FAIRY TAIL 未知を求めし水銀の放浪記   作:ザトラツェニェ

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投稿しまーす!っていうか本編が始まる前に一言ーーー


なぜこっちの作品の方がアブソよりお気に入り多い!?(笑)


水銀「まあ、あちらの方が色々と作者が至らない部分が多いからだろう。無論それだけではないだろうが」

やめろ……!あっちの方が色々と駄文だったり、やばかったりしてるのは自覚してるからやめろ……!

水銀「それよりも早く神咒神威神楽をやりたまえよ。こないだ買ってきただろう?それをやって、早くあちらの作品を進めるのだよ」

そうは言いますけどねぇ……色々とこっちにも出来ない事情があるんですよ!

水銀「無論知っているよ。その上で言っている。そもそも私はお前の事情など知らん」

…………

水銀「……この程度で沈黙するとは……まあいい。これの事は放っておいて、そろそろ本編を始めよう。では皆様、私の歌劇の続きをご覧あれーーー」



水銀の蛇は古代魔法を破壊する

ーーー暗く、長い石造りの廊下に足音と息切れをしているような声が響き渡る。

 

「ハァ……ハァ……」

 

その二つの音は一人の青年から発せられていた。

彼はフラフラと今にも倒れそうな足取りで、しかしこの通路の先にある目的地をしっかりと目指して歩いていた。

 

(この先か……魔水晶(ラクリマ)とあいつがいるのは……)

 

もはや着ている服も一部破け、全身あらゆる所から血を流している青年は歩き続ける。

その通路の先に目的の物と敵がいる事を知りながらーーー

 

 

 

 

一番魔水晶(ラクリマ)の部屋ーーー

 

(やっとか……)

 

暗く、長い通路を歩いていた青年はようやく目的の部屋へと辿り着いた。

その部屋には、青年の目的の物となる大きな魔水晶(ラクリマ)とーーー

 

「フン、まだ生きてやがったのか」

 

その魔水晶(ラクリマ)の前に、気持ち悪い程の凶悪な魔力を全身から放つ男の姿があった。

その男ーーー六魔将軍(オラシオンセイス)ギルドマスター、ゼロは桜色の髪をした青年を嘲笑う。

 

「何しに来た?クソガキ」

 

さっきは息の根止める位まで痛めつけた筈だが、また無謀にも壊されに来たのかーーーそんな事を考えていたゼロは、桜髪の青年がニッと笑うのを見て、さらに残虐な笑みを深める。

 

「壊れんのはオレか、おまえか。どっちだろうな」

 

桜髪の青年ーーーナツは心の底から楽しんでいるような笑みを浮かべながら、右手に炎を纏わせてゼロに殴りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーふふ……いよいよ始まったか」

 

化け猫の宿(ケットシェルター)前の空中、そこに一人浮いていたメルクリウスは一番魔水晶(ラクリマ)のある部屋で戦闘を開始したナツとゼロを右目に映して見ていた。

 

「互いの思惑が衝突し、互いの意地を全力でぶつけ合う。彼らは譲れぬ結末を迎える為に戦っている」

 

メルクリウスは嗤いながら独白する。

 

「方や万象全てを破壊するという愚行の為、方や仲間たちの思いを背負い、守るという素晴らしき行いの為ーーーそれぞれ戦う理由はありきたりだが、それ故に他のどのような戦いよりも優れて見える」

 

破壊か、絆かーーーどちらが相手を打ち破り、勝利するのか。

 

「本来ならば、どちらが勝つのかなど予想がつかないのだがーーー今回ばかりはあの青年に勝ってもらわなければならないな」

 

そう自嘲めいた笑いを浮かべたメルクリウスは続いて、左目に別な世界で戦闘を繰り広げている者たちを見る。

 

「そしてこちらもこちらで素晴らしい。我が友の爪牙であるベイに啖呵を切り、自らの思いを力に変えて戦う妹とそれを見て自らの思いも形にしようとしている兄ーーー君たちはまだ未熟ながらも、私が思い描いた結末へいずれ至るだろう」

 

