FAIRY TAIL 未知を求めし水銀の放浪記   作:ザトラツェニェ

6 / 14
遅くなりました!そして今回の話はウェンディの過去話が中心です!

ウェンディ「皆さん、楽しんでいってくださいね!」



水銀の蛇は彼女の追憶を聞く

六魔将軍(オラシオンセイス)が一人、エンジェルと遭遇し、ルーシィとヒビキとハッピーに相手を任せた私たちは大空を飛翔していた。

 

「ルーシィさんたち、大丈夫かな……」

 

「何、心配する事はないよ」

 

双子座のジェミニは、私の()()強いいてつくはどうの影響で暫く行動不能にしておいたし、カエルムも破壊した。

少なくともある程度は、エンジェルの戦力を削いだと予想出来る。

 

「それにしてもあんた、あの機械みたいな奴をどうやって倒したのよ?」

 

「どうやってとはまた奇妙な事を聞くのだね。君もその目でどのように倒したかなど見ていたではないか」

 

「見てたけど訳が分からないわ。突然手を向けたと思ったら、すぐに爆発したんだもの」

 

「あれ位不思議でもなんでも無いだろう。あの時ナツ殿を吹き飛ばしたジェラールと同じような事をしただけだよ」

 

手に一定の魔力を収束させ、一気に放出する。私やジェラールがやったのはそういう事だ。

言葉にすると簡単に思えるが、実際は魔力の収束に失敗すると暴発するか消滅してしまう。魔力操作という技術に長けていないと、そう簡単には出来ないだろう。

 

「ふ〜ん……。そういえば、ウェンディとクラフトはあの男ーーージェラールについて知っているみたいだけど、どんな人なの?」

 

「え?いきなりどうしたの?シャルル?」

 

魔法云々の話からいきなりジェラールに関する質問を投げかけたシャルルに対し、今まで黙って話を聞いていたウェンディが首を傾げる。

 

「別にただの興味よ。恩人とかあの時言ってたけど……私、そんな話聞いた事無いわよね」

 

「そういえば話してなかったね。あれは七年前、天竜グランディーネが姿を消して私は一人……路頭に迷ってたの」

 

そしてウェンディはあの日の事をシャルルに向かって語り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーグランディーネ……どこぉ……?置いてかないでよぉ……ーーー

 

 

 

「あの時の私は一人でグランディーネを探していたの。でも私はグランディーネと住んでいた巣からあまり出た事が無かったから、本当に当ても無く、ただふらふらと泣きながら歩いていた」

 

 

 

ーーーグランディーネ……グランディーネェ……ーーー

 

 

 

「今でも思い出せる……。あの時の私は一人で……他に頼れる人もいなくて……グランディーネも見つからなくて……とても怖くて、悲しくて、寂しかったって……」

 

 

 

ーーー……ううっ……。うわあぁぁぁぁん……ーーー

 

 

 

「でもあの日……。私が歩き疲れちゃって道端にうずくまって泣いていた時、ジェラールとカールに出会ったの」

 

 

 

ーーー君、どうしたの?ーーー

 

ーーーうわあぁぁぁぁん……ーーー

 

ーーーうわっと……。本当にどうしたんだい?ーーー

 

ーーーグランディーネがぁ……いなくなっちゃったの……ーーー

 

ーーーグランディーネ?ーーー

 

ーーーどうしたのかね?このような遅い時間にこんな所でーーー

 

ーーーあ、すみません。この子が……ーーー

 

 

 

「あの後、私は二人の前でしばらく泣いちゃった。ーーーきっとあの時の私は……安心したんだと思う。今まで一人で怖くて、寂しくて、心が折れそうな気持ちでいっぱいだった私に声を掛けてくれた二人に、私はどうしようもなく頼りたくなったんだと思う。そんな突然泣き出しちゃった私をジェラールとカールは、見捨てないで泣き止むまで側にいてくれた」

 

 

 

ーーーそろそろ焼けたか……食べるといい。熱いから気を付けるのだよーーー

 

ーーーあ、ありがとうございますーーー

 

 

 

