東方英雄章~【妖怪と人間と】   作:秦喜将

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はい、お嬢様登場です。

もう少し後でも良かった気はしてます。

ではどうぞ!!


十二話 なんやかんやで

Side紫

 

 

 

乖離様に霊夢と魔理沙を連れて来るように頼まれて、一応二人を見つけ、戻ってきたはいいのだけれど――――

 

 

「でさ?こころちゃんってば将棋に負ける度に後ろに倒れるんだよ!もう最高に面白くて腹が痛いの必死で我慢してる訳なんだよ!」

 

「何それ変なの~。でも乖離って将棋できるんだね、今度私ともやろうよ!」

 

「いいぞ!いつでもかかってきな!」

 

何故あの蓬莱人と楽しそうに談笑しているのかしら!?

 

乖離様と妹紅は大きな声で笑いながら話しを続けている。まだ私が霊夢と魔理沙を連れて戻って来たことに気付いておられないようだ。

それより、ちょっと目を放した隙にどうしてあの二人はあこまで仲良くなっているのかしら?だいたい、私だって乖離様とお話ししたい!!

 

私は歯をギリギリと軋ませながら二人が笑い合っている光景を見ていた。地底の橋姫ではないけれど、私的にかなり妬ましい光景。そしてこれが俗にいう嫉妬という感情だってことはすぐに分かったけど、最愛の人をポット出の女に取られたのだから、嫉妬するなという方が無理な話だ。

 

「紫どうかしたの?なんか顔怖いけど」

 

「大丈夫……なんでもないわよ。そう……なんでもないのよ」

 

「目が死んでるけど?」

 

霊夢の指摘に、私はスキマを開いて鏡を取り出し自分の顔を見てみた。確かに目が完全に死んでいる。我が事ながら、ちょっと怖いわね……。私は二回ほど顔を叩いて気持ちをリセットし、乖離様に声を掛ける。

 

「乖離様、二人を連れてまいりました。遅くなり申し訳ありません」

 

「おお、ありがとな紫!それと二人共、こっちに座れよ!一緒に飯食おうぜ」

 

乖離様は手招きをして霊夢と魔理沙を呼ぶ。二人もそれに従うように乖離様の前に座って会話に参加し始めた。

なんとか嫉妬心は隠せたみたいね。万が一にでも、妹紅なんかに嫉妬していたのがバレ、器の小さい女だなんて思われたら多分一生立ち直れないでしょうね。そして『紫って嫉妬深いだけじゃなく、器まで小さいんだな』なんて言われた日には自殺ものよ。

 

 

え?幻想郷はどうするのかですって?―――はて、何の事かしら?

 

「お~い紫、何ぼさっとしてんだよ、こっち来て飯食おうぜ」

 

「はい、ただいま」

 

乖離様に呼ばれて私は乖離様の隣に座る。もう一方の隣に座っている妹紅がなにやら睨んできたけど、喧嘩を売っているのなら宴会後に買ってやろうかしら。

 

私も同じように妹紅を睨み返していると、不意に霊夢が問いかけてきた。

 

「ねえ紫、こころから聞いたんだけど、将棋で乖離さんに負けたって本当なの?」

 

「「は?」」

 

魔理沙と妹紅は霊夢の言った事が理解できなかったのか、間抜けた顔になり目を点にしていた。一方乖離様は苦笑いを浮かべて麦茶を口に運んでいた。

 

「ええ、本当よ?私は乖離様に将棋で負けたわ」

 

「嘘だろ?!紫が負けたって、霊夢よりも強いのにか?!」

 

「だからそう言ったでしょ?私は乖離様に負けたのよ……。将棋なら絶対負けない自信があったんだけれどね」

 

「うそ~ん……」と魔理沙は呆れたように言うが、本当に乖離様は強かった。私はあらゆる戦法、あらゆる揺さぶりを仕掛けてもその悉くを突破されてしまったのだから。

あんなのは久しぶりだったわね。そう、丁度二百年くらい前に幽々子と打った時以来だったかしら。最後には私が勝ったのだけれど……。

そして乖離様に負けた時におもわず泣いて帰ってしまった醜態は忘れましょう。

 

 

 

 

Side乖離

 

紫が霊夢と魔理沙を連れてきてくれたおかげで、ここの席は随分と賑やかになった。俺としては嬉しいことなのだが―――何故だろう?周りからの目がとても痛いのだが。俺なにも悪い事してないんだけど。

