関係の方々は会議室にお揃いでしょうか。質問は後程時間を取りますので、その時にお願いします。
では、これよりヘリック共和国軍ロブ基地所属ダイノ島派遣特務中隊隊長ベーテより説明を始めさせて頂きます。
今回の作戦の目的は言うまでもなく、大量発生したディマンティスの駆除であります。現時点で人的被害こそ発生しておりませんが、何れは発生するとの想定の下、一刻も早くこのゾイドの駆除と住民への安全の確保を願い、本隊は派遣されて参りました。徹底した掃討を行い、この島から野良ゾイドを一掃する予定です。
計画について作戦担当ワイツゼッカー少佐の方から説明があります。
ワイツゼッカーです。これまでのダイノ島管理局での駆除の経過については報告を受けており、PMCによる掃討についても把握しております。資料に記載済みですが、駆除をしたディマンティスの残骸が別の個体の餌となり、繁殖を助長してしまった事が状況の閉塞を生んだことも御存知でしょう。駆除圧をうけた個体集団が、更に増殖の速度を上げてしまった前例を踏まえ、軍としては抜本的な問題の解決をします。今回投入される戦闘ゾイドは、まずライガータイプ5機。この島を二等辺三角形と見立てると、各機体は島の海浜部から一旦散開し、北岸の底辺に当たる部分に2機、西の底角に1機、東西等辺の中点に1機ずつ、そして頂角に1機、島を取り囲む形で待機します。
作戦決行は明日の朝。定刻を以て一斉に攻撃を開始し、島の東岸――つまりこの平地付近です――に、ディマンティスの群れを追い立てます。山地から降りてきた群れを、待機していた凱龍輝が、集束荷電粒子砲で焼き払います。発射の軸線は海側にとるので島への被害はありません。一回の発射で100から200のディマンティスを破壊、焼却を想定しています。これを数十回繰り返す。暫定的ではありますが、大量発生したディマンティスの相当数を排除できると思われます。
ある程度成果が上がった後、今後移送予定の改造エクスグランチュラが電磁ネットワイヤーを張り、生き残りの個体を捕獲処理し漸減していきます。完全駆除まで恐らく2か月かかると思われます。
大凡の説明は、これで終了します。質問がある方は挙手を。
はい、どうぞ。
フレイザー新聞のウェイビーと申します。ワイツゼッカー少佐に質問です。ライガー5機でディマンティスを追い立てるとのことですが、この島の面積に比べて5機では余りに数が少な過ぎはしませんか。それと荷電粒子砲の使用は本当に安全なのでしょうか。そして……わかりました。質問はなるべく一つに。はい、ではこの2点をお願いします。
質問にお答えします。まず荷電粒子砲の使用ですが、機動性にも優れた凱龍輝を敢えて追撃に投入しないのも、あらかじめ機体をアンカーで固定し、射撃の軸線を逸らさないようにするためです。完全に海側に向かうよう照準を定めておくので、一切陸側に向かうことはありません。
ライガー5機でディマンティスの群れを追い立てることができるか、についてですが、これまでの調査によると、どうやらこのゾイドは、昆虫の蟻や蜂に見られる真社会性を有するようです。群れ自体があたかも一つの生命体のように移動することも確認されているので、連携した刺激を与えることにより、一斉に移動を開始するものと考えられます。これは様々なシミュレーションに基づいて計画されたものなので、実現性は高いのです。宜しいでしょうか。はい、次の方。
キャリントンフレア誌の編集記者、アーサーと申します。素朴な疑問なのですが、ディマンティスのような小型ゾイドを掃討するのであれば、やはり同サイズの小回りの利くゾイドを大量投入した方が効果的ではないでしょうか。焼却炉として共和国軍が唯一集束荷電粒子砲を装備する凱龍輝を投入することは理解できるとして、ライガータイプに執着するのは、何か理由でもあるのでしょうか。
質問者もお判りかとは思いますが、ライガータイプは機動力を最大に発揮できるゾイドだからです。ダイノ島は東部を除き起伏に富んだ地形となっており、山岳戦に対応できるゾイドが最適と判断しました。運用はコマンドウルフの方が容易ですが、ゾイドの特性から今回の機種選択となったのです。
