FAIRY TAIL 未知を求めし水銀の放浪記   作:ザトラツェニェ

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この小説が始まってから間も無く一ヶ月……それにしては結構お気に入りが多いのはこれいかに?

水銀「愚問だな。皆、本当は私の事が狂おしく愛しいのだよ。しかしその度し難い事実を認めたくないが故に私の事をニートや変態ストーカー、コズミック変質者などと罵っているだろう?だが私はそれもまた数ある表現の一つ、故に私もそれを受け入れよう。ふふふ……ふははははははは!!!」

地味にウザい……とりあえずこの水銀の事は放っておいて今話をお楽しみください!

水銀「おや、私の事は放置かね?放置プレイなのかね?」

だまらっしゃい。



水銀の蛇は新たな仲間と共に巫女を救出する

「だはーーっ」

 

「ぶはーーっ」

 

「…………」

 

ナツ、グレイ、メルクリウスが六魔将軍(オラシオンセイス)傘下の闇ギルド、裸の包帯男(ネイキッドマミー)と戦闘を開始してから僅か十分後。

勝負は多少ボロボロとなったナツとグレイ、そしてノーダメージで闇ギルドの面々を黙って見ているメルクリウスに軍配が上がった。

 

「何だよ、コイツらザコじゃなかったのかよ」

 

「意外とやるじゃねーか……」

 

「当たり前じゃない!相手はギルド一つよ!!何考えてんのよアンタたち!!」

 

「愚問だな」

 

木の後ろに隠れてそう怒鳴るシャルルにそう返したメルクリウスはふと、先ほどのサルのような顔をした男の片方に近付き、魔術を行使して男を宙へと拘束した。

 

「では君に問うとしよう。君たち、延いては六魔将軍(オラシオンセイス)の拠点がどこにあるのか、教えてくれないかね?」

 

「言うか、バーカ。ぎゃほほっ」

 

そう男が言った瞬間―――その男の体は、どこからか発生した漆黒の炎によって包まれた。

 

「ぎゃほぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

その炎はたっぷり三十秒程、男を燃やした後にふっと消える。

そして―――

 

「では改めて問うとしよう。君たち、延いては六魔将軍(オラシオンセイス)の拠点がどこにあるのか答えたまえ」

 

先ほどの質問と若干の差異はあるものの、メルクリウスは再び同じ質問を投げかける。

しかし当然男もそれに答える事は無く―――

メルクリウスは再び男を漆黒の炎で男を燃やす。今度は一回目より若干長く、四十秒程燃やした後にまた問う。

 

「では改めて問うとしよう。君たち、延いては六魔将軍(オラシオンセイス)の拠点がどこにあるのか答えたまえ」

 

「ちょ……まっ……ぎゃほぉぉぉぉぉ!!!」

 

そしてメルクリウスは再び、今度は五十秒程燃やした後に、一言一句違わずに問いた。

 

「うわっ……」

 

「ひでぇ……」

 

「……アンタたちって本当色々とめちゃくちゃね。……特にクラフト……」

 

それを見たナツとグレイは引きつった顔で、シャルルは目の前でいともたやすく行われているえげつない行為から目を背けながら呟いた。

 

 

 

それからメルクリウスがその男に尋問を始めてから早五回目……遂に男は耐え切れなくなったのか、拠点の場所を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後、ナツ、グレイ、シャルル、メルクリウスは敵の拠点だと教えられた西の廃村へと辿り着いていた。

ここはかつて古代人たちが多く住んでいた村だったようだが、今はボロボロとなり、崩れかけている家などしかない。

 

「ここか!?ハッピー!!!ウェンディー!!!」

 

「ちょっと!敵がいるかもしれないのよ!!」

 

着いて早々、ナツが廃村に向かって自らの相棒である青猫と、青い髪の少女の名を叫んだ。

すると―――

 

「―――ふ」

 

「!!?」

 

先ほどの大声を聞きつけて始末しに来たのか、レーサーが魔法を駆使してこちらに向かってきた。

しかしその行動を完全に読み切っていたメルクリウスがレーサーの殴りかかってきた手を掴んで、腕を起点にくるんと一回転させて尻餅を付かせるように軽くいなした。

結果として、レーサーは尻餅どころかまたもや盛大に転び、メルクリウスたちの背後にある森の方へと転がって行った。

 

「またアイツだ!!」

 

「クラフト、お前あれを見切れるってすげぇな……」

 

「先ほど言ったではないか。あれは私からしたら遅過ぎるのだよ。それと君は学習能力というものが無いのかね?私にとっては君のような直線的な殺意を持つ者の攻撃など至極読みやすい」

