ようこそ、ナースカフェへ   作:ピラサワ

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 歌詞の解釈の書き溜めはしていません。その為解釈の進捗具合によって投稿ペースはまちまちに……。あ、今回短めです。喫茶店の名前が判明するだけの回。

 歌詞は独自解釈です、他の方とは違う解釈があるかもしれませんがご了承下さい。感想や指摘等もお待ちしています。


織斑一夏&シャルル・デュノア①

 世界で二人目の男性操縦者がIS学園に入学してから、俺の周りは更に騒がしく……もとい、賑やかになった。

 更衣室の案内をしようと思えば阻まれ、何故か手を繋いでいる写真が学園全体にばら撒かれ、一部の界隈ではなんか俺とシャルルの本まで出回っているらしい。いや、どんな本だよ。聞いてはみたが、

 

「織斑くんにはまだ早いよ!」

 

 の一点張りで全然教えてくれなかった。まあ、別に俺たちへの態度が横暴になってるとかそんな感じでもないから今は気にしなくてもいいか。

 

 

 

 それはともかく、何処にいても女子がシャルルを追って来るのだ。これではおちおち案内もしていられない。食堂にまで集団で押し寄せてきたときにはどうしようかと思った。だから――――

 

 

 

 

 

 

「こちらに来た、というワケですか」

 

「いや、ホントすみません」

 

「あ、ご、ごめんなさい」

 

 いつもの喫茶店に逃げ込んできた。

 

 この喫茶店は、俺にとってはやけに居心地が良い空間だ。どんなに授業がしんどい時でも、ここに行くときは足取りが軽くなるような気になる。それこそ、朝に女子に追いかけられた時なんかは窓を突き破ってでもここに逃げ込もうかと思ったくらいだ。

 

「大丈夫か、シャルル?」

 

「はぁっ、はぁ……うん、なんとか。ありがとう、一夏」

 

「おう!」

 

 お互いに一息をつく。さっきから全力疾走だったせいでいつの間にか肩で息をしていた。というか俺は勉強はともかく体育には割と自信があったのだが、何故こちらの全力疾走に彼女たちはついて来られたのだろうか。俺の運動神経がもしかするとIS学園の学生の平均なのだとしたら……。

 

 

 考えないことにした。現実逃避とも言う。

 

 二人用のテーブルに揃って突っ伏していると、いつの間にかその上には水のはいったグラスが置いてあった。

 

「「いつの間に!?」」

 

 マスターは俺達の驚きように悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 

「マスターとしての嗜みです」

 

 その言葉に、シャルルはほう、と息を吐く。

 

「一夏」

 

「なんだ?」

 

「ジャパニーズニンジャは実在したんだね」

 

「絶対違うと思うぞ」

 

 確かに足音しなかったし気配も分かんなかったけどさ。

 

 

 

「そういえば今更だけど」

 

 そうシャルルは前置きをした。

 

「ここって男の人がマスターなんだね」

 

「そうなんだよ。だから俺も気楽にココに来られるんだ」

 

「……? どういうこと?」

 

「クラスメイトの皆には悪いと思ってるんだけどさ。……やっぱり、女の子ばっかりの空間ってのはなんていうか、どうしても疲れるんだよな。何処に行っても視線があって、落ち着く暇もないっていうか。シャルルもそんな事はあったろ?」

 

「ほぇ? ……あ、う、うん! 話しかけられたら中々断りにくいし、やっぱりちょっとしんどいなーって思う時はあるよ」

 

 話を振ってみると、ちょっと慌てたような仕草をしながら同意してくれた。やっぱりフランスの男性ってのはこういった紳士的な人が多いんだろうか? より傷つける事無く、というニュアンスにそういう事を思いながらも愚痴を吐く口は止まらない。

 

「だろ? 今までみたいに弾――あっ、中学生の時の同級生で親友のヤツなんだ、ソイツらとバカな話とかも出来なかったし、正直初めの時はしんどかった」

 

