魔法科高校の暗殺者   作:型破 優位

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日間 五位

日間(加点式) 一位

週間 二十三位

ここまで上がったのは皆様のおかげです!
これからもよろしくお願いします!


実習の時間

 駅から学校まではほぼ一本道だ。

 途中で同じ電車に乗り合う、ということはなくなってしまったが、渚と達也みたいに駅から学校までの通学路で一緒になる、というのはこの学校ではかなり頻繁に起きる。

 

 駅を降りた瞬間声をかけてきたのは渚だけではなく、いつものメンバーといっても差し支えないいつもの三人もだ。

 

 しかし、今起きている現状は、当事者にとっては頻繁に起きては困ってしまうものだった。

 

「達也さん……会長さんとお知り合いだったんですか?」

 

「一昨日の入学式の日が初対面……の、はず」

 

 美月の疑問に、達也自身も一緒になって首を捻っている。

 

「そうは見えねぇけどなぁ」

 

「わざわざ走ってくるくらいだもんね」

 

 だが、レオとエリカの言うように、とても知り合ったばかりの態度には見えない。

 例えば、「達也く~ん」と軽やかに駆けてくる人影がガールフレンドとかなら、生温かい目で見られるか嫉妬の眼差しを向けられるかのどちらかだろうが、今走ってきている人はそんな生易しいものではない。

 

 生徒会長の真由美なのだ。

 真由美はルックスもよく、会長、十師族の家系ということもあり、当然のことながら男子生徒からの人気が高い。

 

「達也、周りからの視線が痛いよ……」

 

「俺に言わないでくれ、渚」

 

 登校中ということは、周りにも生徒は存在する。

 その中、それなりの距離から大声で名前を呼ばれれば、皆に聞こえることは当たり前であり、その名前を呼んでいる人を確認した男子生徒達は、敵意丸出しの視線を達也たち一行に送っている。

 

「達也くん、オハヨ~。深雪さんも、おはようございます」

 

「おはようございます、会長」

 

 達也に対しては随分フランクな態度で、深雪にはまだ礼儀が見える挨拶をする真由美。

 相手は三年生、しかも会長であるためにそれなりに丁寧な対応を心掛けなければいけない。

 

 達也が丁寧に挨拶を返して、深雪がそれに続いて一礼。

 他の四人も礼儀正しく挨拶をするも、やや引き気味なのは仕方のないことだろう。

 

「お一人ですか、会長?」

 

「うん。朝は特に待ち合わせはしないんだよ」

 

 達也が言外で含んだのであろう、一緒に来るのか、という問いかけを含めて肯定した真由美は、もはやクラスメイトみたいな感じで達也に接している。

 

「深雪さんと少しお話したいこともあるし……ご一緒しても構わないかしら?」

 

「……ねぇ、渚くん」

 

「……うん……言わなくても分かるよ……」

 

 今度は深雪に向かって言った言葉なのだが、明らかに達也のときと口調が違う。

 エリカですらかなり引き気味に言おうとした言葉は、その場の四人にとっては共通認識であり、最早話が聞こえるギリギリのところまで達也たちと距離をとるレベルだった。

 

「お昼はどうするご予定かしら?」

 

「食堂でいただくことになると思います」

 

「達也くんと一緒に?」

 

「いえ、兄とはクラスも違いますし……」

 

 深雪と真由美の二人から聞こえてくる内容は、お昼の誘いのようだった。

 真由美の問いかけに昨日の一件を思い出したのか、深雪が俯きながら答えると、真由美も何やら訳知り顔でウンウンと何度も頷く。

 

「変なことを気にする生徒が多いですものね」

 

 渚の横で、美月がウンウンと頷いている。

 昨日の一件、かなり引きずっているようだった。

 

「じゃあ、生徒会室でお昼をご一緒しない?ランチボックスでよければ、自配機がありますし、何だったら皆さんで来ていただいてもいいんですよ。生徒会の活動を知っていただくのも役員の務めですから」

 

 さらっと凄いことを言った真由美だが、渚たちに対してのお誘いはかなり社交的なものだった。

 しかし、それを正反対の口調で謝絶した者がいた。

 

「せっかくですけど、あたしたちはご遠慮します」

 

 遠慮した、にしてはかなりキッパリとした返答の拒絶。

 エリカの示した意外な態度に気まずい雰囲気が流れる。

 

「申し訳ありません、会長。会話を円滑に進めるためにも、僕達は遠慮させていただきます」

 

 そこに渚が入った。

 円滑に進めるために、というのは建前で、渚がこう言ったのはエリカの拒絶の中に『怒り』が見えたからだ。

 

 生徒会室の中を見てみたかった、というのが渚の本音である。

 

