艦娘『が』救済物語   作:konpeitou

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初めての戦闘です。
ちょっとだけ長くなっちゃいました。
提督の本領発揮なるか。


勝利へ昇る海戦

「最上型航空巡洋艦、鈴谷。いっくよー!」

 

 

「戦艦長門、出撃する!!」

 

 

「吹雪型一番艦、吹雪!いきます!」

 

 

 巳波乃島鎮守府から、多数の艦娘が出撃していく。

 

 空母機動部隊の第一艦隊に、水雷戦隊の第二艦隊。

 

 演習用の編成を再構築した、高機動力の殲滅艦隊である。

 

 

 合計12隻に及ぶ艦娘達が一斉に海を往く。

 

 提督は港でその様子を見送った。

 

 演習時は艤装を展開した艦娘を見て、一時恐怖に陥った提督。

 

 そんな彼は今、震えてなどいなかった。

 

 

「提督、司令部室へ参りましょう」

 

 

「……うん、そうだね」

 

 

 明石に言われ、提督は歩き出す。

 

 艦娘達は、もう戦地へ行った。

 

 であれば、己がする事は只一つ。

 

 提督の戦場へ、赴くのみであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 巳波乃島鎮守府、その司令部室。

 

 大型無線機や連絡機など、艦隊の作戦指揮に使われる。

 

 そんな司令部の中央に、提督は座っていた。

 

 

『こちら第二艦隊旗艦神通。間も無く敵艦隊発見地点に突入します』

 

 

『了解。第一艦隊は第二艦隊後方より速力維持のまま艦載機発艦せよ』

 

 

 水雷戦隊を先んじて海域突入させ、潜水艦警戒に専念させる。

 

 その間、後方の空母機動部隊より、索敵機及び艦上戦闘機の発艦を指示。

 

 提督は無線を使い、確実に艦隊指揮を行っていた。

 

 

(……提督、貴方はやはり……)

 

 

 司令部室にて補佐を行う大淀は、提督の落ち着いた態度を見て合点がいったようだった。

 

 まだ歳若い彼が、提督として前線に送られる理由を。

 

 

 ……提督、というものは、誰もがなれるわけではない。

 

 『妖精』というものを視認し、意思疎通が出来る者のみがなる事が出来る。

 

 つまり、その適性があれば性別、年齢に関係なく提督になる資格を得るのだ。

 

 現在、この国において、その適性を持つ者は10万人に1人の割合と言われているが。

 

 

 大淀を含む艦娘達は、当初元帥を恨んだ。

 

 あんな酷い目にあった提督を、また前線に出すとは、と。

 

 しかし、適性を持ち、『提督』になることの出来た若い男。

 

 大本営がそう易々と手放すわけがない事も、彼女たちは理解していた。

 

 

(……貴方が提督として立たれるなら、私達もお支えするのみです!)

 

 

 大淀は、内心嬉しく思った。

 

 悲劇に見舞われながらも、再び立ち上がってくれた彼の元で働けることに。

 

 そして、彼の為に全力で尽くそうと、心を新たにするのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ソナーに反応無し! 潜水艦の影見えず……っぽい!」

 

 

「ゆ、夕立ちゃん、ぽいじゃだめだよ……」

 

 

 第二艦隊は潜水艦警戒を強めていた。

 

 夕立、吹雪の2人は、ソナーによる索敵を徹底的に行う。

 

 

「おっ、空母の索敵機じゃん。よろしくねーっ!」

 

 

 鈴谷の頭上を、第一艦隊から放たれた艦載機が行く。

 

 鈴谷、熊野、神通は、自身の索敵機を用意する。

 

 第一次飛行部隊に続き、発艦する為であった。

 

 

「……それにしても、鈴谷でよかったと思いますわ」

 

 

「ん? どしたのさ熊野?」

 

 

「最初に提督の所へ行ったのが、ですわ。私でしたらああはいきませんもの」

 

 

「うーん、提督はいい人だから誰でもよかったと思うけど……」

 

 

 鈴谷は、自分が提督を変えたとは思っていなかった。

 

 彼自身の持つ気力が、そのまま結果になっていると考えているのだ。

 

 

「ふふっ、鈴谷は提督の事がお気に入りですのね?」

 

 

「え!? い、違うしっ! 別に、皆と変わらないくらいだし!」

 

 

 熊野がにやつきながら鈴谷をからかう。

 

 鈴谷は露骨に顔を赤くしながら被りを振っていた。

 

 

「……お二方、索敵機が敵艦隊発見とのことです」

 

 

 神通が二人を諫める様に言った。

 

 その瞬間、二人の顔は戦いに向かう真剣なものとなる。

 

 この切り替えの早さは、流石艦娘というべきか。

 

 

「……敵艦隊、駆逐級2隻、空母級2隻、重巡級1隻に戦艦級1隻!」

 

 

「うげっ、結構な艦隊じゃん。テンション下がる~」

 

 

「そのための空母機動部隊でしょう? 私達はやる事をやりますわよ」

 

 

『……うん、その通りだよ』

 

 

 無線から聞こえた提督の声に、鈴谷達は反応する。

 

