東方英雄章~【妖怪と人間と】   作:秦喜将

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最近モチベが上がらない……

しかし、構想は浮かんでます。
それではどうぞ!


九話 決着と代償

Side乖離

 

 

 

クラスターカード……これを使うのは一体いつぶりだっただろう。

 

気を抜けば爆発してしまいそうな程の自然エネルギーの量。

それに加えて制御の難しい『陽』の力。

 

この二つの力が、俺の身体を循環している。

 

本来ならこんな物は使うべきではないのだが、今回は久しぶりに興が乗ったのと、目の前にいるヤンチャ少女達へのお説教も兼ねているから、目を瞑っておくことにする。

 

だがやはり、今の俺は前回の時より随分と弱体化しているようだ。俺の中で流れる自然エネルギーの質が落ちている。それだけではなく、陽の力も前回と比べて弱くなっている。

この状態は持って約三分が限界といったところだろう。その前にさっさと決着を付けなければ。

 

「さてと、準備は出来た。始めようか三人とも」

 

「フフ、ならまずは私からだね!【禁忌・レーヴァテイン】」

 

フランドールは一枚のスペルカードを宣言する。すると、彼女の手に大きな炎の大剣が顕現した。

 

「いっくよーー!」

 

フランドールは炎の大剣を構え、こちらに突貫してきた。その速度は思っていたものより随分と速く、気を抜いていた訳ではないのに、もう既に俺の目前に迫っていた。

 

「アハハハ!壊れちゃえ!」

 

フランドールは炎の大剣を大きく縦に振りかぶる。この状況では剣での迎撃は間に合わないと判断した俺は、両手に自然エネルギーを集中させ、白刃取りで受け止める。

 

「あっち!」

 

予想以上の熱に、おもわず情けない声を出してしまった。

 

「よく受け止めたね。でも、いつまで持つのかなぁ!」

 

俺を真っ二つに切り裂こうと、フランドールは更に力を増していく。流石は妖怪といったところだろう。自然エネルギーで身体能力を強化しているとはいえ、押し返す事など不可能、耐えるので精一杯だ。

 

「ッ!」

 

参ったことに、どんどん炎の大剣は俺の両手から擦れ落ちていっている。

このままでは確実に殺されてしまうだろう。

 

「へっ!舐めるなよお嬢ちゃん!」

 

俺は額に自然エネルギーを集中させると、横から炎の大剣に頭突きをして軌道をずらした。

ガン!と大きな音を立て炎の大剣は俺の両手から離れ、そのまま地面に激突した。その瞬間地面は数メートルほど焼き切られていた。

あれを喰らっていたらマジであの世行きだったに違いない。

俺は一度フランドールから距離を取る。

 

「あれ、逃げちゃうの?つまんない」

 

「はは、安心してくれ。今のは前座だからさ……この遊びは決して、君を飽きさせはしないよ」

 

「そう、ならもっと楽しませてくれるの?」

 

「もちろんだ。…といっても、これからはワンサイドゲームにしかならないがな?」

 

俺は陽の力と自然エネルギーを両手に集め、黒い弓と白い矢を作りだす。

 

弓を右手に、矢を左手に持ち構え、矢と番える。

矢を引き絞り、狙いを定めて射ち放つ。すると放たれた白い矢は、紅い稲妻を帯び速度を上げてフランドールの頬を掠め、そのまま何処かへ飛んで行った。

 

「え?」

 

何が起きたのか分からないといった顔で唖然とするフランドール。それはどうやら彼女だけではないようで、後ろで待機していたぬえと正邪も同じのようだ。

 

「ぬえ……今の見えたか?」

 

「……全然見えな…かった」

 

あの三人には見えていなかったようだが、俺にはちゃんと見えていた。

まあ無理もないだろう。今の矢は並の妖怪や人間程度には感知すら不可能な代物だ。例え紫や霊夢といった桁外れの存在でも目で追えるかどうかだ。

 

「な?言っただろ、ワンサイドゲームにしかならないってさ?」

 

「……ッ!」

 

「でも安心してくれ、これはあくまでも遊びだから。さっきみたいなものは使わないよ」

 