「そうですか」

 

 渚が追加で断ったからか、それとも自分達が知らない事情を弁えてくれたのか定かではないが、真由美は笑顔で答えた。

 

「じゃあ、深雪さんたちだけでも」

 

 結果的に、角を立てずに断る方法を思い付かなかった達也は、渋々といった様子でそれを承諾した。

 

◆◆◆

 

 一高においての一科生と二科生の違いは、教師がいるかいないかだろう。

 そして、二科生の渚たちE組も例外ではなく教師はいない。

 

 教師はいないため、課題の提出が履修の目安になる。

 よって、二科生の授業は、出された課題をやるということだ。

 

 お昼休みが終わったE組は現在、実習授業を行っていた。

 

 課題は、据置型の教育用CADを操作して三十センチほどの小さな台車をレールの端から端まで連続で三往復させる、というものだった。

 言うまでもなく、台車には手を触れずに、である。

 

 とはいっても、目的は授業に使うこの機械の操作を習得することにあり、壁面モニターには使い方が表示されている。

 

「達也、生徒会室の居心地はどうだった?」

 

 CADの順番待ちの列で、達也の後ろにいたレオが聞いた。

 渚たちは食堂でお昼を済ませたが、達也は妹の深雪とともに生徒会室でお昼をとったのだ。

 

 レオのその質問は、単に興味があったからだ。

 

「奇妙な話になった……」

 

「奇妙、って?」

 

 達也の前に並んでいたエリカがクルリと振り返って首を傾げた。

 エリカの前にいた渚も首を傾ける。

 

「風紀委員になれ、だと。いきなり何なんだろうな、あれは」

 

 確かに、それは「何なんだろう」としか言いようがないものだろう。

 

「確かにそりゃ、いきなりだな」

 

 レオも唐突に感じたようだ。

 

「でも、すごいじゃないですか、生徒会からスカウトされるなんて」

 

 ちょうど、そこで渚の前に実習をしていた美月が課題を終えて、再チャレンジ――失敗したわけではない――するために最後尾へ戻る足を止めて、感じ入った目を達也に向けていた。

 

 左右の列で小さなざわめきが起こっているのは、他のクラスメイトも美月と同じことを思ったからだろう。

 

 だが、そこで渚はCADの前へとつく。

 まだ話を聞いていたいのだが、後を詰まらせるのはよくないと考えたからだ。

 

 この実習は、レールの中央地点まで台車を加速し、そこからレールの端まで減速して停止、逆向きに加速・減速……を三往復行うというものである。

 

 CADに登録されている起動式は加速・減速を六セット実行する魔法式の設計図だ。

 加速度に設定はないため、そこは生徒の力量が反映されることになる。

 

 まずはペダルスイッチでCADを支える脚の高さを調節し、サイドワゴン大の筐体(きょうたい)の上面全体を占める白い半透明のパネルに掌を押し当て、そこで、渚はアドバイスブックに書いてあったことを思い出す。

 

『渚くんは魔法を使うために必要な『想子(サイオン)』というものを知らないでしょう。サイオンとは、超心理現象の次元に属する非物質粒子で、認識や思考結果を記録する情報素子のことである……と難しく書いてありますが、要はCADが携帯でサイオンは電波、魔法は携帯のアプリと思った方がいいです』

 

 魔法を知らない渚に、分かりやすく、絵までついて書いてあったアドバイスブックに、こうも書かれていた。

 

『魔法を成功させるには、目標(ターゲット)を決めることが大切です。身近な例で言えば、『勉強』です。夢が決まっていなかった渚くんは、A組に勝つために勉強していましたね?魔法で近づけて言うならば、『車を動かす』です。車を動かすためだけに、サイオンを使うのです』

 

 それに習って言えば、今回のターゲットは、『台車を動かす』ことだ。

 ターゲットを決めて、パネルにサイオンを流し込む。

 

 返ってきたノイズ混じりの起動式に眉を潜めてしまうが、それでも必要最低限のサイオンで魔法式を構築する。

 

――携帯(CAD)電波(サイオン)はつないだ。

 

――後はアプリ(魔法)をつけるだけ。

 

 余分なことはしなくてもいい。

 今日の実技はあくまでも、CADに慣れることが目的であり、ただ往復させればいい。

 つまり、携帯のアプリを起動できれば良いのだ。

 

 そこにスピードはいらない。

 

 ゆっくりとだが、台車は動き出した。

 台車は止まることなく、無事三往復する。

 

 上手く終わったことでホッと一息ついて、渚は再チャレンジするために列の最後尾、美月の後ろへと並んだ。

 

 その渚を、達也は目を離さずに視ていた(・・・・)のだった。

 




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