FAIRY TAIL 未知を求めし水銀の放浪記 作:ザトラツェニェ
水銀「本当に申し訳無いね。最近作者がモンハンダブルクロスをやりだしてしまって更新が遅れていたのだよ」
本当にすみません……。その影響か、今話は結構駄文の可能性大です。どこかおかしくね?とかあると思いますが、そこはご容赦を……。大きめの間違いならばご報告ください。修正致しますので。
水銀「との事だ。以上の事を踏まえた者は私の歌劇をご覧あれ……」
「ナツくんを追うんだ」
ナツが駆けていった後、ヒビキの言葉に私たちは頷いた。
「ナツ……ジェラールとか言ってなかった?」
「説明は後!!それより今はナツを……」
「あーーーーーーっ!!!」
その時、シャルルの叫び声が樹海に響き渡った。
その叫び声が聞こえた方に振り返ってみるとーーー
「エルザがいない!!」
「む……いつの間に」
「なんなのよあの女!!ウェンディに一言のお礼も無しに!!」
「エルザ……もしかしてジェラールって名前聞いて……」
「どうしよう……私のせいだ……」
その時、私の横から自分を貶めるような自責の声が聞こえてきた。
その声が聞こえた方をチラリと横目で見る。
「私がジェラールを治したせいで……ニルヴァーナ見つかっちゃって、ナツさんや……エルザさんが……」
そこにはウェンディは頭を抱えて俯きながら、小声でブツブツと自責と自傷の言葉を並べ始めていて、私は内心またかとため息をはいた。
元々、彼女は何かと不都合な事が起きてしまうと、自分が悪いと言って自らを貶めてしまう悪癖があるのだ。
ーーーしかし今回はその悪癖がいつもより強固なような感覚がするな。
まるで必要以上に自分を悪と定義して、その身をさらに落としていくようなーーーそんな感覚である。
(……もしや、ニルヴァーナという魔法……)
そこで私の脳内に一つの仮説が浮かぶ。もし私の仮説が真実ならば、ウェンディのこの過剰な自責と自傷にも説明がつく。
ーーーしかし今は、ウェンディを宥める事が先決か。
「やっぱり私が……この作戦に参加したからこうなっちゃったんだ……参加しなければ、こんな事には……」
(……やれやれ、彼女を慰めるのも年長者足る私の役目か。まあ、別にそれ自体は構わないのだがーーー)
なぜ私は……彼女のこのような姿に既知感を感じているのだろうか?
間違いなくこの世界は私の記憶に無い、未知に溢れた美しき女神が治める世界の筈なのだ。なのになぜーーー
(ーーーーーー)
その時、ほんの刹那の間だけ視界にノイズが走る。
そのノイズの先には、泣きはらした目をしているマルグリットの姿があった。
(……ああ)
彼女はーーーあの時のマルグリットと似ているのだ。
那由他の果てまで繰り返した数ある歌劇の中の一つのマルグリットに。我が愚息がゾーネンキントと道を歩もうとしたあの回帰の果てに。
瑣末な違いこそあれど、自らのせいだと自責をし、償いを求めているという所では同じだ。
(どちらにせよ、まずは……)
私はその内、自らの存在理由まで否定して精神崩壊してしまいそうなウェンディの頭に手を置いた。
「え……?カール……?」
突然の私の行動に驚いたウェンディは、声を漏らして顔を上げる。その時のウェンディは自らに対する怒りや憎しみ、そして深い哀しみに満ち足りていた顔をしていた。
目は潤み、頬には綺麗な涙の跡が残っているウェンディに私は努めて優しく笑いかける。
「何を哀しんでいるのかな?」
「……だって……何の力にもなれない私が……ジェラールを助けたせいで……ナツさんが、エルザさんが……皆さんがこんな目に合っちゃって……なのに……」
「それを償いたいと願っても、何も出来ない自分の無力さに打ちひしがれていたーーーといったところかな?」
「………………」
それにウェンディは再び俯いて、小さく頷いた。
「それは君のせいでは無いだろう。無粋な事だが、世の中には人の数だけ道理がある」
「え……?」
「君が君の中で思い描いた道理ではそうかもしれんが、客観的に見ればこれは他の思惑が起こした悲劇。他人の
かつて自責の念に駆られていたマルグリットに投げた言葉を、少し変えながら続ける。
「訪れた不幸に理由をつけて自らを貶めるのはやめたまえ。自責と自傷は尾を噛む蛇だ。キリが無く、果てが無い。起こってしまった事は変えられないし、戻る事も無い。それにーーー」
私は離れて私たちの会話を聞いているルーシィたちに視線を向けた。
「そんなに自らを責めずとも、君は十分彼らの力になっていると私は思うがね。君がここにいなければ、今頃毒に侵されていたエルザ殿はどうなっていただろうか?」
「…………」
私の言葉にウェンディは反応を見せない。だが彼女からいくらか負の感情が薄れてきたのを感じる。
