※ポケモン要素は皆無です。カガリさん可愛いやったー!の人しか多分喜べないSSですのでご了承ください。
読んでくださった方々に、カガリの可愛さが共有してもらえることと、カガリの可愛さを表現できていることを願って。
「キミ……弱すぎ……興味ない……」
それが、カガリから俺へと送られた初めての言葉であることを、俺が忘れることは無い。
初めてカガリと出会ったのはトウカの森の中だった。木漏れ日の中静かに微笑みポチエナを撫でる彼女の姿は今も脳裏に焼き付いている。
その時の俺は、まだ無鉄砲で正直な話大した強くもなかった。短パン小僧三人と戦って一回は負ける。それくらいだ。
なのに俺は、彼女と戦ってしまった。
……いやね? つい見惚れてたら勝負だと思われたんだよ。無鉄砲とはいえ自分の実力がわかってない訳じゃなかった。
かといって、ここで逃げるのもそれはそれで恥だった。基本的に目があった後から勝負を断るのはマナー違反とされ、相手が女の子の場合は特に、あれぇ逃げちゃうんだぷくくー(笑)とか洒落にならないダメージを食らう羽目になる。
まぁその結果ですね。
……ボロ負けです。
“あの世界のポケモン”とこちらのポケモンバトルは訳が違う。わざわざこちらの技が決まるまであっちが待てしてくれるわけじゃない。常に流動的にバトルが動くのがこの世界でのポケモンバトルだった。
そして気付いた。
あれ? 圧倒的に俺に才能ないんじゃ……と。
対してカガリは流石は未来の、と言うべきか子供ながらにその指示はトリッキーかつ慎重。俺のジクザグマは即座にボコられひんしに陥った。
そして最初の言葉である。
まさに泣きっ面にはかいこうせん。
ふんだりにどげりでもいい。
負けてもしょうが無い。これはレベル差とかそんな些細な違いではなく、あるのは絶対的ポテンシャルの差だと俺は感じてしまった。そしてそれは、目の前のカガリも感じていたのだろう。
仕方ない。しょうが無い。当たり前の結果。残当だ。
無数の諦めの言葉が脳裏をよぎり、自分の擁護に俺の脳内は揺れていた。
しかし、だというのに。
心だけが―――その結果を受け止めきれなかった。
いいんだ。別に俺が強くないことなど俺が一番知っている。あの世界のポケモンで主役を張るようなキャラに俺が勝てないことくらい俺が知っている。それどころかモブトレーナーにも負けるくらいだ。馬鹿にされたってしょうがない。
でも。でも。それでも。
―――カガリにだけは、そんなふうに見てほしくない!!!
「じゃあ、こんな弱い俺にお前が負ける日が来たら、お前は本当に弱いってことになるな」
俺は声を出した。それは好意とは相対する、侮蔑するような言葉だった。
「……何?」
それに初めてカガリは声に感情を載せた。悪感情ではあるが、無関心ではない。
「覚えておけ。こんな弱い俺に勝ったという当たり前の事と、いつかこんな弱かった俺に負けるという宣言をされた事を」
「……ァハッ……面白い……面白いくらい……笑えないね」
そう言う割に、カガリの声はどこか気色を含んでいるように聞こえたのは気のせいだろうか。いやきっと気のせいだろう。
「だろ? つまらないよな。でもお前はそんなつまらない冗談みたいな冗談で負かされるんだ」
彼女はその言葉を馬鹿にするわけではなかった。ただ現状からしてどう考えても考えつかない、この男に負ける自分のビジョンを想定して話しているだけだった。
「……ふぅん……じゃあ……もし君がボクに勝てなかったら……一生奴隷……ね」
それはご褒美ではありげふんげふん。
ちがうそうじゃない。落ち着け俺よ。
「いったな? じゃあ俺も勝ったら何でも言うこと一つ聞いてもらうぞ?」
「……うん……いいよ」
その言葉に、俺は外聞などかなぐり捨てて雄叫びをあげていた。
「よっしゃあ!!! 言質取ったぞ!? 取ったからな!? 言ったからな!? 忘れんなよ!? 絶対だからな!? 俺は忘れないから、絶対忘れないから!!」
「え…………」
おおっ。凄い。電波系巨乳無口ボクっ娘引かせてるの俺。強くね?
