魔法科高校の暗殺者   作:型破 優位

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時系列は、エイミィ(原作キャラ)たちが遊園地に行った数日後、夏休みが明ける本当に数日前です。


茅野の時間 一時間目

 雫の別荘への旅行から帰ってから数日後、後一週間もしないうちに夏休みが明けようとしていた。

 宿題を終えている渚には無関係なことだが、宿題をやっていないものは「明日やればいいや」と言って先延ばしにしつつも、「そろそろやらないとな」と思う頃だろう。

 

 そして、宿題が終わっているものは、残り少ない夏休みを満喫している頃だろう。

 

「うわぁ……すごい複雑な構造」

 

「迷わないように気を付けないとねー」

 

「いや、子供じゃないんだから……」

 

 そんなわけで、渚、中村、業、茅野、岡島、前原はテーマパークへと来ていた。

 

 旅行から帰宅した次の日、旅行に出掛けたその日に退院したという十三束から、実家の関係で現在バイトをしているテーマパーク、『ワンダーランド』へと招待されたのだ。

 

 人数は何人でも、ということだったので、九校戦メンバーで行こうとしたのだが、磯貝は九校戦のためにバイトの予定を全て夏休みの後半に詰め込んでしまったらしく、今回は来れない、ということで六人でお邪魔することになった。

 

 十三束家は百家の中でも有数の実力を誇り、国内の魔法師の中でも有数の資産家と言われている一族だ。

 今回、入園料が無料だということは、資産関係でテーマパークと関係を持っている十三束家が何かしらの手配をしてくれたのだろう。

 

 招待されたテーマパークは『マジック』をテーマにしたアミューズメントパークで、敷地全体にわたって生け垣やアトラクション施設が迷路を構成するように配置してある。

 

「んで、まずは何に乗るんだ?」

 

「観覧車!」

 

「……カメラは持っているのか?」

 

「おう!当たり前だろ!」

 

「よし、観覧車に乗ろう!」

 

「そこ!勝手に決めない!」

 

 前原の素朴や質問に真っ先に手を挙げて答えたのは岡島。

 言葉を交わす度にいやらしくなっていくその表情を見て、渚と茅野が同時に突っ込んだ。

 

 というよりも、開幕から観覧車に乗ろうという気分にはなれないし、この二人からは不純な動機しか見えないのだ。

 

「んー……無難にジェットコースターとか?」

 

「いいねぇ。賛成」

 

「私もいいよ!」

 

「おっけー」

 

「俺たちもそれでいいよ」

 

 満場一致。

 渚たちは、ジェットコースター乗り場へと向かった。

 

◆◆◆

 

 ジェットコースターは二人乗りなため、自動的に、渚と茅野、業と中村、前原と岡島という九校戦のときとほぼ同じペアになった。

 

 だが、その状況が落ち着かない人物が一人。

 

(どうしよう!渚と隣だ!)

 

 そう、茅野だ。

 九校戦の時も隣だったとはいえ、反対側に人がいるのといないのとでは全く違う。

 九校戦の時は気を紛らわすために反対側の人と喋ればよかったのだが、今回は渚しかいない。

 

 さらに、九校戦は観戦して楽しむことと、渚のいる一高応援という目的があったため、その競技に集中することができたのだが、テーマパークは違う。

 自分たちが楽しむことのみを目的としているのだ。

 

 結果、九校戦の時よりも、何倍も渚を意識してしまっている。

 

 既にジェットコースターに乗っている渚たち。

 現在は出発を待っている状態だ。

 

「楽しみだね、茅野!」

 

「うぇ!?あ、うん……そうだね、渚……」

 

「……どうしたの?」

 

「なんでもないよ!うん!なんでもない!」

 

 そして、考え事をしている途中で、考えていた人からいきなり話しかけられた茅野は、変な声を出してしまった。

 そのため、渚に心配され、後ろから寒気のしそうな怪しい笑い声が聞こえてきた。

 

 それにより、さらに茅野の顔が赤みを帯びていく。

 

『それでは、まもなく冒険の旅に出発します!皆様が無事に帰っていることをお祈りしています』

 

 結局、茅野は渚を意識しすぎてジェットコースターによるものではない心臓の高鳴りを抑えることが出来なかった。

 

◆◆◆

 

「大丈夫?茅野」

 

「う、うん……心配かけてごめんね……」

 

