しふと✡ぎあ   作:takurai

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第1話

─2235年の年始、日が昇り始める頃

 年始がおめでたいだなんてよく言うことですが少なくとも私は全くそんなこともなく、血でオイルを洗う醜い戦場のまっただ中に居ました。

 せめて、門松か何かがあれば気分が出るんでしょうが…そんな事を思うのはどうかとも思い…少なくとも今いる環境ではそんな事を考えずに周りに気を配るべきなのだと思う。

 ここは安全圏ミサトから外れたかなり西の安全圏外、ここはエルフと呼ばれる人類を襲う自立兵器が闊歩している…闊歩とはいえ飛んでるが…そんな危険な場所だった。

 そこで私はアイギスと呼ばれる機関から依頼をうけ、『防術機』と呼ばれる4〜5メートル程の人型だったりタンクだったりする兵器に乗って遥々安全圏からここまでやってきて本隊から外れたはぐれエルフ破壊の依頼をこなしていた。

 ちなみにはぐれてない本隊のエルフは数千の数になる為私一人なんかじゃ太刀打ちは一切無理だ。

 そして『防術機』は安全圏外でのエルフとの戦闘に使われる兵器である…もっぱらその安いコストから対人にも使われる…というか元々は人の支援兵器でもあったはずだ。

 そしてその『防術機』には大きな特徴があり、それはかなりのジャマー耐性があるということだ。

 これはかなり重要だ。なぜなら安全圏外はジャマーの蔓延る通常兵器はまともに使えない区域ばかりなのだから。

 これがなかったら今頃人類は地下でエルフに怯え続ける生活しか出来なかっただろう。開発者に感謝だ!

 …それはそれとして。それとする。

 今ははぐれエルフ討伐の依頼をこなして帰路に着く所だった。

 風雨に晒されボロボロになって既にその役割を終えた道路の上を防術機…QuadionLadders製のQi3:TOOTHに乗って私は移動していた。

「帰りったーい…帰りったーい…」

 帰っているのだけど。

 長い間地面を走り続けるというのは余りにも暇なので鼻歌を歌っていた。

 ましてや操縦は自動操縦だ。

 何もすることがないのである。

 博士に改造してもらって暇潰しの娯楽機能でも付けるか…はたまた本でも持ってくるかと思考していたその矢先に『それ』を私は見つけた。

 何かが道路で横たわっていた。

 否。何か、ではない。

 それは明らかに人間だった。

 四肢があり、その形状は人間であるとしか言いようの無いものであった。

 だが生身の人間がこんな所にいるはずがないのである。

 ここはエルフがいる地域…生身の人間はそもそもここまで来れる筈もなく、エルフに殺されるか野垂れ死にするかの二択だ。

 生身でなんて入ってくるはずがない…。

 まさか野垂れ死にをしに来たわけもなかろう。

「…見てみるか。」

 その前に武装していないかを確認する。

 …どうやら着ている服以外何も無いようである。

 もしかして本当に野垂れ死にしに来たのでは…?

 だが、生命反応はあった。

 Qi3を座らせ、システムを待機状態に変更する。そしてコックピットハッチを開けてロープを垂らして飛び降りる。

 ロープなんて要らないが一応である。

 そしてそのうつ伏せに倒れている人間に近づいていく。

「おーい。生きてるなら返事しろー」

 生きているのだが。

 だが返事はなかった。死んでいたのか…なんてアホみたいな発想をしつつ体を仰向けに転がしてみた。

 その人間は少年だった。

 黒髪のシャツとGパンを着た、町中で見そうな極普通の少年だった。

 ますますここにいる理由が分からず疑問が深まる。

 少なくとも私の目にはあからさまにその光景から浮いていた。

 例えるなら豚小屋に牛が混ざっているような…いや案外そんな所もありそうなので撤回しておく。別にあろうがその異質さは伝わるだろうし良いかもしれないけど。

 いやそもそも人間を豚小屋の牛に例えるなんてそれはそれでどうかしている。

 そうだ…リバーシで四隅だけ黒で他全部白みたいな…そんな有り得ないはずの盤面があるような。

 そんな光景だった。

 しかし、このままでは何も事態は進展しないし事は進行しない。

 物語が止まってしまう。

 何かしなきゃ…。

「…起きろおおおおおおお!!!!」

 返事も反応もない、ただの屍のようだ。

 いやいや生きてるけども。

 大声で起きないとなるとこの場で出来ることは…

 そうだ、こうなればする事はただひとつ。

「えい」

 ぱちん

 少年の顔を思いっきりビンタしてみた。殴るのは流石に気が引けたので多少気が楽な実力行使だ。

 世の中にはビンタで興奮する人もいるようだが…この目の前の少年がそうでないといいのだけれど…もしそうなら禁忌を侵してしまっている。

 頼むからマゾヒストでないことを…とか願っていると変な方向で別の願いが叶った。

 少年はうっすら…いや、少しづつ目を開けていった。

 ようやく起きたかお寝坊さんめ…。

「大丈夫?体とか傷まない…?」

 顔は痛むだろう。ビンタしたばかりだから当たり前だが。

 そして彼はその口を動かして、答えた。

 機械のような動かし方だった。

「……だ…大丈夫です。」

 彼の声は少し高く、幼さと大人ぶりが混じった声だった。

 ちなみに私はこの声は好みじゃない。

 渋いおっさんの渋い声はいいぞ。

「あなたは…一体何者でしょうか…?」

「私はクライン、綴りはK L E I N !」

 親切に答えたが少年は少し混乱したような顔をした。

「いえ、そういう事でなく…あなたは何故その様な格好をして…いえ、これはいいです。

なんで、なんであなたは

 

───浮いてるんです?」

 

「そりゃ魔法少女だもん」

当たり前の事を聞かれたので答えてあげた。

「いや…普通そんな魔法少女なんて…アニメだけの存在でしょう?」

「ふっふー…そんなことを気にしていたのか君は…。

言うじゃない、ほら…

 

『十分に発達した科学は魔術と見分けがつかない』

 

ってさ。

所詮科学だよ」

 解説が面倒なのでそれっぽい事を行ってごまかす。

 私の狡い逃げだが嘘はついていないので問題ない…実際科学の塊だ。

 彼が気になった格好は私の着ている魔女の様な服装だろう。

 魔女とは対照的に真っ白の服装だったしとんがり帽子は折れ曲がっていたし、服装は白衣に近いものにも見える魔女としても変わった服装だったけど。

 さてさて、私のことは別段どうでもいいんだ。

「質問には答えたよ。

君も私の質問に答えてくれるかな…?

君は何者で何でここにいたの?」

 そして彼は答えた。

 否、応えたという方が正しいだろう。

 彼の言葉を聞き、更に面倒な事になる事を私は察知した。

 

 「…………私は…誰だろう…」

 

 答えられず応える。

 意味不明のプロローグはここで終わって始まった。

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