他者からみれば完全に舐めているようにしか見えないだろう。しかし、さっきも言ったようにこれは遊びだ。殺し合いではない。

故に、俺が本気(・・)を出す必要などないのだ。

 

「それから、面倒だから三人同時にかかってこいよ。そうじゃないと対等な遊びが出来ないだろう?」

 

「どうやらそうするしかないみたいだな」

 

「そうだな」

 

後ろで待機していた二人はフランの隣に立ち、それぞれがそれぞれのスペルカードを構える。

 

残り一分半―――――

 

「俺には時間がないから、さっさと済ませてもらうぞ?なに、それでも退屈はさせん!残り時間存分に楽しもう」

 

俺は数本の矢を空中に展開させ、それを三本掴み弓に番え放つ。

放たれた三本の矢は一本ずつ三人に接近していく。今度の矢は先程の矢より随分と遅く、三人にも見えているようで、避けようと各自散開していく。

上手く三人とも避けたようだ。しかし、今の矢が気に食わないのか、ぬえが叫ぶ。

 

「舐めてるの?こんな物に当たる私達じゃないぞ!」

 

「あっそ……その台詞は背後を確認してからもう一度言ってみな?」

 

俺の言葉に驚いて、三人は急いで背後を見る。するとどうだ?三人ともギョッとしたのか、急遽回避行動をとり始めた。

無理もないだろう。俺の放った矢はホーミング式のものなのだから。

 

「クッ!このぅぅぅ!!」

 

「何よこれ、うっとうしいわ!」

 

「チッ、邪魔だ!」

 

ぬえは槍で矢を撃ち落とし、フランドールは炎の大剣で焼き斬り、正邪は能力だろうか?腕を振って矢を吹き飛ばした。

 

「お見事……お代わりはいくらでもあるぞ?」

 

俺はイタズラっぽく笑い、再度弓に矢を三本番える。

 

残り一分―――――

 

今度はさっきのより少し強めに弓を引き、矢を放つ。

再度放たれた三本の矢は、先程のものより明らかに速度が増しており、高スピードで三人に接近していった。

それともう一つ、この矢には少々細工を施してある。

 

「「「こんなものぉぉぉ!!」」」

 

三人は再度矢を撃ち落とそうとするが、俺にはその行動にどうしても笑いを堪えられなかった。

 

「おいおい、いいのか?それに触れてもさあ?」

 

三人に俺の声は届いておらず、そのまま撃ち落とそうとしていた。

先に動いたのはフランドールで、さっきと同じように矢を焼き斬ろうと炎の大剣を振りかざすが―――矢が剣先に触れた瞬間、矢は紅い電気へ変化し、フランドールに纏わり付いた。

 

「きゃあぁぁぁぁ!」

 

フランドールは紅い電撃に襲われ、ビクビクと体を震わせながら地面に落ちていく。

 

「「え?」」

 

突然の事に他二人も驚いているようだが―――そんなボーっとしている暇があるのか?

 

「って、ヤバッ!うぎゃあああああ!」

 

「ちょ、まっ!ぎにゃああああああ!」

 

余所見をしていたぬえと正邪は、自分達にも同じものが接近していることを忘れていたようだ。油断大敵だな。←(ここテストにでるぞ~)

 

フランドールと同じように、体をビクビクさせながら地面に落ちていく姿がなんともお笑いぐさだった。笑わないけど。

 

残り十五秒―――――

 

「ちっくしょう~~」

 

「う~~、体がビリビリする」

 

「お姉様たちに叱られる~」

 

能力を使って三人を同じ場所に転移させておいたが、三人とも半泣き状態で悔しがっていた。

その光景がどうにも微笑ましく、つい口元が緩んでしまった。

そしてどうやら時間切れのようで、俺は元の姿に戻った。その瞬間―――俺の全身に激しい痛みが襲って来た。しかも左腕においては、今にも千切れそうなほどの痛みが走っていた。

あまりの痛みに堪らず苦感の表情に変わってしまい、地に膝をついてしまう。

 

「ぅ、くぅぅッ!」

 

酷く痛む左腕を見やると、白かったはずの包帯がまるで嘘のように赤黒く染まっており、指先からポタポタと黒に近い色をした血が滴り落ちていた。

 