 

「ハァ……」

 

「どうしたの乖離、タメ息なんか吐いて」

 

「いや、なんだか周りの視線が痛いな~って思ってさ」

 

「そう?私は何も感じないけどな~」

 

妹紅は分かっていないのだろう。その視線が主に男の妖怪からのものだってことが……。

まあ?今の俺の現状は他の男からしたらとんでもなく羨ましいほど両手に花、前にも花って感じなんだろうけどさ、俺は別に下心がある訳じゃない。ただ皆と食事がしたいだけなんだ。そもそも、下心があったらとっくに理性を保てないまま周りの四人を襲っていると思う。

 

 

まあ、そんなことをした次の瞬間にはあの世にいるのは目に見えているがね?

 

「あ、そういえば!乖離さんの作って来てくれた宴会料理美味しかったわよ?あれはもう絶品だったわ!」

 

「私も食べたぜ乖離!あれメチャクチャ美味かったぜ!」

 

霊夢と魔理沙はさも満足そうに笑って感想を言ってくれた。美味しかったってのなら嬉しいけど、もしかして全部食っちまったのだろうか?

 

「ちょっと待ちなさい二人共!乖離様の作った宴会料理があるの?私があなた達を呼びに行った時は無かったわよね?」

 

「そりゃそうよ?私と魔理沙で完食しちゃったんだから。正直全然食い足りないけどね」

 

紫の問いに霊夢は無慈悲にも残酷な事実を紫にぶつける。そんなに美味しかったのならもっと持って来ればよかったかもしれない。そして紫よ、悔しいのならまた作ってやる。だから怒りに任せて妖力開放するのはやめて欲しいのだが……。

 

「ねえねえ乖離、乖離って料理できるの?」

 

紫のご立腹を他所に、妹紅は興味深そうに聞いてきた。

 

「まあ、人並み以上にはね?和洋中、全部作れるよ。なんなら今度将棋ついでに食べに来るか?」

 

「いいの?自分でいうのもあれだけど、結構大食いだぞ私?」

 

「問題ないさ。こちとら毎日四人分作ってるからな!」

 

「乖離の家には誰か住んでるの?」

 

「いや、俺一人だけだが?」

 

「一人で四人分食べてるの?」

 

「うん」

 

「おおう」

 

妹紅は驚いたような顔をして俺に拍手を送ってくれた。料理や食べる事に関しては、結構好きだから別に拍手されることではない気がする。それに、和洋中において『和』だけなら俺なんかより藍の方が絶対上手いだろう。

そういえばその藍はどこに行ったのだろうか。宴会料理を探してどこか彷徨っているんだろうか?流石に遅くないかと思う。

 

―――噂をすればなんとやら……そんな事を考えていると、両手一杯の宴会料理を持って藍が戻ってきた。疲れているのだろうか、息が乱れている。

 

「お、遅くなりました」

 

「お疲れ様藍、大丈夫か?」

 

「な、なんのこれしきです!」

 

俺は藍から大量の宴会料理を受け取り席に座らせると、藍は近くにあったお酒を猪口に注ぎ一息に飲み干している。どうやら相当疲れているみたいだ。

 

そして今思ったのだが、この宴会で麦茶とか飲んでるの俺だけじゃないだろうか?他の妖怪達も皆お酒を飲んでいるし、紫や藍は当然として霊夢や魔理沙に妹紅も皆お酒を飲んでいる。つまり、この宴会においてお酒を飲まず麦茶なんぞしけたもの飲んでいるいるのは俺だけって事になる。

 

「ハハ、お酒……飲もうかな」

 

「あら、乖離様もお酒が飲めるのですか?」

 

「嗜む程度にね~……。飲み比べとか、そんな事は出来ないけどさ」

 

俺の返答に紫は少し残念そうな表情を浮かべた。俺としてもお酒は飲みたいところだが、如何せん俺はアルコールに弱く酔いやすい体質なのだ。以前も調子に乗ってコップ一杯のお酒を飲んだ時、それからの記憶がないのだ。そして正気に戻った時には泥酔い状態に陥り吐き気と頭痛で三日間動けなかった。

そんな出来事があった為、俺はあの日以降お酒を一滴も飲んでいない。

 

「乖離はお酒弱いの?」

 

妹紅は両手に猪口を持って俺に聞いてくる。それを見るに俺と飲み交わしたいようではある。

 

「俺は結構弱いよ?コップ一杯のお酒で暴走したあげく三日間動けなかったし」

 