故にーーーとメルクリウスはこの世界の魔法陣とは別の魔法陣を自らの周りへと大量に浮かべ、暗く輝く翠の双眸に二つの世界を映しながら言葉を紡ぐ。

 

「君たちのその意志、そして魂の輝きにこの言葉を贈らせてもらおう。受け取れよ、これ程名誉な事はあるまい」

 

そしてメルクリウスは腕を振り上げて謳う。その意志こそが至高であり、彼らと自らが望む結末に関わってくると直感しながらーーー

 

 

 

 

「Verum est sine mendacio,certum:

これは疑いもなく確か且つ、これ以上の真実はないというほどの真実である」

 

「Quod est inferius est sicut id quod est superius,

すなわち下にあるものは上にあるがごとく」

 

「et quod est superius est sicut id quod est inferius,

上にあるものは下にあるものがごとし」

 

「ad perpetranda Miracula rei unius.

それは唯一なるものの奇跡の成就のためである」

 

 

 

 

「ではこれより、今宵の恐怖劇(グランギニョル)を始めよう」

 

 

 

 

そして一つの古代魔法を巡る物語はいよいよ終結へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやらその力……まだ完全には引き出せてねぇようだなァ!!」

 

「ぐはぁっ!!」

 

一番魔水晶(ラクリマ)内では、現在凄まじいまでの戦闘が繰り広げられていた。

 

「こんなモノか!?ドラゴンの力は!!太古の世界を支配していたドラゴンの力はこの程度か!!!」

 

戦っているのは全てを破壊せんとする魔力を容赦無く相手へと叩きつけているゼロとーーー

 

「ぐっ!ごぁっ!!」

 

そんなゼロにひたすら蹴られ続けながらも、必死に耐えているナツだった。

ナツは現在、記憶を失っているジェラールから託された(とが)の炎を食べ、ドラゴン・フォースという滅竜魔法の最終形態を発動させていた。

その魔力はドラゴンにも等しいと言われる全てを破壊する力ーーーしかしその力を持ってしても、ナツはゼロに苦戦していた。

 

「オレは六魔将軍(オラシオンセイス)のマスターゼロ。どこかの一ギルドの兵隊とは格が違う。てめえ如きゴミが一人で相手出来る訳がねーだろうが」

 

そう言いながら、ゼロはナツが立ち上がるのを待つ。

面白い、実に壊し甲斐のある男だと嘲笑を浮かべながら。

そしてナツはそんなゼロの考え通りに立ち上がろうとする。

 

「一人じゃねぇ……」

 

「ん?」

 

「伝わってくるんだ……皆の声……皆の気持ち……」

 

その時、ナツの脳内には今回の作戦で共に支え合っていた仲間たちの顔が、想いが駆け巡っていた。

 

「オレ一人の力じゃねぇ……皆の想いが……オレを支えて……オレを!今ここに!!立たせている!!!」

 

その啖呵と共にナツの全身を、荒れ狂う金色の炎が包み込む。

それを見たゼロはフッと笑い、今までよりも凶悪な魔力を集めながら、円を描くように両手をゆっくりと回す。

 

「粉々にするには惜しい男だが、もうよい。楽しかったよ。貴様に最高の“無”をくれてやろう。我が最大魔法をな」

 

それにナツは自らの魔力を爆発的に増幅させながらゼロを倒すべく、太古の世界を支配していたドラゴンの息の根をも止める程の奥義を行使する。

 

「滅竜奥義……紅蓮爆炎刃!!!」

 

対してゼロは冥界からの亡者たちを呼び出す自らの最大魔法を行使する。

 

「我が前にて歴史は終わり、無の創世記が幕を開けるーーー」

 

そしてゼロの両手に集っていた黒い緑色の輝きはやがて一箇所に集まり、宣言と共に弾けた。

 

「ジェネシス・ゼロ!!!」

 

その言葉と共に邪悪な輝きから、苦しみと怨念の叫び声を上げる亡者が幾百と現れる。

 

「開け、鬼哭の門ーーー無の旅人よ!!その者の魂を!!記憶を!!存在を喰いつくせ!!」

 

魔法の行使者であるゼロの命令により、名も無き亡者たちは金色の炎を纏うナツへと襲来する。

 

