俺の好きな神プロのキャラが活躍する小説を書きたかっただけ。   作:いでんし

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新規浴衣キャラ全部外しました


ビリーとアマル

 エレミアとの戦闘の時、成り行きでカゲツ達に連れていかれたアマル。

 しかし、彼女にとっては何かと納得がいかない結果になっていた。

 本来住んでいた遺跡を教会騎士に奪われ、復活したと思いきやエレミアに完膚なきまでに叩きのめされ、挙げ句の果てにカゲツに意図しない形で主従関係を形成された。

 破壊された幻獣体の復活には一週間程度の時間を要し、おまけにデバイスの力で人間のカゲツに逆らうこともできない。

 何もかもがアマルの意思に反しており、納得のいかないアマルは何度も癇癪を起こし暴れた。

 所詮幻獣体の無い彼女はただの駄々をこねる幼女なので、イタクァにすら簡単に押さえつけられてしまうが、やり場のない怒りを発散することはそうするしか無かったのは事実である。

 三日三晩泣き喚き、反動で一日眠り続け、ようやく起きたのが今朝の出来事だ。

 そして今、ハスター・イタクァ・ビリーの三人は、アマルを説得してパーティに歓迎しようとしていた。

 

「ラグ…ナロク?それを止める旅?」

「そうです。私達はかつて起きた大厄災を止める旅をしています。それには神姫はもちろん、英霊や幻獣といった力ある存在が一人でも多く必要です。是非、同行して欲しいのですが」

 

 イタクァはアマルを刺激しないように、優しい口調で説明する。

 アマルは少し考えた後、答えた。

 

「やだ」

「ええっ?」

「人間に従わされるのが納得いかないの!あんた達神姫でしょ?あんな人間にいいように扱われて、悔しくないの⁉︎」

「あんな人間って…マスターを何だと思っているのですか!」

「うるさいうるさい!私はついていかない!」

 

 駄々をこねるアマルと、カゲツを悪く言われて怒るイタクァ。

 見かねたハスターが、イタクァの代わりに説得することになった。

 

「アマル、あんたは一つ大事なことを学ぶ必要があるわ」

「大事なこと?」

「あんたはもう少し集団での行動を学んだ方がいいわよ?私達についていくのもいかないのもあんたの勝手だけど、そのままだといつか後悔するわ」

 

 ハスターの放った台詞は、彼女らしからぬ正論だった。

 ビリーとイタクァは震えだす。

 

「…ハスターお姉ちゃん、大丈夫?」

「明日は雹が降りそうですね…」

「そこまで言わなくてもいいんじゃない⁉︎」

 

 私は普段どんな風に見られているんだ、と嘆くハスター。

 

「と、とにかく、あんたはまだ子供なのよ。いつまでもわがままばかり言えると思ったら大間違いってことを教えてやりたいの」

「だ、誰が子供だー!」

「それに、どうせその状態なら一人じゃ何もできないでしょ?」

「うっ…」

 

 痛い点を突かれ、口ごもってしまうアマル。

 そこへ、ビリーが更に追い討ちをかけた。

 

「ねぇ、アマルちゃん、これ、何だと思う?」

「ふえっ⁉︎そのお菓子…」

「この街に来た時、とっても羨ましそうに眺めてたよね…?」

 

 街まで逃げて来たとき、アマルがケーキ屋を眺めていたのを、ビリーは見逃していなかった。

 説得に向けて、ビリーが予め用意していたのだろう。

 

「このケーキ、一週間に50個限定なんだよー。しかも最後の1個!」

「さ、最後の1個…!」

「仲間になってくれるなら、あげないこともないけど…来ないなら食べちゃおうかな…?」

「えっ…ええっ…?」

 

 長い間遺跡で宝を守ってきたアマルは、甘い菓子類とは無縁の生活を送ってきた。

 そんな彼女にとって、ビリーの誘惑は狂気の沙汰に違いない。

 

「悪魔よ…悪魔がここにいるわ…」

「純真無垢さが今は恐ろしいですね…」

 

 ハスターとイタクァは恐怖を覚えていた。

 

「アマルちゃん、どうする…?」

「うっ、ううう〜…」

「決められないの?じゃあこのケーキ、ビリーが食べちゃうね!いただきま——」

「ま、待って!仲間になるから!お前たちの仲間になるから、ケーキ食べないでぇぇっ!!」

「えっ、仲間になってくれるの?やったー!これからよろしくね、アマルちゃん!」

「あっ…」

 

 アマルはカゲツのパーティに加わることとなった。ついでに限定品のケーキも貰えた。

 だが、不服だったのは言うまでもない。

 

 

 ×××

 

 

 数日後、カゲツとエリゴスは無事退院し、アマルの魔力も回復した。

 だが、アマルの機嫌だけは治らなかった。

 

「いつまでぶーたれてんのよ。そろそろ出発するわよ」

「やだ。あんな奴と一緒に行きたくない」

「ケーキに釣られた時点であんたはもう私達の仲間なの!わがまま言わない!」

「やだやだやだやだ!」

 