「君は彼女を救ったのだ。その事に誇りを持ち、胸を張りたまえ。君がこの作戦に参加したからこそ、彼女はこれから先も生きていけるのだ。さらにもう一つ付け加えるのなら、君がこの作戦に参加していなければ今こうして私と再会する事も無かったと思うのだが?」
「……!」
「それでも君は、この作戦に自分が参加しない方がよかったと思うかね?ならばそれもよし、私からこれ以上言う事は無いよ」
私はそう締めくくり、彼女の頭から手を離してウェンディの返答を待つ。
そうして暫く黙って待っているとーーー
「……そう、ですね……私がいなかったら……エルザさんは今頃……」
「そうだよ!だからそんなに自分を責めないで?ね?」
ルーシィの慰めを受けたウェンディは、目尻に浮かんでいた涙を拭いて顔を上げた。そこに先ほどまで見せていた自らに対する怒りや憎しみ、哀しみなどの感情は跡形も無く、どこか覚悟を決めたような表情になっていた。
「どうやら答えが出たようだね」
「うん!私は……カールが言った通り、皆さんの力になってるんだって考える。こんな私にだって出来た事もあったし、これからもきっとあると思うから……」
「それは重畳」
その返事を聞いた私はウェンディに向かって、静かに笑いかけたのだった。
「きゃ……!」
「おっと、大丈夫かね?」
「ウェンディちゃん、大丈夫?」
「はい!それよりも早くあの光の所に行かなきゃいけないんですよね?」
「そうだよ。あれは危険な魔法なんだ。だから早く行って止めないと……」
ウェンディが決意を固めた後、私たちはあの光の元へと走っていた。
その時、私はふと先ほどの出来事の際に気が付いた事をヒビキに向かって問いかけた。
「一つお聞きしてもよろしいか、ヒビキ殿」
「なんだい?クラフトさん」
「先ほどウェンディが自責と自傷の淵で揺れていた際に、彼女に向かって魔法を放とうとしていなかったかね?」
「ーーー気付いてたのか」
「なんですって!?」
「愚問だな。ーーーなぜウェンディに向かって魔法を放とうとしていたのかな?」
「……あの時は仕方ないと思ったんだ。実は本当の事を言うと……僕はニルヴァーナという魔法を知っている」
『!!!』
「ほう……」
ヒビキの言葉にウェンディたちはそれぞれ驚いたような反応を見せる。
一方の私は、ニルヴァーナという魔法を知りたいが故に、彼に説明を求める視線を向けた。
「ただ、その
意識をしてしまうと余計に危険な魔法。そしてニルヴァーナの光が上がった後に豹変したウェンディの精神状態。その二つから考えるに、やはりニルヴァーナというのは……。
「もしや、精神に干渉する魔法かね?」
「そう。光と闇を入れ替える。それがニルヴァーナ」
「光と……」
「闇を……」
「入れ替える!?」
光と闇……それを精神的な言い方に変えるとするならば、光は正義、闇は悪といった感じか。
しかし、それを魔法で強制的に入れ替えるとなれば代償は計り知れないだろう。そう都合のいい魔法など、それこそ数える程しか無いだろう。
「しかし、それは最終段階。まず封印が解かれると、黒い光が上がる。まさにあの光だ。黒い光は手始めに、光と闇の狭間にいる者を逆の属性にする」
「つまり狂おしい程の負の念を持った光の者は闇に。逆に闇の者ならば、光に落ちるという事だね」
「それじゃ、ウェンディを魔法を撃とうとしてたのは……」
「自責の念は負の感情だからね。あのままじゃ、ウェンディちゃんは闇に落ちていたかもしれない。クラフトさんが助けてくれたけどね」
「そうだったんですか……」
ウェンディはヒビキの言葉を聞いて、何かを考え込むような表情を浮かべる。
私はそれを尻目に続ける。
「ふむ……ならば今のナツ殿の感情は危険だな。誰かの為に怒っているというのならば、それもまた負の感情となり得る」
「それこそが僕がこの魔法の事を黙っていた理由。人間は物事の善悪を意識し始めると、思いもよらない負の感情を生む」
あの人さえいなければ、あの人がああなる事は無かったーーー
このような目に遭うのは誰の仕業かーーー
なぜ自分ばかりーーー
それら全ての感情がニルヴァーナにより、定められてしまうという事だ。
「でもさ……それって逆に言うと、闇ギルドの奴らはいい人になっちゃうって事でしょ?」
「そういう事も可能だと思う。ただニルヴァーナの恐ろしさは、それを意図的にコントロール出来る点なんだ」
「そんな!!」
「あ、あの……!もしかしてそれがいいギルドの方たちに使われたら……大変な事になりませんか!?」
そこでウェンディがその事実に気が付き、悲鳴じみた声を上げた。
もし光のギルドにニルヴァーナが使われてしまった場合、どうなるのかは想像に容易い。