「その後、カールがこんがり焼いてくれたお肉の味は今でも忘れられないよ。数日ぶりのご飯だったし……私にとってはグランディーネ以外の人と初めて食べた食事だったから……。その後私は今まで彷徨ってた理由を二人に全部話した。そうしたら……」

 

 

 

ーーーなら僕と一緒にそのドラゴンを探そうか?ーーー

 

ーーーえ……?ーーー

 

ーーー僕は色々な所を旅しているから、一緒に来ればそのドラゴンに会えるかもしれないーーー

 

ーーーそれは妙案だ。ならば私も協力させてもらっても構わないかね?二人よりも三人の方が色々と効率もいいだろうーーー

 

 

 

「嬉しかった。本当に頼れる人が出来るのかもしれないって思った。けど……私はそれでも二人にこれ以上の迷惑は掛けたくないとも思っていた。でも……」

 

 

 

ーーー君はまだ幼く、弱く、そして脆い。それなのに無理をして遠慮する必要などどこにも無いのだよ。困った時は人に頼りたまえ。それが生きるということなのだからねーーー

 

 

 

「カールは優しくそう言ってくれた。そして答えを出すのは明日でいいって言って、疲れた私を寝かせてくれた。そんな優しさに甘えたくなった私は次の日の朝、二人にグランディーネを探してほしいと頼んだの」

 

 

 

ーーーあの……昨日の事なんですけど……。い、一緒にグランディーネを探してくれますか……?ーーー

 

ーーーもちろん。見つかるまで手伝ってあげるーーー

 

ーーー私も構わんよ。ではまずはどこから向かおうか?ーーー

 

 

 

「二人はどこまでも優しかった。私みたいなどこの誰かも分からない迷子の面倒を見てくれて、頼みも聞いてくれて……本当に涙が出る程嬉しかった。ーーーその後は三人で色んな所を旅をして、色んなものとか生き物とかを見たり、いっぱい美味しいものも食べたりして……とても楽しかったよ」

 

 

 

ーーーふむ……この木の実は確か食べれた筈だったか。……食べてみるといいーーー

 

ーーーありがとう、カールーーー

 

ーーーありがとうございます、カールさんーーー

 

ーーーわぁ……!甘くて美味しい!ーーー

 

ーーー確かに美味しい……。この木の実がこんなに美味しかったなんて……ーーー

 

ーーーふふふふ……あ、そっちの木の実は毒があるから気を付けたまえーーー

 

ーーーふえぇっ!?ーーー

 

ーーーこれには毒があるんですか……。覚えておこうーーー

 

 

 

「ジェラールはいつも私の事を気にしてくれていた」

 

 

 

ーーーウェンディ、疲れてないかい?ーーー

 

ーーーはぁ……はぁ……。だ、大丈夫……ーーー

 

ーーー……ほら、ウェンディ。僕の背中に乗ってーーー

 

ーーージェラール……。うん……ありがとう……ーーー

 

 

 

「カールは私やジェラールが知らない事をたくさん教えてくれた。普通の事から魔法の事まで……」

 

 

 

ーーーとなれば、ここの魔法式はこうなるーーー

 

ーーーう〜ん……ーーー

 

ーーーふむ、まだウェンディには理解し難いかな?ーーー

 

ーーーカールさん……。僕にも分からないんだけど……ーーー

 

ーーー君もかね。もう少し勉強したまえよーーー

 

ーーーえぇ〜……こんな複雑な魔法式なんて使うかなぁ……ーーー

 

 

 

「そんな楽しい時がいつまでも……せめてグランディーネが見つかるまではずっと続くと思ってた。でもある日……」

 

 

 

ーーーアニマ!?ーーー

 

ーーーあれが例のアニマという魔法かね?ーーー

 

 

 

「ジェラールとカールは突然私には分からない話をし出したの。そしてしばらく二人で話し合っていたと思ってたら……ジェラールが突然一人でどこかに行くって言い出したの」

 

 

 

ーーー嫌だよ、ジェラール……もっといっぱい旅しようよ……私とカールと一緒にグランディーネを探してよぉ……ーーー

 

ーーーウェンディ……ごめんーーー

 

ーーー嫌ぁ……行かないでぇ……お願いだから……ーーー

 

