ではどうぞ!
Side霊夢
久しぶりに異変が起きた。それも今回は今までのと違い随分と質の悪い異変だ。
私は今日のお昼頃、縁側で遊びに来ていた魔理沙とお茶を飲んでいた時、突然倉庫の方で大きな爆発音のようなものが聞こえた。驚いた私と魔理沙は湯呑を置いて、直ぐに倉庫の方に向かった。倉庫が見えた時には既に半壊状態になっており、私と魔理沙は口を揃えて「どうしてこうなった……?」と、間の抜けた声を出していた。
呆気に取られていると、半壊した倉庫の中から頭が獅子で胴体が黒山羊、尻尾が蛇の形をした化け物が現れた。
「な、なんだぜあれ?」
「知らないわよ!大体、こんなの幻想郷に居たっけ?」
魔理沙は「いや、居ないだろ……」と答え、八卦炉を取り出していた。
私も数枚のお札とお祓い棒を構えた。こっちに気付いた妙な化け物は、グルルルとうねり声を上げ、突然私達に突進してきた。私と魔理沙は左右別々に化け物の突進を躱した。
「なんなんだぜこいつ!急に襲い掛かってきやがって!」
魔理沙は悪態をつきながら自分の箒に乗って空中へと避難した。私も魔理沙を追うように飛翔した。
「あの化け物がなんなのかは後よ!今はあれを退治するまで!」
「そうだな!なら、私があいつをブッ飛ばすぜ!」
そう言って魔理沙は八卦炉を化け物に向けた。あの化け物は空が飛べないのか、ずっとこちらを見上げているだけだった。
「吹っ飛べ!【恋符・マスタースパーク】」
極太の光は真っ直ぐ化け物に急行していき、そのまま化け物を吞み込んで爆発した。砂煙と爆煙が上がり、私達の視界を遮った。毎度の事思うけど、魔理沙は加減ってものを知らないのかしら?誰が抉れてしまった庭の土を直すと思っているのかしら………まあ紫だから問題ないんだけど。
「どうだぜ?やったか?」
「あれを喰らってまともに立っていられる筈ないでしょ?」
「ま、それもそうだな!」
しかし、何故か私にはどこか嫌な予感がしていた。魔理沙のマスパをあの化け物は避ける事もせずまともに喰らったのだから、生きていても相当な重症な筈なのに、どこか安心出来なかった。
ようやく砂煙と爆煙が晴れてきたから、私と魔理沙はさっきの化け物を確認する為少しだけ高度を落とした。
地面には大きな穴が空いており、その中央で血まみれになり横たわっていた化け物の姿があった。
「やったぜ!アハハハハ!!」
魔理沙は嬉しそうに高笑いをしていた。目の前の化け物はピクリとも動かない。なのに、やはりこの嫌な予感は拭いきれないままだった。
私がこの嫌な予感が拭いきれないで、頭を悩ませていた時―――私の博麗の巫女としての勘が大音量で『人里に向かえ!』と告げてきた。
私は咄嗟の判断で、急いで魔理沙の手を引いて猛スピードで博麗神社から離れ、人里へ向かう。
「なっ!ど、どうしたんだぜ霊夢!」
「話は後よ魔理沙!今は人里に向かうわよ!」
「はぁ!?」
「私の勘が人里に向かえって告げているのよ!よく分からないけど、凄く嫌な予感がするのよね……」
「お前が言うと洒落にならないぜ霊夢……!」
魔理沙は私の勘の良さを知っている為、状況の理解は出来なくても私を信じて付いて来てくれた。
私は魔理沙の手を放し、出来るだけスピードを上げて人里へ急行した。魔理沙もスピードを上げて私の後を追った。
『やれやれ、あいつの創ったキメラをこんな惨い殺し方してくれちゃってさ……ホント、どいつもこいつも人間って奴は………でもまあ………いいぞ!どんどん殺せ!そして沢山の憎しみを生み出せ!それが私達の力となる!フフ、フハハハハハ!!』
※※※
私と魔理沙が人里に着いた時、私は絶句した。
数十……いや、数百を超える数の化け物の大群が人里を囲むように押し寄せていたのだから。
一瞬幻想郷に末期でも訪れたのかと錯覚してしまいそうになった。魔理沙に至っては清々しい程の笑顔で「私帰るぜ!」などと呟いたくらいなのだから、多分幻想郷は明日で滅ぶわね!
よし………私も帰っていつも通りお茶でも飲もうかしら?