「よーし。当初の目的は果たした。それじゃあ帰るわ。帰ってから早速頑張らないとなー」
もはや気分は有頂天である。るんるん歌いながら帰りたい。
「……まって……」
と、そんな時。後ろから声が掛かった。まさかのカガリさんによる呼び止めである。今なら死んでも後悔ない。
「え、なに……」
「……名前……分からない」
「……えー。言わなきゃダメ? いま名前言っちゃうとすげーぼろ負けした奴って認識じゃん。嫌なんですけど」
「もうなってるから……」
うわぁ。電波系は俺に対して効果抜群だわ。容赦なくえぐってきやがる。
「まぁ、いいか。―――だよ。次会うときは絶対負かすから、忘れるなよ」
「……弱いのに頑張るんだね……まぁ、次戦う時が来るまで……ロックオン……しておいてあげる……」
そんなやり取りが俺とカガリのファーストコンタクトだった。
あれから一年。
久々に足を運んだのはカナズミシティ。あ~用事が住んだら母校のトレーナーズスクールに顔でも出すかな。
そんなことをつらつら考えながら入るのは昔はよくお世話になったポケモンセンター。うむ、相変わらずジョーイさんは天使である。
「どうも。お久しぶりですジョーイさん。回復おねがいします」
「あら、こちらにいらっしゃるのはお久しぶりですね? はい、承りました」
軽いやり取りを交わしてポケモンを預けて外へ出る。外は憎らしいほど晴れた快晴だ。
そういえばあの日もこんな日だった。
ポケモンたちがしっかり回復するまで、俺は町中をブラつく。
「ぷはっ……あ~、緊張するな」
自販機で買ったサイコソーダで喉を湿らせつつぼんやりと空を見上げる。
あれから、どれだけ俺は強くなったのだろうか。
凡人なりにやれる事はやった気がする。努力をしてきたと、胸を張って言える。勝率も悪くはない。バッジだって全部揃えた。
この一年。凡人なりに強くなった。
しかし。
相手は凡人ではない。天才だ。
俺が一年間で歩いた歩数を、きっと半年もあれば歩ききってしまうような転生の才能を持つ相手だ。
……大言壮語した割に、とても不安だった。
頭の中で必死に戦術を組み立て、これがハマりそうかどうかを吟味してると時間は簡単に“刻限”まで近づいており、俺は慌ててポケモンセンターへと向かった。
「すいません。ちょっと遅くなりました」
「いえいえ。それにしても今日は一段とポケモンのみんなも気合が入ってますね? これからジム戦ですか?」
流石はジョーイさん。そんなことまでわかるのか。カガリさんがいなかったら求婚してたな。
俺はジョーイさんの言葉に答えた。
「いえ。それよりもっと大事で―――人生の掛けたバトルを一発」
「ふふっ……そうですか。それでは、ご武運お祈りしてます。またのお越しお待ちしてますからね?」
「はいっ!」
気合は十分だ。
しっかりとした足取りで向かうのは―――トウカの森。
一年前とまるで変わらないな、この森は。
生い茂る木々。不意に目をやればそこかしこにいる虫ポケモンと、仲良くはしゃぎまわるポチエナとジクザグマ。
あぁ変わらない。
木漏れ日の下で笑う君の笑顔の美しさもまた―――変わらない。
「……久し振り。カガリ」
「ん……」
撫でていたグラエナから視線を外し、相変わらず無機質に開かれた目がこちらを射抜いた。
一秒、十秒、一分。
無言の重圧に耐え俺が視線を合わせていると、
「……ァハッ……なんだ……相変わらず、弱いまま……全然、期待はずれ……」
「知ってるよ、んな事はな。お前の求めるような才能俺にゃねーよ」
掌でコロコロとモンスターボールを転がした。今じゃすっかり慣れた感触だ。それは寝る間も惜しんでバトルに明け暮れたトレーナーのみが得られる、一体感のようなものだった。
「でもな―――お前は負けるんだよ。才能なんてこれっぽっちもない。ただのモブトレーナーに。今この場で」
「……くふっ……弱いのに……おかしいね……今のあなたは少し、リーダーみたい……」
「そりゃ光栄だ。悪の親玉と並ばせてもらったとあっちゃ、気張らなきゃ男が廃るよな」
「リーダーは悪なんかじゃない……っ」
「はは、じゃあ証明してみせろ。今俺らがやるべきことなんてただ一つだろ? ―――よく見ておけ。お前が俺に負ける瞬間をな」
「っ。……グラエナ」
言葉と共に、後ろに控えていたグラエナが前に身体を躍り出した。
凶悪に牙を向く野生のグラエナとはまるで違う。しなやかながらに鍛えられた身体。落ち着いた雰囲気の中に感じる、鞘から抜かれた刃の様な感覚。
絶対強者であることを言わずとも知らしめる天才が育てたグラエナの姿がそこにはあった。
俺はボールを手の中で弄びながら言葉を続ける。
「ルールは3vs3のなんでもあり。負けた側は賞金の代わりに勝者の言うことを聞く。
「……あなたの絶対服従」
「じゃあ俺の願いは―――求婚だ!」
「!?」
俺はそこでようやくボールを空高く投げポケモンを解き放つ。
カガリ。予め言っておこう。
俺はこの勝負、必ず勝つ。
お前は強くなったのだろう。凡人の俺なんて比ではない程、それは強くなったのだろう。
しかしそれでもカガリ。俺は勝つ。
お前は強くなったが、それだけだ。
俺はそうじゃない。強くなりたかった訳じゃない。別に強くなくてもいいんだ。
お前にさえ勝てれば、俺はそれでいいんだよぉ――――!