ーーー大丈夫、君の事は近くのギルドに連れて行ってあげるから……だから……またいつか会おう。その時はまた一緒に旅を……ーーー

 

ーーー嫌ぁ!!そんなお別れの言葉なんて聞きたくないよぉ……ジェ……ラール……ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が覚えてるのはそこまで……。そして次に目を覚ました時にはジェラールとカールはどこかに行っちゃって……私は化け猫の宿(ケットシェルター)に預けられたんだ」

 

「そうなの……」

 

ウェンディの話を聞き入っていたシャルルは何やら思案顔をした後に、私の方へ顔を向けた。

 

「それで、あんたはどこで何をしに行っていたのよ?」

 

「それは言えないな。まあ、だが……少々外せない急用が出来たとでも言っておこうか。すまなかったね、ウェンディ」

 

「ううん、急用が出来たなら仕方ないよ。それにジェラールも……」

 

そう言ったウェンディは寂しげな笑みを浮かべて黙り込んでしまった。

そんなウェンディの返事に何も言えなくなったのか、シャルルもまた黙り込んで何かを考え始めているようだった。

その時、樹海の広い範囲で大きな揺れが巻き起こる。

 

「っ!?何!?」

 

「……どうやら完全に封印が解かれたようだな」

 

視線を向けた先には先ほどの光の柱がより一層強い輝きを放ちながら、何かが地中から現れようとしていた。

それと同時に辺りの樹海の地面もひび割れ、そこから何やら細長い触手のような脚が現れる。

 

「あれが光を崩す最終兵器……」

 

「超反転魔法、ニルヴァーナ……」

 

「完全復活……か。君たちは先に行きたまえ」

 

「あんたは?」

 

「すまないが、私は少し用がある。何、すぐに戻るから心配はいらないよ」

 

「…………分かったわ」

 

「気を付けてね、カール」

 

私の言葉に頷いたウェンディとシャルルは中心にある都市のような場所へ飛んでいく。

 

「さて……」

 

それを見送った私は眼下にあるニルヴァーナを見下ろす。

ニルヴァーナの中心には様々な形の建物が建っており、随分昔に人が住んでいたという事が窺い知れる。

 

「移動する古代都市か……」

 

私としては古代都市など回帰した世界で幾つも見た事があるものの、こうして移動する古代都市とは初めて見た。

その初めてという感覚に歓喜を覚えるがーーーそれはそれとして、この都市は一体どこへ向かっているのだろうか。

 

「……あっちか」

 

ニルヴァーナが最初に歩を進めている方向に何があるのかーーー気になった私は流星のような速度を発揮して飛んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニルヴァーナが歩を進める方向には何が存在するのかーーーそれを調べにきた私が暫くして上空から発見したのはーーーとある小さな集落だった。

 

「ふむ……。あれが目指しているのはこの集落で違いないか」

 

この集落の後ろは山があり、その先は広大な海が広がっている。海の向こうにある町などが目的という考えもあるにはあるが、どうにもそれは考えづらかった。

なぜならーーー

 

「…………」

 

その集落の中心ーーーそこにある猫のような形をした大きい一つのテントーーーそこから何か不可思議な魔力を感じた故に。

そんな不可思議な魔力に興味を惹かれた私はそのテントへと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、その猫のような形をしたテントーーー化け猫の宿(ケットシェルター)内ではニルヴァーナが接近しているという報告を受け、混乱に包まれていた。

 

「ニルヴァーナがここに向かって来てるって!?」

 

「連合軍の作戦は失敗か!?」

 

「あのジュラやエルザがいたというのに……」

 

「安心せい」

 

そんな混乱に喘ぐ者たちをギルドマスター、ローバウルは答える。

 

「光の魔力は生きておる。なぶら大きく輝いておる」

 

その言葉にギルドの者たちは安心したように声を上げる。

しかしーーーローバウルは表情を暗くして続ける。

 

「ニルヴァーナを止めようと、なぶら戦っている者たちの勝利をワシは信じている。だが……時が来たのかもしれん。ワシらの罪を清算する時がな」

 

その言葉に再びギルド内に暗く、思い悩むような雰囲気が満ちる。

 

