〝デニス君、今日は一日お疲れ様でした。打ち合わせはどうでした。本社からの書類は渡してくれましたね。
画像の方は午前中に受け取りました。話には聞いていましたが、これほどとは思いませんでした。地元の様子は落ち着いているのですか。
そうですか、おとなしい性質で。人的被害はないのですね。
3件、移動中に巻き込まれた。車両で。住宅などの建築物の被害は。
農業倉庫の破壊10軒、幹線道路の陥没無数、交通渋滞の発生、石垣の倒壊による防風対策の低下。派手さはないけれど深刻ですね。本土への上陸の危険性は。
未定、飛行能力はないのですよね。今後の対策は。
未定。わかりました。こちらで把握した情報を伝えます。軍が動きます。ロブ基地からです。シールドライガーが4機、ライガーゼロが1機。それから凱龍輝が1機配備されそうです。また情報が入ったら伝えます。明日も朝から島内の取材調査でしたね。老婆心ながら早めに休んで体調を整えておいて下さい。メールチェックを忘れずに。本社、フィニアス・テイラー宛に定時連絡も宜しくお願いします。
社会部のホーソンですか。わかりました、いま回線を社会部に回します〟
〝こちら首都グローサー社、社会部ホーソンです。
ああ、デニス。どうだい西の地の果てダイノ島は。美味いオレンジでも食えたかい。
そうか、あまりいい所ではなさそうだな。それで要件は。
ゾイドの入水自殺? なんだいそれは。農業用のディマンティスが取った謎の行動ねえ……。まあ調べてみるよ。二三日時間をくれ。状況を詳しく知りたいから、資料をまとめて社会部の俺宛に送っておいてくれ。そっちでは「おやすみなさい」だよな。お前もがんばってくれ。それじゃあ〟
失礼します。島の地図をお持ちしました。観光マップですが宜しいのですね。それとテレビのリモコンです。使用法はお判りですか。
これはありがとうございます。御心付受け取らせて頂きます。また何か御要望がありましたら、館内電話で御連絡下さい。
〝……昨日のダイノ島の映像です。御覧下さい、あの赤い光一つ一つがゾイドの眼です。ディマンティスという、大戦中期に開発されたネオゼネバス帝国製のゾイドです。
かつてネオゼネバス帝国は、鉄竜騎兵団という名称でガイロス帝国と我が国を侵略しました。あのゾイドには、国内にも苦い記憶を残す方々も大勢います。現在ディマンティスの大量発生の原因については、ニューヘリックシティーに於いて究明中ですが、依然、謎のままです。この現象について、解説者のイボリートさんはどのようにお考えですか〟
〝このゾイドの大量発生については、研究者の間では自然発生的な物であるとの見解が届いています。
一方、一部の識者の中では「私見ですが」と断った上で「この様なゾイドの大量発生は記録に無い。混乱に乗じてある国が不穏な動きを始めたのではないか」との見解も寄せられています。政府でも、軍への全面的な協力を要請したとのことです〟
〝いずれにしても、ダイノ島の住民の方々には、被害者が出ないことを願います。次に……〟
〝フロントです。
はい、モーニングコールのお申込みですね。朝7時15分、203号室のお客様、デニス様ですね。お受けいたしました。朝食は一階ビュッフェにその時間に御用意しておきます。
フロント係ヴィタールが受け賜りました。では、おやすみなさい〟
※
おはようございますデニスさん。昨日はよく眠れましたか。寝不足にアロザウラーはきついですよ。
大したものだ。お疲れだったようで。大抵の方、夜通しディマンティスの足音と羽音が気になって眠れないというのですが。
聞こえてはいましたか。それが奴らの音です。夜になると石垣を齧りに麓まで降りてくるのです。奴ら交替に、です。山の中にも化石木はあるのですが、もう間に合わなくなっているので。ほらそこ。歯形が付いている。恐ろしいけれど慣れました。慣れない住民は島を出て行きます。人口は減りましたよ。一時的に大陸の知り合いの所に疎開しているのもいますが、島の現状を知って帰らなくなった島民も大勢です。
見て下さい、あの果樹園。荒れ放題だ。農場主が農地を放棄して島を出て行ったのです。ここからは見えませんが、その家の石垣は完全に食い尽くされました。人の気配が判るのでしょうか。