あれから一年ずっと俺はお前に対するメタを貼り続けた完全メタデッキを構築し、今ここにいる。
故に、お前が勝てる道理など存在しない!
だからカガリ―――!
「俺に、俺に―――!」
求婚させてくれぇーーー!!
◆
周囲はもはや夕暮れに包まれていた。
バトルは完全にメタを貼ったというのに、恐るべき天才カガリ。それでも耐えて俺と戦っていた。
「……負けた……私が……負けた……?」
「あぁ、そうだよ。だって俺はお前に勝つためだけにポケモンを育ててたからな。勝てる道理がない」
「私の、為?」
「そうだ。お前の為だけ。お前を倒すそれだけに、お前のことを考えて、理解しようとトレースして、模倣して、メタを張って、挑んだ」
「そっか……そう、なんだ……」
やはり落ち込んでいるのか、カガリは顔を伏せた。
心なしか少し震えてる気がする。なんか耳も赤くね?
「そ、それで……賞金の件……」
カガリが俯いたまま言った。あ~そう言えばあったねそんなもの。なんかもう、このバトルのためにこの一年生きてきたせいか、脳内麻薬ドバドバで過ぎたせいか一周回って賞金の取り決めの事とか忘れていた。
というか、思い出した瞬間からさっきのバトルの比にならないくらい汗がブワって出てきた。やばい、緊張で死にそう。
「え、ええと、じゃあカガリ」
「ま、まままって……。さっきの、聞こえてたから……言わなくてもわかる……」
慌てて顔を上げたカガリの顔は赤く、そして大きくてつぶらな瞳は潤んでいた。なんだこの天使。
というかいつもの口調もだいぶ崩壊してる。やーもうほんと可愛い。もうエンゲージしよう(提案)。
「え、えぇ? じゃあどうすれば」
「……目、つぶって……」
ふおおおおお!? これは、これはまさかぁ!?
男モブトレーナー。13歳。男に、成ります。
俺はなんとかデレデレとしそうな顔を引き締めて、神妙に目を閉じた。
わかる。わかるぞ……! 段々と近づいてくる、何かの気配。あ、あぁ! カガリちゃんの匂いが! 匂いが!!
「……目を、開けて」
「え?」
あれ? チューじゃない……まさか、本当に男になっちゃえる奴? え? 嘘だろ!? ここトウカの森だぜ!? 電波系無口ちゃんはそれでいいのかい!?(混乱)
いやそれがいい!(真理)
鼻息も荒く、俺は目を開いた。
そして目の前にあったのは―――。
何故かいつものフードを脱いで。頭の上で両手をぴょこぴょこ動かしながらこっちを上目遣いに見る我らがカガリちゃんの姿。
いや……。
「なにしてん?」
「ぅえ……!? ……だ、だってキュウコンっていったから」
「いや、いったけどさ…」
求婚と、そのぴょこぴょこがなんの関係……ん?
求婚。きゅうこん。キュウコン。
あっ(察し)。
「まさかそれって……キュウコンの真似?」
「ぅええ……違うの? ……だってキュウコンっていったら……これしかボク……」
上目遣いしながら一応負けた賞金という認識があるのか、それでも手を止めることなくピコピコしながら涙目になる器用なカガリ。
かーわーいーいー!