 

「ちっ!!」

 

レーサーはメルクリウスの発言に舌打ちし、再びこちらへ攻撃してこようとしたが―――その前に地面が一瞬で凍り、つるっと滑ってコケた。原因はグレイが氷の造形魔法で床を凍らせたからである。

 

「ここは任せろ!早く下に行け、ナツ!!クラフト!!」

 

「おし!!」

 

「攻撃を見切る事も出来ない君一人で大丈夫かね?」

 

「心配すんな、見切る方法なんざ戦いながら考えりゃあいい。それにさっきは遅れを取ったが、二度もそんなヘマはする気もねぇしな!」

 

「……承知したよ。ではここは君に任せて私たちは降りるとしようか。ナツ殿、シャルル殿」

 

「おう!シャルル、羽を!!」

 

「ええ!!」

 

シャルルは返事をすると、自らの背中から(エーラ)を生やして、ナツを掴んで廃村へと飛んで行った。

 

そして廃村へ降り立った二人がまず最初に見て目を疑ったのは―――

 

「やあ、遅かったね」

 

「クラフト!?お前どうやって俺たちより早くここに!?」

 

彼を知る者が見たら、ウザいと感じて殺しにかかりそうな笑みを浮かべたメルクリウスだった。

再度言うが、今の彼は影絵のような存在。つまりどこにでも存在出来る上にどこにでも移動出来るのだ。

 

「そのような瑣末(さまつ)な疑問は後回しにするべきではないかね?今は成せねばならぬ事があるだろう?」

 

「おお、そうだった!!ハッピー!!ウェンディー!!」

 

ナツは廃村を見回して一人の少女と一匹の猫の名を叫ぶ。すると―――

 

 

『ナァーーツーー……』

 

 

「ハッピー!!」

 

「あの中よ」

 

ハッピーの声が廃村の奥にある洞窟の中から聞こえ、二人と一匹はそこへ向かう。

 

「な……何だ……コレ……」

 

「そんな……」

 

「…………」

 

そこで彼らが目にしたのは―――

 

「ナツ〜」

 

床にうつ伏せで寝ながら、涙目になっているハッピーと。

 

「一足、遅かったな」

 

薄っすらと勝ち誇ったような笑みを浮かべているブレイン。

 

「うう……ごめんなさい……ごめんなさい……私……」

 

地面に大粒の涙を落としながら、俯いて謝るウェンディ。

そして―――

 

「――――――」

 

無言のまま、睨みつけるようにこちらを見ていたジェラールだった。

 

「ジェラール……」

 

「……ウェンディ、君は一体何をしたのかな?」

 

「カール……ナツさん……シャルル……ごめん……なさ……ひっく……ジェラールを……本当は治しちゃいけないって分かってたのに……私……」

 

「ウェンディ!!あんた、治癒の魔法使ったの!?何やってるのよ!!その力を無闇に使ったら……」

 

そこでウェンディが魔力を消耗し過ぎたせいか、ふらついて地面に倒れる。

 

「ウェンディ!!」

 

「な……なんでお前がこんな所に……」

 

するとナツの体から炎が巻き起こり始める。

その時ナツの脳内では―――

 

 

 

 

 

『かりそめの自由は楽しかったか、エルザ。全てはゼレフを復活させる為のシナリオだった』

 

目の前にいる(ジェラール)と戦った―――

 

『面白い。見せてもらおうか、ドラゴンの魔導士の力を』

 

楽園の塔での記憶が再生されていた。

 

『オレが……八年もかけて築き上げてきたものを……貴様ァ……!!!』

 

そして最後に浮かんだ記憶は―――

 

『ナツ……頼む……言う事を聞いてくれ……』

 

涙を流し、自らの禊に巻き込みたくないという思いでナツに逃げろと告げたエルザの姿だった。

 

 

 

 

 

 

「ジェラァァァァァァル!!」

 

そして遂に怒りが頂点に達したのか、ナツが右手に炎を纏いながらジェラールへと向かう。

しかし―――

 

「――――――」

 

ジェラールは無言で右手をナツへと向け、ほんの僅かな力を放出して吹き飛ばした。

 

「うあああっ!」

 

「ナツ!!」

 

吹き飛ばしたナツはそのまま崩れてきた瓦礫の下へと埋れてしまった。

 

「相変わらず凄まじい魔力だな、ジェラール」

 

するとジェラールはそう言ったブレインへと振り向き、腕を横へ振るった。

瞬間、ブレインの足元の地面が崩れ落ちた。

 

「ぐぉあああっ!」

 

ブレインは叫び声を上げながら落下していき、その場に残ったのはシャルル、ハッピー、気絶したウェンディ、そして―――

 