 子供の様に–––実際に容姿は子供なのだが–––暴れるアマル。

 見かねたハスターは、カゲツに「アレ」を促す。

 

「それは出来るだけ控えたいんだがな…仕方ない」

 

 カゲツはデバイスを取り出すと、硝子板に指を滑らせ操作する。

 すると、アマルが途端に大人しくなった。

 

「あ、あれ…?力が抜ける…何したの?」

「デバイスの機能だ。デバイスの制御下に置かれた神姫や幻獣は、デバイスで魔力を封じることができる。俺の意思でな。あの幻獣体を召喚することも、暴れることも、今はできない」

「そ、そんな!戻してよ!」

「いいぞ。素直になって、ハスターの許しが貰えたらな」

「そんな〜…」

 

 分かりやすく気を落とすアマル。

 見かねたビリーは、アマルに駆け寄り言った。

 

「大丈夫だよ!アマルちゃんはビリーが守るから!」

「そ、そういう問題じゃない!そもそもこんなことになったのはお前が…」

「でも、ケーキ美味しかったでしょ?」

「えっ…うん」

「次の街に行ったら、またケーキ買おう?ね?」

「えっ、ほんと⁉︎な、なら一緒に行ってやってもいいぞー!」

「やったー!」

 

 アマルは頬を緩め、偉そうに胸を張った。

 その様子を見るカゲツ達。

 

「……言いくるめた」

「アマル、楽しそうですね」

「長い間遺跡で過ごしてて、友達がいなくて寂しかったのかもしれないな」

「年の近いビリーちゃんがいい感じに付き合ってくれれば、安泰かもね」

「…年?」

「……マスター、あまり突っ込まない方がいい」

「あっ、はい」

 

「リーダー、そろそろ出発しよう?」

「そうだな、今回は長旅になりそうだし、行くか」

 

 ソルの進言で、カゲツ一行は歩みだした。

 目的地は、山道を超えた先にある、ここ最近見つかったばかりの地下遺跡だ。

 

 

 ×××

 

 

「ま…待ってくれ…休憩…」

「……マスター、大丈夫?」

「正直かなりしんどい。どうしてこんなことに…」

「靴、買っておけば良かったですね」

「靴なんて履いても、私は歩かないぞ。足痛いし」

「この野郎…」

 

 カゲツはえらく疲弊していた。

 山道を歩く過程で、アマルが疲れただの足が痛いだのと言い出し、カゲツが彼女を背負って歩くことになった。

 正直なところ、これは山道を歩くというのに、まともな準備をしていなかったカゲツが一方的に甘いと言う他無い。

 何せアマルは裸足なのだ。険しい山道を裸足で歩かせるのは流石に無理がある。

 エリゴスとイタクァは彼を気遣って残ってくれたが、残りの三人はカゲツがバテる内に先に行ってしまった。

 

「…回復魔法、かけ終わりました。どうですか?」

「ありがとう。だいぶ楽になった」

「だらしないなー、それでもマスターなのか?」

「半分はお前のせいだぞ…」

 

 文句を零しながらも、カゲツは立ち上がる。

 山道は人が通れる程度に整備されてはいるが、それでもそれを踏破するとなると厳しい。

 ましてやカゲツはアマルを背負いながら歩いているので尚更である。

 

「ハスター達、なんで先に行っちゃったんだろうな。待っててくれてもいいのに…」

「魔物に襲われてもハスター様なら平気だとは思いますが、やはり不安ですね」

「魔物だけじゃないぞ。この山は山賊の縄張りなんだ」

「……山賊?」

「山を越える行商人をターゲットにしているらしい。俺もこの道を通るのは初めてだからなんとも言えないけどな」

「じゃあ、どうしてこの道を選んだの?」

「近道だからな」

「それだけ⁉︎」

 

 話しながら山道を進む一行。

 だが、数十分進んだところで、エリゴスが足を止めた。

 同時に、他の三人にも警戒心が芽生える。

 

「……空気が変わった。敵がいる」

「…魔物か?それとも…」

「待ってください。この魔力…ハスター様のものです」

「ハスターだと?ハスター!近くにいるのか⁉︎」

 

 ハスターを探そうと、カゲツが前に出る。

 瞬間、木々の奥から触手が伸び、カゲツに襲いかかってきた。

 

  「はっ!」

 

 間一髪でエリゴスが触手を跳ね除け、事なきを得る。

 

「一発で見切るか、やるな!」

 

 低い声の先には、カゲツ達を待ち構えている五人程の集団がいた。

 身なりは整えられてはおらず、無精髭を生やした男たちだ。

 そして、その後ろに、触手の持ち主である魔物が鎮座している。

 蠢く無数の触手が伸びているという、なかなかグロデスクなデザインだ。

 

 そして、その触手には、

 

「ハスター様⁉︎ビリーにソルまで…」

 

 先に行ったはずのビリー、ソル、ハスターが捕らえられていた。




アマルの再ボス化を割と待ってたりする

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