「消えろ!!ゼロの名の下に!!!」

 

そしてナツは(おびただ)しい数の亡者たちに飲み込まれていく。

ナツは飲み込まれまいと抵抗するものの、亡者たちの勢いに負けーーー亡者たちがひしめく無の世界へと飲み込まれていった。

 

「ふむ、少し位は足掻くと思ったが……存外呆気なかったな」

 

それを見たゼロは興が削がれたというように呟いた。

ナツが飲み込まれる直前に、この世界のものではない魔法陣が現れていた事には気付かずにーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレは……くそ……力が……」

 

何も聞こえず、何も見えず、一片の希望の光さえも差す事の無い空間。

ゼロの魔法に飲まれたナツはただ一人、悔しそうに呟きながら揺蕩っていた。

 

「ルーシィ……グレイ……エルザ……ハッピー……シャルル……ウェンディ……他の皆も……すまねぇ……」

 

一人一人の仲間の顔を思い出しながら、ゼロを倒せなかった事を謝罪するナツ。

そこにはいつものナツらしくない弱々しく姿があった。

 

 

 

 

そんな時、ふとナツの目の前に一つの薄暗い光を放つ小さな球体が現れた。

 

「なんだ……これ……?」

 

現れたその球体はゆっくりとナツの目の前へと近付きーーー語り出した。

 

『例えば、己の一生が全て定められていたとしたらどうだろう』

 

『人生におけるあらゆる選択、些細なものから大事なものまで、選んでいるのではなく、選ばされているとしたらどうだろう』

 

『無限の可能性というものは幻想であり、人はどれだけ足掻こうとも定められた道の上から降りられない』

 

「この声……クラフトか……?」

 

そんなナツの問いかけを無視して光球は独白を続ける。

 

『ならば、君があの男によってこの世界に未来永劫、幽閉されるという事も初めから定められていたという事になる』

 

『君の未来は初めからどう足掻こうとも、このような終わりと決まっていたのだという事になる』

 

「なん……だと……?」

 

メルクリウスの声が聞こえる光球からの言葉にナツは残された力で光球を睨む。

しかしそれでも光球は語り続ける。

 

『別段驚く事でも無い。君は知らないだろうが、かつて今から数百年前はそのような理が数多の並行世界を覆っていたのだからね』

 

『富める者は富めるように、貧しき者は飢えるように、善人は善人として、悪人は悪人としてーーー未来永劫、死に至った瞬間にその者の魂は母親の胎内へと刹那の間も無く回帰し、再び同じ道を繰り返す』

 

「…………」

 

『富を得た者は運命という名のものに与えられた虚構の玉座を得て満足し、持たざる者は何度も理不尽な結末を与えられる。ーーーその事実を知った君は、そのような運命を知って笑えるかね?』

 

ここで初めて光球がナツへと問いかけた。

今の光球の話が本当だとするならば、ナツがこのような結末になるのは絶対的な予定調和という事になる。

それどころかナツが今まで会ってきた人たちや、倒した敵さえも全て運命によってそうなるように決められていたという事だ。

そんなふざけた話があるだろうか。

だからーーー

 

「笑える……わけ、ねぇだろ……!」

 

そう答えると同時にナツの魔力が再び練り上がり始め、彼の周りに薄っすらと金色の炎が現れ始める。

 

「お前の話が本当なら……エルザが泣いたのも……グレイの過去も……ルーシィやハッピーと楽しく過ごせていたのも、ウェンディやシャルルと会ったのも全部仕組まれていたって事だろ……?」

 

『然り』

 

「ふざけんじゃねぇーーーーーっ!!!」

 

瞬間、ナツの叫びと共に、彼の魔力と薄っすらとしていた金色の炎が一気に無の世界を照らしていく。

 

「オレはそんな話なんて信じねぇ!運命は他の誰かに決められるものじゃねぇ!オレが!オレたちが自分で決めるもんだ!!」

 

自分のギルドや、他のギルドの仲間の意志すらも全て誰かの掌の上だなんて絶対に認めない。

そんな魂の叫びを聞いた光球は薄っすらと輝き始める。

 

