今回は次回のために内容が若干薄いです。
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では、本文にいきましょう。
摩利と真由美が帰ったその場は、時が止まったかのように静寂に包まれている。
その中でも『動』を見つけようとするならば、森崎が若干小刻みに震えていることぐらいだろうか。
「……森崎。おい、森崎!」
「……ッ!」
「ほら、帰るぞ」
「あ、ああ……」
未だに目の焦点が合っていない森崎は、深雪のクラスメイトに肩を貸してもらい、支えられながら歩いて帰っていった。
「お兄様、もう帰りませんか?」
「そうだな。渚、レオ、千葉さん、柴田さん、帰ろう」
「うん、そうだね」
一科生がいなくなったことによりこの場にとどまる必要もなくなった渚達は、深雪の意見に皆頷いて達也と深雪を先頭に帰路についた。
が、その行く手を遮るように深雪のクラスメイトの女子生徒が立ち塞がった。
しかし、もうこれ以上は関わりたくないのか、達也は深雪に目配せをし、そのまま通りすぎようとする。
その達也の意を汲んで、また明日、と挨拶をしようとした深雪だが、それよりも先にその女子生徒が口を開いた。
「光井 ほのかです。さっきは失礼なことを言ってすみませんでした。大事にならなかったのは、お兄さんのおかげです」
「……どういたしまして。でも、お兄さんはやめてくれ。これでも同じ一年生だ」
「分かりました。では、何とお呼びすれば……」
「達也、でいいから」
「……分かりました。それで、その……」
「……なんでしょうか?」
「……駅までご一緒してもいいですか?」
◆◆◆
駅までの帰り道は、微妙な空気だった。
メンバーは達也、美月、エリカ、レオ、渚のE組五人と、深雪、ほのか、ほのかの友達で同じくA組の北山
達也の隣には深雪、そしてその反対側には何故かほのかが陣取っている。
「……じゃあ、深雪さんのアシスタンスを調整しているのは達也さんなんですか?」
「ええ。お兄様にお任せするのが、一番安心ですから」
ほのかの質問に対して、我が事のように得意げに、深雪が答える。
「少しアレンジしているだけなんだけどね。深雪は処理能力が高いから、CADのメンテに手が掛からない」
「それだって、デバイスのOSを理解できるだけの知識が無いとできませんよね」
深雪の隣からのぞき込むように顔を出して、美月が会話に参加した。
「CADの基礎システムにアクセスできるスキルもないとな。大したもんだ」
「達也くん、あたしのホウキも見てもらえない?」
振り返りながら、レオ、エリカ。
エリカの呼び掛けが『司波くん』から『達也くん』になっているのは、「光井さんに名前で呼ばせてるんだからいいでしょ」というもので、自分のことも名前で呼んで良いという交換条件により成立。
当然、美月も同じ取引を主張し、何故か渚も流れでエリカと美月を名前呼びすることになった。
「無理。あんな特殊な形状のCADをいじる自信はないよ」
「あはっ、やっぱりすごいね、達也くんは」
「何が?」
「私のこれ、達也くんからは一瞬しか見えてないはずなのにホウキだってわかっちゃうんだもんね」
達也の返事は本気なのか謙遜なのか分かりにくいものだったが、エリカのは素直な賞賛だった。
エリカが取り出したのは、先程取り出した警棒みたいなものだ。
つまり、エリカがホウキだといっていたのは、この警棒みたいなものだということになり、渚が驚きの声を上げる。
「へぇー、その棒みたいなのもCADなんだね」
「普通の反応をありがとう渚くん……と、そういえば、渚くんで思い出した」
「……?どうしたの?」
その反応待ってました、とばかりに笑顔になったエリカだが、発言者が渚だったことで何か思い出したのか、そうだと手を叩く。
「渚くんさ、いつの間に森崎?の後ろに移動したの?魔法?」
エリカの質問に、全員の視線が集まる。