「能力使って飲めるようにしないの?」

 

霊夢の言うことも考えなかった訳ではない。しかし、能力を使ったところでお酒への耐性は多少なりと付くにしても、それはあくまで一時的なものである為時間経過で耐性はきれる。故に、俺にとって能力を使ったところで酔うのが早いか遅いかの違いでしかないのだ。

 

だから霊夢への返答は―――

 

「しないよ。そんな事してもあまり意味はないからね」

 

「そう、乖離さんがいいならいいんだけど……」

 

すまないとは思っている。俺だって出来る事なら酒豪の如くお酒を飲みたいのだ。

 

自棄酒……なんてな。

 

 

そんなこんなで皆と談笑していると、不意に三つの強い気配がこちらに近づいてきているのに気付いた。どうやらその気配に気付いたのは俺だけではなく、他五人も同じようだった。

一人は分かる。肌がヒリヒリと痺れるような強い妖力……おそらく今回の異変の主犯の一人……フランドールだろう。

もう一人は妖力ではなく霊力だった為、それが妖怪ではなく人間だということは直ぐに理解できた。だがその霊力はとても冷たい感じがした。言うなれば、鋭いツララといったところだろう。

 

 

残り一人は間違いなく妖怪だった。だが、感じる妖力の強さが他二人とは比べ物にならない程のものだった。そこに有るというだけで、並の妖怪や人間ではひれ伏し恐怖し畏怖してしまいそうな、そんな圧倒的な妖力。

これを俗にいうカリスマといやつだろうか。

 

考え事もつかの間、既に三つの気配は俺の背後に在った。俺は座ったままゆっくりと振り返る。そこにはやはりフランドールがいた。笑顔で宝石のような羽をパタパタとはためかせながら。もう一人は銀髪のメイド服を着た女性。メイドとは常に笑って仕事をする者のことだが、この女性は違う。どう見ても笑っていない。ていうか目を瞑り無表情のままだ。なんというか、少し取っつきにくい感じの人だ。

 

最後の一人は……思っていたよりも小柄で、背丈はフランとどっこいどっこいと言ったところだろうか。だが、背中に生えた蝙蝠のような大きな翼と青み掛かった銀髪に口元に見える鋭利な牙と、溢れんばかりの妖力が、目の前の少女は只者ではないと物語っていた。

 

青髪少女はゆったりとした足取りで俺に近づいてきた。

 

「こんばんは。初めましてね、私はレミリア・スカーレット。あなたが氷鉋乖離で間違いないかしら?」

 

レミリアと名乗った少女は着ていたスカートを少し摘み上げ、社交辞令のようにお辞儀をする。その動作は気品に溢れ、上品な貴族をイメージさせた。

誰に対しても礼儀は大切だ。それが例え子供のように見える少女であったとしても……。

俺は立ち上がり、彼女に習いそっと胸に手を置き深くお辞儀を返した。

 

「いかにも……俺が氷鉋乖離で相違ない。して、俺に何用でしょう?」

 

「フランからあなたの事を聞いて、お礼に来たのよ」

 

「お礼?」

 

意外な言葉に俺は少し戸惑ってしまう。お礼なんて言われても、俺は何かしたのだろうか。まったくもって身に覚えがない事なのだが……。

 

「ええ、先の異変であなたはフランを止めてくれた。本来それは私の仕事だったのだけれど、私は異変があったことなど知らなかったのよ。だから、私の代わりにフランを止めてくれた事に感謝しているのよ」

 

「なるほどね……。だが、悪いがレミリアさん、あなたから感謝される筋合いはないよ。俺は単純に、フランドール達と遊んでいただけだからね」

 

「あなたがそうでも、私はそれでもあなたに感謝するわ。フランを止めてくれて……本当にありがとう」

 

再度レミリアさんは俺に頭を下げた。それも今回のはお辞儀ではなく、謝罪と礼を籠めてのものだ。その光景が珍しいのか、後ろの連中も然り周りの妖怪達まで驚いていた。しかし、本当に俺は頭を下げられるような事などしていないのだが……それでもまあ、今は彼女の顔を立てて何も言わないでおくことにしよう。

 

「そうそう咲夜、彼にアレを渡してあげて」

 

「畏まりました」

 

咲夜と呼ばれたメイド服の女性は少し大きめの袋を持ち、俺に手渡してきた。

俺は手渡された袋の中を覗くと、なにやら赤い箱が二つほど入っていた。

 