 潜水艦警戒にあたっていた夕立と吹雪も合流し、5人は指令を待つ。

 

 

『敵艦隊はまだ目視可能距離じゃない。3人は索敵機発艦を』

 

 

「了解ですわ、提督」

 

 

 第二次索敵機隊を飛ばす航空巡洋艦と軽巡。

 

 

『敵艦隊と遭遇したら、攻撃を避ける事に集中して。無理に当てなくてもいい』

 

 

「はい、司令官!」

 

 

『でも可能であれば、駆逐は落として欲しい。……その、幸運を祈る』

 

 

 ハキハキと指示していたのに、最後だけはいつもの彼らしく。

 

 それが鈴谷達にとって、とても心穏やかになるものだった。

 

 そして、絶対に無事に帰ろうと、思えるのだ。

 

 

 提督の指示は至ってシンプルだった。

 

 敵を引き付けつつ、攻撃を回避。

 

 駆逐級を叩き、空母機動部隊の有効射程範囲まで引きずり出す。

 

 

「……さてさて、突撃いたしましょう!」

 

 

「陣形は単縦陣! 敵空母の艦載機に警戒してください!」

 

 

 そして、水雷戦隊と敵艦隊との交戦が始まった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「うりゃーっ!!」

 

 

 鈴谷の弾着観測射撃が、駆逐イ級に突き刺さる。

 

 激しい爆音を轟かせ、イ級は沈没していった。

 

 

「敵駆逐艦、撃沈確認しました!」

 

 

「やりますわね鈴谷!」

 

 

 神通を旗艦とした第二艦隊は、順調に戦闘を進めていた。

 

 敵の正規空母と軽空母から発艦する艦載機は、味方空母の艦戦によって機能不全になっている。

 

 また、夕立と吹雪の両名が対空射撃に専念する事により、鈴谷達は砲撃に集中出来るのだ。

 

 

「お願い、当たって下さい!」

 

 

「落ちるっぽ~い!!」

 

 

「二人とも余り突出しないように! 一定の距離を保って下さい!」

 

 

 艦戦と対空射撃により、敵航空戦力を無力化。

 

 駆逐艦の砲雷撃は射程の外、つまり。

 

 鈴谷達が警戒すべきは敵重巡と戦艦の砲撃のみであった。

 

 

「当たらないよーっと!」

 

 

「戦艦ル級の砲撃ですわ! 回避運動!」

 

 

 当たれば大ダメージは免れないであろう、戦艦級の砲撃。

 

 しかし、敵は弾着観測することが出来ず、命中率は極端に低い。

 

 更に水雷戦隊の高い回避能力が合わさり、被弾することは全くなかった。

 

 第一艦隊は確実に敵艦隊を誘導していった。

 

 

「よく……狙って!!」

 

 

 神通の放った砲撃が、残り一隻となった駆逐艦に命中した。

 

 敵駆逐艦は中破状態となり、炎上している。

 

 

「ナイスじゃん神通! よーし、鈴谷が止めを……」

 

 

『よし皆、砲撃頻度を減らしつつ離脱するんだ』

 

 

 提督の指示に、鈴谷は主砲を持つ手を下ろした。

 

 神通、熊野も索敵機を着艦させ、攻撃の手を緩める。

 

 

「提督!? もうちょっとでやっつけられそうなんだよ!?」

 

 

「全く、鈴谷は忘れんぼうさんねぇ。提督がおっしゃっていたでしょう?」

 

 

 鈴谷は熊野の言葉にハッとなり、これ以上言及することはやめた。

 

 提督の作戦を思い出したしたからだ。

 

 

『第一艦隊は威嚇射撃を行いながら、第二艦隊と合流せよ』

 

 

「了解!!」

 

 

 牽制と対空射撃をしつつ、鈴谷達は敵艦隊から離れていく。

 

 敵の艦隊は当然、それを追いかけるべく速度を上げた。

 

 

「敵戦艦の射程に入らないようにしてください!」

 

 

「ひーっ、滅茶苦茶追いかけてくるっぽい!」

 

 

「それでいいんですわ。ほら、見えてきましたわよ!」

 

 

 熊野が指をさす前方に、人の影。

 

 赤城を旗艦とする空母機動部隊であった。

 

 

「赤城さん!」

 

 

「お疲れ様です皆さん。提督、合流完了しました!」

 

 

『うん、攻撃隊を順次発艦、戦艦は砲撃用意を』

 

 

 提督の指示の元、艦娘達は迅速に戦闘準備を行った。

 

 戦艦長門と榛名は、徹甲弾の装填を。

 

 赤城、加賀、龍驤は艦攻、艦爆の発艦を。

 

 護衛艦である山風、そして第二艦隊は敵艦隊の左翼へ展開した。

 

 

「攻撃機の交戦開始と同時に砲雷撃戦を敢行します。私に続いて!」

 

 

 神通が魚雷発射管を調整しつつ先頭を進む。

 

 敵艦隊は第一艦隊を確認し、その航行速度を緩めた。

 

 

『……敵航空機は数を減らしている。赤城、今っ!』

 

 