「…………」

 

先ほどから無言でジェラールを見つめているメルクリウスだけとなった。

 

「…………」

 

「――――――」

 

ジェラールはメルクリウスとほんの僅かな時間の間視線を交わした後、まるで興味が失せたかのように視線を逸らしてそのまま洞窟の外へと出ていった。

 

(……あれは、私とウェンディの知っている彼ではないな。それにあの目は……)

 

「ジェラール!!どこだ!!」

 

「行ったわ」

 

ナツは瓦礫の中から起き上がり、ジェラールを探すもすでにその場にジェラールはいない。

 

「あんにゃろォーーーっ!!」

 

「あいつが何者か知らないけどね。今はウェンディを連れて帰る事の方が重要でしょ」

 

「然り、事を急がねばエルザ殿が事切れてしまうだろう」

 

「―――っ!分かってんよ!!!行くぞ、ハッピー!!」

 

「あいさ!!」

 

そしてハッピーはナツを、シャルルは気絶したウェンディを掴んで洞窟から飛び出した。

その後をメルクリウスは天体魔法である流星(ミーティア)と自らの魔術で速度を合わせながら、ついていく。

後方から飛んできたメルクリウスを見て、シャルルが困惑したような顔でメルクリウスに問う。

 

「……ねぇ、あんた本当にどういう存在なのよ?突然現れたり、平然と空を飛んだり……」

 

「数刻前と答えは変わらんよ。私はそこらにいる流れ者と同じ身だ」

 

「……ただの流浪者にしては随分と多芸だし、色々怪しいけど」

 

「そうかね?私のような者など、この世界には捨てる程いると思うがね」

 

そう言いながら、メルクリウスは(おもむろ)に右手に重力増加魔法の術式を纏わせ、真下に向かって(かざ)した。

その行為に首を傾げたシャルルだったが―――その理由は直後に判明する。

 

「うおぉぉぉ!!?」

 

下から目にも留まらぬ(メルクリウスからしたら普通に見えるが)速さで彼らを急襲しようと迫っていたレーサーがメルクリウスの魔法により真下に猛スピードで落下していく様を見た故に。

 

「なっ……!?」

 

塵は塵に(Dust to Dust)。塵が宙を舞う事など認めん。永劫叶わぬ祈りを願いながら地に這いつくばっているといい」

 

メルクリウスは落ちていくレーサーに向かって冷徹な声でそう告げ、ウェンディや彼らの護衛をするべくその場を後にして飛んでいく。

そしてそのメルクリウスたちを追おうとするレーサーを止めるべく、その場に残っていたグレイは巨大な“城壁(ランパート)”で大きな壁を作る。

 

「くそ……あいつは三度も俺の走りを止めやがった。そして貴様も二度も俺の走りを止めた」

 

「あの男も俺も何度だって止めてやんよ。氷は命の“時”だって止められる。そしてお前は永久に追いつけねぇ。妖精の尻尾でも眺めてな」

 

 

 

そんな勇ましい事を言う彼と塵芥と断じた敵が始めた戦闘を、メルクリウスは暗く輝く翠色の瞳に映して笑う。

まるで私の知らぬ未知の輝きを感じる戦いであるとでも言うかのように―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……う、うぅ……」

 

小さな呻き声が樹海の一角、僅か数メートル範囲内で響き渡る。

それは地面に横たわっている青色の長髪の少女の声だった。

少女は意識が覚醒してきたのか、ほんの少しずつその両目を開き始める。

 

「うぅん……あれ……?私……?」

 

その両目がはっきりと開かれた少女の目に映り込んだのは、天高く生い茂る木の数々だった。

それを見た少女は、なぜ自分がこんな所にいるのか寝転がったまま考え始めた。

 

「……なんでこんな所に……?」

 

「おや、目が覚めたか?」

 

するとそんな少女の声に気付いたのか、少女の顔を覗き込む者がいた。

深海のように暗く輝く翠色の瞳、少女よりも長い黒い髪、そして少女にとっては聞き覚えのある懐かしい声。

それは七年前、一ヶ月という短い期間ながらも共に旅をし、つい数刻前に再び再会した男のものだった。

その男―――メルクリウスの顔を見たウェンディは一瞬表情が緩むも―――

 

「―――!!ひっ……ごめんなさい……私……」

 

敵に脅されて治してはいけないと分かっていながらも、過去に救ってくれた恩人を治してしまった事と、それに対する自分の罪を思い出したウェンディはメルクリウスや周りで見ていたナツたちから後ずさって距離を取って謝る。

しかし、その謝罪にメルクリウスは首を傾げながら問いた。

 