『ふふ、ふふふふふ……まったく、君は熱い男だ。だがーーー悪くない』

 

そしてその光球は次第に黄金の光を帯び始め、さらに周囲の無の世界を容赦無く照らして侵食し始めた。

 

『正直、私もこのような結末(終わり)など認めん。私とて彼女の笑顔を守りたいと思っているからね。故にーーーこの世界から抜け出すのだ、竜の子よ』

 

『その黄金の輝きを持って、彼の者の願いを、意志を打ち砕け』

 

「言われなくても……やってやんよ!!!」

 

瞬間、何も無い無の世界が全てを燃やし尽くさんとする黄金の炎で覆われた。

 

 

 

 

 

「ーーーバカな!?」

 

その時、ゼロは目の前で起こったあり得ない光景に瞠目した。

なぜなら完全に無の世界へと落ちた筈の(ナツ)が今、無の世界へと亀裂を入れ、万を超える亡者たちを焼き殺しながら自分へと向かって来ているのだ。

さらに瞠目すべき所はもう一つあった。

 

「金色のーーー髑髏だと!?」

 

ゼロの魔法を燃やし尽くしているナツの周りには、銃剣を手にしてナツが焼き殺せなかった周りの亡者たちをどんどん討ち取っていく十体程の黄金の髑髏たちがいたのだ。

万を超える数の亡者たちに対し、その全てを燃やし尽くす程の黄金の炎を纏っているナツと、僅か十体という少数ながらも圧倒的な力を見せつける黄金の髑髏に対して瞠目していたゼロの脳内に突然声が響く。

 

『これが我が友の軍勢のほんの一部。永劫に戦い続け、総てを破壊し呑み込まんとする髑髏の軍隊。お前の呼び出した亡者など彼らにとっては、何の力も持たない赤子と同義だ』

 

その声はゼロが連合軍の魔導士たちの念話をジャックした際に聞いた男の声だった。

 

『お前の持っている全てを破壊する力など、彼らの前では塵芥に等しい。なぜなら彼らこそが真にこの世界を破壊せんとする力を有しているのだからね』

 

お前の言う破壊など取るに足らないと断じた男は、この状況が心底愉快でたまらないと言ったかのような声色で言う。

 

『さあーーー行くがいい、竜の子よ。私を憧憬させるような乾坤一擲を全力で放て』

 

「おう!!」

 

吹き荒れる黄金の爆炎、まるでドラゴンを思わせる程の咆哮、踏み出した足はドラゴンの強靭な足を思わせる。

ゼロはそんなナツを見、一瞬だが彼が太古の世界を支配していたドラゴンの姿を幻視する。

そのような隙を逃すナツではない。彼は瞬きする間も無くゼロを殴り飛ばして宙に浮かばせる。

 

「全魔力解放ーーー滅竜奥義“不知火型”!!」

 

黄金の炎と紅蓮の炎を混ぜ合わせた強大な炎がナツを中心に渦を巻き始める。そしてーーー

 

「紅蓮鳳凰劍!!!!」

 

足元に作り出した魔法陣から一気に飛び出し、全身に黄金の炎を纏わせながらゼロに突き刺さる。

まるで巨大な炎剣の如き姿となったナツは、まるでドラゴンか鳳凰が天へと飛翔するように昇っていき、ニルヴァーナの階層を破壊しながら上へと向かう。

 

「ぐあああああ!!!」

 

「うおおおおお!!!」

 

そして全ての階層を突き破り、目標の魔水晶(ラクリマ)の部屋へと到達したナツは、そのままの勢いでゼロごと魔水晶(ラクリマ)へと突撃し、破壊した。

 

 

そして同時刻、他の魔水晶(ラクリマ)の部屋ではーーー

 

氷雪砲(アイス・キャノン)!!!」

 

氷の造形魔法で作り出されたミサイルランチャーから撃ち出された氷の塊の一撃が。

 

「「「いっけえええ!」」」

「モオオオ!!」

 

黄道十二門の中で最も攻撃の強い精霊による一撃が。

 

「メェェェン!!」

 

力の香り(パルファム)によって強化された肉体の一撃が。

 

「ハァァァ!!」

 

攻撃力を格段に上げる鎧を纏っての一撃が。

 