「レミリアさん、これは?」

 

「それはティーセットよ。もう一つはクッキー、おやつ時に食べてちょうだい」

 

「いいのか?貰っても」

 

「もちろんよ?それはあなたへのお礼の証みたいなものよ。まあ、つまらない物だけれどね」

 

「そうか、ならありがたく頂いておくよ。あ、そうだ!レミリアさん達も一緒に飯食ってかないか?折角の宴会だしさ」

 

「いいのかしら、私達も一緒で…?」

 

「問題ないだろう」

 

「それなら」と言ってレミリアさんは霊夢の隣に座った。レミリアさんが霊夢の隣に座った瞬間、俺の真横に居たはずの咲夜さんは一瞬でレミリアさんの斜め後ろに立っていた。どういう原理かは知らないが、瞬間移動かなにかだろうか……。

 

「ねえねえ」

 

不意に袖をクイクイと引っ張られ、そちらに顔を向けるとフランドールが俺を呼んでいた。

 

「どったの?」

 

「その……この前は、ごめんなさい」

 

少々顔を俯かせたまま、フランドールは俺に謝罪の言葉を掛ける。レミリアさんにも言った事だが、何故彼女らは俺に礼を言ったり謝ったりするのだろうか。俺は別にそのような事される行動はとっていないはずであるというのに。でもまあ、フランドールは自分が悪かったと思っているようなので、ここは敢えて笑うことにする。

 

「ハハ、謝る必要はないよ?俺は君達と遊んでいただけだからね。それより、謝るのなら俺じゃなくて妹紅に謝ったほうがいいんじゃない?」

 

俺はそう言って妹紅のほうを見やると、案の定妹紅は不機嫌そうな顔でフランドールを睨んでいた。よほど殺されたのが悔しいとみえる。

 

「嫌よ!だってあの不死人は私に負けたんだもの」

 

「はあ!?」

 

フランドールの言葉にキレてしまったのか、妹紅は腕から火を放出しながら更に鋭い視線でフランドールを睨みつけるが、フランドールも負けじと妹紅を睨み返す。まさに一触即発の状態に、俺が二人をなだめようとした時―――二人の頭上にスキマが開き、そこから妖力を帯びた拳が二人の頭を強打した。

 

「ふぐゅっ!」

 

「きゃうッ!」

 

紫のゲンコツが相当痛かったのか、二人は頭を抱えてうずくまってしまった。それもそうだろう。なにせ誰が聞いてもあれは痛いと分かる程、ゲンコツを受けた際大きな音が鳴り響いたのだから。俺は苦笑いを浮かべつつ紫の方を見やると、額に青筋を立て怒りの笑みを浮かべていた。

 

「喧嘩なら他所でやりなさい二人共。ここは宴会の場であり、乖離様の歓迎会の場でもあるのよ?これ以上今回の主役たる乖離様のお手を煩わせるようなら、スキマの中に叩き込むわよ?」

 

これはとんでもない脅し文句だ。紫のスキマの中に叩き込まれれば、多分霊夢辺りでないと戻ってこれないだろう。いや、下手をすれば霊夢でも無理なのではないだろうか……。紫の能力を知っている二人も、それを理解したのか申し訳なさそうに正座してしまった。

 

「うぅ、ごめん乖離。熱くなり過ぎた」

 

「ごめんなさいお兄様……」

 

あ、俺に対する申し訳なさなんだ!

 

 

二人は若干涙目になっていた。可哀想ではあるが、仕方ないだろうと思う。

 

「俺はいいからさ、取り敢えず二人共仲直りな?それと紫、流石にゲンコツは可哀想だと思うんだが」

 

「乖離様は甘過ぎます」

 

甘いか……。確かにそうかもしれないが、妹紅はともかく見た目が幼い少女にまでゲンコツは流石にアウトだと思う。その少女に雷撃の矢を撃ち込んだ俺が言えた義理ではないんだが。それと、何そこの巫女と魔法使いは我関せずの如く宴会料理食ってんですかね……。少しはツッコミを入れるべきだと思うのは俺だけなのか……。

 

 

 

そして思う……まだまだ宴会は始まったばかりなのだと




随分遅くなりましたが、試験中なのです……。

胃が……胃が痛いです。←(そんなものはどうでもいい)

次回はあの人を登場させてみます。
ぬえ関係……これで分かるはず


次回もお楽しみに!!
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