 そりゃもう辛かった。

 

 確かに、興味本位で打鉄に触ってしまったのは俺が悪いと思ってるし、色々と迷惑をかけて申し訳ない、とも思う。

 

 だけどそれとこれとはまた別の問題っていうか。女子の話題なんて分からないし(分かるのは精々料理とか家事とか)、いきなり話を振られても周りには頼れる人もいないし。セシリアに喧嘩を売ってしまって色々と言われた時も辛いものがあったし、そんな俺の心なんて読める人もいるわけが――いるっちゃいるけど、でも片方には連絡したくないし、もう片方にもあまり頼りたくなかった。

 

 実際に試合をしてからはちゃんと仲直り出来てよかったと思う。もしもあのまま喧嘩しっぱなしだったら俺のメンタルはもっとボロボロだっただろう。

 しかもその後にこの店を見つけられたのは俺にとって恐らく最大級の幸運だと思う。マスターは「中々の観察眼」なんて言っていたけど、そんな大したもんじゃなくて、偶々見つけただけなんだ。

 

 マスターには色々と愚痴を聞いてもらっている。悪いとは思いつつも、どうしてもしんどい時やどうすればいいか分からない時、困ったらココに来て取り敢えずお茶を飲んだりもしている。マスターの淹れるお茶はどれもめちゃくちゃ美味しくて、ホッとして、一旦状況を見つめ直す余裕が出てくる。

 

 女子ばかりの学園の中で、ここは俺にとってはオアシスと言ってもいいくらいだ。愚痴を黙って、時にはやんわりとアドバイスをしてくれるマスターはやっぱり大人だなあ、と思ったりもする。

 時折、態度が急に変わることもあったけど……でも、怒ってるとかそんなんじゃなく、あれも単にアドバイスだったし。かと言って雰囲気が変わらないままにアドバイスをくれる時だってある。本当に不思議な人だ。

 

 少し気になったのは、このお店の事をあまり他の人に教えないでくれ、と言われたこと。

 

「ワタシはマイナーな人間でいたいのですよ。メジャーデビューなんて、とんでもない!」

 

 理由を聞いたけれど、目立ちたくないって事くらいしか分からなかった。メジャーデビューって、アイドルでもあるまいし。……あ、でも今の俺の境遇って、ある意味アイドルっぽいかも。嬉しくないけどな!

 

 

 

 

 ある程度時間も経ったし、息も落ち着いてきた。

 

 すると、カウンターに戻り棚を整えていたマスターがこちらへと顔を向けた。

 

「そういえば、そちらの方に自己紹介するのがまだでしたね」

 

「ああ、確かに!」

 

 静かな足取りで俺たちの座っているテーブルへと歩いてきて、丁寧に頭を下げた。

 

「はじめまして、ワタシはこのお店でマスターをさせてもらっています。『ヒラサワ』などという名前はありますが、どうぞマスター、とお呼び下さい」

 

「あ、はい! 僕はシャルル、シャルル・デュノアです。マスター、どうぞよろしくお願いします」

 

「ふふふ、これはご丁寧にどうも。それにしても……ふむ」

 

「な、なんですか?」

 

 マスターは自分の紹介を終えると、シャルルをじいっと、観察するかのように見つめていた。それに気づいたシャルルは、少し顔を赤らめて胸を隠すようにして身を引く。なんかそれ、女の子みたいなポーズだよな。見た目が中性的なせいか、妙に似合っているのが可笑しかった。

 

「これはこれは、失礼致しました。キレイな髪をしていたものですから、つい見入ってしまった」

 

「え!? あ、えっと、ありがとうございます」

 

「え、まさかマスター……」

 

 まさか、そういった趣味があるのか? 疑惑の視線を向けていると、さっきも見せた悪戯っぽい笑みを深める。

 

「ふふふふ。一夏くん、今から少しタノシイ事をしませんか?」

 

「変態だー!!」

 

