をつきながらさばいていく。

 

 そんな達也だったが、渚にはいつもよりもリラックスして、楽しげに見えた。




さて、次話も文字を起こすとしましょうか……

ところで、夏休み編OVAまだでしょうか。
個人的に黒沢さんをみてみたい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。