「ハァハァ……やれやれ、ちょっとやり過ぎたかな?藍や紫が見たらなんて言って怒られるだろうな、ハハ」

 

仕方なく俺は着ていた服の一部を破り、左腕に応急処置として巻いておくことにした。

巻いた時にも酷い痛みが走ったが、そんなことよりも、今はあの三人の下に向かわなければ。

 

俺は全身の痛みに顔を歪めながら、ゆっくりと立ち上がろうとすると―――突然右肩を担がれた。驚いて右肩の方をみると、人里にいるはずの妹紅がいた。

 

「妹紅……」

 

「お疲れさん。ナイスだったよ」

 

俺は訳が分からないといった顔で唖然としていると、今度は左腕に白い布を巻きつけられた。

今度は何だと思い、左腕のほうを見ると、バカを見る目をした霊夢が居た。

 

「れ、霊夢?」

 

「あなた、バカなんじゃないの?こんな腕で戦うなんて」

 

「ぐうの音も出ないな……」

 

霊夢は「やれやれ」と言って、俺の左肩を担いでくれた。

俺は二人に両肩を担がれた状態で、痺れて動けない三人の下へたどり着いた。

 

「やあ三人とも。調子はどうだ?」

 

「体が痺れて動けない」

 

「右に同じく」

 

「うわーん!お姉様ごめんなさい~」

 

一人だけ面白い子がいるが、今は後回しにしよう。今はそれより、彼女たちのこれからのことについてだ。

その件で先に口を出したのは霊夢だった。

 

「あんた達覚悟は出来てるのよね?人里に被害を出しただけでなく、私の神社の倉庫まで壊して、ただで済むなんて思わないことよ?」

 

「けッ、結局こういう結末か!あ~あ、今回の異変も骨折り損のくたびれ儲けだったな」

 

霊夢の言葉に呼応するように、正邪は笑っていた。それはまるで、何かを諦めたような笑い方だった。

 

「なあぬえ、フラン……」

 

「何?」

 

「どうしたの正邪ちゃん?」

 

「私達妖怪って奴はさ……不幸だな。人間と違って、望んだ世界も、望んだ物の手に入らないんだからさ。いつもいつも、どんな時だって……どいつもこいつも邪魔しにきやがる!」

 

本当嫌になるよと言って正邪は笑い続ける。その笑いに誰かが答える訳でもなく、ただただ一人で笑い続けていた。

 

「ああ、もういいや……そら、さっさと止めを刺せよ。この異変の首謀者は私なんだからさ!」

 

「何言ってんの正邪!?」

 

「正邪ちゃん?」

 

「あーあー!早く楽にしてくれよ~。痛いのは嫌いだからさ~」

 

もう、なんというか……あれだな。完全に自棄になってるなこの子は。

何か語り始めたと思ったら、今度は急に止めを刺せだの早くしろだのよく分からない事を叫び始めた。これどう始末をつけようか悩むぞホント。

 

(霊夢妹紅、どうしようアレ……結構面倒くさいんだけど?)

 

(知らないよそんなの。乖離が捲いた種だろ?)

 

(そうね、これは乖離さんが捲いた種なんだし、乖離さんがどうにかすれば?)

 

(そうは言ってもだな~)

 

俺達が三人で耳打ちしていると、フランドールが俺に声を掛けてきた。

 

「ねえお兄様……」

 

「はいお兄様です」

 

「お兄様は……正邪ちゃんを殺してしまうの?」

 

フランドールは悲しそうな目で俺に問いかけて来た。フランドールの問いに、正邪とぬえも目を細めて俺の回答を待っていた。

ん?お兄様って呼ばれたか俺?