これはこの場の全員が気になっていることでもあったのだ。
「あ、あれ?魔法でもなんでもないよ」
魔法ではない、というあたりで達也からの視線が少し強くなったのを感じた渚。
「どうしたの?達也」
「いや、続けてくれ」
「あ、うん」
何故か達也から少し警戒されているのを感じる渚だが、まだ会って二日目のため仕方ないかと切り替えて種明かしを始めた。
「みんな、森崎くんがCADをレオに向けたとき何処見てた?」
渚の質問に、各々が答え出す。
「私は森崎のCADを見てたわ」
「俺も同じだ」
「私もお兄様と同じです」
「俺も」
「わ、私もです!」
「私も」
全員一致だった。
「そう、全員森崎君のCADに目が行ってたよね?」
「そうだけどよぉ、そのすぐ後には渚は森崎の後ろにいたよな。CADから視線を上げたら居たしな」
確かに目は森崎のCADにいってしまっていたが、あの短時間ではどうやっても森崎の後ろに隠れることが出来るわけがないのだ。
それに対して渚は再び質問を投げ掛ける。
「えーと……じゃあ、レオが森崎を挑発したときは何処見てた?」
「んー……森崎?」
「まぁ、俺は当然森崎だな」
「森崎だ」
「森崎君です」
「私も同じです」
「私は西城君を見てました」
「ほのかに同じ」
これは答えが分かれた。
それぞれ自分の仲間?の相手を見ていたのだ。
「僕はその時を狙ってた。つまり、視線誘導を使ったんだ」
そう、それが今回の答え。
視線が誘導されているうちに、渚は森崎の後ろへと回り込んだのだ。
「なるほどな……でも、すごい技術だな。全く気付かなかったよ」
「本当に、すごいですね」
レオと美月が賞賛の声を漏らす。
そこで駅へと着き、今回はその場で各自解散となった。
◆◆◆
それから数時間後、夜も更けた頃、達也は自宅であることを考えていた。
そこで、扉がノックされる。
「どうぞ」
「深雪でございます。コーヒーをお持ちしました」
「ありがとう」
室内とはいえ、若干露出が高い深雪がコーヒーを淹れてくれたため、考え事をやめてそのコーヒーの味に舌鼓を打つ。
だが、いつもならそのまま部屋を出ていく深雪が、今は達也の前でモジモジとしていた。
「どうしたんだい?」
「いえ、今日のことなのですが……」
「……深雪も気づいたか?」
「ええ、潮田くんが言ったのは、
「俺もそう思う」
それは、今日の帰りの件についてだった。
「私ならともかく、お兄様が視線誘導のみで騙されるはずがありません」
「ああ。ただ、魔法じゃないのも本当だ」
達也は、起動式を感知し、
その達也が感知できなかったとなれば、魔法ではないのは確かなのだ。
「そして、俺が気になるのは森崎に囁いた言葉だ。脅迫したとしても、森崎のあの怖がり方は尋常ではなかった」
そう、そしてもう一つ気になることがあった。
渚が森崎にかけた言葉だ。
「確かに、あの様子は普通ではありませんでしたが……」
「そして、森崎は正確には
「……確かに、不自然な点ばかりですね」
「ああ。でも、俺はそのことよりも気になることが一つあるんだよ」
「なんでしょうか?」
兄がこの件よりも気にしていること、眼が言葉通り良い兄が見抜けなかった件よりも気になることとは一体なんなのか、深雪にも興味があった。
達也が興味を持つことには基本的に深雪も興味を持つのだが。
「渚は、一般の中学校出身だ。しかし、なぜか一般の高校に行かずに魔法科高校へ入学してきた」
「一般の中学校?それはまた珍しいですね」
「まぁ、そうなんだが、俺が気になるのはそこじゃないんだ。一般の中学校に通ってたのにも関わらず、渚には一切の
「……謎だらけですね」
「……あんまりこういうことはやりたくないのだが、明日師匠に頼んで調べてもらおうと思ってるんだ……さぁ、もう深雪も休んだ方がいい」
深雪が部屋を出た後、また一から整理して考え直すも、達也の渚に対する謎と警戒心はそのままに、結局は何もわかることがなかった。
次回はかなり大事な話になります。