「天竜の……咆哮!!!」

 

そして自らの内へと眠っていたドラゴンの力を風を纏う咆哮へと変えて放った一撃が。

 

 

文字通り、全員が乾坤一擲として放った一撃は見事に全ての魔水晶(ラクリマ)を破壊し、爆発と共にニルヴァーナを崩壊させ始めた。

 

 

 

 

 

『見事』

 

 

 

 

 

そのような大業を成し遂げた英雄たちをその目に映した道化は、たった一言のーーーしかしそれでいて実に至高であるといった感情を感じられる声で称賛するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

脚が破壊されてバランスを失い、崩れゆくニルヴァーナを見ていた私は、自然と自らの頬が緩むのを感じていた。

 

「実に素晴らしい。本当に一回で成功させるとはーーー」

 

正直失敗した時の事を考え、色々と準備していたが杞憂だったようだ。

ちなみに失敗した場合は、髑髏たちに代わりに破壊させるつもりだった。あるいは連合軍の者たちに対して結界を張った後、ニルヴァーナを超新星爆発で消し飛ばそうかとも思っていたのだが。

 

「だが、まだ最後の仕上げが残っているーーー聞こえるかね?」

 

そして私はニルヴァーナを破壊した英雄たちに向かって語り掛ける。するとーーー

 

『クラフトか!?すまないが今それどころじゃーーーくっ!』

 

『メェーン!』

 

『やべーぞ、こりゃ……さっさと脱出しねぇと瓦礫で埋れちまう!』

 

『ウェンディ、こっちよ!!早く逃げないと!!』

 

『待って、シャルル!』

 

ニルヴァーナを破壊した者たちが降ってきているだろう瓦礫をよけながら、必死に脱出を図っている状況が伝わってきた。

そんな状況の中で告げるのはいささか気が引けるが、とりあえずこれから私がやる事を彼らに告げた。

 

「逃げながら聞きたまえ。まずはニルヴァーナの破壊、見事なり。惜しみない喝采を君たちに送ろう」

 

『そりゃどうも!!うおおおっ!』

 

「しかしこれで終わりではないだよ」

 

『え?』

 

私の言葉に全員が耳を疑うように聞き返してきた。

そう、まだ終わりではないのだ。

 

「ニルヴァーナは君たちが破壊した。しかし数年後、もし仮に大きな力の持った者がニルヴァーナを修復してしまったのならば、今回の作戦が全て水泡と帰してしまう。故にニルヴァーナは跡形も無く、完全に消し去らなければならない」

 

今目の前で大きく崩れて原型が無くなってしまおうとも、この世界の魔導士の中には修復系の魔法を使う者もいるだろう。

そんな輩が集まってニルヴァーナを再び動かせるようになるまで修復してしまえば、それこそ元の木阿弥だ。再び同じ事が繰り返される。

 

『つまりお前がニルヴァーナを完全破壊すると?』

 

「然り、既にニルヴァーナを消し去る魔法も組み上がっている。撃とうと思えばいつでも撃てるがーーー四十秒。君たちが脱出するまで待とう。それまでに脱出出来なければーーー言わずとも分かるだろう?」

 

『急げぇぇぇ!!!』

 

『うおおおおおおおっ!!』

 

事の結末を理解した者たちは、揃って早急に脱出しようと走り出した。

 

 

 

そして念話で破壊宣言をしてから三十秒が経った頃、私はこの世界の魔法とは別のーーー自らの本来の占星術を紡ぐ。

 

 

「sic itur ad astra

このようにして星に行く」

 

これは私からしたら前座にも及ばないものだがーーー威力はニルヴァーナ(これ)を粉々にするには十分だろう。

ふと、連合軍の者たちを見るとどうやら全員が脱出したようだ。六魔将軍(オラシオンセイス)?知らん。

そしてさらにニルヴァーナを囲うように結界を展開し、最後の一句を告げる。

 

「sequere naturam

自然に従え」

 

瞬間、上空から純粋な魔力のみで構成された流星群が大量に降ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな無事か!?」

 

「ぷはー」

「あぎゅー」

 

「エルザさ〜ん、よかったぁ」

 

