艦娘『が』救済物語   作:konpeitou

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この鎮守府には開幕砲撃してくるような子はいません。
みんないい子です。
最初から最後まで。

軽い気持ちで初投稿です。


第一部 被害者と加害者
様子がおかしい提督が鎮守府に着任するようです


 南方の、とある島にある鎮守府。

 

 最近設立されたばかりのこの場所には、数多くの艦娘が所属している。

 

 

 基本的に、新しい鎮守府は艦娘の数が少ない。

 

 結果を持たない場所に、多くの戦力は割けない。

 

 少しずつ、徐々に戦力が増強されていくのが普通なのだ。

 

 しかし、この鎮守府には最初から多種多様の艦娘が着任している。

 

 

 理由は単純な物だった。

 

 周辺海域の状況である。

 

 この鎮守府がある孤島周辺にて、深海棲艦の目撃例、被害が多発。

 

 特に『姫級』の目撃例が、大本営に新鎮守府設立を踏み切らせた切欠だった。

 

 

 故に、初めから大規模戦力が投入された。

 

 徐々に成長、などとは言っていられない状況だったのだ。

 

 

 訓練期間を終え、各鎮守府で実戦経験を積んだ艦娘らが、一同に収集された。

 

 南方の新たなる盾、その役割を期待されて。

 

 

 そんな鎮守府に、一人の提督が着任する事に決まったのは、つい先週のことだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「全員、注目!!」

 

 

 鎮守府食堂に、凛とした声が響き渡る。

 

 戦艦長門の呼びかけに、その場にいた全艦娘が応じた。

 

 私語を止めて、彼女に視線を集める。

 

 

「こほん、今日、ついに新しい提督が此処に着任する事は、もう皆知っているな?」

 

 

 長門の言葉に、どの艦娘も一様に頷く。

 

 一週間前、提督着任の報を受けた大淀からの発信により、それは周知の事実だった。

 

 

「大本営によれば、本日正午、第2港に到着するとのことだ」

 

 

「出来れば全艦娘で迎えに出たいが、鎮守府防衛の問題でそれは叶わん」

 

 

「……そこで、だ。少数精鋭、3名を選出し、提督を迎えに行ってもらう事にした!」

 

 

 食堂がざわつき始める。

 

 それが少し大人しくなるのを見計らい、長門が再び話し出した。

 

 

「能力、人格に基づき、最も相応しい者が行くべきだ。その所皆にはよく考えてもらいたい」

 

 

「まず私は決定だとして、残りの2名を……」

 

 

 その瞬間、一人の艦娘が立ち上がった。

 

 

「はぁ!? 何で長門さんが決定なの!? 意味わかんないし!」

 

 

 最上型重巡、鈴谷である。

 

 そんな彼女に同調するように、他の艦娘も次々と立ち上がる。

 

 

「横暴でち! ビッグセブンだからって調子こいてんじゃねーぞでち!」

 

 

「長門さんは『仮』リーダーなだけなんだからさー。不平等は良くないんじゃない?」

 

 

「此処は譲れません」

 

 

 一気に喧騒の渦となった食堂。

 

 暫く言い合いが続いた後、誰かの発案により、じゃんけんで決める事になった。

 

 

「駆逐、軽巡、潜水から一人。重巡、戦艦、軽空母から一人。正規空母、水母、その他から一人だ」

 

 

「だれが勝っても恨みっこなしですよー!」

 

 

 駆逐艦吹雪の声を合図に、皆が腕を構える。

 

 

 そして、30分にも及ぶ大じゃんけん大会が開催された……。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「これが、ビッグセブンの力だ」

 

 

「司令官、どんな人だろうな~」

 

 

「鈴谷、追い込まれて伸びるタイプなんですー♪」

 

 

 陽光が照らす道を、3人の艦娘が歩いていく。

 

 鎮守府から港まで、徒歩で約20分程度。

 

 本土からの船が来るだけの機能をもった港へ、3人は向かっていた。

 

 

 結局勝った、長門。

 

 雪風という強敵を打倒した、吹雪。

 

 ここぞという場面で勝負強い、鈴谷。

 

 

 残りの艦娘達は、提督歓迎会の準備をしている。

 

 

「長門さん、あとどれくらいですか?」

 

 

「うむ、もう少しだ。ほら、船が見えてきたぞ」

 

 

「護衛の娘もいるみたいだね」

 

 

 港に到着した3人は、遠方に見える船に手を振った。

 

 あの船に自分たちの提督が乗っていると思うと、皆、どこか嬉しくなった。

 

 

「護衛、ご苦労様です!」

 

 

「はい。こちらこそ御足労お掛けしました!」

 

 

 吹雪の敬礼に、護衛艦娘も笑顔で返す。

 

 ゆっくりと船が止まり、接岸した。

 

 

 タラップがかかり、一つの影がゆっくりと降りてくる。

 

 その影は、潮風に映える、真っ白な軍服を身に纏っていた。

 

 

「提督、ようこそ巳波乃島へ。戦艦長門だ」

 

 

「初めまして、吹雪です!」

 

 

「鈴谷だよ。よろしくっ!」

 

 

 3人の挨拶。

 

 提督と思われる男は、堂々と、自信に満ちた返事を、彼女達に……。

 

 

「は、はいっ! どうぞ、宜しくお願い致しますっ! 艦娘様っ!!」

 

 

 出来なかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「提督、熱くはないか? 今日は日差しが強いから……」

 

 

「いえっ! だだだ大丈夫です! お気になさらず!」

 

 

 

「し、司令官! 司令官って今何歳なんですか?」

 

 

「ひっ! え、あ、21歳です! 御免なさい! 若輩者の分際でっ!」

 

 

 

「提督、自慢できることじゃん? 若い提督って珍しいらしいし」

 

「そうですっ! その通りです! すみませんでした艦娘様っ!」

 

 

 提督は、港から終始この様子だった。

 

 長門達に怯え、へりくだり、直ぐに謝る。

 

 明らかに異常な事態に、3人は困惑した。

 

 

「あー、提督。その『艦娘様』というのは……?」

 

 

「あ、お、お気に召さなかったでしょうか?」

 

 

「いや、そういう事では無く……」

 

 

 提督という、艦娘を率いる立場の人間が使うには余りにも異常な言葉。

 

 どう話しかけても怯えられ、3人は困り果てた。

 

 

 そうこうしているうちに、鎮守府に到着した。

 

 正門前には大勢の艦娘が、3人と提督の事を待っていた。

 

 

「貴方が提督ー? よろしくお願いしまーす!」

 

 

「あら、結構可愛い顔してるじゃない。お姉さんの好み、かも♡」

 

 

「提督さん、顔色悪いっぽいよ? 暑かった?」

 

 

「不知火です」

 

 

 皆、新しい提督に話しかけていく。

 

 しかし、それに伴いどんどん提督の顔色は悪くなっていった。

 

 

「あ、あああ、あの……」

 

 

「す、すまない皆! 提督は長旅で疲れているんだ! 少し休憩を取りたいらしい」

 

 

「そ、そうです! みなさん、ちょっとどいて下さーい!」

 

 

 不思議そうな艦娘達を潜り抜け、提督を連れていく3人。

 

 兎に角、何故提督がこんな状態なのか、調べる必要があると感じたのだ。

 

 

「皆は食堂で待機! 歓迎会の支度をしていてくれ!」

 

 

 このとき、この鎮守府の誰もが、思いもしていなかった。

 提督の抱える物を、そして、自分たちが向き合うべき物を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





提督はどうしたんでしょうかねぇ。


投稿は不定期になると思います、
なにとぞご容赦お願いします。
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