「なんていいわけないでしょうがっ!!」
「うわっ!どうした霊夢!?」
自分で自分にツッコミを入れた事で、思ったより大きな声がでてしまい魔理沙が驚いた表情をしていた。そんなことより―――
「どうしたもこうしたもないわよ!このままじゃ本当に幻想郷が滅んじゃうでしょうが!魔理沙、さっさとあの化け物共を退治して主犯をとっ捕まえてゲンコツをお見舞いするわよ!」
「何言ってんだぜ霊夢、あんな数どうにかなる訳ないだろ!」
「どうにかなるならないの問題じゃないでしょ?どうにかするのよ!」
「しかしだな霊夢……」
私と魔理沙がそんな問答を続けていると、人里の正門付近で大きな火柱が上がった。あの炎はおそらく妹紅のものだろう。妹紅が戦っているという事はきっと慧音も動いているはず……。
「今の炎は、妹紅か?」
「多分そうね……。ひとまず、妹紅と合流しましょう!彼女なら力になってくれるはずよ?」
「そ、そうだな!よし、急ごう霊夢!こうなったら自棄だぜ!!」
魔理沙は覚悟を決めたようで、私より先に火柱の上がった場所に急行していった。まったく、さっきまでの弱気はどこに行ったのやら。
私と魔理沙は人里の正門に着くと、ふと見知ったお面妖怪がおり、その周りには化け物の死骸が幾つも転がっていた。
「こころ!」
「む?この声は……霊夢?」
いつも通りの無表情で、私のいる方へ振り向いた。
「これ、あんたがやったの?」
「うん。妹紅に手伝って欲しいと頼まれたから……」
「そう……それで?その肝心の妹紅はどこにいるのよ?」
「妹紅ならこの正門を私に任せて人里の外周を回ってくるって言ってたよ!」
こころに
「こころ、妹紅がどっち側に行ったか知らない?」
「右方面に飛んでいったよ!」
「分かったわ……魔理沙、あんたはこころとここで正門を死守して!私は妹紅を追うから!」
「わ、分かったぜ!」
魔理沙とこころにこの正門を任せた私は、こころに言われた通り右方面に向かって飛んだ。
それより、こんな時あのスキマ妖怪は何をしているのかしら?ノコノコと私の前に現れた時には、一発ぶん殴ってやるべきよね!
なんて考えて飛んでいると、案の定私の前にスキマが開き中から胡散臭い笑みを浮かべた紫が出て来た。
「は~い霊夢♪異変解決の方は順調かしら?」
私はこの超絶腹が立つ程の笑みに堪忍袋の尾が切れ……いえ、もはや爆発して―――
「今までどこで油を売ってたのよこのスキマ妖怪!!」
そう叫んで私は紫の顔に全力のドロップキックを喰らわした。
「あぐぅ!」
情けない悲鳴を上げて紫は吹っ飛んでいった。しかし、私はあの程度では許さない!猛スピードで紫を追いかけ、そして追いついたところに―――
「【霊符・夢想封印】」
「ちょっ、霊夢……それはっ!」
なんか聞こえた気がしたけど、関係ないわね!
七色別々に輝く七つの光の玉は、非情無情に紫に襲い掛かり、色とりどりの爆発を起こした。
多分これであの迷惑スキマ妖怪は死んだはずね!
「フウ~、スッとしたわ!」
私のストレス発散も済んだ事だし、妹紅を探しに行こうとした時、再度私の前にスキマが開き、ボロボロの紫が出て来た。
「ハァハァ……霊夢、あなたねぇ……私じゃなかったら死んでたわよ?」
「あれ?死んだと思ったのに、死んでなかったのね」
「悪かったわね死んでなくて……。そうじゃなくて、この異変の主犯格が判明したのよ」
「ふ~ん……。で、誰なのその主犯って?」
「少し待って、あなたの勢でこっちは息がかなり乱れているんだから……」
そう言って紫はスキマから湯呑を取り出し、それにお茶を淹れて勢い良く飲み干した。
「フウ、ちょっと落ち着いたわ……」
「ならさっさと話してくれない?私急いでいるんだけど?」
「分かってるわよ……。それで、その主犯格っていうのが……あの指名手配中の天邪鬼と、正体不明(笑)の大妖怪なのよ」
指名手配中の天邪鬼……それに正体不明の大妖怪……。
私の頭に真っ先に浮かんだのは『鬼人正邪』と『封獣ぬえ』というイタズラ好きのポンコツ妖怪達だった。
「で、その二人がこの異変の主犯なの?」
「ええ、まず間違いなくね……」
「それが分かってるのなら何であんたが退治しに行かないのよ!今ってある意味幻想郷の危機でしょ?」
「確かにそうね……。でも、妖怪退治はあなた達人間……特に、博麗の巫女の仕事でしょ?」
ダメだこのスキマ妖怪早くなんとかしないと。
「あっそ!なら私はもう行くわよ?妹紅と合流しないといけないし!」
「あの蓬莱人なら多分そう遠くないはずよ?」
紫はそう言って私に手を振りながらスキマの中に消えていった。
紫の情報が正しければ、妹紅は近くにいるはずね。
私は一度自分の頬を軽く叩き、妹紅を追った。
Side妹紅