 渚が九割、後ろからの怪しい笑い声が一割という割合で茅野のヒットポイントを削っていき、異変を感じた渚はジェットコースターから下りてから茅野をベンチで休めされることを提案、そこで何故か女子である中村ではなく渚が付き添うことになった。

 

 ベンチで二人きりで座っているのだが、身体を横にさせた方がいいと業と中村が執拗(しつよう)に迫ったため、何故か膝枕状態になっている。

 

 そのため、逆に茅野の心拍数は上昇の一途を辿っているのだ。

 

「すごく熱いけど、本当に大丈夫?」

 

「う、うん!本当に大丈夫だから!」

 

 日陰のベンチであまり人目のつかないところなので、人の姿は遠目に見える程度だが、外でこういうことをするのはさすがに恥ずかしい。

 

「……誰か来るね」

 

「嘘!?」

 

「あ、ダメだよ茅野。ちゃんと寝てないと」

 

 急に渚が一点を見つめ出してそう呟いたため、バッ!と起き上がりただ休んでいるように見せかけようとするも、渚によって頭を再び膝の上に戻された。

 

「……なんか、お邪魔しちゃった?」

 

「その声は、鋼……?」

 

「おう、鋼だ」

 

 茅野の顔は渚側ではなく、その反対側を向いている。

 つまり、鋼とバッチリ顔が合ってしまうため、先ほどは渚に断られてしまったが、茅野は再びバッ!と身体を起き上がらせた。

 

「あ、茅野は寝てないとダメだって」

 

「いや!大丈夫!もう大丈夫だから!」

 

 渚は再度寝るように茅野に促すが、全てのことに置いて羞恥心が勝ってしまったため、渚と顔を会わせないように身体ごと渚とは正反対の場所へと向けた。

 

「えーっと……茅野さん……だっけ?」

 

「はい……」

 

「本当に体調の方は大丈夫ですか?」

 

「はい……大丈夫です……」

 

 鋼は一応バイト中なため、茅野に声をかけたのだが返答は小さなものだった。

 

「そういえば、退院おめでとう、鋼!」

 

「おう、ありがとう、渚!」

 

 今は触れてはいけない、というのを茅野の後ろ姿から察した渚は、まだ言えていなかった退院祝いの言葉をかけた。

 

 ちなみに、鋼の格好はワンダーランドなだけあるのか、ピエロみたいなお面をつけた、サーカスにいそうな感じである。

 

 そこで、耳元に顔を近づける鋼。

 

「渚と茅野さんはどんな関係なの?」

 

「え、どんな関係と言われても……友達だよ?」

 

「へぇー……それで、渚は茅野さんのこと好きなの?」

 

「……え?」

 

 その鋼の言葉に、渚は固まる。

 鋼の表情は仮面によって見えないが、恐らくニヤけているのだろう。

 

 そこで渚は実際に考えてみる。

 自分が茅野をどう思っているのかを。

 

 まず、茅野との出会いは三年生の始業式のとき、親の関係で髪が長かった渚に話しかけてきたのが、茅野だった。

 それから、学校でも一緒にいる時間が多くて、誰よりも話しやすくて、気の置けない友人となった。

 

 その後、茅野の本当の姿を見て、茅野の辛い過去を知って、仕方がなかったとはいえ、ディープキスをして……。

 

 バレンタインのチョコをくれたときや、定期的に連絡をしてくれるときは、本当に嬉かった。

 九校戦のとき、業たちに計られたとはいえ、ベッドから起きてからも茅野が渚から離れることはしなかった。

 

 そして、業や中村の茅野の弄り。

 さすがの渚も、茅野に好意を抱かれていることぐらいは、気がついている。

 そして、茅野も少しずつではあるが積極的になってきているのも、なんとなく感じていた。

 

 なら、自分はどうなのだろうか。

 茅野といるとき、悪い気分はしない。

 むしろ、安心するといってもいい。

 

 茅野からの好意を貰うのも、嬉しい。

 なにより、一緒にいて楽しいし、これからも一緒にいたいと思っている。

 

(なんだ、考える必要なんてなかったんじゃん)

 

 元から、考える必要などなかったのだ。

 

「僕は、好きだよ。茅野のこと」




ここであえて止めてもう一話夏休み編でいきます。

上手く描写できてるのか毎回心配になってます。
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