 

「どうなのお兄様?」

 

「乖離……?」

 

「乖離さん?」

 

妹紅と霊夢もどうやら俺の回答が気になるのか、少し心配そうに見つめてきた。

仕方なく、俺は口を開くことにした。

 

「ハァ、あのさ?いちいちそんな事聞くか普通?」

 

「え?」

 

フランドールは俺が何を言っているのか分からないといった顔をする。

更には最悪の回答が返ってくると思っているのか、涙まで流し始めた。少女を泣かす趣味は俺には無いってのに。

 

「答えはNOだ。なんで遊びが突然殺傷沙汰になるんだよ」

 

「そ、それじゃ……」

 

「ああ、殺さないよ。言ったろ?説教するだけだってさ」

 

「フフ、良かったじゃん正邪」

 

「うるさい……」

 

ぬえは笑いながら正邪を茶化し、それに正邪は少し顔を赤くしてそっぽを向いた。

 

「本当に正邪ちゃんを殺さないのね?」

 

「なかなか信じてくれないな。殺さないって。そんな物騒な事する必要もないだろ?」

 

「ありがとうお兄様!」

 

フランドールは嬉しそうに笑う。その笑顔はまるで太陽のように眩しかった。

 

「乖離さんって甘いのね」

 

「そうかな?普通だと思うけど……それより霊夢はいいのか?」

 

「ああ、もういいわよ。今更怒る空気でもないでしょ?」

 

「そうだな。ていうか、霊夢も甘いじゃんよ?」

 

「普通でしょ?」

 

そう言って霊夢は小さく笑った。俺も霊夢に釣られて笑っていると、妹紅が俺達二人に尋ねてきた。

 

「あのさ、私フランドールに殺されたんだけど……仕返しどうしよう?」

 

「「お好きにどうぞ」」

 

俺達にはもはやこれしかいう事はなかった。

妹紅はえ~と言って苦笑いを浮かべた。

 

「さてと、三人とも?そろそろ矢の効力が切れる頃だから言っておくよ」

 

三人はごくりと唾も吞み込んで、一体何を言われるのだろうと顔を引き締めた。

 

「各々の目的、このヘンテコ事件を起こした理由も理解している。そんな訳で、お前ら三人の事は責めないでおくよ」

 

「ど、どうして?」

 

「どうしてってお前、それが正しい願いであるからだよ」

 

「え?」

 

ぬえは驚いた表情で目を見開き、俺を見ていた。

そもそも彼女たちの願いはある意味では自分たちの存続に繋がっている。妖怪とは古来より人の恐怖を糧に生きている者達だ。幻想郷ではない今の時代、妖怪や神といったものはもう都市伝説となっており、人々から忘れ去られ科学によって否定されたのだ。

 

「誰だって生きたいと願うことは当然であり、当たり前の欲求だからな。俺はお前たち三人の目的を聞いた時、根底にある『消えたくない』という想いを感じたんだ」

 

「な、何を言って……」

 

ぬえや正邪、フランドールは口をパクパクと動かしているが、俺は構わず話を続けた。

 

「特に、確信が持てたのはフランドールの言った『寂しい』って言葉だったんだよ。妖怪は精神に強く依存するだろ?だから、お前たちは間違ってないんだよ」

 

方法はともかくな?っと付け加え、俺は三人に微笑みかける。

 

「まあ何はともあれ、辛い時は俺の家でも訪ねて来な!茶ぐらいなら出すよ」

 

俺はそう言って、ゆっくりと妹紅と霊夢に放してもらい、家のある方へ歩きだした。そんな俺に正邪が静止をかけた。

 

「ちょっと待て!お前はそれでいいのか?私達はお前を殺そうとしてたんだぞ?」

 

「あっそ!どうでもいいよそんなの。殺されるのには慣れてるからさ!それに、他二人はともかくお前は俺に何もしてないだろう?」

 

「そ、そうだが……」

 

「なら問題ないんじゃね?いちいちそんな事気にしてると参るぞ~」

 

ハハハ、と笑いながら俺はその場を去って行く。

 

 

今回得たものは、幻想郷には楽しい奴がいるってこと。

今回失ったものは、もう使い物にならなくなった左腕。

 

良くも悪くも、幻想郷は暇しないってことだろう。

 

 

 

「あ、人里で買い物するの忘れてた!……まあいいか」

 

 

 

この後家に帰って、左腕が使い物にならなくなった事を紫と藍に話すと、メチャクチャ怒られた。そして三時間の説教を受けた。

人里行っておけばよかったよ……。




やっと終わった!そして宴会へ……

相変わらずの下手さに涙が出てきますよ……。
語彙力皆無の作者ですね私。

次回もお楽しみに!!
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