「な、何だ、その体は!?」

 

「我らも無事だが……」

 

「ナツさんとジェラールがいない!!」

 

ニルヴァーナから急いで脱出した者たちはニルヴァーナから少し離れた森の中で合流を果たした。そしてーーー

 

「愛は仲間を救う……デスネ」

 

ニルヴァーナによって改心したホットアイによってナツとジェラールも合流し、皆の顔に笑顔が戻る。

 

「これで全員脱出か。ところでクラフトはどこだ?」

 

「カールなら私たちのギルドの前にーーー」

 

そうウェンディが言った瞬間、突然ニルヴァーナ全体を囲う結界が現れた。

 

「結界?……クラフトはニルヴァーナを完全破壊すると言っていたが、一体どうするつもりだ?」

 

「それは……私にも分かりません。でもきっと、とてもすごい魔法を使、うと……」

 

するとウェンディは何かに気付いたかのように視線を空へと向ける。そしてその何かの正体が分かったウェンディは段々と顔を青ざめさせ、恐怖に満ちた表情を浮かべた。

それに気が付いた他の者たちも、揃ってウェンディが視線を向けている方向を見る。

そしてーーー

 

「ーーーーーー」

 

「何、だよ……あれ……!?」

 

彼らもまた、ウェンディと同じように顔面を青ざめさせた。

 

 

そこにあったのはまさに絶望や悪夢といった言葉を体現したかのような光景。

ーーーワース樹海の空の約八割程を覆い尽くさんとする百を超える流星群が、絶望的や強大といった言葉すらも陳腐に思えてくる程の魔力を持って降ってくる。

凄まじい炎を纏った流星はニルヴァーナへと落下する度に、恒星が爆発したかのような光と轟音を辺りに響き渡らせる。

墜落した流星はニルヴァーナごと地表を巻き上げ、地面に巨大で底が見えない程深いクレーターを作り上げる。

そんな天変地異というに相応しい光景がどれ程の時間続いただろうかーーー百を超える流星群が全て落ち、周辺を舞っていた砂埃が晴れると、そこには大小様々な大きさと深さを持ったクレーターが無数に出来上がっていた。

当然ながら、ニルヴァーナは跡形も無く文字通り消え去っていた。

 

『ーーーーーーーーー』

 

そのような時間にして僅か一分にも及ばない時間の間に起きた出来事に、ナツたちは顏を青ざめさせながらただただ呆然と立ち尽くしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、少々やり過ぎてしまったかな?」

 

流星群全てを残らずニルヴァーナへと叩きつけ、出来上がった目の前の光景に私は苦笑いしながら呟いた。

いや、正直に言うと少々どころかオーバーキルという言葉すら甚だしく、やり過ぎだと言われても否定出来ないレベルの被害になってしまったのだがーーーまあ、過ぎた事なので考えるのをやめよう。

魔力反応を探ってみると、辛うじて結界内にいた六魔将軍(オラシオンセイス)の者たちもなんとか生存しているようだ。最も死んでいたとしてもどうでもいいがね。

 

「ーーーさて、どうやらあちらも終わったようだ」

 

とりあえず目の前の問題を丸々棚上げした私は、もう一つの世界を覗く。

そこにはベイと戦い、見事退けた例の兄妹が学園へと運ばれる光景が映る。

 

「獣殿、そちらの歌劇もまた素晴らしいものだった。是非とも貴方の感想を聞きたいな」

 

そう呟いた私は、我が友の城へと転移した。




水銀「ふむ、そしてこれの後に私はアブソ作品の第八話に登場すると……」

そういう事になります。ちなみに水銀の流星群詠唱はkkkの夜刀を参考にさせてもらってます。本来水銀が流星群降らせる場合は無詠唱なのですが、それでは華が無いので(笑)

水銀「我が愚息もあの世界では流星群を降らせる事が出来るのだったな。そもそも私の血や力を持つ者ならあの程度出来て当然だが」

ということは、あっちの世界のあの二人も……。

水銀「大成するかどうかは別だがね。では今回はこの辺りで一旦幕を閉じよう。誤字脱字・感想意見等、よろしく頼むよ」

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