今日は南の山間部に行きます。大丈夫、このアロザウラーならディマンティスの10匹や20匹蹴散らしてやりますよ。なあ相棒。
バッテリーはコンソールから繋げますのでカメラ本体だけで結構です。今日も宜しくお願いします。
今日向かうのは奴らの営巣地区です。といっても、幼体がウヨウヨしているわけではなく、コアが孵化するまで親が抱卵しているままの場所です。危険性はないと思いますよ、たぶん。
少し速度を上げます、気分が悪くなったら言って下さい。
見て下さいよ、果物が樹に成ったまま腐っている。
ああ、ここの畑もやめちゃったんだ。
あ、ここも。
ここもだ。収穫前だっていうのに。
やられてるなあ。家までメチャクチャだ。誰も住んでいないから。
あ! デニスさん、今1匹いました。こっちを見て慌てて逃げて行きましたよ。こんなところまで出てきているんだな。
もう少しです。
この辺りは、まだ開発が進んでいません。畑もさっきのが最後ですね。
大きくはないのですが、岩盤に亀裂が入っていて、それがそのままコアの産卵場に最良なのでしょう。
そろそろ停止します。ゆっくりと近づきますね。
抱卵状態のディマンティスは休眠状態なので動きません。普通、動物は自分の卵を襲われれば必死になって戦うものですが、それもまだプログラミングが完了していないのでしょう。ただ、親の身体が邪魔になって、産み落としたコアはほとんど見えないので、よく探して下さい。
見て下さい、ディマンティスの大群です。ざっと30匹はいるな。
おかしいな。
はあ、少しディマンティスの色が濃くなっているような気がして。まあいいか。
岩盤の亀裂に沿って抱卵している。身体の下に産み落としたコアがあるのですね。暗くて見えないな。ほら! あそこ。銀色のやつ。
ああ、いますね。幼体だ。孵化直後のやつ。丁度いい、よく見ていてください。
親と比べるとだいぶ小さい。でもほら、脱皮が始まった。外皮が一気に剥げていく。生々しいものではないのですよ、やはりそこは金属生命体ですからね。
良く判らないのですが、孵化直後に脱皮をするだけで、いきなり体躯が二倍近くに成長してしまう。どういう理屈なんでしょうね。
もう動き出した。喰ってますね、親の身体ですよ。頭から。いつみても嫌な光景だ。
もう1匹いた。腹から喰ってる。もう1匹? 別の孵化した個体だな。餌に有り付けなくてこっちにきたんだ。
見ました! 1匹孵化したのが共食いされましたね。少しだけ早く生まれた奴の方が強いのは仕方がありません。それでも、見ていて気持ちがいいものではないですね。
どうです、戻りましょうか。はい、映像チェック。わかりました。
通信?
支社長さんからです。
デニス様宛て。メール開きますよ。
軍が上陸。早いなあ。昨日放送したばかりなのに。さてはもう出発していたな。
港へ行けと指示されています。アロザウラー起動。宜しいですね。では、行きます。
港、見えますか。
接岸してる。早いわけだ、タートルシップを連れてきた。軍も本腰入れてますね。
降りてきた降りてきた。ああ、ライガーゼロだ。コンテナがないな。チェインジングアーマーは搭載してこなかったのかな。
シールドライガーですね。白いな。Mk-2のキャノンを撤去した古い機体だ。
それと凱龍輝ですね。私初めて見ました。あの機体で何をするつもりだろう。
取材許可? いいです、行ってしまいましょう。運が良ければインタビューできるかも。とぼけていましょう。下り坂です、注意して下さい。
報道です。すみません、許可証提示です。
はい、どうぞ。
アロザウラーですか? ついさっきまでディマンティスの観察をしていたもので。
刺激なんてしてませんよ。
そうですよ、この人は首都からはるばる来たのですよ。少しぐらい話をしても。
貰えましたか、取材許可。
やはり装備の搬出が終わらなければ無理だったですか。
なるほど、軍にも思惑があって。
午後はお付き合いできないな。別口の仕事が入っているので。
会場は島の役所の会議室。あそこそんなに広くないんですけれど。
レコーダーありますか。
わかりました。午後までに準備しておきます。撮影は別の者が同行する筈です。私は午後はお役所関係の方と同伴して取材です。では、また明日。
次話は明日20:00UP