「冗談ですよ。ワタシの恋愛対象はキチンと女性ですから」

 

 心臓に悪い冗談はやめて欲しい、マジで背筋が凍った。

 

 そういえば、こんなコントをやっていてシャルルは気持ち悪くは無かっただろうか。ヨーロッパって、同性愛が好ましくない、みたいなの聞いたことがあったような…・・。

 

 チラ、とシャルルを見た。

 

「う、うわあ。成る程、やっぱりジャパンでは禁断の関係があるんだね……!」

 

 凄くキラキラした目でこちらを見ていた。

 

 

 

 見なかったことにした。

 

 

 

「シャルルさん」

 

 マスターが苦笑しながら首を振る。

 

「…………え!? あ、いやこれは……違うよ! 違うからね!?」

 

 こちらに詰め寄りながら、「違うんだよ一夏!」と叫ぶシャルルから一歩身を引く。特に今は恋愛なんかに興味はないけど、流石に男子と付き合う趣味はないからな。なんて。

 

 だけど、やっぱり相手が男子だとこうして気楽にからかえるからいいな。ちょっとここはこのノリを続けてみよう。

 

「シャルル……お前、まさか」

 

「だーーー! もうっ! 違うって言ってるじゃないか!」

 

「おわっ!?」

 

 さっきまで二人して逃げていた筈なのに今度はシャルルが俺を追いかけ始めた。やっべ、タノシイ…………はっ!?

 

 マスターを巻き込もうとさっきまでいた所を見ると、またいつの間にかカウンターの方へと戻っていた。速っ!

 

 

 

 ……今はシャルルから逃げるのを優先するかな。

 

「マスター、ありがとうございました!」

 

「あー! 逃げないでよ一夏! あっ、ありがとうございますっ」

 

 やっぱ男子っていうのはこうしてバカ騒ぎするのが一番だよな!

 

 

 

 

 

 

     ▽ ▽ ▽

 

 

 

 

 

 

 これは、一夏が箒やシャルロットなど、専用機持ちを引き連れて喫茶店に訪れていたときのこと。

 皆でお茶やケーキを楽しんでいる中、ふと一夏は気になったことがあった。

 

「そういや、このお店ってなんか名前とかあるんですか?」

 

「はい、ありますよ。どちらにしろ貴方がたには教えたかったのでちょうどいい機会です」

 

 まるでその言葉を聞きたかったかのようにマスターは喜々とした笑顔へと変わる。それは自慢をしたがる子供のような、純粋な笑顔だった。

 

 磨いていたグラスを置き、格好をつけるように両腕を左右に広げた。その格好は、ある鬼教官からすれば殺意が湧くほどに似合っているとも言われるほどであり。

 

 そしてまた、彼女以外の人間からすれば。何故か酷く、安心した気持ちになるような、不思議と落ち着くような……ごくごく自然な格好に感じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは、隣人との友情を。愛を。憧憬を発見する所。また、自分が持つ様々な感情と向き合い、そして落ち着ける場所、心のクリニック――――――ナース・カフェ、です」




色々とこじつけている気しかしません。

・ジャパニーズニンジャ
某アニメーションではないかもしれない。イヤー!

・一夏くんのメンタルやばそう
誰でもキツイと思う。女尊男卑の風潮を知っているなら尚更。女子は須らく恐ろしいものです。

・中々の観察眼
1話参照。こっそり改稿なんてしてません。セリフの入れ忘れに気づいたりなんてしてません。

・やっべ、タノシイ
原作主人公、プチSに目覚める

・鬼教官
誰のことやろなあ



使用曲:Nurse Cafe
作者コメント:アルバム「SIREN」で恐らく作者が一番好きな曲。サビの部分を聞くだけでなんとなく元気が出る、そんな曲です。歌詞は相変わらずあんまり分からなかったりする。新参者の馬の骨なんです……。


 次回は恐らく楽器回。それでは。
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