「何をそんなに謝っているのかね?ああ、それよりナツ殿が君に頼みがあるようだよ。皆への謝罪はその後でもいいのではないかな?」

 

「え……?」

 

「ウェンディ!エルザが毒ヘビにやられたんだ!!助けてくれ!!頼む!!!」

 

「……毒?」

 

ウェンディは首を傾げてエルザの方を見やる。

エルザは土下座して助けてほしいと言うナツの背後で横たわっており、右腕が毒々しい色に変色していた。

 

六魔将軍(オラシオンセイス)と戦うにはエルザさんの力が必要なんだ」

 

「お願い……エルザを助けて!!」

 

その場にいた青い天馬(ブルーペガサス)のヒビキと妖精の尻尾(フェアリーテイル)のルーシィの頼みに、ウェンディは自分が頼られていると自覚する。

 

「も……もちろんです!!はいっ!!やります!!!」

 

「本当か!?」

 

「よかった〜」

 

「いつまでのびてんのよ、だらしない!!」

 

それらの声を聞きながら、ウェンディはエルザの元へと行き、優しげな青白い光を持つ解毒の魔法を行使する。

 

(ジェラールがエルザさんにひどい事したなんて……)

 

そう考えながら治療するウェンディをメルクリウスはただただ黙って見つめているのだった。

 

 

 

 

それから暫くした後―――

 

「……終わりました。エルザさんの体から毒は完全に消えました」

 

ウェンディはエルザの体の上に翳した手を除けて、汗を拭きながらそう言う。

それにナツとルーシィとハッピーが食いつく。

 

「「「で!?」」」

 

「ふむ……毒も消え去り、牙の跡も消えているな。これなら再発の心配も無いだろう」

 

「おっしゃー!!!」

 

数多の平行世界で医者としても名乗っていたメルクリウスがそう答えると、ナツたちが喜びの声を上げた。

 

「ルーシィ、ハイタッチだーっ!!」

 

「よかった〜♡」

 

「シャルル〜!!」

 

「一回だけよ!」

 

それぞれが喜び、一部の者たちはハイタッチでその喜びを表現する。

 

「ウェンディ、ありがとな」

 

「あ……はい!暫くは目を覚まさないかもですけど、もう大丈夫ですよ」

 

ナツの満面の笑みにウェンディは恥ずかしそうに顔を俯かせながらそう答える。

するとメルクリウスがそんなウェンディへと近付き、その頭を撫でた。

 

「よくやったね、ウェンディ。かなり魔力を使ったようだが大丈夫かい?」

 

「あ……うん!私はまだまだ大丈夫だよ」

 

「そうか。あまり無理をしないようにするんだよ。でなければ君の友人がうるさく言うだろうからね」

 

メルクリウスはウェンディの友人―――シャルルに視線を向ける。

視線を向けられたシャルルは「フン……」と鼻を鳴らしたが、心なしか顔が若干赤い。

 

「後はエルザさんが目覚めたら反撃の時だね」

 

「うん!!打倒六魔将軍(オラシオンセイス)!!!」

 

「ニルヴァーナは渡さないぞぉ!!」

 

皆が意思を固め、そう決意した瞬間―――樹海が光った。

 

「何!?」

 

全員が驚き、光った方向の空へと視線を向けた。そこには黒く禍々しい光の柱が天高く光り輝いていた。

 

「黒い光の柱……」

 

「まさか……」

 

「あれがニルヴァーナか」

 

「まさか六魔将軍(オラシオンセイス)に先を越された!?」

 

「あの光……」

 

それぞれが様々な反応を見せる中―――ナツだけは違う感情を昂らせていた。

 

「ジェラールがいる!!!!」

 

その言葉にルーシィがどういう事かを問いかける前に、ナツは光の元へ向かって走り出した。

 

「ナツ!!ジェラールってどういう事!!?」

 

「私の……私のせいだ……」

 

「会わせる訳にはいかねぇんだ!エルザには!!あいつはオレが……潰す!!!」

 

そう言って駆けていくナツを、メルクリウスはただ黙って見つめていた。

 




一応この小説のヒロインはウェンディって事にしてるんですけど……やっぱりメルクリウス相手なら恋愛フラグとかは立ちませんよねぇ……(苦笑)
さて、その辺りをどうしようか?

水銀「そこは指揮者であり、作者である君次第ではないかね?私たちはただ、演技をするだけだよ」

さらっとメタい事を言わないでくれませんかねぇ!?

水銀「おっと、それは失礼―――では今日はこの辺りで終わろうか。誤字脱字・感想や意見、是非とも頼むよ」

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