「はっ! 第一次攻撃隊、攻撃開始!!」

 

 

「よし、一気に決めるでぇ!」

 

 

 提督の号令により、攻撃機が敵艦隊へ殺到する。

 

 事前の戦闘により防御手段を落とされた空母ヲ級は、なすすべなく被弾していく。

 

 

「一捻りで黙らせてやりますわ!!」

 

 

「……撃つよ!」

 

 

 敵艦隊左翼へ展開した水雷戦隊も、砲撃、雷撃を同時に行う。

 

 航空攻撃、砲弾、魚雷、全てが一斉に敵艦隊に叩き込まれた。

 

 そして、決定的な一撃が放たれる。

 

 

「全主砲、斉射!! てーーっ!!」

 

 

「主砲! 砲撃開始!!」

 

 

 長門と榛名、戦艦2隻の主砲が、敵重巡と軽空母に叩き込まれる。

 

 性能差は圧倒的、まさに一撃必殺の火力により、2隻は沈んでいった。

 

 

「敵艦隊被害甚大! こちらの艦隊は損害軽微です!」

 

 

『そのまま攻撃を続行。敵戦艦の反撃に留意して』

 

 

 提督は慢心していなかった。

 

 敵で唯一残存していた戦艦のカウンターを警戒していた。

 

 

 そして、それは艦娘達とて同じこと。

 

 長門が重巡の攻撃により掠り傷を負っただけで、被害はほぼない。

 

 それでも、彼女たちは油断しなかった。

 

 勝利を、提督に捧げたいと考えていた。

 

 

 交戦開始からものの数分、敵に動きが見られた。

 

 

「提督っ! 戦艦ル級が撤退を開始しました!」

 

 

「……このままでは攻撃機の射程圏外です」

 

 

 加賀の発言は、この場にいた空母全員の意見でもあった。

 

 攻撃隊の射程から逃れられると、追撃できる艦がいない。

 

 

「提督、どうしますか?」

 

 

『作戦通りに。『一隻』を残し全艦は攻撃を中止して』

 

 

 小破状態で戦闘海域から離脱しようとする、戦艦ル級。

 

 脇目もふらず、一目散に逃げだす、その途中で。

 

 

 彼女は突如発生した水柱と、爆音に飲み込まれていった。

 

 

「ぷはぁっ! ゴーヤの魚雷さんは、お利口さんなのでち」

 

 

 潜水艦伊58から放たれた酸素魚雷が、戦艦に命中したのである。

 

 不意に直撃した高威力の魚雷により、戦艦ル級は轟沈していった。

 

 

『流石だね。まさか一撃で決めるとは思ってなかったよ』

 

 

「ゴーヤ、ちゃんと頑張ったでしょ! ね、てーとく?」

 

 

 ゴーヤは、最初から第二艦隊に居たのである。

 

 敵駆逐艦の機能をストップさせるのは、彼女を動かすため。

 

 敵を打ち漏らした際や緊急時の為の、待ち伏せ作戦だったのだ。

 

 

「敵艦隊の全滅を確認。提督、私達の勝利です!」

 

 

『……皆、お疲れ様。周囲を警戒しつつ帰投してほしい』

 

 

 鈴谷達は勝利に喜んだ。

 

 彼女達が提督の指揮で戦って、初めての勝利。

 

 その喜びもひとしおだ。

 

 

 一頻り喜んだ後、彼女たちは帰還を開始する。

 

 提督に言われた通り、警戒は怠らない。

 

 

「それにしても、提督凄かったっぽいねー」

 

 

「うん……的確だった、し……作戦も成功出来た」

 

 

 彼女達の感想は、提督の過去を知っていれば当然の様に出るだろうものだった。

 

 彼にとって初の艦隊指揮だろうに、冷静かつ丁寧な指令だった。

 

 

「……これで提督も自信をつけてくれればいいですわね」

 

 

「うん……」

 

 

 提督の心の傷は、まだまだ癒えていない。

 

 今回の勝利で、少しでも彼の心に光が灯れば、と。

 

 鈴谷達は、思わざるを得なかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「提督、お疲れ様です! ……提督?」

 

 

 艦隊司令部室。

 

 大淀は勝利と提督の手腕をたたえようと、彼の方を向いた。

 

 

「はぁっ……き、緊張、した……!」

 

 

「て、提督!? しっかりしてください!」

 

 

 提督は、緊張の糸が切れたようで、椅子にもたれこんでしまった。

 

 大淀は心配するが、それは杞憂だったことにすぐ気が付いた。

 

 彼は、笑っていたのだ。

 

 

「はは……勝てた……皆、無事に……」

 

 

「提督……」

 

 

 提督は、勝利を噛みしめていた。

 

 そして、自分が彼女たちと戦えた事に、喜びを感じていた。

 

 

「……おめでとうございます、提督」

 

 

「……ありがとう、大淀」

 

 

 大淀は、彼の肩にそっと手を置いた。

 

 提督は、震えることなくその手を取り、感謝を返すのだった。

 

 

 

 




戦闘回終了です。
いやあ順風満帆ですねぇ。
このままみんな幸せになれればいいですねぇ。
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