乖離達と別れてどのくらい経っただろうか……。私は一度慧音と合流して、その後慧音に人里の正門を頼まれた。私は慧音に言われた通り正門に来ていたが、やはりそこにもキメラが数体いた。キメラ達はまだ私に気付いていないようで、正門の門番二人を囲むようにしていた。私は気付かれないようにキメラ達に接近して、隙を突いて門番二人を高速で救出し、慧音の所まで避難するよう指示をして、追って来たキメラ達を炎の柱を展開し、一掃した。
その後この異変に勘付いたのか、こころが私の下まで駆けつけてくれた。
私はこころからとんでもない事を知らされた。
こころ曰く『この人里周辺に、ううん……人里全域に数百を超える化け物が近づいている』と言う話だった。
私はこうしてはいられないと思い、こころに正門の警備を頼んだ。以外にもこころはノリノリで了承してくれたから、正直助かった。今度何かでお礼をしないとね。
そして今現在私は、人里外周を右回りで移動しながらキメラの大群を殲滅していた。
「まったく、何体いるんだよこいつら!」
先程から殺せど殺せど、降って湧くように次から次へとキメラ達は現れる。
この手の輩はまったくもって厄介だ。こいつらは恐怖する事なく、仲間が沢山殺されているというのに、まるで感情の無い虫の如く襲い掛かってくる。
「しつっこいんだよ!【不死・火の鳥―鳳翼天翔】」
私は大きな炎の鳥を作り出し、それを迫りくるキメラ達に向けて放った。
炎の鳥に触れたキメラ達は一瞬で火だるまと化し、数秒経てば絶命していた。
だが、それでもまだまだキメラ達は湧き続けた。流石にもう我慢も限界に達し高度を上げ、もう一枚のスペルカードを使用した。
「いい加減にしろ!お前らはあの
私の身体は炎で燃え上がり、その炎は段々と形を作り始め、最後には一羽の大きな炎の不死鳥へと変わり果てた。
「もう灰も残してやれないからな!燃え尽きろぉぉ!!」
炎の不死鳥から放たれる赤い弾幕は、キメラに命中した途端灰も残さず消し去った。
私の取った戦法は一つ……相手が数の暴力ならこっちは質の力押しだ!
逃げ惑う訳でもなく、恐怖する訳でもなく、キメラ達はただただ無意味に私の作り出した炎の不死鳥が放つ弾幕に当たって消えていくだけの光景に、私は憤りを感じずにはいられなかった。
「なんなんだよお前らは!無意味に突っかかって来るくせに、仲間が殺されてもケロっとしてさあ!さらにはその光景に恐怖も何も感じないなんて、生き物として破定してるんだよ!!」
「そりゃそうだよ?そういう風に改造?したのはぬえちゃんだもん」
私は突然後ろから聞こえた声に驚き、声のした方へ振り返った。
そこに居たのは―――
「こんにちは、蓬莱人さん」
金色の髪の毛に紅い瞳、背中には宝石のような翼が生えている十代前半の少女。間違いない!こいつは……。
「フランドール………スカーレット」
「私の事憶えてくれてたの?嬉しいわ!」
無邪気に喜ぶフランドール……。何故……何故こいつがあのキメラの事を知っている?それにぬえだって?やっぱりあいつの仕業だったのか!
それより気になったのは、何故この暴走吸血鬼がここにいるのかという事だ。
吸血鬼は日の光に弱いはずだ。なのにこいつは白昼堂々私の目の前に居る……一体何だどうなっているんだ?!こんなの前代未聞だ!
「フフフ、何でって顔してるね?理由は教えてあげないけど、ヒントなら教えてあげるよ?」
「ヒントだと……?」
私は殺気を含んだ目でフランドールを睨みつけるが、フランドールは私の殺気など何処吹く風のように受け流した。
「そうだよ……ヒントっていうのはね?今の退屈な幻想郷だよ!」
そう言ってフランドールは、狂気の笑みを浮かべた。
私は臨戦態勢をとろうとした時―――突然右腕が爆発し、肉片が辺り一面に飛び散った。
「なっ!」
「あれ?思ったより簡単に壊れちゃった……なんだ、蓬莱人って不老不死って聞いてたけど、案外脆いのね?」
忘れていた。この吸血鬼の能力を……こいつの能力は『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』だ!幻想郷でもトップクラスの危険能力に数えられる存在だ。
私は破壊された右腕を再生させるが、その瞬間―――今度は私の胴体が爆発して、その場で私は意識と失った。
「う~ん……やっぱり退屈ね、今の幻想郷は……。お姉様も、咲夜も、パチェも、美鈴も、霊夢も、魔理沙も最近全然遊んでくれないし………。あ、でも正邪ちゃんの能力ってすごいのね!お日さまの下でも全然平気だし、喉も渇かないし!あっ!そういえば、ぬえちゃんが早く来てって言ってたんだっけ?急がなきゃ!」
思った以上に長くなってしまいましたが、大丈夫でしょう!
戦闘描写難しいですね~
次回もお楽しみに!!