ウルフタイプでは追撃パターンが直線的なので、群れの一部を残してしまう可能性が大きい。それに今回発生したディマンティスは攻撃性が低く、コマンドウルフの攻撃を受けても抵抗しない事も考えらえる。反応の薄い敵に対し、ウルフは操縦性の高さ、つまり親和性の高さが災いし、攻撃の手を緩めることが考えられたからです。その点、ネコ科に属するライガータイプの機体は、嗜虐性に優れ、敵が無抵抗であっても残酷なまでに徹底的に攻撃を続ける傾向があります。脱落したディマンティスを捕え、嬲り殺しにさせ、他の個体の逃走へ誘導させる、これがライガーを選んだ理由です。
納得できましたか。次の方、どうぞ。
ミレニアム放送のブリジットです。では、ディマンティスの個体数が減少した後は掃討も容易にはできなくなってくると思われます。継続的な駐留も想定されているのでしょうか。
それは自分がお答えします。結論から言えば、結果を見なければ判らない、としか申し上げられません。今回は未曽有の事態です。誰も判らない以上前例に従った対処はできません。軍では各方面の有識者からの意見を取り入れながら常に最良の方策を採って行きます。
ありがとうございますワイツゼッカー少佐。さて、まだ様々な御意見、御質問もあると思いますが、まずは行動が全てです。我々に責任があるとすれば、今日の状況に至るまで早急に行動を起こさなかったことです。人的被害の発生を未然に食い止め、一刻も早くダイノ島住民に平和な日常を回復させることこそ、ヘリック共和国軍の使命だと自認しています。会見の方は以上で一度終了しますが、引き続き質問がある場合は質問用紙を配布しますので、記入の上ここにいる広報担当官マーティン曹長に渡して下さい。マーティン曹長、後を宜しく。
やあ、どうも。デニス君も戻っていたのですね。会見には間に合ったようで。私も念のため質問用紙に記入して提出しておきましたが、どの程度勝算があるのでしょうか。シールドライガーにしろ、凱龍輝にしろ、何しろディマンティスの数は圧倒的だ。たかだか数機の戦闘ゾイドで本当に殲滅できるのか、疑問に思います。それでも本土の研究者達がシミュレートした結果であろうから、期待もしているが。まずは作戦行動を見守ろうとしよう。
おや……ナイルズさんだ。アドバイザーとして軍に呼ばれたのかな。やあ、ナイルズさんどうも。
ああ、こんにちはウォルター、それとデニス君でしたか。やはり参加されていましたか。
ナイルズ様、こちらは?
御心配なくマーティン曹長。以前お話ししました、協力して頂いている報道の方々だ。ウェイビー新聞西エウロペ地区支社長ウォルター氏と、同じくデルポイ本社派遣記者のデニス君。
失礼しました。軍広報担当マーティンといいます。始めまして。
ご丁寧に、どうも。ナイルズさんは早速お仕事ですか。
午前中は管理局側で受け入れ準備をして、この会見に間に合う様サポートさせていただいた。軍当局は全面的に協力体制を整えてもらえるので心強い。これから島の地形を説明する為にアンドリューのアロザウラーを使って少佐達を案内してもらう予定になっている。
ほう、午前にはデニス君も。アンドリューも大忙しだ。観光案内の仕事が無くても食っていけるな。ああ、古い友人なんだ、面白い奴だろう。
では私も途中まで同行するのでここで。
ナイルズさんもアンドリューさんも大変だ。では我々は軍の装備の見学に行きましょうか。カメラありますね。でも撮影許可は下りるでしょうか。
残念ですが、施設の見学は許可されません。先ほどの質問用紙への記入を以て本日の軍の説明は終了となります。
意外ですね。戦闘行動でもないのに、装備品の非公開とは。残念です。それとも何か秘密の装備品でも搬入されるのでしょうか。
上層部からの通達をお伝えしております。駐屯地の範囲の外側でしたら、撮影も可能です。まずは明日の作戦行動の開始までお待ちください。では、ナイルズ殿、移動をお願いします。
※
〝お早うござ――そちらでは「こんばんは」でしょうかデニス君。フィニアスです。報告書を確認しました。作戦実行が明日の朝7時より。参加するゾイドが6機ですか。
確かに心もとないと思います。その点についてのデニス君の捕捉なのですが、気になりますね。駐屯地に待機している部隊とは別に、先程ネオゼネバス帝国のホエールキングが西エウロペに向かったとの報告を受けたのです。それも共和国領の上空を堂々と突っ切って。休戦協定は結ばれているものの、あれだけの輸送艦が無断で飛行すれば共和国軍側も何らかの動きを見せるはずなのに、何もない。どうやら今回のディマンティスの件に関わっているのではないでしょうか。引き続き、現場の確認を続けて下さい〟
次話は明日20:00UP