仲間同士での躊躇無しの殺し合いから始まり、果ては他の光ギルドとの理由無き戦争まで引き起こせるだろう。
「一刻も早く止めなければ、光のギルドは全滅する。その前に何としてでもーーー止めないと」
そうヒビキが言い、ウェンディたちもまた決意を固めたその時、私たちの目の前に樹海を流れる川が姿を見せた。
「ほう、樹海にこのような場所があったとは……」
「本当、この樹海って広いわね……って、あれは……!?」
その時、私の隣にいたルーシィがある方向を見て声を上げる。そこにはーーー
「お……おま……うぐ……」
イカダに乗って、気分が悪そうにうずくまっているナツとーーー
「死ね」
そんなナツに止めを刺そうと、氷で出来た槍を掲げたグレイがいた。
いつもと雰囲気が違うグレイに、ルーシィやハッピー、ヒビキもシャルルもウェンディも困惑する中、私は冷静に彼の本質ーーー魂を見抜いていた。
(ーーーあの魂……また彼らかね?全く、あの時は少しの間は行動不能になる程の魔力を当てたというのに……精霊の回復能力というのは中々なものだな)
「っ!!開け、人馬宮の扉!サジタリウス!!」
呑気にそんな事を思っているとルーシィが金色の鍵を掲げて、精霊召喚の言葉を紡いだ。
瞬間ーーールーシィの背後に馬……の着ぐるみのようなものを着た男性が弓を構えながら現れ、矢をナツとグレイの間の地面に向けて放った。
「何してんのよ、グレイ!!」
「であるからして、もしもし」
「グレイさん!なぜナツさんを攻撃しようとしてるんですか!?」
私たちの姿を確認したグレイはどこか苛立ったかのように吐き捨てる。
「邪魔すんなよ、ルーシィ」
「な……なによ、これ……。まさかグレイが闇に堕ちちゃったの……?」
「いいや、違うな」
私はルーシィの言葉を否定して、再び
それを受けたルーシィやウェンディたちは特に何も起こらなかったものの、グレイもどきだけは違った。
彼ははどうを受けた瞬間、イカダの上に倒れこみ、二体の人形のような精霊の姿へと戻った。
「な、何あれ!?」
「双子座のジェミニーーー黄道十二門の一つだよ」
私はそう説明しながら川の向こうの森に視線を向ける。
その視線の先にはエンジェルが、私を見て嫌そうに顔を歪めながら姿を見せた。
「またお前か……。しつこいゾ」
「仕方ないだろう。私とて君に会いたくてここにいるわけではないのだからね」
エンジェルは手に持っていた鍵を横に振って、ジェミニを閉門した後、別の鍵を取り出した。
「開け、彫刻具座の扉。カエルム」
瞬間、小型の機械のような精霊が出現し、ウェンディに向かってレーザーを放った。
「ウェンディ!」
「あ……」
シャルルが叫ぶも、予想だにしなかった突然の攻撃にウェンディは呆然と立ち尽くしてしまう。
そんなウェンディの前にヒビキが即座に割り込み、防壁を作って攻撃を防御した。
「大丈夫かい?ウェンディちゃん」
「あ、ありがとうございます……」
「シャルル!ここは私とヒビキに任せて、ウェンディを連れて行って!クラフトさんもついて行ってあげて!」
「……いいのかね?」
周りの状況を確認し、視線を向けずに言うルーシィに私は問う。
「敵の精霊魔導士一人位、私とヒビキで十分よ!それよりも早くナツとエルザを!」
ーーーほう。この少女も中々威勢のいい事を言う。内心では本当に勝てるのかどうか揺らいでいるというのにーーー
「……承知した。では行く前に一つ、年長者たる私から施しを与えよう」
私は片手をカエルムに向け、魔力を込める。
するとカエルムは突然爆発四散して跡形も無く消えていった。
『なっ!!?』
「さて、では参ろうか。シャルル殿、ウェンディ」
「ーーーっ!分かったわ!」
「えっ!?シャルル!?」
私に声を掛けられ、真っ先に我に返ったシャルルは先ほどの光景に唖然とするウェンディの体を掴んで大空へと羽ばたいた。
私はその後を追うように、
そして地面を蹴り、飛び立とうとしたその刹那ーーー
「ウェンディちゃんを頼んだよ。クラフトさん」
「頼んだわよ。それにしても年長者って……アンタもあたしたちと変わらないでしょ」
こちらを見ずに言うヒビキとルーシィの言葉に私は薄っすらと笑みを浮かべた後、シャルルとウェンディの後を追って、大空へと飛び立った。
水銀「終わって早々だが、一ついいかね?」
はい?
水銀「サブタイトルにああ書いておきながらそれ程私が興味を示している様子を見せていない件について、何か言う事はあるかね?」
無いです(笑)作者も書き終わって、投稿する時にあれ?とは思いましたが……これはこれでと思ったので投稿しました(笑)意見があれば大きく加筆・修正はします。
水銀「そういう事では無いのだがな……。まあ、良い。今回はここまでだ。誤字脱字・感想意見等、是非ともよろしく頼むよ」