「……あ……そっか。……こんっ……こんっ……きゅるるるこんっ……」
「ぐはっ」
あまりの天然電波な可愛さに許容量越えて血が口からあふれた。なんだこの天使……。
「あっ……えっ……!? だ、大丈夫キミ……や、やだよ……」
そういえばここ一週間くらい、このバトルのために精神すり減らしてたせいか平均睡眠時間2時間とかなんだよなーというのを思い出しているとやはりと言うべきか立ちくらみにも似た感覚が襲いかかり、まぶたが急に重くなる。
あ、これ落ちるやつや。
そう理解するやいなやで襲ってくる睡魔はそれは強烈なもので、下手な言葉も言う事ができない。
「あ、やば……も、無理……」
それにしてもまさかカガリがこんな天然だったとはなー。いや可愛いところ見つけられて本当に嬉しいんだけど。多分これわかってくれてないしな。もう1回戦って勝って求婚しなきゃいけないの? 胃に穴空くわ。
次はちゃんとカガリに則ってエンゲージって言おう。そうしよう。
だからカガリ。
「あ(したにでも)……い(いから)……し(あいし)……て(もう一回同じ条件でや)……る(ってのはどう)よ……」
「!?!!?」
あ~、なんか眠すぎて上手く口が回らなかった気がするけど、まぁいいか。
ごめんカガリ。おやすみ。
◆
カガリは一人、夕暮れに染まる森の中、すっかり静かになってしまった少年の頭を膝で寝かせながら途方に暮れていた。
途方に暮れていた、というより。
「……あ、あい、あいあいあいあ、あいして、る……?」
混乱の極みにあった。
カガリには、愛がわからない。
それはどういう感情なのか、どれほど大きい物なのか。
どれほど大切な気持ちなのか。
全く知らない。知らないはずのものだ。
なのにその言葉を、その感情をこの男に渡された瞬間、カガリの中にある空っぽな器は途端満たされ、まるで容量を超えた水が溢れるようにカガリの中に込み上げるものがあった。
―――これは、喜びだ。
誰よりも何よりも気持ちの知らぬ少女は、それ故こその素直さでその気持ちを認めていた。
彼は言っていた。強くもない。才能もない。でも勝つことはできると。
そのために彼はカガリを見て、理解しようと知って、真似て、カガリに勝つためだけにすべてを費やしてきたという。
かつて。かつてこんなことがあっただろうか。
カガリは才能があった。並ならぬ才能が。勿論マグマ団のリーダーであるマツブサもそれを知っているし、団の中でこれ以上に素質として優れた者もカガリ以上に存在しない。
故に彼女はトレーナーを引き寄せる。皆がカガリに寄せ付けられ、挙句離れていく。理解が及ばぬ、意味がわからないと消えていくのだ。
その理由こそを彼女は天才と凡才を隔てる壁だと理解していたし、幼いながらに彼女はそれを受け入れていた。
だからこそ、初めて見た時は衝撃だった。
あんなに酷い負け方をしたというのに、それでもこちらを射抜いてくるあの視線に。
負けたにも関わらず、今にも取って食われてしまいそうなあの気迫を。
ゴマンといる凡人の中にただ一つだけ見つけた、たった一人の凡才。
カガリの手が、自身の膝の上でのんきに寝息を立てる少年の髪の毛を軽く撫でた。
そんな凡才は、理解出来無いはずのカガリを必死に理解し、あろうことか勝利を収めたのである。
負けたというのに。カガリはきっとそれがたまらなく嬉しいのだ。
自分を理解してくれる人がいる事が、わかっていてくれた人がいた事が。
カガリの心臓はこれまでにないほど早鐘を打っている。ドクドクと自分の耳に聞こえる心拍音が、何故か心地よくさえ思えた。
この思いをまだ、カガリは形にする術を知らない。
まだ不確かで、不安定なものだから。
「でも……それでも……」
キミとならボクは。
「……エンゲージ、できるの……かな」
そう言って、カガリは膝の上の彼の額に、小さくくちづけを落とした。
「本当にロックオン……したからね……? ……もうボク、逃さない……よ」
ただ言えることがあるとすれば、彼の意識のない所で、彼の目標は十二分に達成されているということだろうか。
エンゲージしたいよぉおおおおおおお!
こっちだってぇええええええ!
ロックオンしてほしいよぉおおおおおお!
リーリエちゃんかわいいよぉおおおおお(浮気)
……ふぅ。いくら喚いても仕方ありません。という事でこんなもの書きました。抑え切れなかったんや……!
これでカガリさんに感化された人がいたら是非に私の為にカガリさんSSを書いてください(懇願)
楽しみに待ってます!
あ、それと現在執筆中の
死んだ目付きの提督が着任しました。
もよろしければ是非お願いします(ダイマ)