 

 

 

しかしその空気は次の瞬間、一人の者が訪ねてきた事で一変する。

 

「夜分遅くに失礼、ここは化け猫の宿(ケットシェルター)で合っているだろうか?」

 

「む?」

 

突然、何気無く尋ねられたその質問。その質問を投げかけたのは誰なのか、ギルド内にいる者たちの視線が入り口の方へと向けられる。

そこにいたのは影絵。

そこにいるのかどうかも不鮮明で、不思議な存在。

男性か女性か、それも認識出来ない不可解な存在。

 

「いかにも、ここは化け猫の宿(ケットシェルター)。ワシはこのギルドのマスターのローバウルじゃ。して、流離い人よ。ここに何の用かの?」

 

そのような存在にも怖気づく事無く、ローバウルは尋ねる。

するとその影絵のような存在はくっくっと笑いながら答えた。

 

「さて、何用かと聞かれればあまり大した事ではないのだが、この場所にとある危険な魔法が移動してきている事を伝えようと思ってね」

 

「ほう……」

 

影絵の言葉にローバウルは驚きの表情をほんの少しだけ覗かせる。

 

「お主も連合軍の者か」

 

「然りーーーと言いたい所だが少々違うな。私は貴方が最初に言った通り、ただの卑小な流離い人に過ぎない。連合軍とはほんの刹那の間だけの協力関係だ」

 

「なるほど……すまぬな。お主のような流離い人にも、あれに巻き込んでしまって……」

 

「私からあれに介入したのだ。貴方がそう気に病む必要は無い。それよりも逃げないのかな?もう後数十分程度で、あれはここに来る」

 

「左様」

 

「貴方たちを葬りに来るだろう」

 

「左様。しかしそれが、ワシ等の運命。なぶら重き罪の制裁」

 

「自らが生み出した魔法に滅せられる事が……かね?」

 

影絵の問う言葉にローバウルはさらに驚く。

なぜお主がその事を知っている?お主は一体何者なのか?

しかし、そのようなローバウルの疑問を知ってか知らずか、影絵は嗤う。

 

「温いな。確かにそれも自らが犯した過ちの清算となり得るだろう。しかし、それよりもまだやるべき事があるのではないのかね?」

 

「……何をだ?」

 

「あれの最後を、あれの結末をその目で見届け、このギルドに属するかの者たちに隠していた真実を告げるという事をーーー」

 

「……お主、どこでそれをーーーいや、それよりもお主は何者なのだ?」

 

「おっと、失礼。私としたことがまた名乗り忘れてしまった。私は数多の名を持つが、ここではカール・クラフトとでも名乗っておこうか」

 

影絵の存在ーーーカール・クラフトがそう名乗ると、ローバウルは何かを考えるような顔になる。

 

「カール・クラフト……?どこかで聞いた事のある……。それにお主の顔もどこかでーーー」

 

 

 

 

 

その時、テントの外からとても大きな音が聞こえてきた。

 

「ふむ、どうやら例の魔法がすぐそこにまで来たようだな」

 

「…………」

 

「……逃げるつもりは無いと。まあ、それはそれで構わないがね。私は為すべき事をするだけだからな」

 

そう言うと、カール・クラフトは踵を返してテントから出て行こうとする。

そして最後にボソリと呟く。

 

「……信じたまえ。貴方のギルドに属する、勇敢なる二人の魔導師を」

 

そう言った彼は、今度こそテントから出て行った。

その場に残ったのは、先ほどまでの状況をただ黙って見ていたギルドの者たちとーーー

 

「……なるほど、お主はウェンディと共に旅をしていた者か。そしてーーー」

 

合点がいったかのように頷くローバウルがいたのだった。

 




短めでしたが、どうでしたでしょうか?
ちなみにメルクリウスはほとんど戦闘をしません。元から他力本願が十八番の彼は、そこまで積極的ではないのです。
「正直、荒事は苦手だが」とか言ってますからね!(そう言っておきながら、最終的には派手にぶっ放してたけど)
なのでニルヴァーナ編はサラサラっとした感じで終わるかと……(苦笑)

誤字脱字・感想意見等、よろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。